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Beautiful Water Moon  作者: 悠鬼由宇
3/8

水月

月曜日。

学校が本格的に始動する。下級生達は文化祭の準備に邁進する時期だ。俺たち三年生は受験の準備に更に追い込まれる『地獄』の日々の始まりだ。

土曜日に行った鎌倉のまとめを昨日やり、今日そのレポートの提出である。あの日星野美月を家に送り、帰宅して夕飯を啜りー

「あら食べてこなかったの? 何も無いわよ。なのに何でこんなに遅かったの? みづきちゃんと楽しかったあ? ちょ、ちゃんと話しなさいよっ」

と根掘り葉掘りモードの母親を無視して保管されているカップ麺を啜り、シャワーを浴びてベッドに転がり込み…

全く寝れなかった。体は疲れていたのだが、瞼を閉じると星野美月との一挙手一投足がリアルに思い出され、結局カーテン越しの窓が明るくなるまで寝に入れなかった。

その後夕方に飛び起きて慌ててレポートを書き始める。ふとスマホを見ると。星野美月からラインが来ていた…


『昨日は楽しかったね。レポート終わった?』

仏像のスタンプが微笑ましい。

『今起きたとこ。これから頑張りますーー』

スマホを机に置き、ノーパソを開く。そして昨日星野美月と堪能した、初江王坐像について書き始めると、ライン着信音がした。それから俺と彼女は夕食時間を挟み実に二時までトークを続けてしまった。

勿論、レポートの内容についてが主なので、俺も彼女もレポートはそれぞれ完成していたのだが、途中からは色恋沙汰のトークに嵌り、ベッドに入ってもその余韻で一睡も出来ずに朝を迎えてしまった……


教室は新学期の授業開始のどんよりとした空気が重い。それぞれがこれまでの人生で最悪の夏休みを過ごしてきたからなのか。またはヒタヒタと近づく受験への忌避の念の表れなのかもしれない。

どちらにせよ、地獄の夏休みが終わり、我々は更にその深淵に入り込む。高三の二学期の始まりだ。

それでも教室に入り席に近づくといつもの仲間が笑顔で近寄ってくる。地獄も仲間と共になら……

「レポート終わったケイ?」

「朝まで完徹でー タクは?」

「テキトーにコピペったわー。旬は?」

「俺もコピペー やってらんないって、この時期にこの課題―」

「それなー」

このクラスは文系クラスなので日本史を必修にしている生徒は多い。その日本史が一限目であり、早速このレポートを提出するのだ。


山地先生の授業が始まった。二年前は先生の授業に全く興味がなく、教科書を立てたまま別の教科の勉強をしていたのだが、こうして改めて聞くと実はすごい内容を話されている事に気づく。確かにボソボソとした話し方で非常に聞き取りずらいのだが、正直その内容は大学の専門課程のそれに匹敵する内容で、今の俺には貴重な話ばかりであった。

