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クラン

「では、ティファが戻ってくるまでの間に少し待ちましょう。少々リュート様に確認したいことがありますし……今椅子を用意するので………どうぞお座りください」

「早っ!」

「ははは、この程度で驚いていては身が持たないぞ……。しかし、クラウンリーダー、何をリュートに確認しようと言うんだ?」


リゼの姿が掻き消えたと思ったら、数秒後には椅子を持った状態で玄関に現れ、龍斗が驚愕の声を上げる。龍斗の反応にジェニファーは乾いた笑みを浮かべる。その姿からは僅かに疲労が見えた。


「……リュート様のこれからについてです。あなたから大体のことは聞きましたが、本人に確認を取るべきこともあります」

「分かった。私はこの場にいても構わないな?」

「ええ、構いません」


玄関の壁に背中を預けて立つジェニファーを一瞥するとリゼは頷いてから龍斗の方に向き直る。


「では、リュート様、最初の質問ですが、ティファとの契約の内容は盟約で間違いありませんね」

「はい、そうです」

「ふむ……」


そう龍斗が答えると、リゼは顎に手を当て考え込む。そんな行動をとられると龍斗としては何かまずいことを言ったのか、と不安になってくる。何せ、この異世界での生活が懸かっているのだ。もし、ここを追い出された場合、このモンスターを殺すことを仕事にしている人が大量にいる街で頼るものなく生きていかなければならない。考えるだけでもゾッとする。そんな龍斗を見かねてジェニファーが助け舟を出す。


「……考え事をしているのは分かるが、そう黙っていると、リュートが不安になるぞ。……それとも何か拙かったか?」

「……これは申し訳ありませんでした。どちらかと言えばこちらにとって都合のいいことでしたので、ご安心下さい」

「そ、そうですか」


ほっと胸を撫で下ろす。取り敢えずは人の気配に怯えながら隠れて生きるということにはならなそうだった。


「この様子なら質問はあと一つだけで済みそうですね」

「あと一つですか?」

「はい、これは質問というよりは提案なのですが……我がクランに入りませんか?」

「は「お待ちください」」


龍斗勧誘への回答を他でもない勧誘したリゼが遮る。遮られた龍斗の顔が曇るが、リゼは冷静に次の言葉を紡ぐ。


「……まず、リュート様はクラン、そして冒険者とこの都市についてどれ程ご存じですか?」

「……冒険者は僕が出てきたダンジョンを冒険して、モンスターから手に入れた魔石やドロップアイテムを売って生活している人たちで、クランは冒険者が何処かに必ず所属してる組織です。この都市についてはダンジョンが中心にあって冒険者が多い都市としか知りません」

「一般人ならその程度で構いませんが、冒険者となるなら話は別です」

「えっ、僕はモンスターなのに冒険者になれるんですか?てっきりテイムされたモンスターとして仲間になると思ってたんですけど……」

「普通なら無理ですが、リュート様は知性があり、言葉による意思疎通も可能です。ですから問題ありません。多少は世間が煩いかもしれませんが、前例がないわけではないので直ぐに静かになります」

「な、なるほど」


スラスラとリゼの口から出てくる言葉に龍斗は曖昧に頷いて誤魔化す。異世界でリザードマンに転生したという摩訶不思議な事態で表面上はそんなことなくても、混乱しているのだ。そこに前例がどうのと言われても龍斗には正直分からなかった。ただ、龍斗がクランに入っても大丈夫なことだけは分かった。


「冒険者についてはこちらから補足説明することは特にはないです。ですが、クランとこの都市についてはあります。では、クランから説明しましょう。クランとは、迷宮を攻略するために神々が組織するものです。そのため、各クランの名前にはそのクランを立ち上げた神の名前が使われます。何故、神々が自分で攻略せずに人に攻略させているのかは不明です」

「……か、神って?」

「私たち人では測り知れない力を持った超常的な存在だとお思い下さい」


龍斗は、本当にそんな存在がいるのか、という意味で聞いたのだが、リゼはそれを神とは何か、という意味捉えたらしく、神について説明する。つまりはこの世界では神が存在してしかも直接干渉してきているのは普通のことなのだろう。そのことは龍斗がこの世界に来て一番のカルチャーショックと言えるだろう。


「次にこの街についてお話しますが、他に気になることはありませんか?」

「いえ、特にないです」

「では次はこの都市についてです。この都市は冒険者のダンジョン攻略の拠点としての役割とあと一つ役割があります。それはダンジョンに何らかの異常、例を挙げるとすれば大氾濫(スタンピード)が起きた時、モンスターを外壁の中で食い止める役割です」

「なっ……!」

「おおよそリュート様のお考えになっていることは分かりますが、それはこの都市住む誰もが知っていることです。その危険を承知した上でここに住んでいるんですから自己責任です。それに、いざという時は我々冒険者が一般人が逃げるまでの時間を稼ぎます。さて、ここまでで、補足説明は終わりです。それでもなお、我がクランに入ろうと思いますか?入らなくてもリュート様には恩がありますし、外壁の外まで送ります。リュート様の実力なら、十分に生きていけますから」

「……リゼさん、僕をあなたのクランに入れてください」

「はい、ようこそ我がクランへ私は貴方を歓迎しましょう」


龍斗がリゼの目を真っ直ぐ見て答えると、彼女は無表情のままで、しかし何処か嬉しそうに龍斗に手を差し伸べた。


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