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神様たちの冒険  作者: くずす
5章 Cランク冒険者、バカンスに行く
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それぞれの水着

 バカンス、初日。

 『ジョイヨーク』に転移した僕たちは、サクヤが予約してくれたホテルに向かう。

 『スターパール』と称されるジョイヨーク海岸の西側に立つ、ひと際目を引く豪奢な建物―――『スターサイドホテル』がソレであったわけだが……


「え?ホントにここ……?」

「そうだけど、何か問題ある?」

「いや、なんだか高そうなところだから……」

「まあ、安くはないわね。でも、グレードさえ無理しなければ、そこまで高いものでもないわよ。ちゃんと予算内で収まっているしね。それに、移動にかかる費用を回しただけだから心配することないわよ」

「ああ、なるほど……」


 いかにも高級そうなホテルの佇まいに二の足を踏んだ僕であったが、サクヤの言葉を聞き納得する。

 あまり旅慣れてない(基本シーケの街から動かない)僕たちは言われるまで気が付かなかったが、旅をする上で一番費用が嵩むのが移動の為のコスト。

 ユナニア王国は比較的治安のいい国ではあるのだが、街から街へ移動する際にはそれなりの危険がある。商隊であればまず間違いなく護衛をつけるし、乗り合い馬車なども同様。個人で旅をするような場合でも、お金に余裕があれば冒険者を雇う。お金を惜しんで命を落としたのでは何にもならないからだ。

 そして、それは陸路以外でも同じ。一定の航路を行き来する定期船などは比較的安価に思えるが、あれも乗り合い馬車と原理は同じ。大勢の人間で利用するから一人当たりの料金が安くなっているだけで、全体でみればコストはそれなりにかかっている。

 ちなみに、大きな街には転移魔法で転送してくれる『転送屋』という商売もあったりするが、料金がかなり高いので、一般人が利用することは滅多にない。

 サクヤが気軽に使っているので忘れそうになるが、転移魔法は魔力の消耗が大きいし、ゲートの設置だけでもそれなりの時間と費用が掛かってしまう。転移魔法を習得している魔術師は実はそこそこいるのだが、使う機会が滅多にないというのが実状なのだ。


 なんだか話がそれて来たので、ここらで話を戻す。

 いかに高級なホテルでも、ホテルはホテル。

 最上階にあるVIPルームとかなら話は違うのかもしれないが、僕たちが宿泊する客室は普通に上等な部屋というだけなので、特別はしゃいだりはしない。

 僕たちはそれぞれの部屋に荷物をおいて、再びロビーに集合する。

 ちなみに部屋割りは、僕・サリア・リフス/リサ・ニーズ・ネイン/ミント・サクヤ/ノアさん・ヌーモ……という感じ。今回はサリアやリフスたちも実体化したまま行動するので、その分の料金もきちんと払っている。精霊であるということで誤魔化す事も出来なくはないが、せっかくのバカンスでつまらないもめ事を起こしたくないし、これは必要な経費だろう。

 だから、何の遠慮もなくサリアやリフスたちを連れて移動。

 向かった先は更衣室である。

 海沿いに立てられたリゾートホテルである『スターサイドホテル』は、直接ビーチに出ていけるようになっていて、専用のシャワールームや更衣室も備え付けられていた。

 そして―――


 水着に着替えた僕は一足先にビーチに降り立つ。

 女のコの着替えというのは得てして時間のかかるものであるし、それを待つのも男の甲斐性。どんな水着を着てきてくれるのかを想像するだけでも楽しいし、全く苦ではないのだが……だらしない顔を見られてもアレなので、ビーチに備え付けられていたパラソルやビーチチェアなどを適当に確保しておく。

 いや、わざわざ確保する必要があったのかと問われると、微妙なところではあるのだが……

 季節は夏であるが、本格的なバカンスシーズンの前だからか、ビーチにはあまり人がいなかった。特にホテルの前、ビーチの西側には3組ほどの家族連れだけ。

 逆にビーチの東側だともう少し人がいるようであるが、このあたりはなにかしらの暗黙の了解があるのだろう。

 東西に長く伸びたビーチに明確な仕切りとなるような無粋なものはなかったが、更衣室や仮設トイレなどを東側に設置すれば、ホテルを利用しない人はそちら側に集まる。ビーチから溢れるほど人が集まるようなら、そうもいかないのかもしれないが、それだけの人が集まることなどまずないので、効果は十分あるだろう。