授業はあっという間に終わり、レポートの提出となる。後ろから回ってきたレポートに自分のを重ね置き、先生の元に運ぶ。

「ほう。初江王坐像ですか。これはキミが?」

先生は目を開き首を傾け、俺に問いかける。

「はい。よろしくお願いします。」

「拝見するのが楽しみです。ありがとう。」

先生が軽く頭を下げる。何故か急に緊張してきてしまう。


小宮卓と間旬、駿太そして洋輔が俺の机にやってくる。

「オマエ、なんか授業、ガチで聞いてなかった?」

「そーそー、ケイって日本史苦手じゃなかったっけ?」

吉村円佳と菊池穂乃果も寄ってきて

「山爺と何喋ってたん? え、仲良し? え、お達者くらぶ?」

「何だよお達者くらぶって。それよりさー、星野さんって、なんか変わったよねー」

「それなー! なんか表情柔らかくなったってゆーか、優しそうになったよーな。」

「いや、マジで吉田が興奮してたわー またコクってみよーかなって。」

「吉田はあかんやろ。スッゲー良いやつだけど…」

「「「でさー」」」

皆が一斉に俺を見る。

「ホントは、なんかあったんでしょ? 言いなよ、応援するしー」

「いや、俺は邪魔する! こいつに星野さんは勿体ない! こんな使い捨て野郎に星野さんは勿体なさ過ぎる!」

「それなっ って、ケイには合わねんじゃね? なんか暗そうだしー」

暗くねえよ。

「いやお似合いだよお、二人とも頭いいしー」

それな。

「オマエ、勿論ライン交換してんだよな? まさか毎晩トークしてたり?」

まあな。

「ちょ、え、マジ? 星野さんラインやってんのか?」

やってるよ普通に。

「オマエ、さっきから何ニヤニヤして…… え…マジ?」

「「「マジー?」」」

二限目の古文の先生が教室に入ってくる。ニヤけた顔を引き締め、授業に挑む。


     *     *     *     *     *     *


昼休みまでに、どうやら全学年に俺と星野美月の噂話が広まったようだ。江戸時代の神田の井戸端会議かよ……

男っ気の全くなかった星野美月への追求と探求の手は執拗で、いつもは教室でボッチランチを取る彼女は好奇の輪を掻い潜り、何処かへ消えてしまう。

そしてその好奇は俺の所にやってきて、

「付き合ってるってホント?」

「互いの家でお泊まり勉強って、マジ?」

「予備校で手繋いで授業受けてるって、それ人としてアリ?」

人の噂も七十五日。我慢の日々…… 待てねえよそんなに! 冬になっちまうだろうが! これはもう、付き合っている事実を公表した方が早く沈静化するのでは、と思わず思ってしまう。って、まだちゃんと付き合ってないけれど。


その夜予備校の帰り。外の蒸し暑さは相変わらずだ。いつもの良く冷えたガストで、

「いや、参った。」

「私も……」

「既に既成事実化されているのが恐ろしい……」

「ゴメンね、迷惑でしょ?」

「いやお前こそ迷惑だろ、ゴメンな。明日以降、何とかするわーー」

「何とかって?」

「俺とお前が、別に付き合ってない、って事実の…」

段々声が小さくなってしまう。チラッと星野美月を伺うと、彼女も顔を赤くして俯いている。

「そうだよ…ね。付き合ってなんか…いないし…」

「だよな、俺たちは『同志』だし…」

と言った瞬間、胸に鋭い痛みを感じる。


この痛みは胸から腹へ降りていき、俺の気持ちもズルズルと底なし沼に嵌ったように沈んでいく。

そしてハッキリと気付く。

俺は、星野美月が、好きだ、好きだ。

星野、俺、お前のことが堪らなく好きだ。

お前は気付かないかもしれない、でもな、

いつかはこの気持ちをちゃんと伝えるから。

それがいつなのか、俺にもわからない。でも

ちゃんと伝えるから。ちゃんと伝えたいから。


「そうなのよね、私達『同志』なのに。どうして周りはこんなに騒ぐのかしら。」

「は? 同志て? は?」

「良く気が付いたわね。小学生まではウケたんだけど…」

「まさかの、オヤジギャグJKかよ!」

「いいじゃない。何が悪いの? オヤジギャグはね、周りにいる人のストレスを霧散させてくれる優れたコミュニケーションツールなのよ!」

「そのせいでお前の周り友達が霧散しちまってんじゃねーか。」

「それは周りが無知なせいよっ」

「いや、オマエのセンスが無いからだ。今度団扇をプレゼントしよう。」

「プッ ウケるー」

「えっ この程度かよっ オマエの笑いのツボ…」

腹を抱えて爆笑する星野美月。こんな笑顔、というか破顔した様子はかつて見たことがないものだ。彼女の笑う姿は俺を温かい気持ちにさせる。彼女への想いが、益々募る。

「はー、おかしくって血糖値上がるわー」

んーー、それはやめとけ。でも、まあ、いいか。これ聞けるのは俺だけ、なんだし…

そんな考えは、甘かった。


     *     *     *     *     *     *


翌日から、星野美月へのアタックが物凄いことになってきた(と本人が言っていた)。側から見ても、休み時間にドアから彼女をチェックする他のクラスの男が確実に増えている。

去年告って惨敗した吉田がリベンジを宣言するや否や、我も我もとコクリ宣言を表明し、実際に行動し始める。

その週末までに、実に七人!の哀れな戦士達が川越の空に散っていった(と本人が供述している)

どうしてこの時期に、と不思議に思うのだが自分自身、彼女に惹きつけられたのはこの最近なので、迫り来る受験への不安を忘れたいが為に女に走るのでは、なんて推測は自分を貶すことになってしまう。ので、いやこれは純粋に星野美月の魅力が増し、男がそれに惑わされたのだ、という事にしておく。


それにしてもこの事は俺への影響も実は大きく、と言うのはこの学校の都市伝説『星野美月のラインIDを知る男子はいない』が実は伝説でも何でもなく、女子ですら交換した者はいない、という事実が週末までに表面化し、それに輪をかけてある女子が、

