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Beautiful Water Moon  作者: 悠鬼由宇
1/8

憂鬱

木造彩色 水月観音坐像

岩にもたれて水面に映った月を見る観音像。そうした姿の観音像は水墨画に多く、中国の宋から元時代に大流行した。中国で大流行したにもかかわらず、日本では鎌倉周辺にしか見られない。

神奈川県指定文化財


東慶寺 HPより抜粋

憂鬱だ。ああ、憂鬱だ。


先日里奈から、

「なんか出来ちゃったっぽいよー あ、もちろんケー君の子供だし。ぜったい産むし。」

と言う衝撃的な告白をされたからなのか?

最初は週二回だけだった塾の講師のアルバイトが、気がつくと週五回になり抜けようにも抜け出せなくなっているからなのか?

親父が会社の出世競争にしくじり地方の子会社に飛ばされて、一人暮らしの俺への仕送り額が半分以下になったからなのか?

それとも、今年も『記録的』と言われるこの夏の暑さのせいなのか……


その親父から二十歳のお祝いに譲り受けた車を運転しながら俺は一人憂鬱に浸る。カーナビに言われるがままにハンドルを動かしているので、今何処を走っているのかイマイチわからない。


仕送りの件は塾講のバイト代が想定外に多いため全く問題なかろう。

週五に増えたバイトは週六に増やされないようになんとか塾長らと交渉していくしかあるまい、大学の授業に差し支えるからとか何とか言い訳でもして。

このクソ暑さは誰のせいにも出来ない。車のエアコンを更に冷やす。


問題は、里奈の件だろう。


里奈は俺が一年の時、つまり去年の生徒だった。塾に何しに来ているの、と言う感じの勉強意欲無し、学力無し、勉強に関する向上心まるで無し、のビッチ系生徒だった。初めての塾講師としての生徒だったので、こんな子でも俺が何とかしてやろう、と空回りしていたのが今でも恥ずかしい。

そのクラスは塾の中でも最下層に位置し、まあ新人講師が受け持つのが当然なのだろう、因みに二年経った今は上から三〜五番目のクラスの日本史を受け持っている、大学受験する子は皆無、高校を何とか卒業するための補修のような授業をするクラスだった。

当然男子生徒はヤンチャ系、女生徒はビッチ系ばかり。俺の高校は進学校だったから接触した事のない人種であり、当初は相当戸惑った。授業を聞いている生徒なぞほぼおらず、小テストはゼロ点続発。


このままではクラス崩壊、バイトクビ、それを阻止すべく授業内容を独断と偏見で勝手に修正し、大手の塾ではないので決められたカリキュラムとかの押し付けはなくその点は講師の自由が効くのが良い、その後の授業を全て『アニメ』『漫画』『ゲーム』を絡ませて行った。

『信長のシェフ』を語り始めた途端、女子生徒が食いついて来る。『信長の野望』を実際にやって見せると男子生徒が熱く語り始める。

『銀魂』の史実性を討論させると全生徒が発言する。『鬼滅の刃』についてレポートを求めると日本刀の歴史を調べて来る生徒が続出する。

気がつくと、俺のクラスの出席率は彼らの卒業間近にはほぼ100%となっていた。


そんな生徒の中でも里奈は俺を男と認識し、高校卒業後もしつこく付きまとってきていた。俺は大学ではフットサルサークルにしか入っておらず、女子の友人は専ら高校時代の同級生や後輩、同じ塾の講師が多かった。なるべく教え子には手を出さないようにしていたのだが、里奈は巧みに俺の防御網を掻い潜り、今では週二くらいで俺の下宿に泊まっている。


俺には特定の彼女は、居ない。また特別に想いを寄せている女子も居ない。ちょっといいな、と思う子が出てきても、俺はどうしてもアイツと見比べてしまうのだ。


アイツ…… 高校時代の同級生に星野美月という女子がいた。一年と三年が同じクラスであり、部活には所属せずいつも一人で本を読んでいた。

俺はサッカー部に所属し、二年の秋の大会が終わるまでサッカーに邁進していた。それ故俺と彼女の接点は三年の時が主であった。


     *     *     *     *     *     *


彼女は評判の容姿で男子の人気コンテストでは常に三位以内に入っていた。友人とつるまず日頃読書ばかりしており、彼女と言葉を交わした男子はいないとの都市伝説が流れていた。それでも長い黒髪、端正で小柄な顔立ち、細身でスタイル良し、成績も常に上位10%以内。

