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014 新たな街へ。

「こんなにもらっていいんですか?」


オークの買取価格、金貨4枚と銀貨8枚が並べられている。


「言ったろ? この辺じゃ珍しいって。他所じゃもうちょっと安くなるかもしれんがな。ちゃんと解体費用も差し引いてる、適正価格だよ」


「こんな金額になるなんて、採れる素材が多いんですか?」


「まぁな、それに食える部位が多い」


あっ、食うんだ……まぁ二足歩行ってことを除けば、豚っぽいもんね。


「だいぶ懐が温かくなったな、久々に贅沢して湯屋に行くのもアリだな」


湯屋……?

リズさん、いま湯屋って言いました?


「お風呂が……お風呂があるんですか?」


「知らなかったのか? 陽だまり亭とは反対方向だし、ちょっと高いが疲れが取れるぞ」


「是非行きましょう!」


………………


…………


……


「さぁ、ここがそうだ」


湯屋は、入口が二つある大き目の建物だった。


「男女で入口が分かれてるんですね、じゃあ僕はこっちで」


「何をしている、そっちは男湯だぞ」


「だから男だって言ったじゃないですか」


「……あれは冗談ではなかったのか」


昨晩、宿の女将とリズさんには男だと言ったのだが、信じてもらえてなかったようだ。

やれやれと思いながら男湯側の入口に入る。


「おわっ! お客さん、女湯の受付はこっちじゃないよ」


中に入ると驚かれた……。





「良い湯だったなぁ」


中は銭湯といっていい作りで、時間的にもうちょっとしたら人が増え始めるそうだが、この時間は貸し切り状態だった。

でもお風呂入るだけで青銅貨3枚。

これは安めの宿と同じ金額なので、やはり贅沢なのだそうだ。


「すまん待たせたな」


「いえ、僕もさっき出たばかりですし」


外で合流し宿に向かう。

今日の夕飯はなんだろうね。





「幸せそうなとこ悪いが、ちょっと相談があるんだ」


食事中にリズさんから相談を持ち掛けられた。


「もっと大きな街に行ってみないか?」


「大きな街……ですか、この街でも十分大きい気はしますけど」


辺境の村と師匠の家しか知らない僕にとっては、十分都会だね。


「ハハッ、何を言っている。この街は小さいほうだろう」


いやいやそんなばかな。


「これを見てくれ」


リズさんがテーブルに地図を広げる。


「世界地図……にしては小さいですね」


「これはエルラド公国の地図だ。そして私たちが今いるミストの街がここだ」


リズさんが地図の下のほうを指差した。


「ふーん、けっこう南のほうなんですね……エルラド公国?」


おかしい……僕がいた孤児院と師匠の家が、オルフェン王国の辺境だったはず。

変なとこに飛ばされたと思ってはいたけど、国すら違うじゃないか師匠ぉ……。


「どうかしたのか?」


「いえ……続けてください」


「……? ならいいが。この街から北に行くと、ダイカサという街がある。冒険者が移動の際、立ち寄る者が多いので非常に屋台が多いことで有名だ」


「ほう、屋台ですか……」


「あぁ、私も聞いたことがあるだけで行ったことはないがな」


そういえば、リズさんはどこから来て、なぜ冒険者になったんだろう。

Cランク冒険者が討伐するオークをワンパンなんだし、絶対新人冒険者の強さじゃないよね。


冒険者になる前か……僕も別に秘密するほどのことじゃないし、お互いのことをいつか話せたらいいな。


「でだ、目的地はさらに北の中央都市エルヴィン。ここなら大抵の物は揃うし、未踏破の遺跡なんかもある」


「遺跡……ですか?」


「あぁ、私もそれほどくわしいわけではないが、中は異空間に繋がっていたり、不思議な魔道具が見つかったりと謎が多いようだな」


「なるほど、不思議な魔道具で一攫千金を夢見る人とか多そうですね」


「そういうことだ」


遺跡か……魔物も出るのかな?