「早乙女くん、星野さんのライン知ってるよね?」

「知ってるよ。」

この話が全校生徒に伝わり、その結果一年坊主から同じクラスの奴までが、

「お願いします! 星野さんのID教えてくださいっ」

が俺に殺到中なのである。


一番困ったのは、俺の中の良い仲間が『星野病』に取り憑かれてしまった事だ。それも同じサッカー部の洋輔と駿太から別々に

「星野さんって良いよな… ケイ、お前ホントに付き合ってないの?」

「付き合っては、いないけど…」

「マジ? じゃ、今度紹介してくれよ!」

これには本当に困ってしまう。同じサッカー部の吉田の、

「ケイくん、お願い! 俺にちゃんすをもう一度くだs」

「ダメ!」

「そんな… 頼むよおー」

これは無視して良い。二年前も確かこんな感じだったから。しかし、洋輔と駿太は二年前は星野美月と接点はなかったはずだ。それが今……


こんな事になるのなら、星野美月に俺の気持ちを伝えて付き合い始めた方が良い。絶対そうに決まっている。星野美月が受け入れてくれるかは自信ないが……

しかし、俺は彼女に気持ちを伝えるのは少なくともクリスマス以降と決めている。

何故なら。俺は未来から来た人間だ。既に二人で小旅行なぞ行ってしまっているが、これ以上過去を変えていいものなのか? それが不安なのだ。

もし俺たちがこの時期、即ち夏の終わり、秋の初めから付き合い始めてしまったら、未来に対して取り返しのつかない事になるかも知れない。このままいけば、恐らくクリスマスに彼女が俺にプレゼントと共に思いを伝えてくるだろう。それに応えるのなら未来への変更は最小限ですむと考えている。

彼女はモチベーションを落とさず、晴れて志望校に合格。それ以外に大きな変更はないであろう。上手くいけば、俺と里奈との関わりは無くなり、二十歳にして父親になることもなくなるかも知れない。これは俺にとっての未来の改善、でありそれに対しての不安はなく寧ろそうあることを願っている。

だが今から付き合い始めてしまったら… 二年前にはなかったイベントが多数発生し、それにより周りの仲間たちも未来が全く変わってしまうかも知れない。


未来を変えたくない。未来を改善したい。この二律背反した考えに俺は頭を悩ませている。今の俺にできる事は、先週の様な二年前にはなかったイベント、星野美月との旅行といった事はなるべく避けよう、という事だと思う。

それを踏まえて、これから起きる洋輔のバイクの事故と駿太のインフルエンザは何とか防ぎたい。これは未来の改変ではなく、改善なのだから。

然し乍ら、洋輔と駿太の星野美月への想いはどうなのだろう、これはこの先どんな影響を彼らの未来に与えるのだろうか。

そればかりは神のみぞ知ること、そう考えねば俺はやっていけない。それこそ落ち葉一つ踏まないでビクビクして生きていかねばならなくなってしまう。

俺は俺らしく。大いなる未来へ。それでいいと思う。

きっといつかは元の世界に、戻るのだから…


     *     *     *     *     *     *


そんな俺の思いと裏腹に、この世界の現実はどんどん俺にリアルを押し付けてくる。

月曜日、日本史の授業。先週提出したレポートの返却だ。思い出すと二年前も確かレポートはあった気がする。ABC評価のBだった普通に。思い出した。それが…

「特に優秀なレポートを二つ、皆さんに紹介しようと思います。まずは早乙女君の書いた、鎌倉の円応寺にありました『初江王坐像』についてです。」

おおーーと感嘆の声が教室を満たす。悪い気はしない。だが、嫌な気がする。それは……

「そして、星野さんが書いた同じく『鎌倉』、そう。鎌倉の東慶寺所蔵の『水月観音坐像』についてのレポートでs…」


キャーーーーー


教室は騒然となる。先生、何故そこを連呼されたのでしょうか……

「何だよ、一緒に鎌倉行ったのかよーー」

「二人で仏像見学? 一周回って斬新すぎるデートじゃん!」

「ふ、二人で悟りを開いたんちゃうかーーヒューヒュー」

「つ、付き合ってないって、言ってたのにーー」

俺は頭を抱え机に突っ伏す。マジか先生……

ごほん、と喉払いをした後、これでもかと先生はお話を続けてしまう…

「お二人のレポートの共通点はその実直な観察眼だと思います。説明に捉われず思ったまま、感じたままの表現が実に素晴らしい。ところで早乙女君、」

「は、はい?」

「水月観音坐像は、星野さんのように幻想的な美しさだったのではありませんk …」


きゃあーーーーーー


受験間近の高三の授業なのに、最早クラス崩壊レベルだ。皆一斉にスマホで水月観音坐像を検索し、先生の言う通りですだの、これは斬新な口説きじゃねーか、とか、お調子者の矢崎香織に至っては机の上でスマホ画像通りのポーズを決めてしまい、

「うーん、矢崎さん、指をもっとしなやかに…」

などと先生も未知のプレイを楽しんでいらっしゃっている。


見てはいけないものをそっと見る気持ちで星野美月を振り返ると…… 矢崎と先生のプレイに爆笑していやがる。おい、俺がこんなに苦しんでいるのに…いや、苦しんではいないな。お前のその笑顔があるなら、別に構わないか、こんな冷やかしは。


二限終了時までに、星野美月が『星野水月』に改名されたことが全学年に周知徹底された。


     *     *     *     *     *     *


これまでのクールボッチキャラの星野美月、いやこれからは水月と呼ぼう、の周りが明らかに変わっていく。休み時間ごとに周りに女子が数名囲み、意外に楽しそうに話し込んでいる姿が日常となってきている。

