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神様たちの冒険  作者: くずす
8章 Bランク冒険者、世界渡りの本格的な準備を始める
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模擬戦(エクストラ・ハード)・その3

 ノアさんとマキナの戦いは、とにかくインパクトが凄い。

 重量級のゴーレムがホバークラフトで地面を滑るように移動するという絵面だけでも迫力があるが、それを真正面から受け止めるノアさんも異様。

 双方共に騎士風の装いである為、体格の差がより強調されるのか、倍近い巨体のマキナの突撃(チャージ)を一歩も下がることなく受け止めたノアさんの姿が現実感を無くすのである。

 加えて、マキナから放たれる様々な武装が戦いを派手に彩る。

 マキナの全身から放たれるミサイルの雨、可動式『魔法増幅キャノン』から放たれる攻撃魔法、『アンチ・マジック・シールド』に隠された『パイルバンカー』、新装備の『スクリューウィップ』……その全てをノアさんは危なげなく防いでみせた。


「……ノアさんの前に出たら死ぬって冗談でもなんでもなかったんですね……」

「これでも護るのは得意だからね。イレーナちゃんがそこにいてくれる限り、安全は保障するよ」


 盾の神であるノアさんの護りは正に金城鉄壁。

 サクヤ渾身の汎用決戦兵器であるマキナをもってしても、それを崩すのは容易ではない。




◆◆◆




 守備に定評のあるミントとノアさんのおかげで、序盤の流れは僕たちのチームにあった。

 とはいえそれは、半ば様子見であったからとも言える。

 互いに勝負を決める気がないのであれば、攻める側よりも守る側の方が有利に見えるモノだ。

 だから―――


「なるほど、そんな感じね。それならフェレス!『フェネクス』との『同調』を開始!『守護獣降臨』よ!」


 それまで戦局を見守っていたサクヤが号令を発し、四人の天使と戦っていたフェレスが答える。


創造主(クリエイター)から指令(オーダー)を確認。神器『フェネクス』との『同調(コンタクト)』を開始します。所有者(マスター)への承諾要請……クリア。安全装置(セーフティー)解除。これより『守護獣降臨』を開始します」


 フェレスの抑揚のない声が暫く続き―――細身のゴーレムの身体から炎が噴き出す。

 そして、そのまま姿を変える。


「形態変化ですか……」

「それだけではないようですよ。内包するマナの量が増大しました」

「『守護獣降臨』と言っていましたし、神器に宿る『フェネクス』をこちらに移したということではありませんか?」

「いえ、それだけではないようですよ」


 対峙していた四人の天使の1人、風を司るファウがサヨさんに視線を向ける。

 ミントと交戦中のサヨさんの鞭が青い炎をあげていたからだ。


「どうやら魔神化した『フェネクス』をそのままに、神獣『フェニックス』を『守護獣』として分離させたようですね」

「また面倒なことを……」

「でも、『フェニックス』なら私の力で―――」

「あ、ミカ、待っ―――」


 一方でフェレスの『変形』は完了。

 翼を持つ人型の姿から、足を持たない鳥に似た姿に姿を変えていた。


「おおおっ~~!やっぱりロボといえば『変形・合体』ですよね~~~!」


 あとでサヨさんに聞いたところ、『戦闘機』と呼ばれる空を飛ぶ『チキュウ』の乗り物を参考にデザインされたとのことであるが……


「―――なっ!?」

「は、はやいっ!」

「わ、私たちでも追いつけないとはっ!」

「皆さん、撃って来ますよっ!!」


 今の僕たちは戦闘中で、暢気に考察している余裕などない。

 フェレスと対峙していた四天使はなおさら。

 なにしろ姿を変えたフェレスは速い。

 機体後部に備えられた二基のジェットノズル(人型時は脚部パーツ)から熱線に近い炎を吹き出し、空中を自由自在に飛翔する。

 四天使も決して遅いわけではないのだが、最高速度でいえば倍以上の差があるように思えた。

 加えて、火力もそれなりに有している。

 機首(人型時には盾)に備え付けられた『ビームバルカン』、両翼に取り付けられた『大型マジックミサイル』、胴体部に内蔵された『小型ミサイルポッド』、更に機体底部には格納された大剣(人型時には武器)があり、高速飛行からの斬撃も可能。


 四対一という数的有利と防御に優れた四天使であるから撃墜は免れていたが、高速で飛行するフェレスを抑え込むのは難しく、戦線が崩れ出す。

 相手方にフリーな戦力が出来てしまった以上、こちらもそれに対応しないわけにはいかないからだ。

 とはいえ、現状で打てる手となると―――


「ルドナ君っ!」

「あっ、その手があったね。お願い、ノアさん」


 マキナと対峙していたノアさんが槍投げの構えを見せる。

 ノアさんが現在装備している槍は神器『飛竜落とし』。

 その名は伊達ではない。

 『飛竜落とし』は投擲時に飛行魔法を妨害する特殊音波を発する。そして、その効果範囲及び継続時間は投擲距離に比例する。

 ちなみに空を飛ぶ魔物の大半(特に一定以上の大きさのもの)は、翼や羽に飛行魔法かそれに類する能力を宿しており、飛行魔法を封じられると上手く飛べなくなるケースが意外と多い。

 まあ、翼や羽を羽ばたかせることで多少は飛べるというものも多いので、飛行魔法を封じただけでは即墜落といかない場合も多いが、このあたりは相手次第というところ。

 あと、幽霊(ゴースト)や精霊たちのような精神体が浮遊する場合は、根本から原理が違うので飛行魔法を封じても効果はない。移動などで飛行魔法を併用していればそちらの対策にはなるが、それはある意味当然の事なのでここでは考慮しない。そもそもそれを言い出すとヒトの使う飛行魔法は大抵、前段階に浮遊魔法を組み込んでいるので、説明がややこしくなる。


 ノアさんの投げた槍はフェレスを狙っていたが、それは当たればラッキーという程度。

 効果範囲や継続時間が投擲距離に比例する以上、半端に防がれるより外れた方が効果は大きい。

 『飛竜落とし』を回避したフェレスはフラフラと舞い降り、地上付近で人型に戻る。

 もっとも『飛竜落とし』の効果は対象を選べない。

 四人の天使も同様に地上に降り立つ。


「流石に神器なだけあって、この中で飛ぶのは無理ね。でも―――」


 これで状況は元通り……とはならない。

 流れ自体は多少引き戻せたかもしれないが、戦いはチーム対チームへ移行。

 互いの司令塔の占める割合が大きくなる。


「【ブラックカーテン】」


 つまりは―――サクヤがいよいよ動き出す。





この章が終わるまで、毎日投稿する予定です。

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