其の二 ウルトラシュワッチ!
お山のトンネルでは、赤や黄、青色といった帽子を被った園児達で溢れ返っていた。
お山のトンネルは、山の頂上から垂れ下がるピンク色した石造りの滑り台が、舌のように麓まで伸びている。その頂上に辿り着くには、麓の小さなトンネルを山の中心部に向かって、中腰になって進まなければならなかった。楽しさに夢中になって幾度となくそんな行動を繰り返す内、教室に入るチャイムが鳴った。
「たけし君そろそろ教室に戻ろうよ」
えっちゃんが言ってくれたが、
「あともう一回だけ滑ってから行くわ。先行っといて」
と、みんながぞろぞろと教室に戻る中、オイラはもう一度滑り下りようと、トンネルは潜らず、勢いを付けて駆け出し、滑り台を逆走して上った。滑り台の中腹は難なく過ぎ、頂上付近に差し掛かった時、傾斜角度のキツさに駆け出した足が衰え始め、それにも増して石造りの滑り台は表面がツルツルとよく滑り、動かしている足の速度とは反比例して、上る速度がスローモーションになっていった。それでも頂上まであと少しだと、気力を奮い起こして両腕も必死に動かした。だけどそれも虚しくほんの僅かで力尽き、ズルッと足を滑らせ、俯せたままズルズルと滑り台に股間を擦り付けながら滑り下りてしまった。だが奇遇にもそれが良い結果を招いた。話すのはちょっと恥ずかしいので、あまり大きな文字では書けないが、つまりニュートンの法則により、オイラの体重が大事な部分に乗っかかり、滑り下りる際に生じる摩擦との絶妙なバランスで、オイラの股間に微妙な刺激と心地よい快楽が生まれたからだ。
初めての感覚だった。俯せたまま滑り下りると、こんなにもチンコに気持ち良さが生まれるのかと、オイラは感動と気持ち良さのあまり、全身に衝撃的な電流が走った。同時にオイラは、チンコは尿を排泄するだけでなく、こういった使い方があるのか! と、一つ勉強になった。サルにシコシコ(マスターベーション)を覚えさせると、一生マスターベーション(オナニー)をし続けるとよく言うが、この時のオイラはまさにそうだった。教室に入らなければいけない事など、昨日食べた晩飯のおかずのようにものの見事に忘れ、気が付くと俯せに三回も滑り下りていた。周りを見渡すと、園児達はとっくに教室に入り、しつこく遊んでいるのはオイラ一人だけだった。
チンコ遊びもほどほどに、早く教室に戻らなければ先生に叱られると不安になり、慌てて建物の中に駆け込んだ。
建物の中に入ってみると、廊下にも階段にも人っ子一人居なかった。園児達はとっくに教室に入っていたのだ。聞こえてくるのは各教室から漏れる先生の声と、それに答える園児達の元気な声だけだった。ますますもって早く教室に戻らなければと思った。石造りの手すりを掴みもって階段を一段飛ばしに駆け上がった。ひんやりとした心地よい手触りが気持ち良かった。自然と手すりに目が行った。灯台下暗しである。目にした石造りの手すりは、存在感を露わに堂々たる傾斜角度を付け、「こっちの角度は美味しいぞぉ!」と言わんばかりにオイラの股間に訴え掛けてきた。よく見ると先程の滑り台と比べ、スッポリと股間に収まりそうな幅だった。手すりに跨る素晴らしく気持ち良さそうなイメージがオイラの頭に湧き起こってきた。
これがオイラの出した答えである。
答えが出た時にはすでに右足は手すりを跨ぎ、股間がジャストフィットするように、微妙にポジション調整を行い始めていた。
やはりぶら下がってみると、体に触れる面積が先程の滑り台よりも小さい分、体重がピンポイントに股間に乗っかかり、刺激も倍増する事を知った。それに滑り台とは違ってしがみ付いていられるので、その刺激も一瞬で終わらない事を知った。そんなすばらしい発見に胸躍らせ、股間で美味なる快楽を味わいながらも、やはり心のどこかでは、こんな事をいつまでもしていたらそのうち先生がやって来て、この見るからにチンチンを擦り付けているのがちょんバレな恥ずかしい格好を見られ、こっぴどく叱られてしまうのでは……。と焦る気持ちもあったが、
「あかァ~~ん。めっちゃッ気持ちええわぁ~」
でも止められなかった。
更に焦る気持ちも気持ち良さに拍車を掛けた。先生がいつ来るかもしれないというドキドキ感もまた、気持ち良さを更に倍増させた。この時、新たな性のメカニズムをオイラは理解した。それはもしこの場を人に見られたら? という『恥ずかしい』感情と、今にも誰かが来るのでは? という『ドキドキ感』は、『興奮』という名の性には必要不可欠な要素に変わり、また、やめられない止まらない『かっぱえびせん状態の性欲』とがタイミングよく重なり合うと、新感覚、『恥ずか気持ちええわぁ~』が生まれるという事を……。だからといってこの『恥ずか気持ちええわぁ~』という感覚は、度を越すと『変態』という、仙人ともいえる領域に達してしまう事など、この時の若すぎるオイラには理解出来るはずもなかった。
それから秒針が約三周回り始めた頃……。
「あかんっ……、ホンマええかげんにしとかんと、しまいに先生来てまうわっ!」
と、超人的な決断力でその場を離れようとしたが、偶然にも、だら~んと垂らしていた足を手すりから降りる際に、「よっこらしょ!」と持ち上げた時、『性器の大発見』をしてしまったのだ。
それは爪先に力を入れてピーンと足を伸ばした状態で、太股の内側から爪先に至るまで力を入れっぱなしにした方が、アソコにすんごい刺激が伝わりやすいというものだった。
その時の格好を解り易く説明すれば、それはウルトラマンが怪獣をやっつけ、「シュワッチ!」と両足をピーンと揃えて宇宙に飛び立って行くような格好である。
オイラはこのウルトラアソコに刺激が伝わる新必殺技、名付けて『ウルトラシュワッチ!』というフィニッシュ技で、更に内容の濃い性への扉を開いてしまったのだ。
このフィニッシュ技を使用した直後の事は詳しく話すつもりはない。この日を境に先生が、オイラに向ける眼が厳しくなったと言えば、それだけで何があったか解るだろ?
岸和田㊙物語シリーズとは別に、ローファンタジーの小説、
海賊姫ミーシア 『海賊に育てられたプリンセス』も同時連載しておりますので、よければ閲覧してくださいね! 作者 山本武より!
『海賊姫ミーシア』は、ジブリアニメの『紅の豚』に登場するどことなく憎めない空賊が、もしも赤ちゃんを育て、育てられた赤ちゃんが、ディズニーアニメに登場するヒロインのような女の子に成長して行けば、これまでにない新たなプリンセスストーリーが出来上がるのではと執筆しました。