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022 第2遺跡の謎。

「必要な物は大体揃ったし、第2遺跡に行ってみるか」


リズさんの言った第2遺跡は、比較的魔物は少ないが内部が行き止まりばかりで、探索が行き詰っているそうだ。


「行き止まりばかりって話ですけど。単純にそれ以上先がなくて、実は踏破済みでしたってことはないんでしょうかね?」


そもそも何をもって踏破済みになるのだろう。


「まだ遺跡の核が発見されてないからじゃないか?」


「遺跡の核……ってなんですか?」


「まぁ魔石みたいなものだな。これの影響で遺跡の魔物に亜種が発生すると聞く」


なるほど、つまり……


「まだ第2遺跡には、亜種が発生しているということですか」


「だろうな、まだ核がどこかにあるということだ」


でもいくら探索しても見つからないと……それならみんな第3遺跡に行くのも納得だ。




街を出て、南東の遺跡を目指す途中、三人組の男から声をかけられた。


「嬢ちゃんたち第2遺跡に行くんだろ? 俺たちは【三連地獄】全員Dランクだ」


なんてひどいパーティ名だ。

見た目もガラの悪いチンピラみたいだし、相手をしないほうがいいよね。


「そうなんですか、それでは失礼しますね」


スッと三人組の横を通っていく。

こういうのは関わっちゃダメなんだ。


「おい待て、この辺じゃ見ない顔だし、お前ら新人だろ? 俺らが手伝ってやってもいいんだぜ?」


探索が行き詰ってる遺跡で何を手伝うというのだろうか。


「へへっ、ついでに戦い方のレクチャーもしてやるよ。手取り足取りな……」


一人がリズさんの肩に手を伸ばそうとした瞬間――――


「あひっ……」


っという声とともに、男は膝から崩れ落ちた。


「おい、急にどうし――――」


そして残り二人もそれを追うようにして倒れた。


「ふん、軟弱者め」


……えっ? 今何かしたの?


「リズさん一体何したんですか……」


「なに、ちょっと軽く顎を撫でてやっただけだ。こんな風にな」


そういってリズさんは手刀で軽く払う動作を見せる。


恐ろしく速い手刀?

……僕だから見逃しちゃったよ。




「あんな人たちもいるんですね」


「ま、第2遺跡は人気もないようだからな。新人を標的にしやすいのだろう」


そんなことを話してる間に、石造りの古い人工物らしきものが見えてきた。


高さはないが面積は広く、倒壊してる部分も多いようだ。

至る所にツタが張り付き、やや煤けたようなところもある。

歴史を感じる……古い神殿跡のように思えた。


「雰囲気あるなぁ……」


遺跡内部が異空間に繋がっていることもある、という話を思い出す。

異空間がどんなところなのかは不明だが、すでに神秘的なものを感じる。


そして、入口らしきものが見つかった。

内部を覗いてみるが、天井が所々崩壊しているのもあって、中は思ったより明るかった。


「周辺に気配はないし、もっと奥へ行ってみよう」


リズさんはまるで臆することなく進んでいき、それに僕が続く……。


女の後ろに隠れて恥ずかしくないのかって?

殿を務めてるだけだし!




「全然魔物いないですね」


「あぁ、だが油断は禁物だぞ。死体すらないということは……」


より強い魔物の胃袋に収まったから……ってことかな?


