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静寂の夢

僕は成瀬 ワタル 都立高校に通う17歳の高校2年生だ。

航という名前は、大海原を航海するようにゆったりと人生を歩んでほしいと母が名付けたそうだ。

その母は、僕が産まれてすぐに亡くなった、親父からはそう聞かされている。だから記憶はないし、写真でしか母さんを知らない。


突然だが、僕は身長172センチ、体重は53キロ、細身で、いわゆる今時の若者の体型だ。

細身だが、暇な時を見つけては体を鍛えているから、胸板もそれなりあるし、腹筋も割れるまではいかないけれど薄っすら筋が見えるくらいだし、スタイルには少しだけ自信がある!

スポーツはとくにしないけど運動神経は抜群だ!足の速さだって学年でも上の方なんだ!

勉強のほうはというと、中の下くらいかな...?


僕は今、片思いというか、気になっている子がいるんだ。それはクラスメイトの「富永 遥香ハルカ」さん。彼女はスポーツ万能で成績も優秀、そして男子からだけじゃなく女子からも人気がある。

僕の気のせいかも知れないけど、彼女とはよく目が合うんだ!授業中でも廊下なんかでも!!この前も、ふと視線を感じて振り返ると、富永さんが僕を見ていた。もしかして彼女の方も、僕の事が気になってるんじゃ?なんて想像するとニヤニヤしてしまう。


初めて彼女を見たのはそう、1年生の時だった。

ある日、女子たちが校庭でラジオ体操をしているのを何気なく見ていたんだ。(まぁ、思春期だしそこは大目に見て欲しい。だって、男に生まれた以上、女の子に興味があるのは当然のことだと思うからさ)


1年生の時は遠くから彼女を見ているだけだった。だけど、2年生になって同じクラスになった僕は、勇気を出して彼女に声を掛けたんだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


雪解け水が流れる麗らかな季節だった。



その日学校から帰ると、オレは今メチャメチャハマっているゲームの続きをやることにしていた。このゲームは中世ヨーロッパを舞台にしたファンタジーロールプレイングゲーム。

実はこのゲーム、主人公の名前を好きなように変更できるんだ、もちろん名前はワタル!

家に帰るとササッと準備を済ませてゲームを起動した。

明日は学校が休みだからいつもより遅くまで遊ぶつもりだったけど、オレはいつの間にかソファーの上で眠ってしまったんだ。


...そして夢を見た...


夢の中でオレはハルカちゃんとデートをしていた。

離れないように、彼女の細く繊細な手をギュッと握っていたんだ。

「ワタルくん、手が少し汗ばんでるね...」

「うん、緊張しちゃって...」

オレは正直に言った。

「わたしも...」

そう言うと、彼女は少し照れたようにうつむいた。


「あの...ハルカちゃん、オレと付き合ってください!」

勇気を出してハルカちゃんに告白をした。

その瞬間、突然街並みがグルグルと回り始めると、彼女とつないでいた手が離れ、オレは「空へと逆さま」に堕ちて行った。


わあーっ!!!


ワタルくん、あっちでわたしを見つけてね...


うーん

眩しい陽射しで目を覚ましたオレの頬を、心地よく風が撫でてくる。


ん?


あれ?夜だったはずなのに陽射しがある?それに家の中なのになんで風があるんだ?確か季節は春だったはず、まだエアコンは使ってないし扇風機だって出してない。

この不思議な出来事を確かめようと目を開けてみると、そこは見渡す限りの草原だった。


オレは夢でも見てるのか?いや、夢を見ていたんだ、たしか遥香ちゃんと...。

ということはこれは夢の続きなのか?


やけに体に風が触れると思ったら、オレは服を着ていなかった。裸というか、この前買ったお気に入りのボクサーパンツだけだった!


そう、これが今流行りの「パンイチ」だっ!!!


...


いや!冗談を言ってる場合かっ!!


ん、だがまてよ、風呂上がりに履き替えたパンツはこれじゃなかったような...?

いや、そんなことより!

外なのにこんな「パンイチ」姿をハルカちゃんに見られたら大変だっ!!変態だと思われて嫌われてしまうぞ!!!


...いや、さっきの夢とはまた違う夢になった?


しかし、夢にしてはやけにリアルだ、オレはどうしてしまったんだ?それに、ここはどこだ?

草花や遠くに連なる山は日本じゃない気がする。どちらかというと外国のようだ。


そうだ!現実には考えられないけど、もし夢じゃなかったとしたら...。


あれ?耳が聞こえない、それとも音がないだけか?

不思議に思いながらも、オレは立ち上がり歩き出した。

裸足だから石ころを踏むといたい、避けながら慎重に歩いてゆく。石ころを拾って地面に投げつけてみた。

やっぱり音がない...。


歩き続けてしばらくすると、自分の背丈ほどの大きな岩があらわれた、見たこともない岩だ。

(まあ、そんなことはどうでもいいか)

喉が渇いてきたし、裸足で歩くのには慣れてない、とりあえず岩の陰で休むことにした。

(慣れてない裸足だからか、やけに疲れた、もう歩く気力もない)

オレは疲れた足を揉みながら辺りを見回した。


まぁ、これは夢だよ、寝てしまえば現実に戻るだろう。それにしても、夢にしてはなんてリアルなんだ。


そして、いつの間にか眠っていた。


どのくらいの時間が経っただろうか...?


寝坊しないで学校に行かないと...。いや、確か明日は休みだったっけ?

そんなことを考えていたような気がする。

そして、そこで目が覚めた。


だが、


現実じゃない同じ場所だった...。


おいおいっ!マジかよっ!!


さっきとは違って辺りは暗くなっている。

見上げると、手が届きそうな夜空に、まばゆいばかりに輝く無数の星空が広がっていた。


おもわずオレは夜空を見回していた、「なんてきれいなんだ...」


って、いやいや!そんなこと言ってる場合じゃないだろう!!


これはマジでヤバいぞ!


そして、今度は寒さが襲ってきた。それもそのはず、何を隠そうオレは”パンイチ”なんだっ!


ふと、夜の草原に吹き荒れる風の音がした。

あれ?音がある、さっきはなかったのに...。

しかも、さっきより意識がはっきりしているような気がする。


...まてよ⁉︎

さっきの夢の中でオレはハルカちゃんとデートをしていた、彼女と繋いでた手が離れて...。


そのあとは確か...。


そうだ!意識がハッキリしたところで思い出した!!彼女と離れてオレだけが空に吸い込まれたんだ、もしそうだとすると、ここはどこなんだ?それに、ここにはオレしかいないってことになるのか!?


うーん、よく分からなくなってきたぞ...。


一体オレはどうしてしまったんだ!?


頼む!夢なら早く覚めてくれ!

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