そんな青春マンガやアニメのヒロインの様な彼女は、常に男子による争奪戦が繰り広げられていた筈だ。

筈だ、というのは、俺は一年次から彼女を切らしたことがなくーサッカー部で一年からレギュラー、文系科目は学年十位以内、まあ陽気で仲間思いの性格。毎月のように女子から告られて、特に好きでもなく何となく彼女達と付き合っていたーなのでその彼女達への対応が忙しく、他の女子を物色する暇が無かったのだ。


三年になり、大学受験が目の前に明確に聳え立つと浮ついた恋は激減する。授業、予備校、勉強で忙しくなって初めて俺は星野美月を認識した。

確か一学期の古文の中間テストで俺が二位、彼女が一位を取った時、どんな参考書を使っているのか尋ねたのがきっかけだった。

それから俺と彼女は同じ予備校だった事もあり、週二程度で一緒に勉強するようになる。今思うとこれも立派なデートなのだが、当時は恋よりも進学が優先であり、彼女を一人の女子として相対する余裕は無かった。

夏休みはほぼ毎日一緒に予備校に通い、互いの弱点科目を補い合った。俺は今でこそ日本史の講師をしているのだが、当時は日本史が最弱点なのであった。逆に彼女は日本史の予備校のテストで常に上位に名を連ねていた。


「歴史はね、興味を持つ事。これに限るわ。早乙女くんは時代小説とか読まないの?」

「俺、本は全然。マンガとかアニメ、かな。」

「それならば、歴史物の漫画を読んだら? 私は漫画を読まないからよくわからないけど。」

「ふーん。後でブックオフ付き合ってくんね?」

「ええいいわ。」

そこで俺は今でも塾の授業で使用する一連の歴史マンガと出会ったのだった。


秋になると俺と星野美月が付き合っている説が流布していた。サッカー部の仲間からもよくからかわれたのだが、

「全然違うし。勉強友。受験友? 何つーのこーゆーの?」

と受け流していた。

彼女も見知らぬ女子から俺と付き合っているのかどうか、よく尋ねられた、いや尋問されたと言っていた。その度に、

「早乙女くんが私のような陰キャとなんかと付き合う訳ないでしょ。」

と自虐的に答えていたらしい。その態度に相手は渋々納得していた様だ。


星野美月は英語が若干弱く、特にリスニング系の所謂『生きた』英語が不得意だった。

「星野は洋楽聴かないのか?」

「ポピュラー音楽はあまり…」

「じゃあ映画やドラマは? 出来ればアニメなんか?」

「そうね、ディズニー映画とかは子供の頃によく観たわ。」

「じゃあそれを英語版で何度も見返すんだ。お前の言う、歴史の勉強と一緒。興味を持つ事。好きになる事。英語を好きになればー」

「成る程ね、わかった、やってみる。」

その後少しだけ彼女の英語の成績が上がったようだった。


クリスマス。受験勉強は佳境に入る。俺達も予備校に朝から晩まで通い詰め勉強に勤しむ。その帰りの別れ際に、

「一応受験生だけど… これ。メリークリスマス…」

と袋を渡される。中には俺が今でも愛用している手袋が入っていた。

翌日お礼がてらに何かを渡す、確か慌てて買ったマフラーだったか…

「あ、ありがとう…」

といい彼女は真っ赤になる。俺はそこで彼女の気持ち、すなわち俺への好意に気付く。


それからは俺は彼女を避けるようになった。何故ならそんな恋愛感情は受験の邪魔だから。彼女は元々内気なタイプなので俺が避け始めると何となくそれを受け入れた感じとなり、次第に二人の距離は開いていった。

そして受験シーズンを迎える。

俺は希望通り私大文系の頂点、早稲田の政経に合格。彼女は早慶上智は全滅。その後どうなったか、知らない。


試験発表の帰り。ふと電車の中で彼女に貰った青のニット手袋を見つめる。唐突に彼女とのこの半年間の繋がりが思い起こされてくる。

一緒に行った図書館、予備校の帰り道によく行ったファミレス。模試の帰りに一緒に飲んだコンビニのカフェ・オ・レ。そしてこの暖かい手袋…

これ程密接に共に過ごした女子は未だかつていなかった、これ程一緒にいるのが普通だった女子は彼女が初めてだった…

一人ボッチの電車に揺られながら、合格の喜びはすっかり冷め果てていた。そして何かとても大切なものを失った感に苛まされ、手袋の中の手がすっかり冷え切っていたことを今でも鮮明に覚えている…


何度LINEでメッセージを送ろうと思っただろう、だが今更どのツラ下げて彼女の前に出られようか。あの日以来彼女を避け続け、第一志望に合格しやっと自分に余裕が出来たから彼女に近づこうなんて…

