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神様たちの冒険  作者: くずす
9章 Bランク冒険者、クラン指名の依頼を受ける
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お姫様と騎士と執事

 僕たち『銀の七星盾』はザイオン王子の依頼を受ける事にした。

 ザイオン王子から示された条件はかなり良いものであったし、(再建してから)初めてのクラン単位の依頼ということで、クランメンバーもノリ気であったからだ。

 そして、戦力は多ければ多いほど助かるとの事であったので、クランメンバーは全員参加となった。


 現地への移動はザイオン王子が手配した転送屋を利用。

 多少の手続きを済ませたところで、領主の使者がやってきて、当面の宿泊先に案内される。

 ただ、僕とノアさんだけは別行動。

 正式な雇い主になるユフィー様との面談があったからだ。



 で、そのユフィー様であるが……

 僕の第一印象は『この人がユフィー王女?』という戸惑いであった。


 ただ、これは前提が間違っていた。

 野心溢れる策謀家と評されてきたザイオン王子が、今後の帝位争いで重要な鍵になると見立てた王女ということで、ザイオン王子と同様に『頭の回転が速い(キレる)人』だと勝手に思い込んでいたのだ。

 だが、実際のユフィー王女はそういうタイプではなく―――


「新進気鋭の『銀の七星盾(クラン)』を派遣してくださるとは、お兄様には感謝しかありませんね」


 ―――ニコニコした笑顔が印象的な、ゆるい空気を纏った女の子であった。


 とはいえ、ザイオン王子もトリーシャさんも嘘は言っていない。

 薄紫の長く綺麗な髪に同じ色の大きな瞳。背はそれほど高くはないが、プロポーションはかなり良いようで、間違いなく美少女である。

 ちなみに年齢は15歳で、僕たちと同じ歳。

 故に、可愛らしいという印象も歳相応と言えなくもないのだが……


 言ってしまうと、ユフィー王女はあまり王侯貴族らしくない人であった。

 ただ、僕らとしてもその方がありがたいので、それを言及するような事はしない。

 それに、護衛の騎士や執事も特に咎めたりする様子がないあたり、普段からそんな感じなのだろう。

 ザイオン王子(あに)が遣した冒険者ということで、特別な計らいをされているという可能性もないわけではないが、僕の見た限りでは王女様たちの態度は自然なものであった。

 あとは―――現在のユフィー王女の立場も少しばかり関係しているのかもしれない。


 今のユフィー王女は『コウベキオ特別行政長官』という肩書を有しているが、これは領主の補佐役と同等の立場であり、それほど強い権限を有しているわけではないとの事。

 もっともこれは名目上の話。

 実際は王族という立場故に、普通の補佐役と全く同じとは言えないのだが……それでもせいぜい領主のアドバイザー的な立ち位置で、領地運営を直接取り仕切ったりしているわけではない。

 つまり―――出来る事には限りがある。

 幸いにも、ユフィー王女とコウベキオの領主は良好な関係を築けていたので、そこまで問題があるわけではないが……

 僕たちとの面談が領主の館の一室で行われているのも、同席(席にはついていないが)しているのが護衛の騎士一人と執事一人というのも、そのあたりが関係しているようである。


 とはいえ、このあたりの事情は一介の冒険者である僕たちにはあまり関わりのない事。

 少し乱暴な物言いになるが、報酬さえきっちり支払われるなら、その出所が領主様であろうと王女様の財布であろうと僕たちは構わない。

 だから、仕事の話を進める。


 だが、今回の依頼はクランとして受けたもの。

 で、あれば、話をするのはクランマスターのノアさんの役目。

 付き添いの僕がやるべき事は少ない。

 なので、ついつい余計なことを考えてしまうわけだが―――それは気になる事があったからでもある。

 もちろん話に聞いていた王女(ユフィー)様もそのひとつ。

 そして―――護衛を務める騎士と王女様を補佐する執事……二人の男性も実は気になっていた。



 ユフィー様の後ろで、直立不動のまま佇む騎士はアリューさん。

 歳は30代前半。

 中肉中背と言っていい標準的な体格だが、騎士らしく鍛えあげられた肉体は余計な肉がついておらず、彫りの深い顔立ちと相まって、なかなかにハンサムと言える。

 ただ、僕が気になったのは彼の容姿ではない。

 いや、ある意味ではそれも含まれていはいるのだが……

 僕が彼に注視していたのは、ザイオン王子やトリーシャさんから事前情報を得ていたからである。

 というのも……ユフィー王女の意中の人が彼であるらしいのだ。

 もちろん自分には全く関係のない話であるし、特別何かをするつもりもないが……一回り以上歳の離れた騎士と王女のロマンスという古典演劇でも昨今ではなかなか見なくなったレアケースである。

 気にならないといえば嘘になる。

 まあ、完全に野次馬気分ではあるのだが……



 一方、王女様を補佐する執事であるが……こちらは全く別の理由となる。

 ただ、それを記す前に執事さんの情報を少しだけ。

 執事さんの名前はギルスといい、年齢は20代後半といったところ。全体的に細身でシャープな顔立ちのイケメンなのだが、特に片眼鏡(モノクル)が似合っているのが印象的。


 もっとも、この情報をどこまで信じていいのか、僕には判断できないでいた。

 そして、その理由は簡単。

 ギルスさんが()()を偽っていたからだ。


 だが、それを指摘するわけにはいかない。

 何故なら、正体を偽っているのは僕たちも同じだからである。


(この力は神様のものだよね?)

(う~ん……多分だけど、この人、半神半人(デミゴッド)じゃないかなぁ?)

半神半人(デミゴッド)?)

(私の事は見えてないと思うけど、るー君たちの正体には気づいていると思うよ)

(そう。それなら後で話を聞いた方がいいかな?)

(そうだね~。今は気づかないフリをしてくれているみたいだし、それでいいんじゃないかな?)


 心話によるリサとの会話を終え、僕は何事もなかったかのように振舞う。

 藪を突いて蛇を出しても仕方がないし、こちらから事を荒立てる必要はないという判断だ。



 そして―――話し合いはわりと短い時間で終わる。

 僕たちはザイオン王子の紹介でユフィー王女の下で働く事となったわけだが……これはこの街の領主が集めた冒険者とは別枠。僕たちは別チームとして、今回の事態の解決にあたる。

 そして、その為の具体的な方策はほぼ一任される形に決まった。

 となると、今の段階で話し合う事柄は少ない。

 ギルスさんがまとめあげた資料を受け取り、面談は終了―――となるところで……


「あの、ノアさん。もう少しお時間はありますか?少し二人きりで話をしたいのですが……」


 ユフィー王女がノアさんを引き留めた。


「え、ええ。私は構いませんが……」


 ノアさんはチラリと僕を一瞥したあと、その申し出を受ける。


「アリューとギルスも構いませんね?」

「はい。ただ、廊下で控えるのはお許しくださいますよう」

「では、私はルドナ様にお渡しした資料について捕捉をしておきましょう」


 その流れで、僕もギルスさんと二人きりで話をする機会を得た。




次の更新は11/12を予定しています。

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