さよなら日常③ 『ようこそ異世界へ』
まるで長くトンネルに入っていたかのように日の光が目に刺さりとっさに目を瞑った。
「ここは・・・」
いや、いわゆる異世界なのは知ってるけど言いたくなるじゃん。もしかしたらおれを抱えてるこいつが答えてくれるかもしれないし。
「さー?あなたがいた世界とは別の世界なのは確かです、明確な名前は知りません。都市名でしたらスクライシス帝国ですね」
「元の世界にも名前なんてついてなかっただろ。いやおれが知らないだけでそれぞれの世界にも世界ごとの名称があるのかもなー。ってそうじゃなくてなんで俺はここにいるんだよ」
「おやすみません、私のことも含め説明しておりませんでしたか」
説明する気もなかったくせによく言うぜ。
「お気づきでしょうが、私は人間の類のものではありません。生物としての名称は・・・・・・色々呼ばれてきましたね。悪魔、異物、魔物、魔人、災厄など呼ばれてきましたからお好きにお呼びください。名前自体も決まっておりません。参考までに前の主人は『魔術師のアルフォンソ・アルディーニ』と呼んでいましたね。」
「じゃあ俺もアルフォンソ・アルディーニって呼ばしてもらう。でも長いからアルでいいな」
「ええ、お好きなように」
自分に対して敬語を使われてるからか、いつの間にかこいつに抵抗が無くなってきたな。これも慣れってやつなのだろうか、そう思うと人間がつまらない生き物に思えてくるよホントに。