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132/222

132 合流したアンジェリカ。

大きな爆発音と共に、帝都外壁の門は崩壊していった。


「よし、帝国兵は極力無視して皇城を目指せ! 数は圧倒的に向こうが上だ、一々相手をするなよ!」


アンジェリカの指示を受け、公国兵は帝都内へと突撃を開始する。


だが街へと足を踏み入れたところで、ピタリとその足が止まった。

それは自ら先陣を切るアンジェリカも同様だった。


「……ちょっと思ってたのと違うわね」


混乱した民衆を掻き分けて進軍するぐらいは覚悟していたのだが、予想とは違っていた。

街は静まり返っていて、どうぞ通ってくださいと言わんばかりに道が空いている。


(でも人がいないわけではないようね)


周囲の建物を一瞥すると、人の視線を感じる。

皆自宅に立て籠っているのだろう。


(かといって出迎えの兵は無し……か)


つまり原因は私たちではないらしい。

そうなると考えられるのは……。


「派手に暴れたのかしら」


先に侵入していたエルリットたちが原因……と考えるべきだろう。

それでいてこの静けさは、すでに戦いが終わっている可能性を示唆している。


ならばさっさと皇帝を押さえてしまおう。

そう思い再び皇城を目指すアンジェリカだったが、兵からの報告で度々足を止めることなる。



「アンジェリカ様! 帝国兵が――――」


大量に倒れていた。


これは間違いなくお姉さまの仕業だろう。

と思ったのだが、無事だった者の話では違うようだった。


「大剣を持った大男が暴れて……」


誰それ知らない。

この場にはいない敵か味方かもわからない登場人物がいるようだ。


「ま、でもそれはそれ、これはこれだから」


とりあえず帝国兵はもれなく捕縛、動ける者は縛っておこう。



「アンジェリカ様! 大きな穴が――――」


帝都の地形が変わっていた。


ここまで来ると皇城までそれほど距離はないのだが、街中に大きなクレーターがある。

さらに兵の報告では、近くの空き家と思われる建物内に縛られた女性がいたようだ。


「……情報過多でしょ」


せっかく縛られてるのだからそのままにしておいた。



「アンジェリカ様! 皇城が――――」


なんか穴がいっぱいあった。


こちらが突入する前に蜂の巣にされたらしい。

廃墟一歩手前の城に突撃というのも拍子抜けだ。


しかしそれでも兵を進めるアンジェリカは、城内で信じられない光景を見た。



「……これはどういうことか、説明してもらわないとね」


そこには城内の一室で、ノンビリ昼寝していたエルリットたちの姿があった。



◇   ◇   ◇   ◇



リズ、シルフィ、アゲハさんの3人と合流した僕は、背負われたリズの姿に驚愕した。

一番心配のいらない存在だったはずなのに……。


「良かった、気を失っているだけなんですね」


とくに外傷もなく、静かな寝息を立てていて安心した。

しかしそんな僕の反応に、シルフィはキョトンとした顔だった。


「てっきりわかっててあの雷を放ったものだと……」


どうやら僕が何かしたらしい。

シルフィは少し呆れた顔で、ここまでの経緯を話していった……。




「……なるほど、イメチェンしたリズに襲われたところを、黒い雷が……黒い雷が?」


ついシルフィに聞き返してしまった。


「え、えぇ、黒かったですね。エルさんの神力と同じ気配がしましたけど……ところでイメチェンって?」


そして聞き返されてしまった。


「それは……気にしなくていいです」


今はもっと気になる所がいっぱいある。


(聞き間違いじゃなかったんだな……)


自分では何も見えてなかったけど、あの時放った雷はホントに黒かったらしい。

しかも魔神に似た魔力反応に向けても雷を落としたけど、それがリズだったようだ。


(なんてこった、味方に放ってしまうとは……)