本人は貴重な読書の時間が減って困っている、と言うが彼女の表情、立ち振る舞いに明らかに変化が出てきており、それは本人にとって良い方向なのだと思う。

「結構本読んでいるのよ、みんな。」

予備校の帰りのいつものガストでグラタンを突きながら水月が語る。

「ラノベ、って言うの。早乙女君は知っているわよね? いくつか紹介されて読んでみたけど、中々しっかりしていて面白かったわ。中でも物語シリーズの西尾維新先生は素晴らしかったわ、日本の怪奇の歴史に造詣がないと理解しきれない内容ながら、そうでない人にも十分堪能出来るの。要は学識のある人もない人も等しく楽しめる、画期的なお話なのよ!」

興奮状態の水月に圧倒されつつ、

「……そうか…… 確かにラノベはとっつき易いし面白い。それで? お前は逆に何紹介したんだよ?」

「ヘノベ、よ。」

「おいまさかそれヘビーノベルすなわち夏目漱石森鴎外徳富蘆花柳田國男などの重たーい作品群を言っているのか?」

「それを読んだらその後の人生変わっちゃうぐらいの重たーい小説たちよ。」

「……それより。お前のその痛い親父ギャグ、まさかかましてないだろうーな?」

「それぐらいの空気は読めるわ。言っていい人と悪い人。どう、私のコミュ力、あなたから見て相当上がってきたんじゃないかしら。」

「是非これからもその自覚を大切に生きてくれ。ところで今度、俺のサッカー部の奴らと飯でも食いに行かない?」

「どういうこと?」

「お前の事紹介しろってうるさいんだわ。但馬洋輔と駿河駿太って知らないか?」

「ええ知らないわ。でも早乙女くんの友達なら構わないよ。」


そして週末、水月に友達二人連れてこられないか、と聞くとそれは無理、と言われたのでクラスの吉村円佳と菊池穂乃果に参戦してもらい、六人で夕飯を囲む事となる、いつものガストで。

これは歴史の改竄ではないだろうか? そんな不安も少しはあった。しかしそれよりも俺たちにとって大切な何かがある気がした。これは歴史の改善だ、きっと西尾先生も頷くであろう。そう自分に言い聞かせる。


     *     *     *     *     *     *


暑い。週末なのに暑い。いや、週末も暑い。この暑さが秋も深まる頃には懐かしく感じるのだろうか。そして冬の到来と共に忘れ去るのであろうか。

俺たちはこの一瞬を生きているに過ぎない。ならばどんな世界であれ、この一瞬を全力で生きるしかない。例えそれが未来を変えることになってしまっても。

この数日俺はそんな風に考えるようになっている。未来がよしんば変わってしまっても、それは俺のせいではない。歴史の必然なんだ。俺は思った通りに、感じたままに生きていく、この世界を……


待ち合わせのいつものガストに三十分も早く着いた俺は一人そんな事を考えていた。約束の時間が近づくと一人、また一人と集まってくる。時間になっても到着しなかったのは当の水月だけだった。

