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神様たちの冒険  作者: くずす
7章 Cランク冒険者、許嫁エルフに振り回される
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カウンターアタック

 神造素体(ハイ・ホムンクルス)たちは個々の強さでいえば、それほど脅威ではなかった。

 しかし、組織として見れば非常に優秀だった。


「引き際をわきまえているあたりは流石ね」

(コア)を自壊させての撤退とは徹底していますね」


 僕たちは6人の神造素体(ハイ・ホムンクルス)を倒していたが、その全てが糸の切れた人形のように横たわっている。

 器である肉体を捨てて、精神体の状態で逃走したのだ。


「でも、捕まえることもできたよね?なんで逃がしたんです?」

「まあ、出来るか出来ないかでいえば出来たと思うけど、サクヤが―――」


 とはいえ、それもサクヤの指示で見逃しただけ。


「捕縛するにしても、わざわざ苦労しそうな相手を選ぶ必要もないでしょ。能力的にはこっちの方が無能だけど、立場的にはこっちの方が上なんだし」

「え?どういう事?」

「今回の襲撃者はかなりの腕前だったでしょ。でも、彼らは長老たちの直接の部下じゃない。おそらく最近雇われたはずよ。だとすれば、当然、監視をつけるわよね?」

「遠巻きに監視していたエルフを捕まえたんだよ」

「……え?捕まえたって、誰が?」

「サリアだよ。サリアを先行させて、捕まえさせたんだ」

「サリアちゃん?え?でも、サリアちゃんって、剣の精霊なんでしょ?」

「別に剣から離れられないわけじゃないからね」


 心話の使えないイレーナ王女にはこのあたり(サリア)の事を伝えていなかったので混乱するのも仕方がない。

 ただ、この場にいないサリアが監視役を捕縛したのは事実。

 まあ、そうでなくても―――


「転移座標の解析も終わったわよ。これで乗り込めるわね」


 確保した『転送符』から転移先のゲートを割り出してしまえば済む話。

 いや、転移先が黒幕のアジトであるとは限らないが、それでも王女を連れ去ろうとした場所というのは間違いなく、ある程度は関わり合いの深い場所にたどり着くはずである。

 そんなわけで―――サリアと合流した僕たちはサクヤの転移魔法で敵のアジトに乗り込んだ。




◆◆◆




 転移した先は地下に設けられた大きめのフロア。

 窓のようなものは一切ないが、魔導灯が一定の間隔で設置されているので、明るさは十分確保されていた。


「ここは……遺跡?」

「おそらくダンジョンの一部を改造したのでしょう。それよりも―――」


 僕はイレーナ王女に答えながら、その前に立つ。

 理由は簡単。

 武装した兵士が僕たちを取り囲んでいたからだ。

 ちなみに人数は20人ほどで、おそらく全員がエルフ。

 前面に立つ10人ほどがクロスボウを構えており、残りの10人ほどはその後ろに控えている。

 そして―――


「ようこそ、イレーナ王女」

「あら、カムローク翁。珍しいところで会いましたね」


 兵士たちの中から一人の老エルフがドレス姿の少女を伴って姿を見せる。

 イレーナ王女の言葉から察するに、その老エルフが回顧派の筆頭と言われるカムロークなのだろう。

 しかし、この時の僕たちはそんなことに気を留めていられない。

 何故ならカムロークと一緒に現れた少女は僕たちの顔見知りであったからだ。


「えっ……」

「あれ、あのコって……」

「……トリーシャさん……よね……?」


 トリーシャ=イウス。

 僕たちはその正体を知っている。


「おや、トリーシャ殿はそちらの者たちとお知り合いであったのかな?」

「以前に少し商談がありましてね。ですが、心配はいりませんよ。今の私はザイオン王子に頼まれてこの場に赴いているのですから」


 故に、カムロークとトリーシャさんのやりとりも基本的には思惑の外。

 如何にして、この窮地を脱するか……頭の中にはそれしかない。

 だが、それはトリーシャさんの正体を知る僕たちならではの思考。

 それを知らない者は、当然、そんな事は考えない。

 イレーナ王女からすると、黒幕であるカムロークを捕縛する絶好のチャンスなのだ。

 もっとも、それは相手にも通じる事。

 カムロークにしても、王女の身柄さえ押さえてしまえば、後はどうとでも出来ると考えていた。

 だから、両者共にことさら言葉を交える必要はない。


「武器を捨ててはもらえませんかな?あえて痛い目を見る必要はないでしょう?」

「それはこちらの台詞です……と言いたいところですが、ここまでの事をした以上、大人しく捕まるつもりはないでしょうね。捕まれば死罪は免れませんから」

「そうですな。ですがそれは()()()()という話よの」


 とても交渉とは呼べないようなやりとりがあっという間に終わる。

 おかげで打開策を模索している時間は与えられない。


「まずっ―――」

「え―――?」


 先手を打とうとしたのはイレーナ王女。

 しかし、それより先に動いたのはトリーシャさん。

 ただし、それを動いたと言っていいのかどうか……


「……え……?」

「流石はエルフの姫ですね。なかなかいい眼をお持ちです。ですが、それが仇となりましたね」


 トリーシャさんがしたのは、イレーナ王女をまっすぐに見据えただけ。

 しかし、それだけでイレーナ王女は身動きが取れなくなった。

 まるで蛇に睨まれた蛙。

 だが、二人の間にはそれ以上の絶望的な力の差がある。

 なにしろトリーシャさんは―――神代から生きる『邪神』なのだ。





7章が終わるまで毎日更新する予定です。

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