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086 裸の付き合い。

僕は今、女性3人に下半身を見つめられている。

それもこれも、メイさんが僕のナニを小さめなどと言い出したのが原因だった。


改めて見られるとさすがに照れるんですが。

しかしここで下手に隠すと、何か負けのような気がする。


というかメイさん、この空気どうしてくれんの……。


そこで何かを察してくれたのか、リズさんが口を開いた。


「大きい時は割と立派だと思うが……」


それは大暴投だよ……。


おそらくリズさんは何かのフォローのつもりなのだろう。

……いや、ナニをフォローしたのか?


「ほぉ……」


あのねメイさん、顔が違いです……。


というかそちらも色々丸見えなわけだけど、なぜ気にしないの?

まぁ……平坦な体にはさすがに僕も反応しないけど。


だがリズさんとシルフィさんは別だ。

直視すれば下が反応してしまう。

そもそもちょっとは恥じらってほしいよ。


リズさんはまぁ…今更だし、メイさんは性格的なものとしてもだよ?


シルフィさんはなんで隠さないの?

リズさんより控え目な胸だけど、その女性らしい体つきは僕に効く。


しかもずっとこちらを凝視して瞬きすら……


「ひょっとして……」


まさかと思い、シルフィさんの顔の前で左右に手を振った。


「……気絶してる?」


………………


…………


……


「うーん……白い髪の生えた亀が……」


ベッドに寝かされたシルフィさんは何かにうなされているようだった。


「エル、シルフィにはちゃんと男だと言ったのか?」


リズさんにそう尋ねられ、僕は記憶を辿っていく。


……言ったような、言ってないような?

そもそも自己紹介でわざわざ性別を付け加えることなんて普通しないし……。

あまり関わらないような人相手だと、勘違いされても放置するけど。


「……聞かれなかったので」


一緒に旅するほど関わることになるとも思ってなかったもので……。


「そういやウチも最初は男や思わんかったな。おぼこい子には刺激強かったんちゃうか?」


他人事のように言ってるけど、視線を集めさせたのはメイさんだからね?

それに小さくないし! ……多分。



「……ぅん」


シルフィさんがゆっくりと目を覚ました。

そのまま体を起こしたかと思えば、寝起きのようにボーっと周囲を見渡している。


そして僕と視線が合ったところで一時停止した。


……また気絶してないよね?


