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神様たちの冒険  作者: くずす
4章 Dランク冒険者、勇者と魔王の仲を取り持つために策を弄する
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騒動の終結

 刺客たちを捕縛し、『さて、どうしたものか?』と話し合っていると、転移魔法を用いて、バンサーさんがやってきた。

 バンサーさんは事の顛末を全てうちあけ、僕たちに『同胞たちが迷惑をかけた』と謝罪してくれた。

 そのうえで、後の処理は自分たちが請け負うと申し出てくれたので、僕たちはそれを素直に受けいれた。

 明らかに国家単位の御家騒動であるし、冒険者の僕たちが口を出すような話ではない。巻き込まれた事による迷惑料を受け取って、あとは全てお任せするというのが無難な選択肢なのだ。

 ちなみに、このあたりに関してはドレクさんたちも似たような判断をしたようで、刺客たちから受け取っていた前金に、ワイバーンからの剥ぎ取り品(一部)、さらに迷惑料という名目で相当の額が支払われる事となった。まあ、大部分は口止め料なのであろうが……彼らも一応裏社会に関わりのある人たちなので、そのあたりはわきまえている。

 ただ、そんな裏社会の人間だからこそ、僕たちからすれば少々問題があるのだが……

 冒険者の視点でいえば、ドレクさんたちは間違いなく密猟者。犯罪行為を行っている時点で『討伐』の対象になりえるし、普通に遭遇していたら『魔物』と同等の扱いである。

 とはいえ、『魔物』の中にも話の通じる者もいるわけで―――

 流石に共闘までしておいて、今更ギルドに突き出すとかはできない。

 結局、こちらも『なかったことにする』というのが、お互いに無難な選択であった。


 そんなわけで―――バンサーさんの転移魔法で地上に送ってもらう。

 もちろんドレクさんたちとは別々。

 ちなみに地上に送ってもらったのは、ギルドにクエスト達成を報告して、報酬を受け取る為である。

 しばらく街で時間を潰した後、後始末を終えたバンサーさんと再度合流。

 転移魔法で『プレデコーク』に飛ぶ。

 一応の目的は一連の出来事の詳細を聞くということであったが―――



「兄ちゃん、あの―――」

「うん、行ってくるといいよ」


 カズキ君とリーヴァちゃんを対面させるのが本当の狙い。

 ただ、これには少し問題もあって……


「子供とはいえ、寝ている女のコの部屋に男のコを送り込むのはどうかと思うのですが……」

「それを言うなら、魔王の寝室に無許可で勇者を通した方が問題になりそうだけど……」


 現在のリーヴァちゃんは就寝中。

 事件の首謀者を処罰するためにいろいろとあったそうで、かなり疲れているらしい。

 まあ、だからこそ―――というのもあるのだが……


「今のところ、誰も何も命じられておりませんからな」

「ええ、本日は何も伺っていませんから」


 ミントやサクヤの指摘に、バンサーさんはしれっとした顔でそんな事を宣う。

 このあたりは流石悪魔の国(バンサーさんは吸血鬼だが……)で、メイドさんたちも自分の主を罠にはめるのに全くの躊躇がない。


「命令がなければいいんだ……」

「地上の者と我々ではいろいろと価値観が違いますからな。それに悪魔たちの社会は契約が第一。契約の元に下された命令は絶対に守らなければなりませぬが、契約も命令もない事柄に関しては各々の好きにしてよい、という風潮なのですよ」