俺はこの気持ちに蓋を閉め、かつ誰にも漏らす事なく大学生生活に入った。


その後彼女の消息は誰も知らなかった。元々高校に友人がいなかったので、浪人しているとか地方の大学に通っているとかいい加減な噂しか耳に入って来なかった。そして俺も真剣に消息を追うことは無かった。ただ、誰かを好きになりそうになると彼女の真っ赤な顔と青い手袋が脳裏を掠め、一瞬にしてその思いが霧散してしまうのだった。


     *     *     *     *     *     *


俺にとって里奈はその程度の女である。彼女の高校卒業後、初めて抱いた時もフツーに非処女だった。最近はバイトもあまりせず親の金で遊びまくっている。この間は渋谷のクラブに連れて行かれ、そこには彼女の知り合いがあちこちにいて、トイレから帰ってくると目がトロンとして様子が変で、その夜は果てしもなく体を求めてきて…

そんな里奈と子供が出来たからと言って一緒になるとか絶対ありえない。占いを知らない俺でも数年後の俺らの生活が明瞭に告げられる。俺は大学中退、アパートに黒のワンボックスカー、子供は三歳から茶髪… 二人目の子供の父親は一体誰なのか…


憂鬱だ。ああ、憂鬱だ。どうしたらいいのだろう。どうすればいいのだろう…


菱形の道路標識が目に入った時にはもう遅かった。横断歩道をスマホを見ながら横断している男子学生をギリギリでかわすのが精一杯だった。目の前に電信柱が迫ってくるー


よく走馬灯の様に今までの人生が、なんて話があるがそれは嘘だ。ゆっくりと迫る電信柱をただ受け入れるだけだ。体は、腕は言うことをきかず、その電信柱に巻かれている広告がやけに鮮明に迫ってくる。

死にはしないだろう、エアバッグも作動するはずだ。あの学生を跳ねなくてよかった。ただ歩きスマホだけは注意したかったな…


氷が割れる様な音が聞こえフロントガラスが蜂の巣の様になると同時に、物凄い衝撃が俺を前方に追いやる。ハンドルが胸に食い込む。フロントガラスに前頭部が叩きつけられる。おい親父、この車エアバッグ………


     *     *     *     *     *     *


「…この様に、幕末の日本を取り巻く世界情勢をしっかりと把握してないと、その後の明治政府の方針指針が理解出来ないから、並行して世界史も頭に入れておく様に。黒船が来た1853年頃のアメリカの世界的な立ち位置はどうだったか? そういったことを知らないと只の暗記地獄に陥るからな! それではこれで終わります。」

予備校だ… 俺があの夏、星野美月と通い詰めた予備校に居る!


慌てて周りを見回す。間違いない。あの夏の記憶通りだ。隣の席のニキビ面の川越第一女子高の女子。後ろはいつも寝ぐせの東川越高の男子。そして、窓際の最前列の、星野美月!


丁度授業が終わり、俺は荷物―わ、懐かしいぞこのノート。まだ実家に置いてあるはず−をカバンに−これ、秋に破れて捨てたんだよな−放り込んで、星野美月の元に駆け寄る。

「ほ、星野っ!」

「えっ なにっ どうしたの、早乙女くん?」


これは… 夢なのか…


あの頃と変わらない星野美月がいる。あれから時折夢にまで出てきた彼女が目の前で首を傾げている…

俺は令和三年の夏、交通事故に遭った、自損事故で電柱に激突した筈だ。なのに、今…

「今年、令和元年、なのか?」

「……そうだけど。どうしたの?」

「いや… その… 星野、元気か?」

「はあ?」

思いっきり怪訝な顔をされてしまう。然し乍ら俺は全く受け入れられない。俺は確か事故った筈なのに、何故…


ああ… これはきっと夢、なんだ。多分手術中かICUで見ている夢なのだ。

きっとそうだ。間違いない。間も無く俺は目覚めるだろう…


「ねえ、歴史の小テストどうだった?」

「……え? 小テスト?」

「さっき返ってきたじゃん。……ちょっと…… 早乙女くん大丈夫?」

さらに怪訝度を増す星野美月。

「ああ、それなら…」

再来年に廃棄予定のカバンを探ると… 言われた通り、小テストが出てくる。は…? なんだこの点数…

「…江戸時代最後の天皇は孝明天皇に決まってんだろうが… 何が光明天皇だよ… 北朝じゃねーかよ… それに浦賀に停泊した黒船はサスケハナ、ミシシッピ、あとはサラトガとプリマスに決まってんだろうが。何故に空白… アホかこいつ… って…」