そこへすかさず、リズさんが間に入る。


「シルフィ、言っていなかったかもしれないがな、エルは――――


「――そ、そうですよね! 任せてください。解呪なら得意です!」


リズさんを押しのけ、シルフィさんの手が僕の下半身へと伸びる。

――が、躓いてしまった、あろうことか僕のズボンを掴んだまま……。


再度晒される下半身。

解放され揺れる男の象徴。



僕が――――一体何をしたっていうんだ……。



これがラッキースケベにおける被害者の心境か……と、身をもって知ることになってしまった。


「いや、エルは元々男だ。解呪しようとしても無駄だぞ?」


「……え?」


リズさんの口から突き付けられた現実は、シルフィさんを再度夢の世界へと誘って行った……。





翌日の朝――――カーテンを開くと心地よい朝日が一日の始まりを告げる。


この街に目的の代物はなかった。

となれば、これ以上滞在する理由もない。


「とりあえずこの街にはもう滞在しなくていいですよね」


「邪神像の影響はないようだしな、早々に出発するとしよう」


「せやな、これならちょっと食材買い足す程度でええわ」


僕とリズさんとメイさんは、早速今日の予定を話し合っていた。

だがそれを眺めていたシルフィさんは、何やら納得がいってないようだ。


「ちょ、ちょっと待ってください。なぜ何事もなかったかのように……私は昨晩のことについて聞きたいことがあります」


はて、何か聞かれるようなことはあっただろうか。

僕が男だと言うことはもう説明不要だろうし……。


「エルさんが男だということはわかりました。さすがにあんな異物を見せられては疑いようがありません」


異物て……。


「ですが、それがわかっていて一緒にお風呂って……おかしいでしょう?」


ごもっともです、僕もそう思います。

浴槽が広かったから、軽い冗談のつもりで「みんなで入れそう」って言っただけなんだよね。


捲し立てるシルフィさんに対し、リズさんとメイさんは不思議そうな顔でそれに答えた。


「私はエルなら抵抗はないが?」


「旅いうたら裸の付き合いやろ?」


リズさんの言葉は素直に嬉しい。

メイさんのは僕もよくわかりません。


「ちょっと何を言っているのかわかりません……」


二人の返答に、シルフィさんは困惑した。


「……エルさんは? わかっていて流されるまま……?」


正直に言えば、答えはイエスだ。

それに断ったら一人だけ意識しているみたいで、それはそれで恥ずかしい気がして……。


しかしこれはどう言い訳したものか。


「……とある国の話なんですが。混浴という男女が一緒に入るお風呂があるんです。つまり……えっと、これはそういうことなんですよ」


自分で言っててもどういうことなのかよくわかんない。

そもそもこの世界に混浴ってあるのか?


「……たしかに、和国にそんな風習があるような話は聞いたことがあります」


この世界にも混浴はあったか……言ってみるもんだな。


「ですが、それとこれとは話が別です」


ですよね……。


その後、僕だけ正座させられ、ネチネチと情操教育染みた説教を受けるはめになる。

しかし所々照れるシルフィさんが微笑ましくて、思いのほか退屈はしなかった。





僕らの馬車は、ガーサの街から再び交易都市を目指して南下していった。


今回の予定にはないが、交易都市からさらに南へ行けば港町があるらしい。

となれば、そこに近い交易都市も魚料理の一つくらいは期待できるはずだ。


「しっかしほとんど行商を見かけへんな。この分やと交易都市も期待できんで」


……期待しないほうがいいかもしれない。


たしかにメイさんの言うように、行商人らしき人をあまり見かけない。

たまにそれらしき馬車を見かけたと思えば、大体は身軽そうな荷台がほとんど。

顔もなんだか疲れ切っていた気がするな……。




ガーサの街を出発して約1日半。

夕日が沈む中、僕らは無事交易都市カザールへと到着した。


予定では夜到着して一旦様子見の野営、日が昇ってから改めて都市内へ……という予定だった。

しかし交易が盛んな南部は街道が整っている上に、まるで魔物らしい魔物に出くわさなかったのだ。


何事もなさすぎて不気味……という印象は初めだけで、正直暇すぎて辛かったです。



そんなこんなで、せっかく早く到着したので野営せずに門を通ることになった。


ガーサの街には門番らしき姿が見えなかったので自由に出入りできたが、交易都市ともなればそうはいかない。

……と、先ほどまでは思っていた。


「門番はいるけど身分証明は必要ないみたいですね」


とくに門番に身分証の提示は必要ないようで、すんなりと門を通過していく。

冒険者カード等を提示するのは危険かと思い、経費ということで仮の通行証を発行するつもりだったのだが……。


しかしこれが軽率だったと、すぐに知ることになる。


それはなんとなく、ふと感じたことだった。

妙に門番がにやついている気がして、完全に都市内部へ入ったところで、ふと門のほうを振り返った。


「……通行料一人金貨10枚?」


それは内部へ入らなければ見えないように書かれていた。


「なんやアレ、ぼったくりとちゃうか?」


メイさんの言う通り、あきらかにおかしな金額だ。

僕らはともかく、普通の人はこれじゃ外に出られないよ。


「入るのは自由だが、出る時は……ということか。それで外側より内側の警備が厳重なのだな」


リズさんの言葉にしっくりとくるものがあった。

たしかに外側より内側を警戒している兵が多い。


そしてシルフィさんは、声にやや怒気を含んでいた。


「まるで詐欺ですね……街道を通る人が少ないのも納得です」


通る以前に出られないということか。

こんなことをしてよく暴動が起きないものだ。


通行料を好き勝手にできる人物なんて、都市のトップとか上層部なのは間違いない。

そこへさらに邪神像が関わってくるのなら……。


「……荒事は避けられそうにないなぁ」


とにかく、まずは情報収集から始めるため、僕らは交易都市の中心部を目指していった……。

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