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神様たちの冒険  作者: くずす
5章 Cランク冒険者、バカンスに行く
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意外な(?)再会

 僕たちはいくつかのグループに別れ、夏のビーチを思い思いに楽しむ。

 僕は最初、波打ち際ではしゃぐニーズたちに合流。

 後からやってきたリサやミントと一緒に水遊びや砂遊びに興じる。

 そして、それが一段落したところで、リサやニーズに泳ぎ方を教える。

 実のところ、今回の旅行のメンバーはわりと泳げない者が多い。

 ただ、泳げなくても問題はないんだよね。全員、人間ではないのだから……

 半竜半人(ドラゴニュート)のニーズは、もともと『(ドラゴン)』の特性を有しているので、身体能力が普通の人間よりもはるかに高い。もちろん心肺能力もけた外れである。

 そして、それ以外の者は皆、神人―――神様である。

 精神生命体なら呼吸する必要がそもそもないし、水中の活動もほぼ思いのまま。肉体を顕現している場合は、水の抵抗などで行動が制限されるものの、それでも溺れるようなことはない。

 精神生命体が作り出した仮初の肉体というのは、自分のイメージを元に再現しているだけなので、通常の生命活動に必要とされる行為のほとんどが不要になる。やろうと思えばできるが、やらなくても問題がないのだ。だから、わざわざ『水の中で息が出来ない自分』をイメージしない限り、溺れたりはしない。まあ、後天的に精神生命体になった僕たちみたいな者だと、かつての肉体のイメージを引きずって、『呼吸が必要な自分』を作り出すという事故みたいなこともないわけではないが……世界樹(ユグドラシル)()樹精霊(ドライアド)であるリサを始め、この場にいる半数は元から精神生命体なので、そういった事故とも無縁。

 いざとなれば、肉体の顕現を解除し、精神生命体の身体に戻れば済むわけであるし、そもそもほぼ全員が神の力を使えるのだから、大抵のことはなんとかなる。

 故に、技能として『水泳』を覚える事にたいした意味はなく、本当にただの遊びとして泳ぎ方を習いたいという事。

 まあ、バカンスに来ているので、それで問題ないのだが……



 リサやニーズがある程度泳げるようになったところで、僕は一旦、陸の上に戻る。

 昼食をどうするか、サクヤと相談しようと思ったからだ。

 いや、一応、『お昼は各自で適当に済ませる』という事になってはいたのだが……選択肢に幅がありすぎて迷ってしまうのだ。

 というのも……

 まず、食べる場所だけでも選択肢が3つほど。

 一つ目は海の家。飲食スペースもあるが、ものによってはテイクアウトも可能。

 二つ目は屋台。こちらはテイクアウトが基本。屋台ごとに販売しているものは違うが、軽くつまめるものが大半。

 三つ目はホテルのシーサイドカフェ。水着でも利用可能。他二つよりお値段は高め。

 そして、場所以外にも『誰と行くか?』という問題がある。

 総勢10名となると、全員で行動するのはなかなか難しく、シーサイドカフェであれば、なんとかワンチャンというところ。

 ただ―――


「そういう事なら、私たちと海の家を見に行ってみませんか?」

「そ、そうだね。どんなものが売っているのかもよくわからないし、それを見に行くだけでもいいんじゃないかな……?」


 サクヤと話をしていると、ビーチボールで遊んでいたリフス・サリア・ネイン・ノアさんという四人が集まってきて、その内の二人―――ネインとノアさんがそんな事を提案してきた。

