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神様たちの冒険  作者: くずす
2章 Eランク冒険者、クランを再建する
19/155

少女たちの秘密会議

 僕がニーズと街を散策していた頃、リサ・ミント・サクヤの三人は『精霊の森』に集まり話し合いを行っていた。


「それで、マリサ様たちの方はどうでした?」

「う~ん。預かるのは構わないとは言ってくれたんだけどね。でも、ニーズちゃんが嫌がるんじゃないかって」

「ニーズちゃんが?」

「ニーズちゃんがパパの事を敬遠しているんだよね。パパが構い過ぎるから……」

「構い過ぎる……ですか?」

「ニーズちゃんって、私の意志が生み出したもう一人の私、あるいは子供のような存在でしょ。パパからすれば孫が急に出来たみたいな感じらしくて、ニーズちゃんを可愛がりたくて仕方がないみたいなの。でも―――」

「それが行き過ぎて、当のニーズちゃんからはウザがられていると……」

「うん」


 議題の中心はニーズで、『自分たちが冒険に行っている間、誰かに預かってもらう事は出来ないか?』という事なのであるが―――


「まあ、これに関しては私も少し責任を感じているんだけどね」

「責任?」

「パパって私に甘いんだけど、それも仕方がないところがあるんだよね。親子のスキンシップとかほとんどしてこなかったし……」

「それはちょっと意外ですね」

「いや、そうでもないと思うよ。だって、今の精神体(わたし)が生まれるまで、私の身体は世界樹―――見た目はただの木だったわけだし……親子のスキンシップをするのは難しかったんじゃないかなぁ」

「ああ、そういう事ですか……」

「だからパパは、私に自我が目覚めるのをずっと楽しみまっていたんだけど……私は皆と遊びたくて自我に目覚めちゃったから―――」

「自我が目覚めたリサは、私たちと遊ぶ事に夢中になっていたと……」

「……そ、それは少し……切ないですねぇ……」

「今はパパの気持ちもわかるんだけどね。でも、同じ失敗を繰り返すのもどうかなぁと思うんだよね。ニーズちゃんも私と同じで、皆と遊びたくて生まれてきたんだし……」

「あ~……」

「難しいところではあるわよね」

「そういうわけで、パパやママは構わないと言っているんだけど、ニーズちゃんが素直にOKしてくれるかどうかが―――」

「そうすると、やはり私の家で預かってもらう方がいいのでしょうか?教会なら子供たちも結構いますし……」

「でも、ニーズちゃんをいきなり子供たちの中に放り込むのも怖くない?力はだいぶ減少したとはいえ、あのコはドラゴンよ?」

「「う~ん……」」


 三人の話し合いは難航する。

 そう簡単に解決するのなら、わざわざこうして話し合う必要はないのだ。

 だが―――三人が集まっていたのは、それだけが理由ではない。


「……まあ、この話は一旦保留ね。それよりも先に話さなきゃいけないこともあるわけだし……」

「ルドナちゃんたちが帰ってくる前に、話さないといけないですからね」

「そうだね」


 三人は僕の前では出来ない話をするために、僕にニーズを預けたのだ。

 もちろん、僕がそれを知る事はないのだが……


「それで、リフスちゃんはなんて?」

「一応、約束は取り付けたよ。あのコたちも最初からそのつもりだったみたいだし……私たちより先にるーくんに手を出すのはマズいって考えているんだよ。ただ、だからこそ、問題もあって―――『夢の世界や妄想の世界ならアリなんだよね?』とも言っていたけど……」

「やっぱり、そうなりますよね」

「まあ、自分たちがしておいて、あのコたちだけダメなんて言えないものね」

「これに関してはるーくんに期待しても無駄だろうしね。リフスちゃんたちが本気で言っているとわかったら、るーくんも受け入れちゃうと思うし……」

「ルドナちゃんは女のコに甘いから……」


 そうして始まったのは、女の子限定の秘密会議。


「あと、リフスちゃんたちの中で『四番目』を巡る争いが激化しているのが問題かな。やっぱり、リフスちゃんを『一時神化』させたのははやまったのかも」

「あの状況だと仕方がなかったと思うわよ。心情的にも理解はできるし」

「全力で邪竜の相手をしてあげたから、ニーズちゃんが生まれるという奇跡が起きたんだと思いますしね……根拠はないですけど……」

「そう言ってくれるのはありがたいけど、問題はそこじゃないんだよね」

「るーのハーレムが確実に出来上がりつつあるわよね」

「最初からわかっていた事ですけどね……」

「新しい世界の創造を考えると、六属性の精霊がついてきてくれるのはありがたいんだけどね。でも、それだけで9人になっちゃうね」


 議題となっているのは、リフスやサーマといった僕に力を貸してくれている中位精霊たちの事。

 彼女たちはリサの命を受けて、僕の身を守ってくれていたのだが―――それは彼女たちの意志でもある。

 そして、彼女たちなりの『打算』もある。

 精霊―――特に自然から生まれた精霊の多くは、精神生命体であり、肉体を持たない。一時的に魔素で肉体を構築することはあるが、それは仮初の肉体であり、物質的なものではないのである。

