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神様たちの冒険  作者: くずす
7章 Cランク冒険者、許嫁エルフに振り回される
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指名依頼

 サヨさんとイエリスさんが『一時神化』をした翌日。


「指名依頼?」

「はい。指名依頼です」


 いつものようにクエストボードをチェックしていた僕たちに、ギルド職員のクオさんが声をかけてきた。

 その理由は本人が口にしたとおり、僕たちに指名依頼が入っていたからだ。


「詳しい話をお聞きになりますか?それでしたら、上に案内させてもらいますが」

「……どうする?」

「そうね、聞くだけなら損はないんじゃない?実際に受けるかどうかは別として」

「それじゃあ、そうしようか」


 一緒に来ていたサクヤとミントに確認を入れた後、僕たちは詳しい話を聞くために、滅多に足を踏み入れない2階にあがる。

 通されたのは会議室のひとつ。

 そこで僕たちはしばらく待たされる。


「指名依頼ってなんだろうね?」

「さあ?流石に今の段階では見当もつかないわね」

「それもそうか」

「持込依頼ならともかく、ギルドを通した指名依頼がCランクの私たちに来るというのはちょっと変ですよね?」

「まあ、珍しくはあるよね。依頼者が知り合いというならないわけじゃないけど―――」


 サクヤやミントとそんな事を話していると、ノックもなしに会議室の扉が開く。


「―――悪い、待たせたな」


 そして、姿を現したのは僕の良く知る人物。


「え?父さん?」

「おう、元気でやっているか?」


 僕の父親で、冒険者ギルドで働くトール=エンタヤであった。




◆◆◆




「王族の警護……ですか?」

「ああ、レスファリア森林国の第二王女、イレーナ=クエゥ=レスファリア様の身辺警護を頼みたいんだと。契約期間はとりあえず、ひと月ほどだな。状況次第で多少前後するかもしれないが、早く終わっても報酬はきっちり出る。延長した場合ももちろん追加分は払うとの事だ」

「いえ、あの……何故、そんな依頼が私たちに……?」


 軽く依頼内容の説明を受けたところで、交渉担当のサクヤが疑問を口にする。

 それに対し、父さんはボリボリと頭を掻きながら答える。


「まあ、当然の疑問だな。だが、依頼者の項目をよく見てもらえるか?依頼者の最後、向こうの担当官の下に……カンナの名があるだろう?」

「え?あ、ホントですね……って―――」

「え?カンナって―――」

「ああ、母ちゃんの名だ。依頼者の1人が母ちゃんなんだから、お前らに依頼するというのもおかしなことじゃねーよな?」

「……そうですわね。ですが、それはそれで、新たな疑問が浮かんでくるわけですが―――」

「レスファリア森林国はカンナの生まれ故郷でな。王族とも面識があるんだよ。冒険者になる前は女王様の親衛隊を務めていたぐらいだしな」

「え?そうなの?」

「20年以上も昔の話だし、こんな事でもなきゃ話すような事でもないからなぁ」


 親子でも知らない事などいくらでもある。

 共に冒険者だった両親は、冒険者だった頃の武勇伝を語るのは好きであったが、プライベートな事はあまり教えてくれなかった。

 ただ、その理由はそんな大層なものでもない。

 基本豪快な父さんだが、意外と照れ屋な面もあり、母さんとの馴れ初めなどはなかなか話したがらないのだ。

 いや、どこの家庭でもそんなものかもしれないが……

 まあ、話を戻そう。


「ええと、それじゃあ―――」

「サクヤちゃんの予想したとおり、昔のつてでこっちに話が来たんだよ。信頼できる冒険者をよこしてもらえないか、ってな。こういっちゃなんだが、あの国は冒険者ギルドが弱い。腕の立つ冒険者もほとんどいないと思うぜ」

「―――なるほど」


 父さんの言葉を受けて、サクヤはしばし瞑目する。

 そして―――


「詳しい話は現地でとの事ですが、冒険者を必要とする()()があるということですね」

「それはそうだろうな。王族の警護に他国から冒険者を募るというのがおかしな話だしな」

「……どうする、るー?」


 ひとつ確認を入れた後、僕へと問いかけるサクヤ。

 ただ、その問いに対する答えはサクヤもわかっていたのだろう。


「母さんの依頼というなら断れないかな……」

「……まあ、そうなるわよね」

「カンナさんのお願いですからね……」


 僕の中に母さんの『お願い』を断るという選択肢はない。

 それはミントもサクヤも同じだろう。


「すまないな、ミントちゃん、サクヤちゃん」

「あ、いえ、そんな―――」

「報酬も良いですし、活動ポイントも破格ですからね。なんの問題もありませんよ」


 高額報酬の裏に隠された意図も無視しておくに限る。

 機嫌を損ねた母さんの相手をするより厄介な事など、この世には滅多にないと知っているからだ。





実質的には7章プロローグです。


7章終了までは毎日更新していく予定です。

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