表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
たとえ夜を明かすのに幾億の剣戟が必要だとしても【Web版】(書籍版タイトル:幾億もの剣戟が黎明を告げる)  作者: 御鷹穂積
オールドプロミス→ニュークローズ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

245/307

245◇起動

 



 考えてみれば当たり前のこと。

 人類側では魔力の性能不足を理由に壁外行きとなる者がいる。

 『普通』の枠に入れない者が。

 魔人の側にも当然、そういった存在がいるだろう。

 ただ、そういった存在は人類の目に触れることなく淘汰されるから気づかないだけ。

 いるのだ、魔人にも。

「なら、お前らの目的は」

「言葉にする必要があるのか?」

「言うんだ」

 風の拘束を強めると、ランタンが苦しげに呻く。

「ハズレモノであろうと、存在を許される場所だ」

 やはり、同じだ。

 才無き者でも、捨てられない都市。

 大元の想いが、ラブラドライトと同じなのだ。

 だが同時に、大きく異なる部分がある。

「その為に、自分よりも弱い奴らから欲しいものを奪うのか」

 ラブラドライトは証明しようとした。

 才能が足りなくとも、才能溢れる者に勝つことは出来るのだと。

「嫌味な奴だな。この状況を見ろ、私はとても強いとは言えない」

『ラブ』

 上空から膨大な魔力が降ってくる。

 アカツキの魔力攻撃だ。

 それをアークトゥルスが防ごうとしていた。

 アカツキはランタンが囚われていることを知っているのか。

 あの男のことだ、把握してるだろう。

 少しでも意識をこちらに割くことが出来れば、それがヤクモの助けになる筈だ。

「《騎士王》の魔力は凄まじいな。ここまで大規模な魔力放出が連続すると、魔力感知も鈍るのではないか」

 ランタンが言う。

 確かに、常時よりも捉えづらくなっていた。

 周囲に魔力が満ちている所為だ。

「ところで人間、貴様は接続者の機能について知っているか?」

「……何?」

 唐突な話題に、ラブラドライトは訝しむ。

「闇の中で戦う為にかつての人類が生み出した技術の一つだ。魂の魔力炉接続。自身の生命力を魔力に変換する術」

「それがどうした」

「人類はその技術を、ゼロから編み出したと思うか?」

『ラブ』

 言葉少なに、妹の声は注意を喚起。

「逆なのでは、と少しでも考えたことはあるか?」

 逆。

 人類が、闇の中で戦う為に生み出したのではなく。

 魔人が、光の中で戦う為の機能を模した?

 世界が夜で固定されて以後、魔人にはその機能を使用する理由が失われ。

 理由の消失の果てに、使用もされなくなった。

 だが、それが必要な者がいれば。

 普通の魔人にも交じることの出来ないハズレモノが、そこに目を付けたなら。

 魂の魔力炉接続による精神の消耗は、機能に人類が耐えられなかっただけ。

 魔人であれば耐えられるのか。

 だとしても。

「もう、死体は無い」 

「何故私が、あちらへ戻ろうとしたのだと思う」

 土塊が浮いていた場所。

 てっきり魔石狙いかと思ったが。

『ラブ……!』

 滅多に声を荒らげない妹の叫び。

 回避はなんとか間に合う。

 土塊内部から、それは出てきた。

 細身で、長身では足りない程の全長を誇るそれは、人型。

 人型だが、人間ではない。魔人でもない。

 魔力炉がある。

 急速に稼働。

 ランタンの魔法は死体を動かすもの。

 であれば、土塊内部に死体を埋め込んでおいてもおかしくない。万が一の為に用意していたのだろう。

 だがこんなものは、見たことがない。

「人類は魔人を殺す為に多くのものを作り出した。これはその一つのようだ」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◇書籍版②発売中!(オーバーラップ文庫)◇
i651406


◇書籍版①発売中(オーバーラップ文庫)◇
i631014


↓他連載作↓

◇勇者パーティを追い出された黒魔導士が魔王軍に入る話(書籍化&コミカライズ)◇
i434845

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