 ―――なんてことを考えていると……


「可愛いコは見つかりましたか?るー様」

「ホント、しょうがない人ですね~、マスターは」


 そんな感じで、背後から声がかけられる。


「あのね、二人と―――も……」


 声をかけてきたのはサリアとリフス。

 それはただの冗談であったが、だからこそ、いつものようにそれを窘めようとして―――僕は言葉を無くす。


「ん?」

「あれ?」


 ぶっちゃけ、二人の水着姿に見とれていた。


「……あ、ウン……可愛いコ、見つかったね。二人共よく似あっているよ」

「そ、そう来ますか……」

「ウフフッ、ずっと秘密にしておいた甲斐がありましたね」


 よくよく考えると剣の付喪神や精霊であった二人の水着姿なんて初めて見るわけで、それだけでもインパクトは十分。

 リフスは薄緑のフレアトップにバンドゥビキニという組み合わせで、可愛らしさの中にセクシーさをアピールという感じ。

 一方のサリアは、シンプルな黒の三角ビキニで、セクシーさに全振りという感じ。

 自分の見せ方をよくわかっている二人だけに、奇を衒わずに、自分に似合うと思った水着を素直に選んだのだろう。共によく似合っており、甲乙などはつけられない。

 しかし、二人にばかり目を向けていられない。


「お~!これが海なのか~!」

「待ってください、ニーズちゃん。走ると危ないですよ」

「あはは、元気だね~」


 第二陣はニーズとネインとリサの三人。

 初めて目にした海に大興奮のニーズはそのまま波打ち際に突貫し、それを追いかけるネインも続く。その後を歩いてきたリサだけが僕たちの方にやってくる。


「お待たせ、るーくん」

「いや、全然待ってないよ。それより、ニーズのこと任せきりにしちゃって悪いね」

「それは仕方がないよ。ニーズちゃんも一応女のコなわけだしね。それに、私一人で面倒を見ているわけでもないから大丈夫だよ」

「そっか」

「それよりも―――」

「―――リサの水着は可愛い感じだね。もちろんよく似合っているよ」

「えへへ♪ありがと、るーくん♪」


 明らかに褒めて欲しそうなサインを出すリサに、僕は間髪いれずに正直な感想を口にする。

 ただ、全てを伝えたかというとそうでもない。

 リサの水着は花柄のワンピースで、可愛らしい印象が強いのは確かである。だが、シンプルなデザインの水着がリサの理想的なボディーラインを引き立たせていて、妙に目を引き付ける。

 感覚的なものなので言葉にするのは難しいが、直接的なエロスではなく、間接的にフェティシズムを刺激する感じ……といえば多少は伝わるだろうか。

 故に、あまりマジマジ見ているのは危険。

 そんなわけで、波打ち際で戯れるニーズとネインに目を向ける。

 ニーズとネインの水着は『すくみず』と呼ばれる水泳訓練時に用いられる実用的なもの。外見的に半竜半人(ドラゴニュート)に近いニーズのすくみずは、お尻の方にしっぽを通す為の穴があけられているようであったが……


「あっちの二人はすくみずにしたんだね」

「店員さんが熱心にすすめてくれてね。レジャー目的だから可愛い感じの方がいいかなとも思ったんだけど、『機能美』ってフレーズがニーズちゃんのツボにハマっちゃったみたいで。ネインちゃんはそれに付き合わされた形だけど……」

「あ~……」


 訓練の時に着用するぐらいであるし、『すくみず』には『機能美』が備わっているというのも間違いではない……のか?

 そのあたりのことは判断できないが、元気にはしゃぐニーズには似合っていると思う。

 それに、大人しいネインにも似合っている気がするので、店員さんのおすすめもあながちまちがってはいないと思う。

 とはいえ、女のコの服―――特に今回のような普段身につけない衣装は評価が難しい。

 そもそも『水着』自体、どこか別の世界から持ち込まれたもので、もともとこの世界の住人には馴染がなかったもの。いまでこそ広く使われるようになってはいるが、登場してからの歴史はまだまだ浅く、何が正しいとか簡単には言い切れない。