「星野さん、来ないんじゃない? 私ならちょっと嫌かもこのシチュエーション…」

見た目も本質も本当に優しい菊池穂乃果が呟く。

「ね、ちょっと晒し者っぽい。ちょっとあんた達、調子に乗って星野の事、おちょくるんじゃないわよ!」

見た目はギャルっぽいのだが、中身は世話焼きオカン体質の吉村円佳が男子達に言い放つ。

「わかってるって。ただ本当にケイにお似合いか見てみたいだけだよ。」

陽気で漢気のある洋輔が女子達を宥める。こんないい奴が事故に遭い引き篭もりになるなんて……

「いや。俺は、もしいいなと思ったら、ケイには悪いけど、いく!」

ややお調子者だがチームのムードメーカーとして欠かせなかった駿太。たかがインフル、でその後の人生を転落してしまうなんて……


その時。約束の時間から十分ほど遅れて水月が店に入ってきた。そしてその姿に皆無言になる。何故か彼女は学校の制服で現れたのだ……

こちらを見つけ、一瞬躊躇いつつ、何事もなかったかのようにゆっくりと近付いて来る。しかし何故制服で……

「お待たせしました、今晩は。皆揃っているようね?」

「ほ、星野、お前なんで制服?」

「それは…その…」

駿太がすかさず

「こないだケイと一緒に鎌倉行ったんでしょ、その格好とかで来ればよかったじゃん?」

「実は…私、学校の皆と食事するのが初めてで… あなた達がどんな格好で来るか予想できなくて。で、あなたは? 学校どちらかしら?」

「いや… 同じクラスなんすけど…」

ガックリと肩を落とす駿太。

菊池穂乃果がニッコリ笑いながら、

「星野さんとこうして外で食事なんて、初めてよね!」

「ええ。内でも初めてかしら?」

「へ?」

星野の独特のテンポにめげずに洋輔は、

「さ、こっち座りなよ、星野さん。」

「あ、ありがとう。で、あなたも同じ学校なのかしら?」

「あ… 俺、但馬洋輔、です… いたた…」

ムッとした顔で吉村円佳は、

「あのさ、顔見たことぐらいあるっしょ、ケイのチームメイトなんだから。こいつらサッカー部。で、」

「そう、なんだ。ありがとう、吉川さん」

「よ・し・む・ら!」

「吉村さん」

「何こいつ……」

「ところで、」

「何?」

「ケイって、誰?」

全員がズッコケる。


     *     *     *     *     *     *


「相当天然モノだなこれ… こりゃ友達出来ねーわ。」

「だなだなー 見た目はいいんだけど、これはキッツいわー」

「駿太、言い過ぎ。でもケイ、よく彼女と、その、コミュニケーション? とれるな…」

「でも外でも内でもって、ウケる! ちょっと可愛い?」

「アレかね、本読みすぎてイっちゃってんのかね、頭…」

「円佳! 言い過ぎ。いや、興味深いわー、ケイとの関係。」

「それなっ うわ、俺、話三分も持たねーわ。」

「どんな本読むんだろう、ねえ星野さん?」

俺の隣に座った水月はメニューに集中していて菊池穂乃果の問いかけに気付かない。四人は俺を可哀想な人を見る表情で見つめてくる。

彼女の肩を軽く叩く。ハッとして振り返る彼女に、

「菊池が、お前どんな本読むか知りたいって。」

彼女は菊池穂乃果に、

「ごめんなさい、ちょっと待って。選んじゃうから。」

駿太と吉村円佳はドン引きし、洋輔と菊池穂乃果は暖かく微笑む。俺はと言えば、先程から脇汗と手汗が全く止まらない状態なのである…


俺らも選ぶか、という事になり、メニューを回しながらそれぞれが店員に注文し終わると、場は微妙な空気に包まれる。当の水月はキョロキョロと皆の表情を伺い、しばらくして不意に、

「あの、自己紹介した方がいいかしら?」

「そ、そうだな。そうするか。じゃ、お前から。」

「星野美月です。南中出身です。趣味は読書です。」

「へー、南中なんだ、そんなら山形紗英とか新見かずみとか知らない?」

「知らない。」

ゆっくりと首を振る。それも堂々と。うちのクラスでも屈指のコミュ力を誇る吉村円佳が降参とばかりにソファーに背中を投げ出してしまう。だが水月の制服姿を呆れるように見ていた彼女が、

「ちょ、ちょっとアンタ、値札? タグ付いてるよ、襟の後ろ!」

「あら。ホントだ。急いでたから見落としたみたい。ありがとう、家帰ったら取らなきゃ。」

「今でしょ!」

すかさず店員を呼びハサミを借りてそのタグを切り取りながら、

「なんでこんなの付けてんのよ? 恥ずくないの?」

「その… 食事会だって言うから… 新しいのを下ろしたのだけど。あの、ありがとね、吉川さん…」

「ヨシムラ! うわ… ホンモノの天然モノだ… ってか、全然イメージとチゲくね?」


その後、それぞれが彼女に自己紹介する。彼女はおもむろにスマホを取り出し、スケジュールアプリに皆の名前を打ち込み始める。誰も聞かなかったが、彼女が自分から、

「私、人の名前覚えられなくて…。覚える必要も無かったし。」

皆、クラスや部活では相当のコミュニケーションスキルを駆使している連中なのだが、彼女の言動にただ呆然とするだけである。まるで動物園でペンギンを眺める如くの有様だ。

「あとは、早乙女、ケイ… あなた、ケイくんなのね。初めて知ったわ。」

「……お、おう。」

「で、どんな漢字なの?」

「あのさ…」

「え?」

「今まで… 知りたいと… 思わなかったの?」

「だって。あなたは早乙女君じゃない。あなただって私の名前、知っているの?」

「みづき。美しい月。」

「え… なんで? どうして知っているの? キモ。」

全員、再度ズッコケる。


「星野さんは男子の中で有名だからみんな下の名前まで知っているよ。」

洋輔がいつもの優しい笑顔で星野に言う。

「そんな… どうして有名なの?」

「それは…」

「友達いなくて本ばかり読んでいるから?」

「そ、それもあるけどー その、なんて言うか… おい、駿太!」

駿太がニヤニヤしつつ、

「星野さん、うちの学年でずっと三位以内に入ってたからなー」

「三位? 私は大体三十位前後よ。」

「いや、成績じゃなくて…」

「じゃ、何が?」

「だから〜、おいケイ、任せた!」

俺は咳払いをし、

「だから、その、男子の中での人気? まあ、美人コンテストみたいなモンー」

「それは容姿、性格、成績、品性などを総合したもの? それとも他の基準が?」

吉川、もといヨシムラ円佳がめんどくせー、と面倒臭そうに言い放つ。菊池穂乃果は腹を抱えて笑いを堪えている。


「まあ、さておき、星野さ。下の名前って親が付けてくれたもんじゃん。本人にとっては掛け替えのない親からの贈り物なわけじゃない。だからそいつの名前を友達なら大事にする訳。苗字だけじゃ、『星野』だけじゃ全てじゃない。『星野美月』がお前そのものなのだから。」

