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神様たちの冒険  作者: くずす
1章 Fランク冒険者、神様になる
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冒険者ギルド

 森の入り口でリサと別れた僕たちは、その足で冒険者ギルドに向かった。

 ミントとサクヤが朝食を済ませてなかったので、ギルドの飲食コーナーで食事をとりながら、クエストボードのチェックをしようという事になったからだ。


 僕たちが暮らす街―――『シーケ』の冒険者ギルドはかなり立派なものである。

 もともと遺跡の街として有名で、冒険者が集まりやすい土地ではあったのだが、現在のギルドマスターがかなりのやり手らしく、王都にあるギルド本部と比べても見劣りしないレベルまで発展させたとかなんとか……

 まあ、本館の建屋はつい最近建て替えられたばかりなので、なおさら立派に見えるというのもあるのかもしれない。


 ギルドの本館は3階建て。

 1階は各種受付が並ぶカウンターと待合スペースがあり、奥の一角が飲食コーナーとなっている。

 2階から上はギルド職員が働く事務室や会議室などが大半で、3階にはギルドマスターの部屋や応接室などがある。

 ちなみに、本館の裏手には冒険者育成学校と共有の訓練施設があり、その隣にはギルドが保有する宿泊施設や倉庫などが並んでいた。


 僕らがまず向かったのは1階の待合スペース。

 待合スペースの壁の一部がクエストボードとなっているからで、僕らはFランク向けのクエストボードの前に立ち、どんな依頼があるのかチェックしていく。

 とはいえ……


「やっぱりたいした依頼はないわね」

「探すのはダンジョン系でいいんだよね?郊外のならわりと美味しいのがあったんだけど……」

「移動に3日もかかる時点で却下よ。それならダンジョン系の依頼を複数受けた方がいいわ」


 冒険者になりたてのFランク用のクエストというのは、たいしたものでない事がほとんど。

 ギルドとしても無茶な依頼をまわすわけにもいかないし、こればかりは仕方がない事ではあるのだが……


「それならいっそのこと、ポイントの高いクエストを受けて、ランク昇格を狙った方が早いのではないですか?」

「それはそうよ。でも、いくらポイントが高くても時間がかかるものは却下。今一番優先しないといけないのは時間よ」


 僕やミントに声をかけつつ、サクヤが目ぼしいクエストをメモしていく。


「ギリノス遺跡が12……ミミナ遺跡が10……ハガイ洞窟は……8か。でも、ギリノスのこれは時間がかかりそうだし……ミミナ遺跡が一番かしら。だとすると……るー、ミミナ遺跡のクエストをいくつか受けるのがいいと思うんだけど、それを中心にいくつかリストアップしておいてくれる?ミントはギリノス遺跡とハガイ洞窟で受けられそうなクエストを全部メモしておいて」

「うん」

「わかりました」


 それからもう暫く、僕らはクエストボードとにらめっこを続けた。





 朝というには遅く、昼というには少し早い……そんな中途半端な時間帯だからか、ギルドには人があまりいなかった。

 これがもう少し早いと、更新されたクエストボードをチェックしにきた冒険者たちで混雑していたりするのだが……

 ただ、全く人がいないというわけではない。

 僕らが飲食コーナーに移動した時、テーブル席には2組のパーティーがいた。

 そして、その片方―――近い方に座っていた4人組の男の1人が、僕たちが席についたところで話しかけてきた。


 もう、この時点で嫌な予感しかしない。


「なあ、さっきから見ていたんだけど、お嬢ちゃんたちはFランクなんだろ?良かったら、俺たちが手伝ってやろうか?」

「いえ、結構です」


 話しかけてきた男もテーブルに残っていた男たちも見覚えのない顔である。

 おそらくは最近この街にやって来た冒険者たちなのだろう。


「そんな警戒しないで、話だけでも聞いてくれよ。俺たちはこれでもCランクのパーティーだし、腕は結構たつんだぜ?俺たちの協力があればFランクは当然、Eランクの昇格ポイントだってすぐに溜まるさ。それに女のコだけのパーティーじゃ、いろいろと不安だろ?先輩としても心配なんだよ」

「ご忠告はありがたいですが、その心配は無用です。男手ならすでに足りていますから。というか……そのコは男のコですよ」


 男に話しかけられていたサクヤが、僕を指さして告げる。


「……そういうわけなんで、もういいですか?」


 女のコ扱いされた事に少し腹立たしさは感じたが、それだけなら怒ることでもない。

 悲しいかな、そういう事はわりとしょっちゅうあるのだ。

 だから、ここで大人しく引き下がってくれるようなら、穏便に済ませられたのだが―――


「あ?男なの?でも……そんなヤツじゃ頼りなくない?」


 まあ、こういう場合、そうはならない。


「……ひょっとして……喧嘩を売っているんですか?」

「お、いっちょ前に怒ったのか?」

「……ナンパなら他所でしてください。これ以上しつこいようなら、排除させてもらいますよ」

「あ?やれるもんならやってみろや!」


 なんだかこっちから喧嘩を売ったような気もするが、サクヤもミントも僕の彼女である。彼女が目の前でしつこくナンパされているのだから、こちらから喧嘩を吹っかけても許されると思うのだ。一応、警告はしたしね……


