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神様たちの冒険  作者: くずす
8章 Bランク冒険者、世界渡りの本格的な準備を始める
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模擬戦(エクストラ・ハード)・その1

 新しい武器や防具を手に入れたら、それを試してみたいと思うのが冒険者である。

 だから、性能チェックを兼ねて模擬戦を行うことにした。

 模擬戦を行う場所は『神層世界』。

 種船(シードシップ)には『神層世界』に転移する専用のゲートが設置されており、僕たちでも昼夜を問わず行き来ができるようになっていた。

 ただ―――それは『地獄』へ続く扉でもあった。



「……なんでこうなった?」

「なんでもなにも、ルドナちゃんがサクヤちゃんに乗せられたからでしょ……」


 僕の呟きにジト目で答えるミント。


「まあ、ミントちゃんも同じ様に乗せられていたけどね~」


 そのミントもリサにつっこまれて目を反らす。


 今回の模擬戦は二つのチームに分かれて行うのだが、勝ったチームには景品として、負けたチームにひとつだけお願いを聞いてもらえる権利が与えられる。

 まあ、仲間内でやることであるし、ちょっとした罰ゲームみたいなものだ。

 ただ、それを提案したのがサクヤであった時点で、僕たちはもう少し警戒するべきだった。


 なにしろ今回のチーム分けは、僕&ミントVSサクヤ。互いの系統神の召喚はアリ。

 リサはどちらにも加わらないが、精霊たちは僕に協力してくれる。

 というわけで、人数的には僕たちの方が遥かに有利ではあるのだが―――


「ご、ごめんね、ルドナ君……」

「私たちもサクヤちゃんの系統神だから……」


 僕たちの前に立つサヨさんとイエリスさんが申し訳なさそうに告げる。

 いや、イエリスさんはいつもと変わらず無表情ではあったが……


「丁度、フェレスの起動実験もしたかったのよね」

「フェレス……?」

「新たに制作した『エレメンタル・コア』を搭載した新型ゴーレムよ」

「マ、マキナの妹機ね……」


 サクヤの展開した魔法陣より二体のゴーレムも姿を現す。

 重騎士風の装いのゴーレムはマキナであるので、もう一体の細身で翼を持つゴーレムがフェレスなのだろう。


「……そこまでしますか……」

「こちらは二対一なのよ。出し惜しみしている余裕なんてあるわけないじゃない」

「だからって、サヨさんの参戦は完全に予想外だよ……」

「フェレスと『フェネクス』の同期機能をチェックするにはサヨさんの協力が必要不可欠なのよね」

「初めからこれを狙っていたクセに……」


 今更言っても遅いというのは重々承知であるが、サクヤに乗せられた身としては、愚痴のひとつやふたつは言いたくなる。

 そして、そんな僕たちの様子にイレーナも察するものがあったのだろう。


「サヨさんたちって、そんなにヤバイの?」

「イレーナ……最初に言っておくけど、生き延びる事だけを考えるんだ」

「……え?」

「ノアさんの後ろにいれば、そう簡単にやられたりはしないだろうけど……ノアさんより前に出たら、その瞬間に死ぬ。それぐらい思っておいて」

「………」


 僕の答えにイレーナはゴクリと生唾を飲み込む。

 模擬戦への参加はイレーナ自身が決めたことであるが、この規格外の戦力を相手にするという想定はなかったはず。

 とはいえ、僕たちと共にいる以上、いつかは通る道でもある。


「まあ、神人の力を確かめる為にも、一度くらいは神様同士の戦いを体験しておいた方がいいと思うよ」

「今回は一度の戦闘不能で離脱ですからね。リスキルもないので安心ですよ」

「……それは安心といっていいの?」


 イレーナの呟きに僕はそっと目を反らした。




◆◆◆




 今回の模擬戦は新しい装備のチェックという建前がある。

 だから、最初からガンガンやり合うわけにはいかない。


「それじゃあ、ミント、サヨさんは任せたよ」

「ルドナちゃんも頑張ってね」


 それ故に、最初は綺麗な形で前線が構築される。

 形としては僕VSイエリスさん、ミントVSサヨさん&フェレス、ノアさんVSマキナという三組の戦いで、イレーナとサクヤが双方の後衛として控えている。

 より正確にいうと、僕には精霊たちとサリア、ミントには四人の天使もついているのだが……相手が相手なので、そこは仕方がない。


「【ムーンライト・レイ】!」

「【ダークホール・シールド】……」



 開幕初手は『月光の弓』を用いた白い光の矢による攻撃。

 白い光の矢はイエリスさんの真上で幾重もの閃光に分裂し、彼女へと降り注ぐ。

 だが、イエリスさんの生み出した闇の穴が降りそそぐ閃光を全て飲み込む。


「う~ん……いい弓ではあるんだけど、やっぱり使いどころが難しいかな?」

「ルドナ様には剣も魔法もありますからね~」

「ですが、今の攻撃も見事なものでしたし、むしろ、あれをあっさりと防いでみせたイエリス様をほめるべきかと……」

「複合属性の練習にもなるし、コツコツやっていくしかないね」


 エドとルシウスにそう返すと、僕は魔法空間に『月光の弓』をしまう。

 もともと専門外の弓であるし、慣れない武器でイエリスさんの相手などできない。

 現状可能な最大クラスの一撃を放ったことでおおよその性能は確認できたし、今のところはそれで十分。


 自分でも口にした事であるが、『月光の弓』は扱いやすいうえにいろいろと応用も効く良い弓である事は間違いない。

 俗に『魔弓』と呼ばれる魔力をそのまま矢にして放つことができる機能はもちろんのこと、月属性―――光と闇の特殊複合属性の力を宿していることで、出来る事の幅が恐ろしく広いというのが最大の特徴。

 だからこそ、完璧に使いこなすのが難しい武器ともいえるが……

 ぶっちゃけた話、扱いの難しい月属性の魔法を限定した形で発動させることで使いやすくした魔道具(マジック・アイテム)と言った方が正しいのかもしれない。


 ちなみに―――特殊属性というのは基本となる火・水・風・土・光・闇以外の特殊な属性のことで、複合属性は二種以上の属性を併せたものを指す。

 もっとも、このあたりの分類分けは非常に複雑な上に、人によってもいろいろと意見がわかれるところなので、一口で解説するのは難しい。

 今回の月属性に関してはなおさらで、光と闇の()()()()()()というところにも問題の一端が現れていたりする。

 話すと長くなるので多くは割愛するが、光と闇に加え『時』という特殊な属性を持つといえば、だいたいの察しはつくだろう。正直なところ、時間に干渉する力は神人でも持て余すような代物なので、考慮する意味もほとんどない。


 ―――というわけで、話を戻す。


「それじゃあ、次は私たちですね~」

「こういうサポートはあんまり得意じゃないんだけど、剣の神を名乗る以上、情けないところは見せられないものね」


 『月光の弓』から『晴嵐(セイラン)』に持ち替えたところで、リフスとサリアのサポートが入る。

 対するイエリスさんはいつもの大剣ではなく、白い靄を纏った薄氷の刃を構えていた。


「【ウィンド・ブレード】」

「【秘剣・流氷】」


 『晴嵐(セイラン)』から放たれた風の刃とイエリスさんの刀から放たれた氷の礫が真正面からぶつかる。

 斬り合いの時間がいよいよ始まる。




この章が終わるまで、毎日投稿する予定です。

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