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其の三 瀬尾祭りバカ始めました!

 春の日差しが徐々に温かさから暑さへと変わり出す頃、ある話が舞い込んで来た。その内容とはテレビに出ないかという話である。以前ブラジルで思い出した小学校時分の決意から、一度くらいはテレビに出てやろうと思っていたオレは、とあるテレビ関係の知り合いに声を掛けていた。そして話が来たのが、オーディションに受からないと出演は出来ないが、素人として、お笑い芸人の今田と東野の新企画番組に、数か月に渡り出演出来るというものだった。その番組名は『純情学園男組』という東野幸治が先生役で、今田耕司を含めた素人集団を生徒としたバラエティー番組である。


「瀬尾、お前も一緒にオーディションに行くぞ!」


 マウ二で瀬尾と二人で居るとき声を掛けた。


「えっ、俺も行くん?」

「せや、どっちかが受かればそれはそれで八幡町の宣伝になるやろ! ブラウン管を通して子供らに笑い与えたら、その子らが大きなった時、もしかしたら八幡町青年団に入るかも知れんしなぁ~。これも祭りの一環じゃ!」

「よっしゃ、そういう事なら俺も行くわ!」


 こうしてオレは瀬尾を引き連れオーディションに臨んだのである。後日報告があった結果は、オレは惜しくも審査に落ち、瀬尾は見事番組出演の切符を手にしたのである。


 数日が経った寄り合いの日、学達に瀬尾の事を教えてやると皆その話題で盛り上がり、瀬尾の出演祝いと称してそれぞれ実費でミッシェルなるキャバクラに足を運んだ。男共は皆女好きなのである。

 オレの親しい仲間内は上下関係なく年下に優しい者ばかりなので、後輩たちも先輩に懐いて同学年のように仲が良く、非常に良い雰囲気だったので、寄り合い以外でもよく遊んでいた。そんなある日の事、この日も学はじめとする後輩たち数名が、


「武くん、ミッシェルの姉妹店出来たらしいで!」


 とマウ二にオレ達を誘いに来たのである。オレ達とはタッケン、三浦、伊戸ちゃん、てっちゃん、柳井、藤田、瀬尾、他色々である。


「知ってるよぉ~、ミルフィーユやろ、もうオレら行ったよぉ~」

「えっ、武くんらもう行ったんけ?」

「当然やんけぇ~、お持ち帰りもしたぁ~ちゅうねん」

「えっ、マジで!」

「オレを誰やと思とんねぇ~ん。八幡町のアランドロンやぞぉ~! そやけど学~ぅ、今は国際社会の時代やぞ! いつまでも日本人が働くキャバクラで遊んでられるかぁ~い! 時代は常に先に行っとんねぇ~ん!」

「えっ、何よ? 国際社会って?」

「ロシア人の金髪の姉ちゃんが接客してくれるキャバクラやんけ!」

「えっ、そんなんあるんけ?」

「あるある!」

「マジっすか!」

「行くか!」

「行く行く、俺らも連れって!」

「ほな池内やブチらにも声かけたれや!」


 池内やブチとは、学たちより更に年下の青年団員である。ロシア人の店に行くと決まってからの学の行動は素早かった。即座に池内やブチに連絡を入れ、またそれに負けないくらい池内やブチ達がマウ二に集合するのも早かった。オレ達は数台の車に乗り込み、阪神港湾線岸和田北のインターに乗り、ロシア人の姉ちゃんがわんさか居る店に向かったのだが、


「えっ、武くん高速乗って行くん?」


 と学。


「せや、和歌山のぶらくり丁や」

「ひぇ~~~~っ! 和歌山っ!」

「そんなもん高速乗ったらすぐや! その店着いたらそれまでの距離が短感じるほどおもろいぞぉ~! 遊びに国境はないんじゃ~っ学!」

「御見それしました」


 こうして店に着くと、この店ではすでに常連になっていたオレは、早速店長に団体割引の交渉をし、綺麗な金髪美人の接客に加え、一時間一人頭二千円で飲み放題プラス歌い放題という、超格安の値段で後輩達と共にその店でウハウハしまくったのである。勿論一時間が過ぎようとする頃、店長の、


「山本さん。そろそろお時間なんですけど……」


 という言葉に、


「あぁ、延長でお願いしますぅ~」


 と即座に答えたのは言うまでもない。

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