第4…[裁ち鋏]其の四
第4…どうぞ〜
「道華は…その…とても社交的で、それで、少し適当っていうか…」
「約束をすっぽかしたり、浮気したり?」
「はい。あと、人の彼氏を寝取ったらとか…」
東は苦笑いで言う。
「だから周りから、ウザがられたりもするんですけど…なんか憎めないやつで。それで…」
「フォローとか前置きはいいです。本題へ…」
「あ、はい。…8年前ですね。その頃付き合っていた彼氏と別れたのを皮切りに、色んな人と不仲になったんです。全部あの子の自業自得なところはあるんですけどね。でもあまりに不自然というか…その、急にバレるんです。」
「バレる?」
「浮気とか略奪とか…友達の彼氏を寝取ったら、その翌日くらいに、二人でいるところを友達に見られたりとか。」
「そんなことが8年間も続く…と?」
「はい、今はあの子は風俗で働いてて、元々そういうの好きな子だったから楽しそうなんだけど…」
「それで?別に問題がないならそれでいいのでは?」
「いえ、道華自身、もう疲れ切っているというか…ほんの少しの嘘も、全部バレるんです。たわいもないような嘘、例えば寝坊して遅刻したのを腹痛と言っても、すぐにバレるんです。」
「はぁ?」
「どうやってバレるのよ?」
夢が首を傾げる。
「それが、暴いた本人もわからないんです。なんとなく嘘だとわかる。なんとなく嘘だと思う。そんな感じなんです。それで持って問い詰めると…あの子、悪い子じゃないし、軽いから、直ぐ自白するんです。」
「まぁそれは、よくあることでは?」
「そうなんですよね。ただ、その…私…」
「何か見えたんですか?」
「はい、私って霊感がある方でして、昔からお化けとか見るんです。でもあれは、なんというか…」
夢がしびれを切らして、口を出す。
「あんたハッキリ言いなさい。」
「鋏が見えたんです。」
「鋏かいね?」
ロクが現れた。東の真後ろに、くるっと一回転して登場。
「え?あ、電話に最初に出た女の子!」
「そうだいね。んで?鋏とな?」
「はい、鋏です。と言っても鋏のような形で、歪みが見えたんです。で、その歪みがチョキンと切るんです。」
「何を?」
「道華と嘘ついた相手の間を…」
「間?」
「間の空間。」
「互いの間…つまりは、『互いの仲』だいね。」
「お、ロク。何かわかるのか?」
「さぁ、でもそう考えると納得だいね。嘘をついた相手、浮気した相手、つまりは裏切った相手…嘘ってどんな時につくものかいね?」
白髪幼女…白髪妖女の問いかけに、夢、東、禅太郎の順に回答した。答えを回した。
「利益がある時。」
「怒られたくない時。」
「部が悪い時。」
「そう。なんにせよ必要があり、バレたくはないものだいね。そして、バレるとその仲に亀裂が入る。それは一つの罰。」
「裏切りを裁く鋏。」
「まさに裁ち鋏ね。」