おおお、と皆がどよめく。水月もどうやら納得してくれたようだ。まあ『水月』という名前は神様仏様がくれたものなのだが。

「よくわかったわ、早乙女ケイ君。これからはフルネームで呼び合う?」

「何このカップル… 斬新すぎてついていけねえ…」

水月が吉村円佳にキッとなり

「カップル? 私達は付き合っていないのだけれど」

「「「は?」」」

話の展開に皆は全く追従できなくなる…

「私達は、『同志』。そんなその辺のチャラチャラした男女の付き合いと一緒にされては困るわ。以後気をつけてくれる?」

二者はドン引き、二者は微笑む。そして、

「でも。早乙女君のこと、好きなんでしょ?」

優しく穏やかな菊池穂乃果のまさかの直撃弾を受け、水月は硬直する。は? え? ん? などと突如キョドりだす。顔がサッと真っ赤に色を変える。

この余りのわかりやすさにドン引きと微笑みの二者が入れ替わる。

「そーか、やっぱ星野さんケイのこと好きなんだ、クッソ、残念… でも、マジお似合いかもなー 勉強デートとかー ま、常人じゃありえねー」

「やだ、何よ、ちょっと可愛いじゃん、ウケるー。いーねー、青春してんじゃん。そっか、天然星野にも好きな男いるんだねえ、それがよりによって『ヤリ捨て』のケイとかってウケるー」

水月は何も言えなくなり、ただ俯いているだけだ。洋輔と菊池穂乃果もその冷やかしに加わり、場は一気に盛り上がる。俺はそれをただ苦笑いして見守っている。


話は更に盛り上がり、もう告ったかとかもうお泊まりしたのかなど、段々俺にも手に負えなくなってきている。水月はそれに対し小声で、付き合っていない、同志なんだ、と呟くばかり。

食事が運ばれてくると

「夏休みの間、毎日ケイにお弁当作ってあげたってマジ?」

「ホラ、あれやりなって、『アーン』 ケイの口にアーンしてやんなよ!」

「ちょっと円佳言い過ぎ! 可哀想だって星野さん…」

「はー? 言い出しっぺは穂乃果じゃん!」

「まあ、ちょっと見てみたいかも、だけどー… 星野さん? なんかゴメンね…」

「…‥いけないかな?‥…」

突然、水月が立ち上がる


「早乙女、ケイくんを好きじゃ、いけないかなあ?」


かなり広いガストの店内がシーンとなる。


まだ箸をつけていないナポリタンの上に水滴が落ちる。


そして来た時とは逆に小走りで店を出て行く。


     *     *     *     *     *     *


歴史の改変だの改善だの、どうでもよくなった。それよりも冷やかされ傷つく彼女に何一つ手助けしてやらなかったことへの後悔、そして、あれ程純粋に俺に恋してくれていることへの歓び。相反する思いに俺の身体は動かないままでいる。

「ケイ、なにボケっとしてんだよ! 早く追いかけろ!」

洋輔が未だかつて聞いたことのない強い口調で俺に迫る。

ありがとう洋輔。やっぱりお前は最高のボランチだ。洋輔の最高のコーチングを受け、俺は席を飛び立ち、水月を追って店の外に出る。


水月は駅の西口に向かってスタスタと歩いている。俺は全力でその後を追う。西口の駅前にかかる歩道橋、ペデストリアンデッキを登り、橋の途中で彼女は歩みを止める。そしてデッキから大通りを走るヘッドライト、テールライトを哀しげな表情で見下ろしている。

俺はその姿がいたたまれず、声をかけることができない。何も言わずにそっと彼女の横に立つ。

しばらくそのまま何も話さず俺らはただ通りを眺めていた。

「痛い、よね…」

「何が?」

「ファミレスの中で、あんな大声で… 超迷惑だったよね… ホントごめんなさい…」

俺は水月の愛おしさで胸がいっぱいになる。身体を彼女に寄せる。

「みんなもこんな変な女が早乙女くんにまとわり付くの嫌だよね…」


「星野。俺、」

水月が泣き腫らした目で俺を伺う。


「嬉しかった。」


「え…?」

「俺さ、今まで生きてきて、本気で人を好きになったことないんだよな。高校の時からずっと……」

「…‥?」

「そんで、ちょっといいな、って子がいても、つい星野美月と比べちゃって… 結局誰も好きになれなかったんだ、ずっと。」

「そんな、まさか…」

「よくわかんなかったんだけど、高校の時からずっとお前のことが忘れられなかったんだわ。どっかでお前を追い求めていたんだわ、ずっと‥…」

「…‥?」

「で、この夏からずっとお前と一緒にいて、やっとわかったわ。」

「何、が?」


「俺、お前のこと、好きだわ。多分、ずっと前から……」


水月を見る。水月も俺を見る。大きく目を見開いて、口を半分開けて俺を見る。うそ、と呟く。俺は水月から目を離し、蒸し暑い川越の夜を俯瞰する。街を埋め尽くすビルの灯りや車のライトが優しく俺たちを包んでくれている気がする。

