転生してリザードマン!?
……暗い、ここはどこなんだろう?確か、泥棒をお爺ちゃんが撃退した後急に眠くなって……僕は死んじゃったのかな?だとしたら、ここは死後の世界かな?いや、夢の中って可能性もあるか。
疑問ばかりが浮かんで一向に答えが出ない。何かヒントになりそうなものを捜そうにも、ただただ暗い闇の中を漂うしか出来ないので、分かることはここに自分がいるというだけだ。
こんな場所にいるのに全く恐怖を感じない。それどころか、心地よくて寝てしまいそうだ。
どれほどの時間をここで過ごしたのだろうか。数十年こうしているような気がするし、たった数分のようにも感じる。始めのうちははっきりしていた意識も不明瞭になり、どこか夢心地で自分が寝ているのか起きているのかさえ分からなくなってきた。
(…………うっ、何だ?)
突然、闇の中に亀裂が入り、そこから光が漏れ出てきた。久しぶりに光を見て眩しく感じたけど、手や腕の感覚がなく目を閉じることも、目を塞ぐことも出来なかった。
(……光、ていうことはあの先に出口が…!)
早くあそこに行かないと、いつまでもあるとは限らないし。今までは一面暗闇だったから気づかなかったけど、前に進もうと思えば進めるみたいだ。
(……あと、もう少し!)
亀裂が近くなって光で前が見えづらいけど、目の前にあるのは分かる。僕は全力で亀裂に飛び込んだ。
「……うわぁっ!」
い、痛い…。勢い余って飛び出しちゃった。それに目がチカチカして何も見えない。だけど、あの闇の中とは違ってしっかり手足の感覚もある。地面にうつ伏せになってるみたいだけど、なんだかゴツゴツとした感触がする。土の上じゃなくて石とか岩の上っぽい。
「まだ目が見えない……。それにしても結構痛かったな。…………あれ?僕の頭がツルツルしてる?」
ぶつけた場所を撫でたらなんかツルツルしてる!?ど、どうして!?い、いやいや、そんなわけないか……。念のためもう一度。
「………………やっぱり、ツルツルしてるっ!?」
僕はどうしちゃったんだろう……。あっ、目が見えるようになってきた。
「……洞窟?いや、それよりも僕の姿を確認しないと」
まず僕の目に映ったのはゴツゴツとした岩肌だった。周囲を見回すと、ここが妙に明るい洞窟の通路だということが分かる。光源がどこにも見当たらないのに明るい洞窟を観察していたら、視界の隅に水が溜まっている場所を見つけた。自分がどんな姿をしてるか気になってたので丁度良いね。近づいて水面を覗き込んでみた
「……黒い蜥蜴…………?」
その水面に映っていたのは紛うことなき蜥蜴の頭だった……。…………えっ、何で!??何がどうなれば僕の頭が蜥蜴になるの!?
……はっ!お、落ち着け、僕。お爺ちゃんも武人たるものいつ、いかなる時も冷静であれって言ってた。
すぅ、はぁ~。よし、落ち着いた。まずは水面に映ってるのが本当に僕なのか確かめないと。取り敢えず、右手上げて……水面に映ってる蜥蜴頭の隣に黒い鱗に覆われた手が……。
「……………」
手を見て閉じたり開いたりしてみる。うん、間違いなく僕の手だね。ひょっとしなくても、これって最近話題の異世界転生ってやつかな?寝ている間の暇つぶし用にお父さんが買ってきてくれたライトノベルの知識によると今の僕は……リザードマンだね。
ゴブリンよりも強いけど、オークと同じくらいかそれ以下、縦しんばオークより強くてもオーガより圧倒的に弱い微妙な強さのモンスターだったよね。……まあ、健康体みたいだし良しとしよう。
「これが夢だったらよかったんだけど……さっき痛かったしなぁ。……さて、ここにいても仕方ないしどっちに行こうかな」
夢だったとしたらそのうち覚めると思う。よし、自分の現状は分かったし、ここから出よう。……どっちが出口かわからないけど。
◇
…………絶賛、迷子中です。
ずっと変わらない景色の中を歩いてたら、僕が生まれた?場所への戻り方すら分からなくなりました。でも、分かったこともある。それは他のモンスターに出会っても攻撃されないということだ。僕もモンスターだから当たり前なのかもしれないけど。
あと、ここがただの洞窟ではなくてダンジョンみたいな場所らしいということだ。
何で分かったのかというと、冒険者っぽい格好してる人を見つけたからと、壁から灰色の狼の姿をしたモンスターが出てくるのを見たからだ。ちなみに僕とは違ってしっかり着地してたよ。…………僕はほら、光のせいで何も見えなかったから仕方ないよね。
「……本当にここどこなんだろう。お腹空いてきたし、いざとなったら偶に生えてる茸を食べなきゃいけないのかな」
偶に通路の隅に生えている茸は青白く光っていて、お世辞にも身体に良さそうなんて言えない外見をしていて、できれば食べたくない。そのためにも早く出口を見つけなきゃ。
「◆○△◎□▼▽◆っ!」
「◎▲◆□※□★▽◎△●○■▽▲▲ッ!」
「……人の声?それも切羽詰まっているようなっ!助けなきゃ!」
異世界の言語だからか、何を言っているかは分からないけど、人の声のする方へ走る。声の感じからしてかなり危ない状況なのかもしれない。それに今まではこんな姿だから避けてきたけど、助ければ外に連れて行ってくれるかもしれない。
「……すごい、全然疲れない!」
十字路を右に曲がる。結構な速さで走っている自覚はあるけど、少し息が切れるだけで疲れなんて初めての経験だ。
目的地が見えてきた通路の先に小部屋になってる場所が見えてくる。
「△▼※◆▲○★■□◎!」
「■★□※○▼△▲▼▽!」
「シャアアアァァァァァァッ!」
小部屋に飛び込むとそこには二人の少女を囲む槍を持った三匹の蜥蜴を人型にしたようなモンスター、リザードマンがいた。
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