数珠の素材集め9
二頭の鹿は角にある杖を手に取り何かを呟いた。
『危ないっス!』
「クマァ!」
クロちゃんが私を養蜂熊の背中に投げてくれたおかげで鹿の魔法を躱す事ができた。
『倒す必要はないっス。角を折ればいいっス。』
そうだね。でもどうやって折るの?
『物理的にっスね。アタシがオスの相手をするんで、熊と協力してメスの方をやるっス。熊、スキルを追加するっスけど、いいっスか?』
「クマァ!」
緊急時だからかクロちゃんの提案に養蜂熊は頷いた。
それで、何を追加するの?
『毒手に毒の種類の追加っス。具体的に言うと、この世界にある毒を自由に作り出せるっス。』
え・・・。思わず絶句してしまった。
「くまぁ!?」
養蜂熊が1番驚いていた。
『まぁ、二撃のスキルは普通の毒じゃないと即死の追加は入らないっスけどね。はい、終わったっスよ。ご主人、アオニヨシは離脱しようとすると優先して追ってくるっス。そんじゃ、アタシはオスの方に行くっスね。』
クロちゃんはオスの鹿に飛び蹴りをして、そのまま何処かへと消え去った。
それじゃあ、私が囮になるから鹿に攻撃お願いね。
「クマァ。」
背中から私を下ろすと鹿に向かっていった。
私が囮になるには鹿から逃げるのが、正解かな?
鹿に背を向けて走り始めたら私に魔法を放ってきた。
魔法が飛んでくるのを避けながら鹿と距離を取ろうとしたが、最初にクロちゃんが説明してくれた通り、物凄い速さで走って追ってくる。
「クマァーー!」
私を追いながら魔法を放っている鹿は後ろに回り込んでいた養蜂熊に殴り倒された。
養蜂熊の拳が触れると、鹿は動かなくなった。
「クマァァァ!」
養蜂熊は執拗に角を攻撃しているがなかなか折れない。
私も正直者にしか見えない武器を使って攻撃してみるとあっさり折れた。
そして、鹿は宝箱を残して消えた。
『ご主人、こっちは終わったっスよ。』
右手にオスの角を持ったクロちゃんが戻ってきた。
『ふう、キツかったっス。あれ?ご主人、はぐれアオニヨシのメスを倒したっスか!?』
え?倒したの?
『ドロップの宝箱があるから倒してるっスよ。(ヤベェ、ターゲットになってないとツノが折れないの伝えるの忘れてた。)』
クロちゃん、何か隠してない?
『そんな事ないっスよ。さ、ドロップ品の確認っス。』
宝箱を開けると召喚石が出てきた。
はぐれアオニヨシの召喚石
魔法が大好きな、はぐれアオニヨシのメスを召喚できる。
魔法に詳しくない者には従わない。
象が嫌い。
『さっきの狐の召喚石よりは大分マシっスけど、これも呪物に近いっスよ・・・。1つしか魔法を覚えてないご主人じゃ、召喚に応じてくれないっスね。象に相談した方がいいっス。』
そうだね。
『余計なお世話だと思うっスけど、今日はもう遅いからログアウトするっス。』
クロちゃんにそう言われて、時間を確認すると、日付が変わっていた。