街の喧騒が俺たちを祝福してくれている気がする。

目を水月に戻すと彼女はずっと俺を凝視したままだ。

「所々腑に落ちないというか、よく理解出来ない部分もあったけど……」

俺は彼女に今の俺のありのままの気持ちを伝えてしまったようだ。逆に理解された方が怖い。彼女は最高の笑顔で

「私もすごく嬉しい! ありがとう。」

そして急に真面目な顔になって……


「前から、ずっと、早乙女ケイくんが好きでした。」


初めて鎌倉で水月観音菩薩を見た時を思い出す。その美しさに心を奪われ立ち尽くしたのだった。そして今。あの像の穏やかな微笑みそのままで俺をじっと見つめる。心に浮かんだ言葉をそのまま口にする。

「幸せだわ。お前に、出逢えて。」


穏やかな笑みのまま、先程とは全く異なる、一筋の涙が彼女の頬を伝う。


抱きしめようと一歩前に出た時、背後からみんなが走ってやってきた。


     *     *     *     *     *     *


「ほんっと、申し訳ない! ゴメン!」

「いいよ。もう気にしてないよ。」

「いやいやいや。なんか調子に乗ってやなことばっか言ってたわ。サーセンっしたっ」

本気で頭を勢いよく下げる吉村円佳に、

「結果、早乙女くんの気持ち知ることができたし。感謝だよ、吉川さん。」

本気の両手で水月の側頭部を揺らしながら、

「ダメなのかー、刷り込まれたのかー、戻ってこれないのかーー」

何故か歩道橋の上で大爆笑している俺たち。

「でも、好き合ってるのに、付き合わないってホントなの?」

心底不思議そうに菊池穂乃果が首をかしげる。

「うん。だって私たち、『同志』だから。」

「同志って…‥」

「それに受験も控えているし。こんな時期に付き合ったりしたら、どっちもダメになるから。中途半端なお付き合いはしたくないしー」

おおおお、と感嘆の声が川越の夜空に響く。

「ケイはそれでいいのか? ほっといたら、他の奴に持ってかれちまうぞ。例えば吉田とか。」

「ハハハ。いや、俺も付き合う時はガッツリ付き合いたいから。今はこうして勉強を通じて互いを高め合いたいわ。」

「やっぱ、お前変わったよ。夏前のお前と全然別人だよ。うん。マジいいよ、お前。」

駿太が真剣に褒めてくれる。洋輔も深く頷いている。まあ、二年分年取っているからな。その分ぐらい、男としての余裕ができているのかもな。


「それよりさ、星野さんお腹空いたでしょ? みんなでこれからカフェでも行こうよ。」

「ケイくんもおなか空いたでしょ、みんなで行こうよ。ね、星野さん!」

「…あの、一つ、お願いが…」

「え、なになに?」

「下の、名前で呼んでもらえる、かな…」

「みづき!」

「あ、ありがと、え、えっと、ほのか?」

「ミヅキ!」

「ま、ま、まどか?」

「みづきちゃん?」

「ヨウスケ、くん?」

「ミヅキちゃーーン!」

「誰だっけ?」

歩道橋から飛び降りようとする駿太を笑いながら後押し…ではなく、引き戻す俺らだった。


     *     *     *     *     *     *


彼らは出てきた食事に手を付けず店を出たという。なので全員お腹ぺこぺこ状態である。流石にあのガストに戻るのは気が引ける気がするのだが、

「え? どうして? 行こうよ!」

と言う水月に皆首を傾げながらも「まあいっか」と言うことになり、来た道を引き返していく。とうとうやってしまった… あれ程気を付けねば、と思っていた所謂『歴史の改竄』だ。もう後には引き返せない。と言うかー正直、引き返したくない。元の世界に戻りたくない。

ちょっと前まではワンチャン戻れたら、という気持ちも無くはなかったのだが。こうなってしまったのなら、寧ろあの元の世界には絶対戻りたくない。このまま水月と、こいつらと一緒の世界を歩んでいきたい。

その願いが叶うかどうかはわからない。神様だってわかるまい。ならば、今夜からは思いの儘に生きていこう。元の世界に影響が、とか歴史が変わってしまう、とか、もう考えまい。この世界にしっかりと根を張り、したい事をし、楽しんで生きていこう。

