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神様たちの冒険  作者: くずす
9章 Bランク冒険者、クラン指名の依頼を受ける
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チーム分け

 宿に戻って来たところで、クランメンバー全員で会議を行う。

 今回の依頼はコウベキオで出没するようになったエンヴィーシャークの討伐と、その発生源と目される海底神殿の調査という二面作戦なので、クランメンバーをいくつかのチームに分ける必要があった。

 ただ―――


「―――とのことだけど、エンヴィーシャークの特性を考えると、討伐チームには出来るだけ人員を配置したいわね。街の防衛にはこの街の冒険者たちが当たることになっているけど、それもどこまで当てにできるかわからないし……」

「どういう事っすか、(あね)さん。この街の冒険者はそんなにダメなんですかい?」

「いいえ、そういうわけじゃないわよ。ただ、エンヴィーシャークは見た目サメの魔物だけど、その特性はゴースト……特にレイスなんかに近いの。普段は海中に潜んでいるけど、空中も移動できるし、転移能力も持っているわ。まあ、転移の方はそうそう使えるわけではないみたいだけど、一定の条件がそろえば、このサメはどこにでも現れる可能性があるのよ。そんな相手から街の人たちを守ろうと思ったら、人手なんていくらあっても足りないでしょう?」

「なるほど」


 サクヤが説明したように、エンヴィーシャークはどこにでも現れる可能性があるので、防衛するのが難しい相手と言えた。


「これが一体や二体なら、あえておびき寄せて倒すという手もあったんだけど、数十体のエンヴィーシャークの群れとなるとそれもなかなか難しいわね。サメの姿をしているからか、陸上での活動時間はそこまで長くないようだし、()()で釣るのも限度があるわ」

「それなら海に出て討伐すれば―――」

「海棲モンスターの群れに海で戦いを仕掛けるとなると間違いなく大事になるわけだけど、領主さまもお姫様もまだそこまでの段階ではないと踏んでいるのではないかしら。今のところ、人的被害はわずかなわけだし……」

「決戦を仕掛けるにはリスクの方が大きい―――いや、現状のデメリットが小さいと言う方が正しいか……」

「経済的な損失はそうでもないけどね。人的被害を抑えるだけなら、対処方法がないわけではないというのが難しいところよね」


 更に言うと、エンヴィーシャークの被害は比較的簡単に抑え込む事が出来るという点が事態をややこしくしている。

 ギルスさんも言っていた事だが、このサメは仲睦まじい男女を標的にする―――つまり、男女が一緒にいなければ襲って来ないのである。

 ただ、それも現状では……という話。


「にしても、おかしなサメだよなぁ。カップルしか襲わないっていうのは……」

「エンヴィーシャークはレイスと同じで『エナジードレイン』系の能力を持っているのよ。つまり、直接、生命力や精神力を奪うわけだけど、特に好むのが『男女の恋愛に関わる情熱』なんでしょうね。その気配を本物のサメが血の匂いをかぎ分けるように察知し、標的としたカップルが一緒にいると、転移能力を使って襲い掛かってくるの。ちなみに、標的となったカップルは最初に『呪い』をかけられるらしいから、問答無用でいきなり襲いかかってくるって事は少ないみたい。呪いさえ解呪できれば、標的から外されるようだしね」

「となると―――」

「ミントは街に残ってもらって、被害者たちの解呪を優先した方がいいでしょうね」

「さすがに一般の方を囮にはできませんし、二次被害を増やさない為にもそうした方がいいと思います」


 エンヴィーシャークの呪いは、蟻でいうフェロモンのようなもの。

 獲物につける目印であり、その効果は他のエンヴィーシャークも呼び寄せる。

 更に付け加えると、この呪いはエンヴィーシャークの纏う瘴気―――アンデッドなどが帯びる特殊な(負の)生命力―――に由来するもので、エンヴィーシャークに近づくだけでその対象となってしまう。

 つまり―――大勢の人が行き交う街中などにエンヴィーシャークが出現すれば、更に多くの被害者(標的)を生み出しかねないわけだ。


「と、現状を確認したところで、チーム分けを発表するわ。まず、ノアさんだけど、クランマスターなんだから、当然、本部待機ね。各チームの指揮とお姫様たちとの連絡役を任せるわ」

「ええ」

「続いて、討伐組だけど……メビンスさん、ソーンさん、モルクさん、アンさんをAチーム。カズキ君、リーヴァちゃん、マブオクさん、ククルをBチーム。ミントには呪いの解除を優先してもらうけど、余裕があれば皆のフォローもお願いね」

「そうすると―――」

「海底神殿の調査は私とるーとイレーナでやるわ」

「え、でも、それは―――」

「ああ。安心して。これはとりあえずって話よ。調査が難航するようならメンバーを入れ替えるし、状況次第では討伐組のどちらかを調査に加える事も考えているわ。でも、まずは街の防衛。人的被害を出さない事が優先よ」


 全員が情報を共有したところで、サクヤがチーム分けを発表する。

 もっとも、各チームの編成は大方の予想通り。

 普段一緒にパーティーを組んでいるメンバーであったので、異論もほとんど出ない。

 唯一あるとすれば、海底神殿の調査にあたる僕たちのチームであるが……それも心配されただけ。

 ノアさんとミントという守りの要が二人も抜けた状態で、Eランクのイレーナを連れていくというのは、普通に考えれば危険な行為であるし、クランに加盟して日の浅いモルクさんやアンさんは、僕たちの特殊な事情をほとんど知らないので、そういう反応になるのも仕方がない。

 そもそも冒険者ギルドが定める海底神殿の推奨ランクは最低でもCランク以上となっているので、Eランクのイレーナではパーティーにいれる事もできないのだが……今回は『王女様から一任されている』という免罪符があるので問題はない。

 というか、ダメならダメでいくらでもやりようはある。

 ぶっちゃけ、『系統神召喚』で呼び出せばOKなので、無理に連れていく必要もない。

 それに、リサや精霊たちの事を考えると一番人数の少ない僕たちが実は一番戦力が充実していたりする。

 むしろ―――


(イエリスさんたちまで考慮に入れるなら、あきらかに過剰戦力なんだよなぁ……)




次の投稿は11/18を予定しています。

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