まぁ……結果リズは元の姿に戻って、シルフィとアゲハさんも助かったようだけど。


「それにしても、リズが魔神化とは……」


この際僕の黒い雷はどうでもいい。

その後使った時は白かったし、些細な事だよ……多分。


問題はリズのほうだ。

聞いたところ、魔神化したアンジェリカさんと特徴が一致している部分が多い。

さらにその速さはアゲハさんを簡単に捉え、シルフィ渾身の一撃を片手で受け止めたとか……。


「ま、まぁでも、もう正気に戻ってるんですよね……?」


とシルフィに尋ねるが、奇妙な沈黙の後、視線を逸らされてしまった。

仕方なくもう一人の当事者、アゲハさんへ視線を移すが……


「……いざとなったら、3人で止めましょう」


目の前に不発弾を持ってこられた気分になった。



◇   ◇   ◇   ◇



「――という感じで、色々大変だったんです」


僕は突如現れたアンジェリカさんに、ここまでの報告をしていた。


「ふーん……で、そこからどうしたら昼寝に繋がるわけ?」


アンジェリカさんはちょっと呆れ顔だった。


「ここにいれば確実にアンジェリカさんと合流できると思ったんですよ。でもどっと疲れが出てしまって、気づいたらウトウトと……」


うん、これは呆れられてもしょうがないな、正座しよう。


「それに城の警備全然いなくて静かだし、ソファふかふかだし……」


おかしい、態度を改めても呆れ顔のままだ。

ここは代打でシルフィにお願いしよう。


「申し訳ありません……気が緩んでたみたいで」


一緒にウトウトしてしまったシルフィも、シュンと落ち込んだ様子だった。


「はぁ……まぁいいわ。あなたたちの話通りなら、後はお飾りの皇帝を押さえれば終わりなわけだし」


それに……と言って、アンジェリカはリズに視線を移す。


「事と次第によっては、こちらのほうが国を揺るがす事態だわ」


その表情は先ほどまでの呆れ顔と違い、真剣そのものだった。

リズが目を覚ました時、もしいつもの彼女じゃなかったら……そう考えると当然ではある。


「たしかに……戦いはまだ終わっていないのかも――――


「寝てた人が言うセリフじゃないわね」


間髪入れずにアンジェリカさんに突っ込まれた。

その後少し考える素振りを見せると、一旦部屋を出て伝令役と思われる兵に指示を出し始める。


「第一から第三小隊は分隊を編成して城内を捜索、皇帝を見つけ次第拘束。第四から第六小隊は城周囲の警戒、状況によっては――――」


てきぱきと指示を出す姿に感心していたが、そこで僕はふと思いついた。


「あの、できればお願いしたいことがあるんですけど……」


「なに? 余分な戦力なんてないわよ」


アンジェリカさんにはあまり良い顔はされなかったが、僕は適当な紙切れを取り出して簡易的な地図を書いて見せた。


「この建物の地下に子供たちが軟禁されてますので、保護をお願いします」


あの人数を保護するにはどうしても人手が必要になるので、元々アンジェリカさんに相談するつもりではあった。

今ならタイミング的にも丁度良いだろう。


「……一個小隊向かわせるわ」


そう言って、アンジェリカさんはメモ紙をサッと奪う。


良かった、これでホントにやることは全部やった。

後はリズが目を覚ませば……


「ん……」


丁度視線を向けたところで、リズの瞼がゆっくりと開いた。

そしてむくりと起き上がったところで、室内に緊張が走る。


さて……正気に戻ってるかどうかなんて、どうやって確認したものか。


ボーッとした寝起き顔でリズがこちらを見る中、皆の視線も僕に集まっていた。

どうやら考えてることは同じのようだ。


「お、おはようございます」


何も思いつかなくて普通に挨拶してしまった……。


「あぁ、おはよう」


リズからはいつも通りな返事が返ってくる。

これはこれで確認できたのではなかろうか。


それを見て、シルフィは恐る恐るリズに話しかけた。


「リズさん、ここまでのこと覚えてますか?」


「いや、わからん。そもそもここはどこだ?」


その反応に、皆ホッと安堵する。

しかしその後の言葉の意味がよくわからず、皆呆然となった。


「シルフィと戦ってた辺りまでは覚えてるんだが……」

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