「魔王様は確かに偉い人ではあるのですが、国に属する契約のもとに各々の役割が定められているだけで、国民一人一人と対等の立場なのですよ」

「君臨すれども統治せず、でしたかな?我らのような超克者の住まう国はだいたい似たような感じでございますよ。だからこそ、まだ幼い陛下の戴冠も認められたわけですしな」

「なるほど、それで―――」


 そんな感じで話をしつつ、僕たちは時間を潰す。

 賽が投げられた以上、後のことは本人たちに任せるしかないのだ。




◆◆◆




 そう……

 賽が投げられた以上、本人がどうにかするしかない。


「ええと、じゃあ―――ルドナ君の『マナ』で神化した私の魂は、ある意味、ルドナ君の『マナ』でもあるって事……?」

「まあ、そんな感じです。僕が譲渡した『マナ』を一時的に返してもらうことで、ノアさんの神様としての力も借りることができるので―――」


 カズキ君を待つ間、僕たちはお城のゲストルームを使うように言われたのだが―――僕たちは僕たちで話し合うべきことがある。

 もちろん、ノアさんの問題だ。

 だから僕は、ノアさんにあてられたゲストルームを訪れていたのだが……


「ん~、その言い方だと誤解しちゃうんじゃないかな?」

「ぐっ……」

「るーが言いにくいのなら、私がはっきりと言ってあげましょうか?」

「そうですね。こういうことはきちんと説明しておかないと。後になればなるほど、傷が大きくなりますよ?」


 部屋にはリサ・ミント・サクヤの三人もいて、正直、やりにくい。

 まあ、サリアやリフスが顔を出さないだけマシなのであるが……


「え?あの……何か間違っていましたか?」

「いや、認識としてはそれほど間違っていないだけど……僕が譲渡したとはいえ、ノアさんの魂に宿った『マナ』はノアさんのものなわけで―――」

「ノアさんの魂をるーくんが好きに出来るっていうのが問題なんだよ~」

「魂には自分を形作るあらゆる意思……あらゆる情報が詰まっているからね。知ろうと思えばどんな秘密も知ることができるのよ」

「それどころか、もう一人のノアさんを作り出すことも出来ますよ。何しろ、エネルギーとしては元のノアさんの10倍ほどはありますし……」

「ハイ……?」


 3人の言葉にノアさんが首を傾げる。

 つい先日まで普通の人であったノアさんに、神の領域の話を即座に理解しろというのが無茶。

 だからこそ、サクヤやミントは具体的な例をあげているのだが……


「ざっくり言うとね。るーくんの一時神化で、ノアさんの魂は10倍―――10人のノアさんになったの。でも、普段、肉体動かす分には今まで通り一人分の魂で十分だから、他の9人は基本待機しているって感じかな?」

「問題はるーがこの待機している9人のノアさんを自分で動かす事が出来るっていう事よね」

「まあ、完全に自由に動かせるわけではないようですが……自分と全く同じ存在がルドナちゃんの好きにされるかもしれないって状況なんですよ。ノアさんは平気なのですか?ルドナちゃんって、その……かなりHですよ?」

「……えっ……えええ~~~~~~~~~っ!?ちょ、ちょっと待って!ちょっと待って!それって!それってぇぇぇ―――」


 己の置かれた危機的な状況に気が付いたのか、ノアさんが奇声をあげる。

 いや、自分で言うようなことではないと思うが……


「い、いや、あの、なんでいきなりそんな話に……?少し話が飛びすぎじゃ―――」

「そんなことないでしょ~?」

「さっきも言ったけど、るーがその気になればノアさんも気持ちも読めてしまうのよ?」

「というか……今日の『接触』でそのあたりもおおよそはわかっているんじゃないですか?」

「そ、それは……その―――」

「あ、あうっ!ま、ま、まさか……」

「―――すいません。決して、そういうつもりではなかったのですが……」


 僕は観念し、ノアさんに頭を下げる。


「一応、るーを擁護しておくと、本当に心を覗くつもりなんてなかったのよ。ただ、盾の神―――ノアさんの力を借りるためには、ノアさんの魂を取り込んで、自分が扱えるように調整する必要があったからね」

「魂の接触、及び解析の結果……というわけですね。流石にどの程度の情報を得たのかまでは、私たちにはわかりませんが……」

「まあ、あの場面だとどうしても必要だったしね。仕方ないね」

「……それ……は―――」


 頭を下げる僕の代わりにリサたちが僕を擁護してくれるが、ノアさんは俯き、黙りこんでしまう。

 だが、そんなノアさんにリサが斬り込んでいく。


「―――というか、大事なのはそこじゃないんだよね~」

「……え……?」

「ノアさんはまだちゃんと理解できてないみたいだけど……るーくんがいつでも呼び出せるノアさんは、ノアさん本人―――本物とか偽物とか、そういう話じゃないんだよ?」

「え?ええと……」

「呼び出せる方のノアさんも本人なんだから、告白の返事とか、そっちから聞いても問題ないよね?」

「……え゛……」

「どっちも本人で上も下もないんだもの。ノアさんがどう考えているのかは私たちにはわからないけど、どっちに聞いても答えは同じでしょ?だから問題は、呼び出せる方のノアさんがるーくんの呼びたい時に呼び出せちゃうって事なんだよね。例えば……ベッドの中とか」

「はひっ?」

「もちろんそれでも断れるっていうのならいいんだよ。でも、そうじゃないなら危ないな~って話でね。るーくんはこう見えて、結構強引なところもあるから♪」

「普段は穏やかな対応を心掛けているだけで、根っこはわりと暴君タイプなのよね。一度、欲しいと思ったものは、どんな手段を使っても手に入れるタイプだし」

「それが必要だと思えば、プライドとか投げ捨てて頭も下げちゃうんですよ。だから、なおさら厄介なんですが……」

「ええと……」

「要するにね、断るならハッキリと断らなくちゃダメって事。そうじゃないとノアさんも安心できないと思うしね」

「……安心?」

「『一時神化』の解除はノアさんに譲渡した『マナ』を回収する事で行われるんだよ。でも、それって、9人分のノアさんの魂がるーくんの手に渡るってことだから……きちんと処理しておかないとダメでしょ?」

「それは……そうですね」


 それで語るべきことは語ったという事だろう。

 リサたち三人は僕に視線を送る。

 まあ、ここまでお膳立てされて、今更僕が逃げるわけにもいかない。


「……ノアさん、改めて言わせてもらいます。僕は貴方が好きです。だから、僕と……僕たちと一緒に来てください」


 僕はノアさんに手を差し出し、頭を下げる。

 そして……


「よ、よろしくお願いします……」


 ノアさんは真っ赤な顔を俯かせたまま、僕の手をそっと握った。





※4章が終わるまでは毎日投稿予定です。

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