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其の十 パレード

 休憩の後の次なるイベントはパレードである。時間を調整して曳行を行いながら、その年に定められたパレード入りの順番を待ち、各町それぞれの各団体責任者を祝う祭典である。前方を走っていた宮川町のパレードが済むと、宮川町は駅下りから和歌山方面に向けて遣り廻しを行い、続いて八幡町のパレードの順番がやって来た。定められた位置にだんじりを停止させ、まずは曳行責任者、続いて若頭と十五人組、そして青年団からはオレが台の上に乗って花束を贈呈してもらうと、各団体と聴衆の歓声が上がった。しかしまだ青年団はクラッカーを打ち鳴らさなかった。パレードの一番の見物は、この後に行われる、青年団達がその年の団長に贈る横断幕にも似た、団長の名前と一言を入れた大きな垂れ幕を、大屋根の上から垂らして各町に負けない派手なサプライズをするのである。勿論団長のオレはこのパレードまでどんな物が用意されているか聞かされてもいなかったし、寄り合いで青年団達がその準備をしている気配すら感じ取れないほど、皆こっそりと水面下で垂れ幕を作ってくれていたのである。

 現在ではパレードの際に青年団が被り物を被って派手な登場をするようになっているが、この頃はまだどの町も被り物などしている町はなかった。その先駆けになったのがおそらくこの平成十年の八幡町だろう。あるとき学と、パレードでもっと他所の町に負けないくらいド派手な事をしようと相談していると、行き着いた答えが被り物で、最初に意見が挙がったのが、ビートたけしがよくテレビで被っていた謎の中国人マスクだったが、これは八幡町らしくないと却下になり、どうせなら八幡町青年団のレディース軍団や、上下関係なく仲の良い象徴的な被り物はないかと思案している所、


「ゴレンジャーならモモレンジャーも居てるからええんちゃ~ん」


 と学が言い出したのが事の発端である。オレは仕事の合間を縫ってLoftに走り、カラフルなゴレンジャーの被り物を揃えて来たのである。

 花束の贈呈が終わった後、オレは引きずられるように学や瀬尾そしてブチ達にだんじりの裏に連れて行かれ、その五人がゴレンジャーの被り物を被ると騎馬の陣形を作ってオレはその上に乗せられた。そして花束を右手にゴレンジャーに担がれて表舞台に登場すると、また聴衆と青年団の歓声が上がった。そしてその後はいよいよ垂れ幕の時がやって来たのだが、正直言ってオレは驚いた。驚いたと同時に嬉しかった。通常どの町も垂れ幕は青年団一同と一つだけなのだが、この年は皆ド派手にやってくれた。まず屋根正面右端から、


        挿絵(By みてみん)


 と、青年団一同からの垂れ幕が垂らされると、続いて屋根正面左端から、


        挿絵(By みてみん)


 と、青年団の中でもくにたん初めマッサンやオレよりか年上の連中から、

 そして最後に、


        挿絵(By みてみん)


 と、キティちゃんの顔が無数にプリントされたピンクのふざけた台紙が屋根の中央から垂らされた。これを作成したのは柳井初めタッケンやてっちゃん、そして三浦や伊戸ちゃん、更に藤田や瀬尾などなど、オレの仲間内達である。勿論オレのオカンには何の了承も取っていなかったという。ふざけたヤツらだが、当人のオレが一番ふざけた男なので、オレはこんな悪ふざけた事が大好きだった。後にも先にもこんな心に残る嬉しいサプライズはないだろう。更にパレードでは使えなかったが太井町青年団一同からも、平成十年度青年団 団長 山本武と書かれた、額に入れて部屋内に飾れる垂れ幕を贈呈して頂いた。

 三つの垂れ幕がだんじりから高々と聴衆に向けてお披露目されると、ここで青年団一人一人が仕込んでいたクラッカーが打ち鳴らされた。他町はハッピの色に合わせたリボンが一色飛び出て来るだけの物だったが、八幡町はゴレンジャーにちなんだ五色のクラッカーを用意していた。カラフルな五色のリボンが宙に舞い、青年団と観客の歓声が本部前に響くと、続くオレの胴上げに合わせて、鳴り物も派手な刻み太鼓でその年のパレードは最高潮に盛り上がった。


        挿絵(By みてみん)


その興奮冷めやらぬ男達の思いは、パレードフィナーレの遣り廻しも見事決め、意気揚々とオレ達は大阪方面に向けてだんじりを走らせたのである。

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