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神様たちの冒険  作者: くずす
6章 Cランク冒険者、来訪者の偽装彼氏になる
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忙しい『銀のゆりかご亭』

6章始まります。

 本格的なバカンスシーズンに突入し、『銀のゆりかご亭』はかつてないほどの賑わいを見せていた。

 ただ、それは街全体にも言える事。

 もともとこの時期は観光地や避暑地に向かう旅人で賑わうものなのだが、今年は例年に比べ、その数が多い。国内・国外問わず、人が集まってきているようで、人が人を呼ぶというのはこういう状況を言うのだろう。

 その要因の一つがとある噂。


『最近、シーケ近辺のダンジョンが『活性化』しているらしい』


 そんな話が冒険者の間でまことしやかに囁かれていた。



 本来であれば、ダンジョンの活性化というのはあまり喜ばしいことではない。ダンジョンに巣くう魔物たちが活性化し、地上に溢れ出るようになれば一大事である。

 しかし、ダンジョンが活性化すれば、そこで得られるものも増える。

 これには魔物からとれる素材も含まれているが、それ以上に大きいのはダンジョンが生み出す財宝である。


「昨日、ミミナ遺跡で宝箱が山のように見つかったってよ!」

「バカ、お前、情報が古いよ!今、熱いのは蛇の道だって!魔剣の丘の話、知らねーのかよっ!」


 そんな話が『銀のゆりかご亭』の食堂でも引っ切り無しに飛び交っているぐらいで、シーケの街で活動していた冒険者はもちろん、他所の街からやってきた冒険者も活気づいている。

 そんなわけで―――


「うううっ……いいなぁ……」

「ええと……もう少し落ち着いたら、また一緒に冒険しましょうね」


 冒険者たちの会話に羨ましそうな声をあげたのは、給仕をしていたノアさんである。

 最近のノアさんは、大忙しの『銀のゆりかご亭』の手伝いにかかりきりとなっており、冒険者としての活動は一時休止中。

 対する僕たちは、今まで通りお手伝いはしていたが、冒険者としての活動は継続中。

 ランク昇格試験を受けるために活動ポイントを稼がなければいけないし、こればかりは仕方がない。


「冒険がしたいなら今夜にでも呼び出してもらえばいいじゃない」

「いや、神層世界(あそこ)の冒険はハードすぎるというか……今までの自分の価値観が崩れちゃうというか……そもそも盾扱いされるのがどうにも……」

「すいません……」

「あっ、いや、それが嫌っていうわけじゃないんだよ?皆も精一杯戦っていて、余裕がないのもわかっているし―――」

「しばらくの間は余裕をもって戦えそうな階層にしておきますか?」

「それは本末転倒じゃないかしら?昼間忙しく働いているノアさんに少し休んでももらおうと、『召喚』するのも止めているんでしょ?まあ、どうしても力を借りたい時は呼び出しているけど……」

「あ、ごめんね。そこまで気にしなくても大丈夫だよ。ただの愚痴みたいなものだし……」

「ええ、わかっていますよ。ただ、愚痴なら愚痴でちゃんと聞くんで、いつでも話してくださいね」

「うん、ありがとね」


 まあ、ノアさんも少しお疲れなだけで、何か他意があっての発言ではない。

 それに頑張っているのはノアさんだけではない。


「ノア、『ちゃーはん』と『ぎょーざ』出来たのだっ!」

「あ、うん。今、行くねっ。それじゃあ―――」

「あ、はい」


 厨房からあがったニーズの声に、ノアさんが答える。


「なんか、すっかり板についてきましたね、ニーズちゃん……」

「意外な才能と言うとあのコには悪いけど、一種の天才よね。料理を始めてまだ半月も経ってないのに、お客をとれるレベルとか……」

「最初は危ないところも多かったけどね~」

「まあ、異世界の料理って事で物珍しさもあるんだろうけど、それでも十分すごいよね」


 ニーズは一昨日から『銀のゆりかご亭』のコック(見習い)として働いていた。

 最初は厨房を借りて、料理の練習をしていただけなのだが、皆で試食をしているところをたまたま目にした他の冒険者が興味を持ち、自分にも食べさせて欲しいと願い出たのがきっかけ。

 『銀のゆりかご亭』のアットホームな空気もあり、見た目幼女の小さなコックさんは問題なく受け入れられ―――すでにかなりの人気を博している。

 まあ、まだ、レパートリー自体は少ないのだが、それはこれからに期待というところだろう。



 最近の僕たちは概ねこんな所。

 いや、あと一つ、変わった事があるにはあるのだが―――


(ルドナ様……)

(え、エド……?ど、どうかした?)

(いえ、お知らせしたいことがございまして……カウンターの方でお客様がお待ちのようですよ?)

(そ、そう……教えてくれてありがとうね……)

(フフッ。これくらい、お礼を言われるような事ではありませんわ……)


 『心話』でそんな事を伝えてくれたのは、闇の精霊(シェイド)のエド。

 つい先日、『一時神化』を果たしたので、闇の神という方が正しいのかもしれないが……そんな彼女が、ここ最近の僕の悩みの種。

 というのも……エドは精霊から神人に神化した際に、見事に『病んだ』。

 いや、この言い方は誤解を招くか……

 闇の中位精霊(シェイド)であったエドは、もともとの気質として、そういう部分を持っていた。だが、僕はそれをさほど問題とは感じていなかった。それは実体化していない精霊が何かをしても、僕に影響がなかったからだ。

 しかし、今は違う。

 ヒトの姿を得たことで、エドの病んでいる部分を目の当たりにしたというか……どうしても意識せざるを得ないと言うか……別にエドの事が嫌いになったわけではないのだが、少しばかり苦手意識が出来てしまったのだ。

 ―――とはいえ、それもそこまで大きな変化ではない。

 むしろ、大きな変化はこの後対面する少女がもたらすもの。

 まあ、そんな事はこの時の僕に知る由もないのであるが……





6章始まりました。

自分の中ではアニメでいう第二期(新シーズン)開始みたいな位置づけです。


6章終了までは毎日更新していく予定です。

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