 まあ、ファッションはもともと感性に左右されるものだし、絶対不変の正解などない気もするが……


 ファッションに正解はないのかもしれない。

 だが、間違いというのはある。

 僕は最後のメンバー……サクヤ、ミント、ノアさん、ヌーマの四人が来たことで、それを認識した。


「どう?るー」

「ええと……どうですか?」

「サクヤはセクシーな感じで似合っているし、ミントもかわいい感じでとってもいいと思うよ」


 四人のうちの二人、サクヤとミントは問題ない。

 サクヤの水着はホルターネックのビキニでかなり際どい感じであったが、モデル体型のサクヤに良く似合っていたし、わりといつもそんな感じの服装なので、そこまで気にならない。

 ミントの水着はオレンジのかわいらしいワンピース。フリルなども多めで少し子供っぽくはあったが、小柄なミントのかわいらしさを引き立てている。

 問題は残りの二人。


「あ、あうっ……」

「はぅぅっ……ど、どうですか、ご主人様……」

「い、いや、どう……と言われても……」


 ノアさんとヌーモはマイクロビキニ。それもかなりギリギリまで布面積を減らしたもの。

 ここまでくると、セクシー云々ではなく、単純にエロい。

 だが、だからこそ問題なわけで……


「……アウト」

「……え……?」

「その水着はダメです」

「あ、あぅ……そ、そうですか……」


 僕は二人にNGを出す。

 しかし、それはノアさんたちに対するものではない。


「けしかけたのはサクヤと……ミントもかな?」

「別に嘘は言ってないわよ。るーはこういうの、好きでしょ?」

「見るのが僕だけならね」

「はいはい、そうでしょうとも。というわけで、二人はこれも身につけてね」


 僕の言葉を受けて、サクヤは魔法空間から大きめのシャツとデニムのショートパンツを取り出し、二人に手渡す。


「ルドナちゃんって、ホント、独占欲が強いよね……」

「それは否定しないけど……ミントは二人を売ったよね?」

「え、ええと……な、なんのことかな……?」

「後でお仕置きだからね」

「はぅっ……」


 その隣でミントとそんなやりとりを交わす。

 ついこの間まで、サクヤにからかわれるポジションはミントであったのだが、ノアさんが僕の恋人となったことで、弄られ役のポジションがノアさんに移行。ミントの弄られる機会が激減した。

 ミントからすれば、ノアさんは格好のスケープゴートだったのだ。

 まあ、そうでなくても、ノアさんは弄りがいのある性格をしているので、遅かれ早かれというところではあるのだが……

 ただ、ノアさんの方にも全く問題がないわけじゃない。

 今回の事はサクヤとミントに乗せられた結果なのだろうが、なんやかんや言いつつ、最後は自分から乗っちゃうタイプなんだよね、ノアさんも……

 負けず嫌いなせいか、煽られると弱いというか、張り合っているうちに我を忘れちゃうというか……

 それを考えると、一緒にいるヌーモの影響も大きい。

 ヌーモは一見、控えめで大人しい感じの女のコであるが、恋愛事に関してはかなり積極的。サリアやリフスのように自分からグイグイ迫ってくるタイプではないが、いざという時はちゃんと自分をアピールできるコで、結構大胆な事も出来たりする。

 それこそ、今回のような際どい衣装で誘惑するとかも全然アリ。

 ヌーモ一人だけなら、サクヤたちにけしかけられなくても、同じような水着を選んでいた可能性があった。ただ、その場合、ここでは披露せずに、二人きりになった時に隠し玉として使っていたと思うが……

 そんなヌーモをノアさんは強く意識しているようで、今回のようなことも実はそれなりの頻度で起こっている。まあ、二人の性格上、ガチガチに張り合う感じではなく、相手がするなら自分も……という感じであるが……

 この二人、似てないところもそれなりに多いのだが、似ている部分も結構多く、相性そのものは良いんだよね。それがおかしなところでも発揮されているというだけで……

 もっとも―――


「ええと、ごめんね。でも、こういうのは他の人の目のないところで……ね」

「まあ、そうしないと、るーも我慢できないだろうしね」

「い、いや、流石にそれは―――」

「夢や妄想は昼間であっても見る事は出来るのよ?」

「よ、夜までなんとかガマンするので、これ以上の誘惑はカンベンしてください」


 エロス方面で一番突き抜けているのは、やっぱりサクヤなんだよね。

 ノアさんたちに過激な水着を薦めたのも、その後の展開を読み切った上での事だと思うし……





水着回です。

今回はヒロインたちに水着を着せたいというだけで始めた話なので、この時点で目的はほぼ達成しています。まあ、流石にそれだけだとお話にならないので、話自体は続くのですが……


5章が終わるまでは毎日投稿していく予定です。

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