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神様たちの冒険  作者: くずす
1章 Fランク冒険者、神様になる
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訓練二日目

「ぐはっ!」


 ハイエンシェント・エレメンタルスライムの放った斬撃をまともに喰らい吹き飛ばされる。


「オイオイ、剣があればどうにかなるんじゃなかったのか」

「……なんでスライムが剣術まで使うんですか……理不尽過ぎるでしょう……」


 ハイエンシェント・エレメンタルスライムはその身を変化させ、身体の中央から巨大な剣を持つ腕を生やしていた。


「詳しくは知らないが、ライバルだった勇者と戦うために覚えたそうだぞ」

「勇者がライバルとか、ホント、訳が分からないんですが……」


 そんな愚痴をこぼしながら、僕はなんとか立ち上がる。

 昨日と同様にあっという間にボロボロにされていたが、それでも多少は慣れてきた。

 剣をメインにした戦いにシフトしていたので、大火力の魔法で瞬殺されることが少なくなったというのもあるが……

 それでも訓練の効果は間違いなく出ている。

 というか―――今、僕が剣を手にしているのもそのひとつ。



「武器が必要なら自分で呼びだせよ」

「いや、呼びだせっていわれても、僕の剣は魔法の武器でもないし、そんな能力はないんですが……」

「……じゃあ、なんでお前は服を着ているんだよ?」

「……はい?なんでって……」

「さっき死んだとき、服も完全に消滅していたよな?でも、肉体を再生した時、お前は服を着ていた。なんでだと思う?」

「え?えっと……」

「それは肉体の再生が魂に残された記憶を元に行われているからだ。だから、服を着ている状態で再生した。それなら―――」

「武器を手にした記憶を元に肉体の再生を行えばいいって事ですか?」

「精神生命体である神人にとって、肉体はイメージで作り出した器でしかないからな。多少の慣れは必要だが、イメージするだけで武具を身につけることもできるぞ」


 そういうことは先に教えておいて欲しかった……

 そう思わなくもなかったが、アバン様相手にそんな事を言えるはずもないので、アドバイスをくれた事に対し、感謝だけ伝える。

 そして―――自分が愛用している剣をイメージすることで、僕はなんとか武器を手にする事が出来た。



 僕が手にしている剣は、もともとは父さんが冒険者をしていた頃に使っていた剣で、僕が冒険者を目指し始めた頃に『これで練習しろ』と手渡されたもの。

 過度な装飾などはなく、特別な魔法などもかけられてはいないが、魔銀(ミスリル)製の刃は切れ味が鋭く、見た目よりも軽い。

 なにより、子供の頃から振り続けてきた剣は僕の手に良く馴染む。


「リサ……お前、アイツの剣に何かしたか?」

「え?別に何もしてないけど?」

「だよな……」


 ハイエンシェント・エレメンタルスライムの剣戟をいなすのに必死で、アバン様とリサの会話は僕の耳には入らない。


「でも、あの剣……魂が宿ってないか?」

「え?魂が……?」

「まだ人格と呼べる段階まで育ってはないようだがな。それでもあの剣はアイツの呼びかけに答えたようだぞ。だから、剣だけ再現されたんだろうよ」

「うん?」

「アイツ、防具の再現には失敗していただろ。でも、それは当然なんだよ。イメージするだけで武器や防具を作り出せると言ったって、それはマナを操れるから出来る事だ。その術を理解していないアイツにそんな事が出来るはずもない。肉体消失時の再生とはわけが違うからな」

「本能的な肉体再生なら、直前まで身につけたものも再現されるけど、武器や防具だけ呼び出そうとすると難しいって事?」

「ああ、その通りだ。だから、お前が何かしたんじゃないかと思ったんだが―――」

「ん~……るーくんは昔から精霊なんかに好かれていたし、それでじゃないかな?」

「ヤロゥ、天然のタラシタイプか……」


 たとえ聞こえていたとしても、僕がその意味を理解するのは難しかっただろうが……



「【エーテル・ブレイク】」


 ハイエンシェント・エレメンタルスライムの剣に火・水・風・土・光・闇という六属性の魔力が宿り、己の闘気(オーラ)と交じり合う事で七色の輝きを放つ。


「くそぉぉぉっ!【オーラ・ブレード】!!」


 それを全力の闘気(オーラ)を剣に込める事でなんとか受け止めようとするも……耐えられたのはほんの一瞬。

 僕は七色の光に溶けるように肉体を消失させた。




「ま、魔法剣まで使うとか……ホント、いい加減にしてほしいんだけど……」

「なら、お前も魔法剣で対抗すればよかっただろ?」


 アバン様も内心では『今の段階で、アレを一瞬とはいえ防げただけでもすげぇんだけどな……』なんてことを思っていたらしいのだが、もちろんそんな優しい言葉などかけられるはずもない。


「いや、だって、魔法剣を使う余裕なんてなかったし……」

「まあ、半端に魔法を使うぐらいなら、闘気(オーラ)の制御に集中するっていうのも間違ってないがな。ただ……闘気(オーラ)と魔力は基本別系統のエネルギーなんだからよ。両方のエネルギーを最大限に引き出せば、威力が桁違いなのも理解できるよなぁ?」

「うぐっ……」

「死に物狂いでやりゃあ、両方のエネルギーを最大威力で放つぐらいできるだろ?」

「わ、わかりましたよっ!やればいいんでしょ!やればっ!!」


 半ばキレるように言い放ち、僕はハイエンシェント・エレメンタルスライムと再び対峙する。

 もちろん、それでなんとかなるのなら苦労はしないわけで……

 やはり、この日もボコボコにされるだけで終わったのだった。






主人公強化に向けての前フリですが、実際の強化はもう少し後になります。


1章の終わりまでは毎日更新していく予定です。

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