「……早乙女くん?」


「いやー、俺ってホント歴史弱かったわー」

「…かった?」

怪訝を通り越しスマホで通報しそうな表情に…

「え… あ、いや、さ。歴史って、興味があれば面白いもんじゃん。」

急に星野美月の目が輝き出す。俺の方に身を乗り出し、

「そう、そうだよ! そうなんだよ早乙女くん! 早乙女くんは歴史小説とか読まないの?」

あれ… これって… あの時の俺と彼女との会話… 俺が歴史好きになったあの日の…

「歴史はね、興味を持つ事。これに限るわ。早乙女くんは時代小説とか読まないの?」

うわー デジャブ感が半端ない… 確か、俺はこう言ったんだよな…

「俺、本は全然。サッカーばっかしてたから読む暇なくってな。代わりにマンガとかアニメ、かな。」

「それならば、歴史物の漫画を読んだら? 私漫画は読まないからよくわからないけど。」

そうだそうだ。確かそんな展開だった! で、確か俺は、

「ふーん。後でブックオフ付き合ってくんね?」

「ええいいわ!」


予備校の外に出ると凄まじい熱気だ。あの夏は記録的な猛暑だったよな確か。館内がよく冷房されていた為気にしなかったのだが、この熱気が夢の中の感覚とは到底思えない。瞬く間に汗が吹き出す。額も首筋も…

「すごい汗だよ、はいこれ。」

星野美月がハンドタオルを差し出す。あれ…こんな事あったっけか?

「あ、サンキュ。洗って返すわ。」

夢の中だけに大胆に堂々と受け取り汗を拭く。どうせもうすぐ目が醒めるのだから。そのハンドタオルはすごくいい匂いがする。暑さとは別の脇汗が吹き出すのを感じる。

「星野さ、普段どんな本読んでんの?」

「え……」

突如硬直する星野美月。なに? なんかマズイこと言ったか?

「何だよ?」

「いや… そんなこと早乙女くんに聞かれたの初めてだから…」

「そんな事ないだ…」

ちょっと待て。俺、あの頃星野美月に私生活の事聞いたことあったか? 勉強以外の事を話す様になったのはお盆以降ではなかったか? お盆休みが終わった頃迄、俺は星野美月に対して単なる勉強仲間としての認識しか持たなかった気がする。いや、それでも愛読書くらいは聞いていた筈…


「私、最近は時代小説にハマってるの。」

伺う様な表情で目を細めながら星野美月は呟く。

「マジで? 例えば?」

「佐伯泰英の『居眠り磐音』シリーズ、かな。」

「あれ、な。あの続編の『空也』シリーズも最高面白いよな!」

星野美月が急に立ち止まる。そして俺を真正面から睨みつける。一瞬時が止まる。

「ねえ、どういうつもりなの!」

突如豹変した彼女に頭が真っ白になる。

「はあ? 何が?」

「早乙女くん、ついさっき全然本読まないって言ったじゃない、漫画とかアニメばっかりでって!」

「あっ」

俺は大学入学後、それまでの人生を反省するが如く読書に耽っている。勿論いくつかのマンガ、アニメは続行中だ。

「ずっとサッカーばかりしていたから本なんて読む暇なかったって!」

「んー、それはまあ…」

見たことのない険しい表情で、深く重く呟く。

「嘘、ついたんだね、私に?」

いやいや、ちょっと待ってくれよ、何だよこの展開…

「そんな… そうじゃなくって…」

「スポーツ万能。成績優秀。女子から大人気。」

「いや、だから…」

「私が本しか読まない女だから簡単に落とせると思ってるの? 全然読書しないフリして私に油断させて近付いてきたの?」

うわ… 星野ってこんなキャラだったの… 怖え、マジ怖え……

「ちょ、ちょっと待てよ星野!」

「私、嘘つく人、ムリだから。」

クルリと踵を返し星野美月が俺から離れて行く。

これ、マジか? 夢にしては酷い夢じゃないか、久し振りに星野美月に会えたというのに…

ま、そのうち醒めるだろう。この夢からも。


帰宅する。全てがあの頃のままである。お袋も、偉そうに仕事の話をする親父もあの頃のままだ。アンタ、ちゃんと車の車検通してくれよ…

全てがあの頃のまま、俺はベッドに入り目を瞑る。このまま寝て朝起きた時には病院のベッドなのだろう。まさか、死にはしてないだろうな… いや、ワンチャンそれも有りなのか? 今見ている夢が所謂死ぬ直前の走馬灯ってヤツなのか? それにしては全てがリアルだ。リアル過ぎる。まあそれも朝になれば…


翌朝。あの頃と何一つ変わらない、普通の朝を迎える。洗濯機の中には昨日出しておいた星野から借りたハンドタオルが入っている。


     *     *     *     *     *     *


朝食時、あの頃は普段決して読む事のなかった新聞を開く。親父が、

「流石受験生だな。意識が高くなってきたな。」

「それより父さん。車の車検そろそろだろ? ケチらないでちゃんとディラーでやっておけよ。」

「はあ? お前何でそんな事…」

親父を無視して新聞を読む。全てがリアルだ。令和元年の夏のリアルそのままである。走馬灯に映る朧げな記憶だの光景などでは無い。確実な現実が俺の目の前に、有る!