誰かがマジックバッグに回収したのなら問題ないが、持ってる冒険者自体が稀である。


「地下だな……エル、ランタンを出してくれ」


進んだ先には下りの階段があり、そこから先は真っ暗だった。

ポーチからランタンを取り出して先を照らしてみる。


「けっこう遠くまで照らしてくれますね」


「高いだけのことはあったな」


魔石を使ったランタンは、通常の火を使ったものに比べるとかなり光量が強かった。


「けっこう降りますね……」


「あぁ、下に深いタイプの遺跡かもな」


降りすぎて足が痛くなり始めた頃、ようやく階段が終わり広い空間に出た。

いや、おそらく広い……とまでしかわからない空間だ。

先を照らしきれていない上に天井も見えない。


だが暗闇の先に、焚火と数人の人影が見える。

こちらから近づいていくと、一人が声をかけてきた。


「今日はハズレだぞ、俺たちも先を越されちまった」


焚火を囲んだ男二人と女二人、おそらく冒険者なのだろう。


「先を越された……?」


「あぁ、俺らより先に来てたパーティが亜種を一匹狩っていったきり、こうやって待っては見たものの成果はなしだ」


亜種がいたのか……。


「俺らはもう引き返すけど、良かったら火、使うか?」


見たところ、焚火はもうしばらくはもちそうだった。

リズさんのほうを確認すると、まだ帰る気はなさそうだ。


「いいんですか?」


「あぁ、そもそも俺らが用意した火じゃないし。亜種を狩った奴らのだ、気にすんな」


「じゃあお言葉に甘えて……」


そして帰っていく4人組。

でもこの分じゃ、僕らも無駄足になりそうだ。


「あ、そうそう、余計なお世話かもしれないが、ここに降りてくる階段は君たちが降りてきたとこだけじゃない、ってことは頭に入れておいてくれ」


4人組のリーダーらしき男は、振り返りざまにそう忠告を残し、引き返していった。


良い人そうだったな……道中の3人組は一体なんだったんだ。



「僕たちが降りてきた階段以外も警戒しろってことでしょうけど、こう暗いとなぁ……」


「あぁ、天井もよく見えないとなると高さもかなりのものだな」


「けっこうな下り階段でしたからねぇ……」


無駄にただただ広い部屋、一体何のために作られたのやら。


「いっそのこと、天井に穴でも開けたら明るくなっていいと思わないか?」


「そんなことしたら下手すると生き埋めになりますよ……」


ただでさえ古くて、あちこち崩壊してる部分もあるのに……。

いや、リズさんはそれでも平気かもしれないけど。


(…………でもこの部屋は割と無事なような……)


これだけ古い遺跡の地下に、照らしきれないほどの広い空間があれば、多少なり崩れてる部分があってもおかしくないのに……。

かといって壁の材質が違うというわけでもない。


「……ちょっと上の方を見てきますね」


「上……? なるほど、キミならでは観点だな」


ランタン片手に飛行魔法で天井を目指し飛翔する。


徐々に天井がハッキリと見えてくるが、やはりかなりの高さがある。

遺跡の全体像で考えれば、1階部分のすぐ下にポッカリ開いた広い空間があるわけだ。

それならどこかしら多少崩壊しててもおかしくはない気がするけど……。


(階段降りる前はけっこうボロボロだったのに……ちょっと不自然だよね)


丈夫に作ってあると言われてしまえばそれまでだ。

だが他に気になる点もないので、天井をランタンで照らしながら不自然な箇所がないか調べていく。


(とはいっても、見た目でおかしなところはとくにないかな……そんなのあったら、とっくに誰かが何か見つけてるだろうし)


何かしらカラクリでもないものかと思ったが、見た限りではそんなところはどこにも――


(この辺りだけちょっと暖かい……?)


ほんのりだが、暖かい感じがする場所があった。


(ここの真上が丁度日当たり良かったりするのかな)


そう思い、そっと天井に触れようとしたが、――――その手は天井をすり抜け空を切った。




「た、大変です姉御!」


「姉御? 私の事か? 普通に呼べ」


急いでリズさんに報告しようと思ったらつい動転してしまった。


「す、すいません……」


「それより何か見つけたのか?」


「えっと……」


どう説明したものだろうか。

実際に体験してもらったほうが早い気がしてきた。

一人抱えて飛ぶくらいなら多分可能だ。


「実際に来てもらったほうが早いと思うので……僕に乗ってください」


背中を向け、おぶる姿勢をとる。


「……それはいいが、重いかもしれんぞ?」


リズさんが背中に乗り、首に手を回す。

すると柔らかい感触が……するわけもなく、鎧の硬い感触がした。


さらに鎧の重みも合わさって……正直しんどかった。


「じゃ、じゃあ飛びますよ」


フラフラと不安定なまま飛翔していく。

完全に重量オーバーだ。


「……大丈夫か?」


「だ、大丈夫っす。男の子ですから」


そしてリズさんをおぶったまま、すり抜ける天井部分に辿り着いた。


「見せたかったのはこれか? とくにおかしな所はないようだが……」


「ここ、手で触れてみてください」


不思議そうな顔でリズさんが手を伸ばす。

だがやはり、その手はすり抜けて空を切った。

リズさんはまじまじと自分の手を見つめる。


「これは驚いた……ここだけなのか?」


「みたいですね、上の階に繋がってるのか、あるいは……」


「……異空間か」


こんなバカみたいに広くて真っ暗な天井なんて、せいぜい強い灯りによる目視での確認しか今までされてこなかったのだろう。

触れてみなければわからない……大発見かもしれない。


「入ってみます……?」


もしこの先が異空間であったなら、きっと危険はつきものだ。

でも……


「愚問だな、私は今ワクワクしているぞ」


恐怖心がないわけじゃない。

でも僕もワクワクを止められないんだ。


「じゃあ、行きます!」


僕たちは、ゆっくりと天井へと飲み込まれていった……。

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