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神様たちの冒険  作者: くずす
8章 Bランク冒険者、世界渡りの本格的な準備を始める
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模擬戦(エクストラ・ハード)・その4

「【ブラックカーテン】」


 サクヤの放った魔法により、僕たちの視界は闇に閉ざされた。

 【ブラックカーテン】は周囲の空間を黒色の魔力に染め上げるという魔法であるので、基本的に抵抗(レジスト)は不可能。これを破るには空間へ干渉し、魔法そのものを解除するしかない。

 だが、相手はサクヤ。

 そう簡単に解除させてはくれない。

 それに、わざわざ解く必要も―――


(―――ない……わけじゃないか。僕たちも魔力探知や生命探知で索敵は出来る。けど、今、戦っているのは元『スライム』と元『ゴーレム』……もとから『視力』なんかに頼っていない……)


 神人になった僕たちは視界が閉ざされても戦うことができた。

 だが、もともと目なんてものがないスライムのイエリスさんに、各種センサーで物を見るゴーレムのマキナ&フェレスであれば、僕たち以上に慣れていると言える。

 その事に気が付いた僕であるが、打てる手は少ない。

 イエリスさんと戦っている最中に他事に気をまわしている余裕などないからだ。


(エド、魔法解除を頼む)

(わかりましたわ)


 闇の精霊のエドに魔法解除を命じたが、それが今の僕が出来る精一杯……

 ただ、結果的にみれば、この判断は間違っていた。

 サクヤが初手に【ブラックカーテン】を選択したのは、僕たちの目を欺く為。

 だが、それは手品のハンカチと同じ。

 手品の種は大概、意識の外にある。


「―――っ!」


 故に、それに気づいたのは完全に『直感』としか言えない。

 イエリスさんの動きに集中していた僕の感知能力はそれらを完全に見落としていたし、9割5分は偶然。残り5分はサクヤとの長い付き合いによるあまり嬉しくない類の信頼(けいけん)だろうか。


「皆っ!包囲されているよっ!気をつけて!」

「えっ!?」

「嘘っ!いつの間に!」

「これは……スライムっ!」


 僕の声にいくつか反応が返ってくるが、それは少々遅かった。

 不意打ちこそ防いだものの、戦場となっているホールの両端には黒いスライムの群れ。

 既に配置は完了している。


「……忘れていたわけではないんだけど、イエリスさんたちはサクヤの系統神なんだよね……」

「そう……だから今のサクヤは……私たちの力も使える……」


 黒いスライムたちはイエリスさんの身体から分裂したもの。

 ただし、スライムたちが出現した場所は後方で控えていたサクヤの手の上。

 ちなみに、いつもの虹色の身体でないのは、数を優先し、個々の能力を抑えたから。

 ただ、それでも『一時神化』によりパワーアップしていると考えると……


「【ブラックジャベリン】一斉掃射っ!」


 サクヤの号令と共にダークスライムたちが闇属性の魔法の槍を一斉に放つ。

 黒系の元素魔法は闇属性に関わるものが多く、同じ闇属性を宿すダークスライムたちとも相性がいいのだろう。


「くっ!なんて威力っ!」

「とてもダークスライムの魔法とは思えません!」

「退避~っ!退避~っ!」


 数が多いというのもあるが、本来、守りに優れた四天使が浮足だつくらいなので、一発一発の威力もそれなりにある。

 おそらくマナを分け与えることで強化をしているのだろうが、サクヤの手にした『黒き宝珠(ブラック・オーブ)』の力もあるのだろう。


 そして―――そこからは一方的な展開となる。

 ギリギリのところでなんとか均衡を保っていたところに、思いもしなかった戦力が現れたのだ。

 なんとかしようと頑張ってみたが、それが簡単に出来るのなら誰も苦労はしない。


 というか……


「……さっさとやられて正解だったかも……」

「……頷きたくはないですが、アレを目にすると確かに……」


 既に脱落した僕の言葉にルシウスが苦笑と共に同意を返す。

 戦場から脱落した僕たち(あと観戦していたリサ)の前で、最後の攻防が終わりを迎えようとしていた。


「【スター・シールド】モード:イージスっ!」

「【ガーディアン・ブラスター】発射っ!!」


 ミントの防御魔法を最大限まで増幅し、巨大な星の盾を展開するノアさん。

 飛行形態を経て巨大な砲塔に変化したフェレスを右腕に装着し、全てのエネルギーと共に守護獣となった『フェニックス』をそのまま撃ち出すマキナ。

 絶対的な防御力を誇る星の盾は辛うじて巨大な白熱の閃光を防ぎきるものの……そこが限界。

 間髪入れずに叩きこまれたサクヤの極大魔法により、ミント・ノアさん・イレーナの三人は吹っ飛ばされる。


「やっぱり変形合体からの必殺技は王道よねっ!」


 サクヤのチームで唯一脱落したサヨさんがやたらとはしゃいでいたが、そういう展開が『ロボ好き』にはたまらないのだろう。

 『ロボ』がよくわからない僕たちにはあまりピンとこない感覚であるが……


 結果、勝利チームはサクヤ。


「やっぱり司令塔の差がでたわね」

「うぐっ……」

「あと、経験の差も大きかったわね」

「イレーナちゃんも頑張っていたんだけどね~。ダークスライムの大半はやっつけていたし」

「彼女の能力は複数を相手にするのに向いているわね。ただ……るーはその使い方を誤ったけどね」

「……僕とノアさんで星の盾を展開するべきだった……でしょ?」

「そうね。二重の『インプレグナブル・フォートレス』モードで防御陣地を築けば、ダークスライムの火力では突破できないし、もう少し落ち着いて迎撃できたはずよ」

「それはそうなんだけど……なんでただの模擬戦が陣地防衛戦に化けるのさ……」


 戦闘後の感想戦はこんなところ。

 後から思えばもう少しやりようがあったと考えてしまうものの、騎士団の訓練ではあるまいし、『陣地形成からの防衛戦』なんて発想は普通出てこない。

 それにそんな事よりも余程気になることがある。


「ともかく勝ったのは私たちなんだから……るーたちにはお願いを聞いてもらうわよ」

「……うっ……」

「なによ、その反応は……」

「いや、何をお願いされるのかと思ってね」


 無茶なお願いはナシといっても、相手はサクヤである。

 警戒してしまうのも仕方がない。

 だが、サクヤたちのお願いはそういうものではなく、むしろ、至極真面目なものだった。


「……るーと一緒に行きたいところがあるのよ」

「行きたいところ?」

「私の大事な親友に『彼氏』を紹介したくなってね……」


 そう言ってサクヤは少しだけ寂しげに笑った。




この章が終わるまで、毎日投稿する予定です。

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