第3…[裁ち鋏]其の三
第3…どうぞ〜
五月二日午後五時半カフェ[エイリーナ]。正確には午後五時二十九分四十秒。
「あら、まぁ多少遅刻するのはいいかしらね。」
五十、五十一、五十二。カランカラン、店に女性が入ってくる。長く綺麗な黒髪を後ろで結び、サラサラと揺らす。すごく綺麗な整った顔立ち。綺麗で大きな眼の、眼光は鋭い。威圧感とも言える。黒いノースリーブのシャツに白いパンツとグレーのパーカー。5センチ程ヒールの入った黒のサンダル。
「綺麗な人だなぁ。」
五十八、五十九。
「どうも東京さん。今日は。」
午後五時半ピッタリ。夢は東に会った。
夢は東の向かいに座る。
「お褒めに頂き光栄です。」
「えっと?」
「…見てくれのこと、私を見て『綺麗』と言っていたので、その感謝をと。」
後日談だが、東はその時「変な人来ちゃった」と思ったと言う。
「えっと…どなたでしょう?」
「あぁ…そうでした。綺麗と言われて舞い上がってしまいました。すみません。」
舞い上がっててそのクールさなんだ…。これはもう、東だけではなく、他の客や店員も思ったことだ。
「都市侍の鞘枝夢です。」
「あ!え?男性だと思って…」
「それは片凪です。お客様と会う場合、私が窓口となります。さて、何か注文はされましたか?」
「はい、コーヒーを…」
「では、それを飲んだら出発します。」
「え?ここで話すんじゃないんですか?」
少し首を傾げた東に、殆ど90度に首を傾げた夢が答える。
「それが[誰に書かれてもいい話]だと言うのなら構いませんが、恐らくはダメでしょう?」
しばらくの後、東は近くのシティーホテルに招かれた。
「どうも東京さん。」
「東京です。」
ソファに座り足を組んでいる男が、思い切り名前を間違えた。
「電話で会話した、片凪です。おかけ下さい。」
東は禅太郎の向かいに座らされた。
「さて、ではお話ください。」
「その前に、その刀はなんですか?」
「これは…霊媒用の道具みたいなものです。お気になさらず。」
「はぁ…では話します。これは、私の友人の南道華と言う人の話です。何が始まりなのかはわからないのですが、あの子は最近、何かに憑かれたような感じなんです。様子も変だし…それに…」
そう言って彼女は話し始めた。どこにでもいる、どこにでもある、ごく普通な女性の、ごく普通でありふれていて、作為的でいて人為的でない出来事を。
文字数はわざと999にしました。雰囲気出るでしょ?