「今年の秋はさ父さん、台風が多いから。洪水とか多いかも。」

「…どうしたんだ啓? 勉強し過ぎて頭おかしくなったのか?」

「実の息子に酷くね?」

笑いながら親父と話していてまさかと思う。これは所謂、タイムスリップ、タイムリープというヤツなのでは無いだろうか?

最近読んでいた小説に『この世は平行世界で出来ている』というのがあった。今生きている世界とは幾つもの平行した別の世界があり、そこには俺とは違う俺が生活していて… つまり早大生では無い俺が居て。空間の歪みだか何だかに入り込むと他の世界に行ってしまう。昔から言われる『人隠し』がこれに当たる、のだと。

更にこのパラレルワールドは時間軸が同時進行ではなく、その世界毎に微妙にズレている、と。今俺が今いる世界は二年前の令和元年夏、の世界。だとするとこの世界に居た俺は何処に?


確か二年前、星野美月と一緒にブックオフへ行った翌日、即ち今日、は大人買いしたマンガを母親と大喧嘩しながら読み漁り、歴史の楽しさに目覚めた日だった筈だ。

俺は今、ネットを駆使しながらこのパラレルワールドについて色々調べている。『人隠し』の名所のような場所は都市伝説で数あまた有るらしい。俺が昨日事故った場所を調べてみたが、特にそのような名所に該当する事はなかった。

またこのタイムスリップに関しても昔と今では考え方がかなり変わっているらしい。昔は歴史は一本道であり、過去に戻り歴史を変えてしまうと元いた世界が大きく変わっている、というのが王道だったようだが、最近ではこの平行世界と時間軸のズレの関係が主流のようで、別の平行世界の過去で何かを変えてしまっても元の世界には何の影響も残らない、らしい。

故に過去世界で蝶を踏んづけたら現代社会の言語が変わってしまった、的なブラッドベリー現象は生じないらしい。


その内、頭が疲れてきてどうでも良くなってくる。ベッドに身を投げ出し、昨日までの自分を思い出す。出来れば戻りたくねえ。出来るならこのままやり直してえ。思い浮かぶのはそんな事ばかりだった。気がつくと寝ていた。

うたた寝から覚めてもやはり令和元年の夏、だった。頭が少しスッキリして、ではこれからのこと、を考えてみる。即ち、元の世界でなくこの世界でこれから生きて行くとするなら、俺はどうすれば良いのか、を。


先ずは受験。ひょっとしたら明日受けても合格してしまうだろう。特に日本史は満点取ってしまうかもしれない。まあそれなりに受験日を迎えることにしよう。そしてさっと合格してしまおう。この線は確定路線とする。

家族の事。親父は来年仕事上の大失敗で再来年、左遷されてしまう。まあこれは親父自身の人生だし。俺がそれを救うとか止めると、そんな感じではない気がするし。まあ軽く忠告だけはしておこう。それと、車検だけはキッチリやらせよう。母親はこの二年無病息災、まあ放置して良いだろう。


友人の事。特にサッカー部の仲間の事。これだけはやりたいのは、MFの洋輔が十一月末にバイクの事故で右足切断してしまう。これだけは絶対阻止してやりたい。その後洋輔は義足となりリハビリも頑張るのだが、去年くらいから精神的に参ってしまい、所謂引き篭もりとなって今に至る。

チームやクラス内では誰にでも優しく穏やかで知的な洋輔が、見る影もなく引き篭もりー出来れば何とかしてやりたい!

あの事故の日時もよく覚えている、俺が予備校から帰宅したら家に連絡があったからー あれ。何日だっけ? 慌ててスマホのカレンダーを見るがよく思い出せない。

あと三ヶ月はあるからじっくりと思い出すことにする。スマホのカレンダーに『洋輔、バイク』と十一月三十日に書いておく。


あとは駿太。コイツは本命受験日当日にインフルエンザに罹患してしまい、仕方なく滑り止めの大学に入学するが、ゴールデンウィーク明けには学校に行かなくなってしまう。

お調子者でチームのムードメーカー的存在であり、かつ元々成績は学年でトップクラスだっただけにその挫折感は半端なく、周りの、俺たちの励ましを受け入れる事が出来ず、夏には東京の半グレ組織の一員となってしまう。そして今年、令和三年の春に詐欺事件の容疑者として逮捕されてしまった。