 だが、『神化』して『神人』となれば、精神生命体でありながら、物質的な肉体も保有できるようになる。

 つまり、愛する者と×××をして、子供を身ごもる事も可能になるのだ。

 それを夢見る彼女たちが、願いを叶えてくれるリサに従うのは、ある意味当然の事だった。

 そして―――


「―――というか、リフスちゃんたちだけの問題じゃないわよね。こういう話はまだ早いとは思うけど……」

「ニーズちゃん……ですよね……?」

「決めるのはニーズちゃんなんだけど……1年後には世界を渡るわけだしね。その時、ニーズちゃんが私たちと一緒に行きたいと言うのなら……私はそれを認めるつもりだよ」

「でも、そうすると―――」

「十中八九、るーのハーレムに加わるんじゃない?ニーズちゃんが恋に目覚める前に、私たちの誰かに子供でも生まれれば、話は変わるのかもしれないけど……」

「男のコがるーくん一人だけなんだから、そうなる可能性は高いよね。かといって、他の男のコを『パートナー』にしたくはないし……ある程度落ち着くまでは『人』を作り出すのもNGとなると……サクヤちゃんの言う通り、男のコを運よく授かる奇跡にかけるしかないと思うよ。望みは薄いけど……」


 この話はニーズも一部関わっている。

 ただし、ニーズはまだ生まれたばかりの子供なので、リフスたちとは事情が違う。

 違うのだが―――


「ニーズちゃんは私の心から生まれた存在だし、私の分身のようなものだから……るーくん以外に男のコを好きになるというのも想像しにくいんだよね」

「以前、言っていたアレね。自分の『意識』と『マナ』を分け与えた分身は、自分の一部のようなもの。記憶や人格が全く別だと頭で理解できても、心の方はそうはいかない……だったかしら?」

「ニーズちゃんにはニーズちゃんの意思がある……それはわかっているんだけどね。それでもニーズちゃんがもしるーくん以外の人を好きになったらって考えると、正直、もやもやするんだよね。そうなるぐらいなら、るーくんとくっついてくれた方がいいかな~って……」

「……難しい話ね……」

「お互いに分身を作り出して、その二人が結ばれるとかだと、そこまで気にならない……というか、むしろ、微笑ましい気もするんだけどね」


 三人はこれから先の未来―――世界を渡った後の事に考えを巡らせていた。


「だから、ある程度世代が進むまでは『人』を作り出す事はしないと……」

「そこはるーくん次第だけど……多分、無理じゃないかなぁ」

「るーは独占欲が強いからね。たとえ、自分の作り出した分身だったとしても、自分の彼女に手を出したりしたら、絶対に許さないでしょ」

「でも、さっきのリサちゃんの話みたいに、お互いの分身同士ということなら―――」

「うん。それはアリだと思うよ。ちゃんと思惑通りに行くならね」

「ミント、よく考えて。姿も記憶も人格も全く違うもう一人の自分が、必ずるーの分身を好きになるとは限らないでしょ?私たちは四人いるんだから。こんな事考えたくもないんだけど、万が一、私の作り出した分身が貴方の作り出した分身に好意を抱いたとしたら―――」

「……ナイですね」

「でしょ」

「……るーくんはアリとか言いそうだけどね」

「……なんで男のコは女のコ同士が絡むところを見たがるのかしらね……」

「まあ、それを言うと、女のコの中にも男同士で愛し合うのが好きってコは結構いますしね……」

「というか、私、サクヤちゃんはそういうのもOKなんだと思っていたんだけど……」

「私にそんな趣味はないわよ。ただ、女のコ同士のスキンシップにそこまで抵抗もないし……るーがそれで興奮してくれるならいいかなって……それだけよ」

「あ~……」

「なるほど……」


 女のコだけだから、結構踏み込んだ話も出る。

 そして、男の僕の前では見せないような一面も……

 少なくとも普段のサクヤはミントをからかう側であり、こんなふうに弱みを見せたりはしない。


「そ、それよりも……ニーズちゃんに関しては成り行きに任せるしかないと思うわよ?それこそニーズちゃんの気持ち次第なんだし……リサだって、無理やりニーズちゃんの意思を変えるつもりはないんでしょ?」

「そうだね。そこは大原則だよね」

「だとしたら、そこまで深く考えない方がいいのかもね。ニーズちゃんは子供なんだから……私たちとしか交流がないというのもダメな気がするし、子供はやっぱり子供同士で遊ぶのが一番なんじゃない?」

「ん~。そう言われると、それも一理あるような……」

「だとすると、やっぱり私のウチで―――」

「それもアリだとは思うんだけど……ひとつ、私にいい案があるのよね」


 ―――とはいえ、この3人の中で一番知恵が回るのはサクヤである。

 世間知らずな樹精霊と生真面目な神官を言葉巧みに誘導するなど、サクヤには赤子の手を捻るよりも容易いのだ。


「いい案?」

「それはどんな?」

「ちょうどいい機会だし……皆で一緒に暮らしてみない?」

「……え?」

「……え?」

「「ええええええええ~~~~っ!!」」


 まあ、サクヤの口からもたらされた提案は、それくらい衝撃的な爆弾発言であったわけだが……





2章の終わりまで下書きが書けたので、投稿ペースをあげる事にしました。


主人公が語り手なので、こういう主人公が登場しないシーンというのは難しいですね。

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