 そして―――


「そうね、私はまだお腹もすいてないし、あっちがどんな感じなのか、見てきてくれるとありがたいわね」

「ニーズちゃんたちはまだ遊び足りないみたいだし、先に行ってくるといいんじゃない?」

「ん~……私も、と言いたいところですが、ここは二人に譲りましょうか。そのかわり……午後は、ね?」

「それじゃあ、そうさせてもらおうかな」


 反対意見も特にでなかったので、僕は二人と一緒に海の家に向かう事となった。




◆◆◆




 大きめのシャツとショートデニムという格好の二人を連れて、ビーチの中央にある海の家に向かう。

 お昼時という時間帯だからか、数件ある海の家の前はそれなりに人が集まっていた。

 と、そんな中に―――


「あれ?ルドナ君……でしたよね?」

「え……?トリーシャさん?」


 僕は見知った顔を見つける。

 いや、先に声をかけてきたのは、相手の方ではあったが……

 トリーシャ=イウス。

 プレデコークで一度会っただけの女性であるが、その時の印象というか―――アバン様が露骨に天敵認定している時点で、忘れることなど出来やしない。

 まあ、そうでなくとも、彼女はかなりの美人さんなので、忘れたりはしなかったと思うが……


「意外なところでお会いしましたね」

「いや、それはこちらのセリフだと思うのですが……」


 見知った顔に声をかけられた以上、それを無視するというのは中々難しい。

 そんなわけで、自然と世間話が始まるのだが―――いろいろと気になることもあったので、こればかりは仕方がない。

 ただ……


「ああ、私は仕事でこの街に来ているのですよ。いえ、今は見ての通り、お休み中なわけですが……」

「お仕事……ですか?」

「あれ?リーヴァちゃんから聞いていませんか?私は異世界から流れ着いた品々をメインに商売を営んでいるのです。この街に来たのもその為でして―――」


 トリーシャさんの話によると、この街は仕事の為に訪れただけで、それ以上でもそれ以下でもないとの事。

 まあ、海辺の街であるし、仕事が休みの時はビーチに来て遊んでいたらしいが……


「あ、でも、一応、仕事でもあるのですよ。自分の扱う商品の売れ行きや流行を調べるというのも大事なコトですし」

「え?」

「この水着ももとは私が売り出したものですよ」

「ええっ!?そうなんですか?あ、でも、確か水着ももとは異世界のものだったって……」

「はい、そういうことですね。ところで、こちらからも質問があるのですが……ルドナ君たちはやっぱりバカンスですか?」


 トリーシャさんの事情が一通り語られると、次は僕たちの番となる。

 とはいえ、僕たちの方に隠す理由もないので、普通にバカンス中であると答えたわけだが……

 見ればわかりそうな質問をトリーシャさんがあえて口にしたのは、理由があっての事。


「ん~。それだと難しそうですが……まあ、聞くだけ聞いておきましょう」

「はい?」

「ルドナ君たちも冒険者なのですよね?でしたら、私の依頼を受けてはもらえませんか?」

「え?依頼……ですか?」

「ええ、先ほども言いましたが、私は異世界から流れ着いた品々で商いをさせてもらっていまして、この街に来たのもその為です。つまり―――」

「この街に異世界の漂流物がある……?」

「そういうことです。この街の近辺で異世界と繋がった痕跡が多数見つかったのですが、肝心の漂流物の回収がいまいち進んでいなくてですね。一応、周辺の冒険者に依頼を出してはいるのですが、もともとあるかないかもわからないものですから、引き受けてくれる冒険者も少なくて……」

「う、う~ん……」

「―――お願いできませんか?」


 トリーシャさんが上目遣いで尋ねてくる。

 だが……


「えっと……すいません。僕たちはバカンスでここに来ただけですし、明後日には帰ってしまうので……」


 僕はそれを断った。

 いや、まあ、バカンス中に仕事を勝手に受けるわけにはいかないので、当然といえば当然であるのだが―――

 隣に立つノアさんやネインの視線が気になったというのも大きい。

 クロス・ホルター・ビキニのトリーシャさんの上目遣いは、男なら思わず頷きそうになるような破壊力を秘めていたのだが、だからこそ、下手な反応は出来ないというか……


(巨乳滅せよ、巨乳滅せよ、巨乳滅せよ……)


 ノアさんから呪詛に近い『心話』が漏れ出している状況で、おっぱいの誘惑に負けるところを見せられるはずもない。


「そうですか。それは残念ですね」

「すいません」

「いえ、無理を言っているのはこちらもわかっていましたし……あ、でも、何か珍しいモノを見つけた時は私の方に教えてもらえませんか?それなりの金額で買い取らせてもらいますので―――」

「ええ、それくらいならかまいませんよ」


 最後にそんなやりとりを交わし、僕たちはトリーシャさんと別れた。





5章が終わるまでは毎日投稿していく予定です。

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