もしあの時にインフルエンザに罹患していなければ、その後のあいつの人生は全く違ったものになっていただろう、何せ模試では合格間違いなしの成績だったのだから。

一週間くらい前からしつこくマスクする様言うかな。インフルエンザに気を付けろ、それもウザがられる程言い続けよう。それもカレンダーに書いておく。


そして。星野美月。彼女の成績が下降線を示し始めたのがクリスマス以降なのは明白だ。そして、俺の彼女への想い。あの頃と違い、今は正直彼女に仄かな想いがある。あの頃気付けなかった想い。この二年で積み重なった彼女への想い。

昨日、彼女と少し話して確信した。内気だが芯のある強さを秘めた彼女に、俺は惚れかけている。あの頃は気付かなかったが、色々な女と付き合っている内に星野美月の魅力が鮮明になってきていたのだ。

彼女とはこれからどう付き合っていけば良いだろう? 俺が彼女を受け入れれば彼女は受験に成功するのだろうか。そして俺と彼女はその後……


それが甘い考えだった事が分かったのは翌日以降だった…


     *     *     *     *     *     *


翌日。予備校の教室の席に座る。星野美月はこちらを一瞬も見ない。昼休み。昼飯に誘おうと席を立つと彼女はサッサと教室を出て行く。

授業が終わる。今度こそ彼女を引き止めようと席を立つ。だが彼女はこちらを一瞥もせず俺の横を通り過ぎ教室を出て行ってしまう。返そうとして手に持っていたハンドタオルが俺の手汗で少し濡れてしまう。

席に戻りスマホを弄り彼女に連絡を… 思い出した。彼女の連絡先は確か九月半ばまで知らなかった筈だー 二年前の九月の半ば、風邪で彼女が予備校を休んだ翌日、ノートを見せて欲しいと言われその時に初めてライン交換したんだった!


まあ明日になれば… 甘かった。翌日も、翌週も、彼女が俺を見る事は一度も無くなっていた。短いお盆休みを終え、予備校に行く。確か俺の記憶ではこの日午後からゲリラ豪雨で彼女は傘を持っておらず、川越駅前のガストで夜まで時間を潰したのだ。

俺の記憶通り、午後の授業の途中から空は暗くなり、やがてひっきりなしに落雷の音が女子生徒をおののかせ始める。大粒の雨が窓を打ちつけ、授業が終わる頃には予備校の外には迎えの行列が出来ている。

俺は混乱の一階ロビーを人掻き分けながら彼女の後を追う。案の定、彼女は傘を忘れた事に気付き、途方に暮れた様子である。


「星野っ」

思わず声が上擦ってしまう。心臓が一回転したような感覚に胸が苦しくなる。

「……」

俺を一瞥すると彼女は反対側に歩き出してしまう。俺は彼女の腕を掴み、

「傘、あるのか?」

彼女は掴んだ俺の腕を見ながら、

「離してくれますか。」

俺の目を真正面から見つめるその冷たい目に俺は思わず掴んだ腕を離してしまう。そして彼女はツカツカと俺から離れるように歩き出し、やがて人混みに消えて行った…


一人駅前のガストに入り、コーヒーを飲む。驚くことに二年前のここでの会話が鮮明に俺の脳裏に蘇ってくる…

「早乙女くん、もっと本読まなくちゃ。本を読むって事は他人の意見を聞く事なんだよ。あ、早乙女くんはコミュ力高いから人の意見聞くのは得意そうだね… 私は苦手で… 人と話すのが苦手でさ。だから本と会話しているんだ… ってこんな話変だよねー やだな、こんな話他人にした事なかったんだけどなー 早乙女くん聞き上手だから何でも話しちゃうよー」


あの時注文したナポリタンを注文する。

「私ね、大学に入ったら友達を作りたい! って、なんか小学生みたいだよね… でも、私と同じ価値観の本をこよなく愛する人達と大勢友達になりたい。そしていっぱい語り合いたい。いっぱい意見を聞いて、いっぱい主張したい。え? それなら運動系のサークルに? いやー私運動は苦手で… 中学の時にバスケで県大会ベストエイトが精一杯かなー ああっ何でオシボリぶつけるのよ!」


デザートを、あの時と同じブリュレを一口食べる。

「でも、こんな私とずっと一緒にいて迷惑じゃない? ほら、私、陰キャラだし… 早乙女くんの評判下がっちゃうよきっと… ほら、その優しい所とか! そう言われると気にしちゃうって。彼女さんにも申し訳無いなって… え? 嘘だー、いるでしょ本当は。…そうなの? そっか、受験勉強と恋愛ねー、両立出来ないかー 結構真面目なんだね。え? 私? いる訳ないでしょう。え? いないいない。いても教えない!」


