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神様たちの冒険  作者: くずす
6章 Cランク冒険者、来訪者の偽装彼氏になる
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忘れ去られた街

 かつて魔神たちが拠点とした古城とその周りに広がる廃墟と化した街並みを、人々は『忘れ去られた街』と呼ぶ。

 そして、その名が示すとおり、この場所を知る者はそれほど多くない。

 魔神たちが人類と争ったのは今から2千年以上昔の事であるし、魔神王と勇者の最終決戦の舞台に選ばれたこの街は、ダンジョンの奥深くに隔離されていたからだ。

 ちなみに街が隔離された経緯もさまざまな説があり、はっきりとはしていない。

 『人類側が異界の門を封印するために街ごと隔離した』というものから、『魔神たちが防御を固めるために街ごとダンジョンに転移させた』というものまで、本当に多岐にわたる。

 まあ、当時を知るイエリスさんに言わせると―――


「別にどっちも間違ってない……劣勢になった魔神たちがこの街に立てこもったというのも本当だし、人類側がそれを許容したのも本当。地上で戦うよりダンジョンで戦う方が周辺への被害は少なくなるもの。だけど、ゼノンたち―――かつての勇者たちは反対していた。街にとり残された人たちはどうなるんだって……」


 ―――との事なので、あえてぼかしている部分もありそうである。

 とはいえ、歴史学者でもなんでもない僕からすると、『まあ、そういう事もあるんだろうな』という感想しかないし、冒険者である僕たちにはもっと気にするべきことがある。



 僕たちが今いるのは『忘れ去られた街』の朽ち果てた外門。

 ここまではイエリスさんの転移魔法で何の問題なく来られたのだが、これから先はそうはいかない。

 『忘れ去られた街』には自然発生する魔物や魔神を閉じ込めておくための『結界』が施されているのだが、その『結界』が転移ゲートと干渉をおこすらしく、結界内部への長距離転移は基本的に出来ない。

 なので、歩いて城に向かう。


「それじゃあ、行くわよ……」


 先頭に立ったのは当初の予定どおり、イエリスさん。

 イエリスさんの武装は武骨な大剣(グレートソード)のみで、防具のようなものは一切身につけていない。

 とはいえ、それで何の問題もない。

 なにしろ中身は神クラスのスライムである。


「さっそくお出ましのようね……」

「え、ええ……」


 僕たちもいつものように警戒しているのだが、先行偵察に出ているリフスたちとほぼ同じタイミングで敵の襲撃を察知するとか、ホント、どうなっているのだろう。いや、まあ、一万年以上生きるハイエンシェント・エレメンタルスライムからすると、それくらいは児戯なのかもしれないが……


 そんなわけで―――いつも以上に無双状態で襲い来る魔物の群れを撃退する。

 いやね、中には強いのもいるんだよ。いるんだけど……


「今度はバシリスク?でも、あれだけの大物は滅多に―――」

「【フレイム・プリズン】」

「―――見ないんだけどなぁ……」


 瓦礫の山を押しのけて姿を現した三つ目のバシリスクが、炎の檻に捕らわれ消し炭となる。


「トライアイ・バシリスク……石化の視線に加え、第三の眼から熱線(ブラスター)を放つ……Aランクではそこそこ強い方……」

「あ、うん……」


 僕たちのように制限でもあれば別だが、真に神クラスの実力者を前にすれば、BランクもAランクも大差はなく、見敵必殺(サーチ&デストロイ)な展開になるのも致し方なし。

 ただ、だからといって油断はできない。

 最近になり、僕もようやくわかってきたのだが―――いくら自分が強くなったとしても、魔物の脅威度は下がったりしない。経験を積んで上手く対処出来るようになったとしても、相手の強さが変わっていない以上、油断や慢心で対応を誤れば、即座に苦戦することになる。

 特にCランク以上の魔物となるとその傾向が顕著。

 というのも、Cランク以上の魔物はなんらかの特殊攻撃を持っている場合が多く、たったひとつのミスが致命傷となりかねない。

 なにしろ人の身体というのはそれほど頑強ではないし、生命力や魔力で強化しても限界はある。

 ぶっちゃけた話、なんの防御もない状態でワイバーン(Cランク)のブレスが直撃すれば、ランクに関係なく大抵の人は死ぬ。

 人がCランク以上の魔物と戦うには、限りのあるエネルギーを有効に活用し、攻撃や防御を適切に行う必要があるのだ。

 ……まあ、今の僕たちは人ではなく、神人ではあるが……

 それでも戦いの基本は変わらない。

 少なくとも基本的な肉体の強度は普通の人と大差がないし、ダメージを追えば動きが鈍る。

 『肉体再生』や『即時復活』も決して万能ではないし、過信は禁物。

 イエリスさんと対峙した時のリスキル地獄みたいなことは、もう二度と味わいたくはない。

 それに―――


「それよりも……サヨは大丈夫……?」

「え、ええ……いろいろとビックリする事は多いですけど……」

「何があっても私たちが守りますから、安心してくださいね」

「私たちから離れないように気をつけてくれれば、それで大丈夫だから」

「休憩したかったらいつでも言ってね……」


 今回は警護対象のサヨさんがいる。

 万全に万全を重ねるぐらいで丁度いいのだ。




6章終了までは毎日更新していく予定です。

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