「Cランクだからって、調子に乗らないでくださいよ」


 椅子から立ち上がり、男の方へゆっくりと近づく。


「おらぁっ!」


 先手は譲る。

 万が一にもサクヤたちを巻き込むわけにはいかないし、男の狙いを僕に引きつけたかったからだ。

 殴りかかってきた男の拳を半身で躱しつつ、その足を払う。

 無様に転げた男だが、ダメージはないに等しく、男は怒り狂って、再度殴りかかってきた。

 それを潜り込むように躱し、男のアゴを拳で打ち抜く。


「ぐはっ!」


 僕の体重がいくら軽いと言っても、アゴを狙った一撃は相当に効く。

 もっともそこはCランクの冒険者。

 それなりにタフなのか、その一撃で落ちたりはしなかったが……


「まだやるの?」


 僕は男を見下ろしながら悠然と告げる。

 そんな僕の左手にはメラメラと燃え盛る炎があった。


「お、お前―――」


 それを見た男の顔が驚愕に歪む。


 そして―――


「おいおい、そこまでにしとけよ。そいつをぶっ放したら、流石に喧嘩じゃ済まなくなるぞ」


 そんな僕らに静止の声がようやくかかる。


「あ、セインさんっ!」


 現れたのは先輩冒険者のセインさんだった。


「おう、ルドナ。中々珍しい事してるじゃねーか。お前が喧嘩なんてよ」

「いや、ちょっとカっとなっちゃって」

「まあ、いいさ。冒険者なんだから、喧嘩のひとつやふたつ出来ないでどうするって話だしな。お前もそう思うだろ?」

「えっ……ハ、ハイ……」


 急にセインさんに振られたからか、尻もちをついていた男はコクンと頷く。


「思っていたより素直だな。じゃあ、先輩冒険者として、俺もひとつ助言してやるよ。大抵の冒険者はFランクからスタートするんだ。それがどんなバケモンでもな。だからランクで相手を見くびるようなマネはやめとけ。痛い目みるぞ」

「は、はい……」

「……バケモン呼ばわりは酷いですよ。それと……一体いつから見ていたんです?」

「アハハっ、さ~な。それより、さっさとテーブル直せ。さっきからレイスが睨んでいるぞ」


 セインさんがウェイトレスに視線を向けながら告げる。


「わかりましたよ」

「ほら、お前も。アイツは怒ると怖いんだからよ」

「はい……」


 セインさんのとりなしで、僕らは乱れたテーブルや椅子を並べなおす事となった。




◆◆◆




「セインさん、助かりました」

「たいした事はしてねーけどな」


 セインさんを加えて、僕らはテーブルを囲う。

 件の男とその仲間たちは既に立ち去っている。

 一応、去り際には僕らに頭を下げていったし、その時の表情から察するに遺恨のようなものはないように思う。

 先輩冒険者であるセインさん(彼らからすれば同い年ぐらいかもしれないが……)の仲介で喧嘩を止められたわけだし、両者手打ちの形なので、彼らの面目もギリギリのところで保たれたからだろう。

 そうでなければ、もう少しややこしい事態に発展していた可能性もあったが……


「別にあれくらいなら問題なかったでしょ?」

「いやいや、サーマが暴走しかかっていたしね。セインさんに止めてもらえなかったら、始末書ものだったかも……」


 サクヤの言葉に首を横に振り、僕は手の平に小さな炎を生み出す。

 その炎はしばらく揺らめいたかと思うと、そのままのサイズで半竜半人に近い姿となる。


「サーマ、勝手に出てきちゃダメだろ……」

「え?呼びだしたのはご主人様っスよね?」

「いや、さっきの話だよ」


 彼女は火の中位精霊……サラマンダーのサーマ。

 僕が使役している精霊ではあるのだが―――


「ご主人様を護るのがあたいの使命っスから」

「うん、それはありがたいんだけど。街中で攻撃魔法なんか使ったら普通に捕まるからね、僕が……」

「あっ、ええと……い、一発だけなら誤射で済むかもっスよ?」

「済むわけがないでしょ」


 サーマはやたらと喧嘩っ早く、呼び出してもいないのに勝手に出てくることが多々あった。

 先ほどのナンパ男を威嚇した時もソレで、本当は魔法で脅そうとしたわけではなく、勝手に出てきたサーマを慌てて押しとどめていたというのが真相である。


「あんまり勝手をするようだと、リサに報告するよ?」

「ちょっ!それだけは勘弁して欲しいっス!アネさん、怒ると超コワイんスから!水責めは二度とゴメンっス!」


 僕の手の平の上で土下座をかますサーマ。

 サーマは僕が『契約』しているわけではなく、リサの指示で僕についてきているだけなので、僕が怒るよりもリサから怒ってもらう方が効くのだ。


「まあ、反省してくれたのなら、そうでいいけど」

「す、すいませんっス」


 もう一度サーマが頭を下げた事で僕らの反省会は終了。

 サーマは空気に溶けるように姿を消す。

 そして、それを見ていたセインさんが一言。


「精霊に好かれるっていうのも案外大変なんだな……」


 そんな感想を漏らしていた。





Cランクの冒険者を圧倒するFランク冒険者(笑)

主人公たちは神化する前でもBランクに近い力を持っていました。

ただ、訓練校の実習程度しか実戦経験がないので、意外と穴もあったりします。


1章の終わりまでは毎日更新していく予定です。

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