魔法
風が吹き荒ぶ辺境の地アルテニル。その森で育ったイルサと、「妖精のシャル」は、村人たちがまだ寝静まっているうちに村を出た。
そして、最初の目的地へ向かうため、途中、古びた坑道へと足を踏み入れるが。
松明の明かりが照らす部屋の中央にはテーブルがあった。
ガタン
影が立ち上がると、それはボサボサの髪に髭を蓄えた大きな男であることが分かった。大男だがどうやら人間のようだ。
最初、部屋の中にいるのは1人だと思っていた。
『何者だ?』
大男が立ち上がりながら口を開いた。その手には奇妙に湾曲した剣が握られている。
「あなたは?」
イルサも腰に下げた短剣に手を伸ばしながら言った。
『ほう、女か、久しぶりだな』
すると、大男は突然襲いかかって来た!そして剣を持つ手とは逆の手でつかみかかってくる!
イルサはその攻撃をかわすと、そのまま男の背後に跳躍した!
「いきなり何をするの!?」
『ほう、女よ、それなりにできるようだな。生かしておこうと思ったが、殺してから楽しませてもらおう』
そう言うと大男はニヤリと笑った。
その時、膝をつきながら着地していたイルサは、右側に気配を感じた!
もう1人いた!?
そこには、人間の子供くらいの大きさで、フードの下に口髭を生やした怪しい人物がいた!
小さくてテーブルの陰で見えなかったのだ!!
「子供!?」
その「子供」と思った人物は、くぐもった声で何かぶつぶつ言い始めた。
その時、イルサの肩につかまっていたシャルが叫んだ!
「イルサっ!魔法がくる!!!」
「え!?」
ちいさな頃おばあさまに聞いたことがある。この世界には魔法という不思議な力があると。
だからイルサは魔法の存在は知っていた、だが、見るのはこれが初めてだった。
イルサの正面には剣を構えた大男、右側では魔法の詠唱が始まっている!
「くっ!」
イルサは両方からの攻撃に備えた。
その時!正面の大男が剣を水平に構えて切り掛かってきた!!
イルサは短剣を抜きながら走り出すと、大男の股めがけて足からスライディングした!大男が水平に薙ぎ払った剣先がイルサの鼻先をかすめる!!そして滑り込みながらそのまま男の急所を切り裂いた!!
“ギャー!〟
股間を切り裂かれた大男は、前屈みに倒れ込みのたうち回った!
と、その瞬間!
キーン...
倒れた大男を含めた空間の空気が張りつめると、のたうち回っていた男は急に動かなくなった。
〝い、息ができない〟
イルサは同時に聴覚も奪われた。
イルサは手にした短剣を落とし、喉元を抑え膝をつくとそのまま倒れ込んだ。
シャル、逃げて...。
イルサがそう発した言葉は声にならなかった。
これまでに遭遇したモンスター
ゴボルトLV1、LV2(二足歩行の犬)
犬の顔をした二足歩行のモンスター、臆病だが残忍な性格。
盗賊LV10、追い剥ぎLV8(みすぼらしい姿)
城の衛兵や兵士が落ちぶれた存在。中には歴戦の戦士だった者や王宮の魔術師だった者など、強力な存在もいる。知能のあるモンスターと手を組むことがある。