会計を済ませ店を出る。

「そうだな、大学に入ったら恋もしたいな。本物の恋。早乙女くんみたいに『ちょっと付き合う』なんてダメ。付き合うなら真剣に。先の事まで考えて、ずっと一緒にいれる人と。え? そンなヤツいないって… ちょ、酷くない? うん、うん… そっか、そんな本好きな男にマトモな奴いない… って、それ酷すぎ! よーし、早乙女くんを愛読家にしちゃう作戦! 漫画はダメー。少なくとも時代小説はしっかりと読むように、ね。」


その半年後。俺は時代小説の愛読家になっていた訳だが。


     *     *     *     *     *     *


翌朝、目覚める。もう元の世界に戻っているのでは、という期待は無いし希望も無い。しかし星野美月への想いが日毎に募る今日この頃は今の状況が正直、辛い。

ベッドの横に飾ってあるサッカー部の集合写真を眺める。あの頃のサッカーと受験勉強に明け暮れていた日々。冷房で鈍った体をほぐしつつ、俺はリビングのソファーに体を投げ出す。

「今日、予備校は? 夕ご飯いるの?」

「午後からー。食べる。」

「じゃあ、帰りにミルク買ってきてー」

「りょーかい。」

「…アンタ、父さんが言うように、ちょっと変わったわね。」

「へ? どこが?」

「うーーん、何となく。口では言えないけどー。なんか余裕? みたいなのがある感じ?」

「何だよその抽象的な。実の母親でしょうに。」

「それそれ。よく周りを見れるようになってきたよね?」

「…そうですか?」

「勉強、頑張って。一浪までなら、許す!」

「しねえよ。現役で入るし。その代わりー」

「ハイハイ。現役でワセダ入ったら、一人暮らし、ね。おけおけー」


変わった、のか? 俺。それが気に入らないのか星野美月? いや確か彼女は『嘘つく人、無理だから』と言い去って行った。嘘をついているのか俺は? 確かに二年後から来ている事を正直に話しはしない。従って嘘はついていない筈だ。

問題は、半年後から俺は愛読家になる。そして今に至るのだがこの世界の彼女にとってはそれが『嘘』になると言う事だ。

では二年前の俺を装い、本なんか読まない俺を通すか? いや、それこそ、『嘘』だ。

では、正直に彼女に俺の現状を全て話し、理解してもらうか? それは最悪解だろう。彼女はパニックに陥り、人間不信にまでなるかも知れない…


彼女のススメで本を読むようになる、これは事実である。それが半年後の将来なのが問題点なのだ。

このままでは俺が彼女と共に進む事のない世界となってしまう。そしてそれは、ようやく俺が見つけかけているモノを諦める世界、となってしまう。


本当は誰かに相談したい。サッカー部の奴ら、クラスの仲間に。

母親の昼飯をつつきながら、まずはちゃんと星野美月と話をしよう、それだけが昨夜から悩んで悩み抜いて導き出した唯一の結論であった。


     *     *     *     *     *     *


しかし、この日の午後も彼女は巧みに俺を避け、とっとと帰宅してしまった。記憶によると、ファミレスで長話をした二年前の昨日以降、俺らは予備校の後のファミレスが定番となり、たまにラーメン屋、はたから見たら確かに付き合っているような行動を共にしていく。


一週間後。俺は覚悟を決め、授業終了と同時に星野美月の前に仁王立ちする。

「星野。どうしてもお前と話したい事がある。ちょっと付き合ってくれ。」

星野美月は俺を全身全霊で睨み付ける。俺はそれでも目を逸らさず、

「頼む。どうしてもお前と話がしたい。」

やがて星野美月は目を閉じ軽く溜息を付く。

「わかった。」

そして件のファミレスに二人で向かう。途中、大粒の雨が落ちてくる、しまった、今日は傘を持ってきていない…

「いいよ。入っても。」

彼女が折り畳み傘を開き、渋々半分こちらに差し出す。


「で。話って、何?」

お互い半分ずぶ濡れのまま席に着き、オシボリで拭きながら彼女は切り出す

「俺が嘘つきって話。」

ハアー、と大きな溜息を漏らす。

「それが、何?」

「俺を避ける理由。なんでしょ?」

「…だから?」

「俺、星野に言われて本を読むようになったんだよ、元々本はあまり読んでなかった。友達や親に聞いてくれ、本当だからっ!」

「…そう、じゃ、なくて…」

「え?」

「別に早乙女くんが嘘つきだから、じゃなくて…」


俺は首をかしげるー へ? だってあの時確か…

「怖くなったの!」

「は? え? えーと…、何、が?」

「早乙女くんが急に私の方を向き始めた、から。あの時までの早乙女くんはサッカーに勉強に夢中で、あと彼女もいっぱいいて…… 私の事なんてまるで気にしてなかった。だよね?」