そう思った瞬間から、俺の頭の中から『迷い』が霧散し、明確な現実が目の前にクッキリと現れた気がする。

その中には当然、まだ席を立たなかったガストの客たちの『うわ、また来た』の好奇の目も含まれているのだが…


「で、みづきはいつからケイのこと好きだったん?」

「そ、それは……」

「聞きてえー、超聞きてー、いついつ?」

「え、えっと……」

「「「ゴクリ」」」

「一年の時に同じクラスになって、ずっと気になっていて……」

「マジマジ、かーーーー、そんな前かー」

「駿太マジうるさい。黙れ。でで?」

「え、えっと、でも……になったのは…」

蚊の鳴くような小声になっていき、皆は水月に体を乗り出す。当然俺も…

「一年の二学期の終わり? 期末試験の、現国の時に…」

「「「ゴクリ」」」

「早乙女くんが、『星野さん現国得意だよね、今度勉強の仕方教えてよ』って、笑いながら、言われた時、かな……」

全く記憶に無い。のを皆に認識されてしまう。

「それは無いよ、ケイくんー」

「まあ、コイツ誰にでも優しいからなあ」

「その手で何人も犠牲になってんだなー 鬼畜系、ウザっ」

「円佳上手いっ 鬼畜系、ウケるー」

「えー、それでそれで?」

「それから、気持ちを伝えようと、手紙を書いたんだけど、何度も書き直しているうちに、二年になって、そしたらクラス替わっちゃって、でまた書き直して、夏休み前に渡そうと思って、放課後早乙女くんの靴箱に入れようとしたら、吉崎香苗の手紙が入っていて、だから渡せなくて、そしたら早乙女くんと吉崎香苗が付き合いだしたって聞いて、なんであの時吉崎香苗の手紙を捨てて私のを置いてこなかったか、すっごく後悔して、」

皆が唖然として俺と水月を見比べる。ライバル、というか敵の名前はフルネームで覚えるんだ… 俺の下の名前、知らなかったくせに…

「でも秋の中頃には別れたって聞いて、また手紙を書き直して出そうとしたら、瀬川紫苑と付き合い始めたって聞いて、近所の神社の初詣で『早乙女くんが瀬川紫苑と早く別れてくれますように』って祈ったら、一月終わりにホントに別れたって聞いて、ちょっと怖くなってその神社に謝りに行って、そのついでに『三年では同じクラスになれますように』ってお祈りして、そうしたら四月に同じクラスになれて、もうそれだけで嬉しくて、ずっと見ているだけで幸せで、早乙女くん三年になってから誰とも付き合ってないって聞いて、ワンチャンないかなと思って、早乙女くんが通っている予備校調べて、そこに通いだして、でも中々お話できなくて、またその神社に行って『早乙女くんとトモダチになれますように』ってお祈りしたら、中間テストで私が古文で一位取った時に、『星野って古文の参考書何使ってるの?』って話しかけてくれて、それから色々話すようになって……」


「意外と……やるじゃん…」

「うん、したたかだあ……」

「あの星野さんが……ミヅキちゃんが……呪いを…」

「ま、まあそれだけケイの事……」

「てか、それウチらに、人に言うか?」

「みづきちゃん、正直過ぎ。でもー」

「いやー、いいじゃんミヅキちゃん! 表裏無いわー おい見習えそこの二人。」

「は? 死ね。」

「凄いよ。他人にそこまで話せるって。私はムリだよー」

「ケイがマジで惚れちゃうの、なんとなくわかるわー。な。」

洋輔がニッコリと俺に微笑んでくる。

「で。ケイはみづきちゃんの事、いつから?」

「それは、やっぱ二年前の受験……」

洋輔の笑顔に絆され危うくありのままを話してしまいそうになる。しまった、なんて言おう…


「じゃなく、二年前くらいから気にはなってたよ。ただちょっと近付きずらいかなって。本ばっか読んでたし俺なんか眼中ない、って思ってたわ。」

「そんな事、ない!」

「ちょ、みづき、落ち着けって」

「いーよ、ミヅキちゃんー」

「ハハハ… で、三年になってこうしてクラス一緒になったよな。成績、特に国語と社会がすごかったじゃんコイツ、だから下心なしでマジ勉強法とか教えてもらいたくてさ、まあそんな感じで声かけて。そんで予備校も一緒だったし。」

「なんか……みづきちゃんの作戦、的中じゃん…恐ろしい子…」

「う、ウチもちょっとやるかそれ…」

「…そんで、まあ予備校とかで帰り一緒になったりして話してるうちに、まあ、なんか、そんな感じ! これでいいかっ?」

「で。初めてのキスは?」

「「まだだよっ!」」

完璧な俺と水月のハモリに驚きと疑いの目が集まる。あれ……なんか別のテーブルからも同じ視線を感じるーー


サッと見回すと、俺らの周りのテーブルの客が、一斉に目を逸らした。おい……


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