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神様たちの冒険  作者: くずす
5章 Cランク冒険者、バカンスに行く
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精霊たちの抽選会

 サクヤが提案したバカンス計画は、皆の了承を得て、問題なくまとまる。

 いや、全く問題がなかったわけではないが……

 最大の懸念であったノアさんの参加がクリア出来た時点で、山場は超えている。

 ノアさんとしては、日ごと忙しさの増す『銀のゆりかご亭』を目にしているだけに離れがたいところではあったのだろうが、サクヤが口にしたように、本格的なバカンスシーズンに突入するとそれこそ休む暇もなくなることが予想できる。その前にリフレッシュすべく、休みを取るというのは間違いではない。

 なによりこの計画は、もともとノアさんに配慮したもので―――


「そもそもノアちゃんにそんな余裕があるの?リサちゃんたちに比べて大きく出遅れているのだから、こういう機会に少しでも差を詰めていかないとダメなんじゃないかしら?」


 ―――という、ナナエさんの後押しもあった。

 まあ、それを隣で聞かされた僕としては、微妙に反応に困ったりもしたのだが……



 と、ともかく、バカンス計画はまとまった。

 目的地は『ジョイヨーク』という海沿いの街。

 シーケからは馬車で二日ほどのところにある観光地で、『スターパール』と称される綺麗なビーチが有名。

 日程は2泊3日を予定しているが、これは転移魔法が使える僕たちだから可能なこと。

 観光目的の旅行で転移魔法を用いるのは好みが分かれるところだが、今回のように限られた日程の中でとなれば、有用なのは間違いない。国内での転移であれば面倒な入国審査も必要ないのでなおさら。

 最後にバカンスに向かうメンバーであるが……一応、僕・リサ・ミント・サクヤ・ノアさん・ニーズとなっている。

 何故、一応なのかというと、サリアやリフス、ヌーモなど、普段、実体化していないメンバーもいるからである。

 そして、その非実体化組に、今、新たな問題が巻き起こっていて―――


 僕とリサの前で、四人の中位精霊が真剣な面持ちで向き合っている。

 火の中位精霊(サラマンダー)のサーマ、水の中位精霊(ウンディーネ)のネイン、闇の中位精霊(シェイド)のエド、光の中位精霊(ウィル・オ・ウィスプ)のルシウスであるが―――要は未だ『一時神化』していない精霊たちだ。

 そして、向かい合うリサの手には四本のくじ。

 その中で『当たり』はひとつ。

 四人は小さな手を伸ばし、自分の選んだくじを引き―――


「やりました」


 ―――当たりを引き当てたネインが、控えめなガッツポーズを見せる。


 まあ、何が行われていたのかと言うと、誰を『一時神化』させるかという抽選が行われていたのだが……

 サリアやリフスを見ていればわかるが、『一時神化』し、神人となった者は、肉体を保有する精神生命体に存在が変化する。もともと肉体を持たない存在であった為に普段は実体化をしていないだけで、その気になればいつでも実体化することが出来るのだ。更に『人化』の能力もおまけでついてくるので、人の姿を容易にとれるようになる。

 僕に好意を寄せている精霊たちとしては、是非とも手にいれたい『力』であるが―――今回ばかりは少し特殊。とはいえ、そんな大層なものでもなく、バカンスに行くのなら、自分も『一時神化』して、肉体のある状態で行きたいという、ある意味分かり易い要求であった。

 ただ、それには問題もある。

 大量の『マナ』の譲渡は思いがけない危険を招く可能性があるからだ。

 具体的にいえば、ニーズの前身である邪竜がソレで、邪竜の生まれた経緯などを思い出してもらえれば分かり易いかもしれない。

 それ故に、リサは余程の時でないと『一時神化』を使わないようにしていたのだが……いつまでも抑えておけるものでもない。

 だからこそのくじ引き。

 四人全員を『一時神化』させるとなるとそれなりの量の『マナ』が必要となるので、くじで当たりをひいた一人だけ『一時神化』させるという事で話がまとまったのだ。

 いや、最初は僕が指名するって話であったのだが―――これは慎んで辞退させてもらった。誰を選んでも角が立つのが目に見えているし、そういう選択ができないのが自分であると自覚もしていたからだ。

 そして、そのくじ引きの結果、水の中位精霊(ウンディーネ)のネインが『一時神化』を受ける事になったのだが……



「どうですか?るー様」

「あ、うん……可愛いと思うよ」


 『一時神化』し、人の姿を得たネインに、僕はなんとかそう答える。

 いや、うん、嘘は言ってない。言ってないのだが―――


「子供?」

「私よりも小さいですね……」


 呼ばれてもいないのに姿を現したリフスとヌーモが、そんな評価を下していた。

 というのも、ネインの見た目はどう見ても子供のソレであったからだ。


「ええと……リサ?」

「私は何もしてないよ。『マナ』だって、リフスちゃんたちと同じだけ分けてあげたしね。だから、これはネインちゃんの個性だよ」

「そ、そう……」

「というか、私たちとそこまで変わらなくないかな?」

「あ~。まあ、そうなんだけどね」


 ただ、このあたりは感性の問題なので、人によって受け取り方は変わる。

 ネインの見た目はニーズと同じくらいの子供のソレであったが、僕やリサも見る人によっては子供に見えるだろうし、リフスやヌーモもそれは同じ。


「ヌーモちゃんとか、身長だけならほとんど差はないでしょ?」

「いや、そうかもしれないけど……ヌーモは『アレ』がね……」

「ああ、おっぱい大きいもんね、ヌーモちゃんは」

「……ウン……」


 特にヌーモは巨乳ロリって感じなので、そこに目を向けなければネインとは大差がない年頃に見える。

 それに―――


「そもそもるーくんって、そういうの気にしない人でしょ?なら、何か問題ある?」

「いや、問題はないんだけどね……いろいろと気をつかうってだけで……」

「そこはしょうがないね~。るーくんの自業自得だし」

「まあ、そうなんだけどね」


 ネインの見た目に戸惑いはしたものの、話としてはそれ以上でもそれ以下でもない。

 『一時神化』する前からネインは僕の彼女の1人であったし、見た目で扱いが変わるというものでもないのだ。





5章が終わるまでは毎日投稿していく予定です。

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