思わず頷いてしまう。

「なのに、あの頃から急に私の顔をちゃんと見るようになって… 話し方も変わって… それに、あんなに嫌がっていた本を読み始めて、しかも私の好きな時代小説… 」

俯きながら上目遣いでポツリと、

「怖いよ…」

俺はゴクリと唾を飲み込む。

「ちょ、ちょっと待って… 怖いって、何が?」

「あなたの今までの彼女達みたいに、話を合わせて気に入らせて付き合い始めて、そしてすぐに終わっちゃう… そんな関係になるのが!」

正直、唖然としてしまう。俺のそれまでの女子との付き合いが正にそれだったのだ。俺にちょっと興味がありそうな子に話を合わせ、そして付き合い始める。そして一通りの事をしたら少しづつ距離を開け、その関係を絶ってしまうー


思わず下を向いて笑ってしまう。

「なんか。良く知ってんじゃん、俺のこと。」

「だって。実際そうなんでしょ?」

「まあ… そうでしたね実際、はい。」

「だから、そんな関係になるのは無理。絶対ムリ!」


「大丈夫。それは絶対、無い。ありえない。だって、俺にとって星野はそういう対象じゃ無いから。」

「え?」

「星野とは… そうだなー、互いに勉強を通じて高め合っていく、そんな『同志』みたいな関係? そーゆーのを望んでるかも。」

この言葉に一ミリも嘘はない。故に堂々と宣言する。

「星野は俺に読書の喜び? 楽しみ? を教えてくれたじゃん。俺は成長できたよ、マジで。」

「え? こんな半月たらずで?」

怪訝ながらも星野美月の表情がほんの少し緩やかになる。

俺は構わず力押しで、

「でさ、俺は星野にマンガやアニメの凄さを教えてやるよ。あとゲームも。」

「何それ? 漫画やアニメ、何が凄いの?」

「星野、英語苦手だよね? 特にリスニングとスピーキング。」

「んん、まあね。」

確か二年前は秋に話した事を今言ってしまおう。

「星野はアニメ映画は観ないのか? ディズニー系のとか。」

「子供の頃によく観たわ。『美女と野獣』とか。」

「じゃあそれを英語版で何度も見返すんだ。好きな映画なら何度でも観れるだろ? 内容は日本語で分かっているんだから、あとは英語のセリフを何度も何度も聞いて、そして自分で口にしてみるんだ。」

「成る程ね。確かに… わかった、やってみる。」


「あとさ。『ワンピース』って知っているよな?」

「読んだことないけれど。」

「全世界で何部出版されたか知っているか?」

「さあ…」

「一億部、な。」

「マジで? それ凄くない? 世界の七十人に一人が読んでいるってこと?」

「そ。それぐらいさ、日本のマンガ、アニメって世界的に影響力があるんだぜ。」

「ヘーーーーー。ちょっと読んでみようかな、何か…」

「いいぜ、お前の好きそうなヤツ勧めてやるよ。その代わりさ、お前のオススメの時代小説、教えてくれよな。」

「いいねー いい、こういうのいい! なんか、ゴメンね…」

「え?」

「ちょっと勘違いしていたみたいだから。だって早乙女くんモテモテじゃん、女扱い慣れてるし。てっきりそんな女何号かにされちゃうーなんて思ってたよ。」

「だってずっと先まで一緒にいたいんだろ、彼氏できたら。」

「え… 何で…? そんな事話してないよ…」


しまったーー! 調子に乗って余計なことを… それは二年前に聞いた話でこの世界では聞いていない話……

「バーカ。見てりゃわかるって。星野がそんな軽い女じゃないって事ぐらい。だからきっとそーなんだろ〜なーって。違うか?」

「まあ…そうなんだけど… あーなんかムカつく!」

いきなりオシボリが飛んでくる。俺はそれを避けずに顔で受け止める、彼女の笑顔と共に…


夜まで俺たちは語り合う。まるでこの数週間の空白を埋めるが如く。

会計を終え、家路につく。その別れ際、

「はいこれ。やっと渡せたよ。」

と俺は借りていたハンドタオルを差し出す。星野美月がそれを受け取った時、指先と指先がそっと触れる。俺の脳から尾骶骨にかけて電流が流れる気がした。夜の蒸し暑さとは全く異なる暖かさを胸いっぱいに感じる。


令和元年、俺にとって二度目の夏の終わりが近づく頃、星野美月への想いを伏せたまま、俺たちの『同志』としての付き合いが再開された。


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