冒険者ギルドの依頼に、遺跡関連があったりとかもするのかな?


リズさんもくわしいわけじゃないみたいだし、一度行ってみるのもいいかもしれない。


「行くとしたら馬車での移動とかですかね?」


「基本は徒歩になるが……ダイカサまでの護衛依頼でもあればちょうどいいんだがな」


「Eランクに護衛依頼なんてありますかね?」


「明日探してみよう」


……あれ? お試しパーティだったはずだよね?

もうずっとパーティ組むかのような話の流れだ……。

いまさらそんなこと話題に出すのは、空気読めないみたいでちょっとアレだけど。

正式に組むならこういうのはキッチリしておかないと。


「じゃあお試しじゃなくて、正式にローズクォーツ結成ということでよろしくお願いします」


「ん? お試し……? あっ、あぁ! こちらこそよろしく頼む」


……忘れてたな?



◇   ◇   ◇   ◇



「あんたら今日この街を出るんだろ。ほれ、持って行きな」


翌朝、宿に鍵を返すと、女将さんが包みを渡してくれた。

ホカホカで美味そうな匂いがする。


「ありがとうございます」


「すまない、恩に着る」


二人で宿を後にする。

さよならは言わないよ、絶対またご飯食べに来るから!


「さて、私はギルドで護衛依頼がないか見てくる。エルは旅に必要な物を揃えておいてくれ」


「必要なものですか。水とか食料とか?」


「そうだな、あと火を起こす道具もほしいところだ。私のお金も半分預けておく」


「じゃあ準備が終わったら街の中央で落合いましょう」


リズさんと別れ、まずはパンを買いにいく。

通常は日持ちする黒パンとかだろうが、僕にはマジックポーチがあるからね。

ここはできるだけ良いパンを。


あとは燻製肉と……チーズも買っちゃっていいかな。

それと水も大量に、水袋も買っておこう。

ちょっと欲張って塩と胡椒も少々……高ッ! ホント少しだけにしておこう……


火を起こす道具は道具屋かな。

テントと雨避け用の外套と……風避け用もあれば寝る時にも使えるかな。



合計で金貨2枚を少々オーバー……使いすぎてないよね?




リズさんと合流するため街の中央へ行くと、馬車が止まっていた。

そしてリズさんは馬車の荷台に積み荷を運んでいた。


「おぉエル、喜べ、格安だが護衛依頼があったぞ」


「あなたがエルさんですねぇ、私は行商人のチロルと言いますぅ」


行商人? こんな……僕と大して歳も変わら無さそうな女の子が?


ミドルボブの女の子と握手を交わす。

これといって苦労が感じ取れる手でもなかった。


「いやぁ、あの金額じゃ誰も受けてくれないと思ったんですけどぉ。受けてもらった上に荷造りまで手伝ってもらっちゃってぇ、助かりますぅ」


「あの、金額っていくらだったんです?」


「ダイカサ経由の目的地エルヴィンまでで金貨1枚だ」


わぉ、大赤字だよ。


「ホントならぁ、最低でもDランク冒険者が良かったんですけどぉ、この金額じゃ無理みたいですねぇ」


なんか話し方がおっとりしてるな。


「でもぉ、この荷物を軽々持てる方ならぁ、Eランクでも大歓迎ですぅ」


「これそんな重いんですか?」


荷台の木箱を試しに持ち上げて――……ビクともしなかった。


(えっ? 荷台の底抜けないよね?)





「じゃあ出発しましょうかぁ、荷台の後ろ部分にならぁ、座っててもらっていいですよぉ。格安ですからねぇ」


馬車が動き出す。

あぁ……ついにこの街を出るんだ。


「ダイカサまでは3日ほどかかる。そこでチロル殿が2日ほど商いをする予定で、そしてエルヴィンまでまた3日ということだ」


「けっこうな長旅ですね」


一先ずダイカサまでの3日はこの馬車に揺られることになるのか……耐えられるだろうか……。

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