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たとえ夜を明かすのに幾億の剣戟が必要だとしても【Web版】(書籍版タイトル:幾億もの剣戟が黎明を告げる)  作者: 御鷹穂積
オールドプロミス→ニュークローズ

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244/307

244◇目的

 



 アカツキが土塊を吹き飛ばした直後のこと。

 ラブラドライトは、もう一人の敵であるランタンを見失っていた。

 単に土煙の所為ではない。

 アークトゥルスが屍騎士の全てを無力化したことにより、ランタンは操るものを失った。

 一瞬、死者と同時に灼かれたのではとも思ったが、違うだろう。

 ただそう考えてしまうくらい、魔力反応を絞っているのは確かだ。

『なんか、変』

 妹の言う通り。

 魔人らしくないのだ。

 そもそも木箱に身を隠すというところからして、プライドの塊である魔人らしくない。

 どちらかといえば、一行が《アヴァロン》に辿り着くまでに襲撃してきた者の方が一般的な魔人らしい魔人といえるだろう。

 能力を隠す時があればそれは戦略ではなく傲慢からで、人間相手に身を隠すなど決してしない。

 ランタンという童女はこれまで遭遇してきた魔人とは、あまりに印象が違い過ぎる。

「こほっ」

 と、咳き込む音。

 ラブラドライトは瞬時に『風』魔法での拘束を試みる。

 魔力反応がないから《導燈者イグナイター》ではないし、《偽紅鏡グリマー》だとしたら周囲に《導燈者イグナイター》の反応がある筈。

 パートナーを失っただけの《偽紅鏡グリマー》であれば、謝罪すればいい。

「う」

 見ると、それはランタンだった。

 幼い顔を苦しげに歪めている。

 どうやらアカツキの魔石をとろうとしていたようだ。

 日中で魔力炉が働かないことを思えば妥当な行動にも思えるが……。

 アークトゥルスが屍騎士を一掃するまでそれを操っていたからには、魔力があった筈。

 ――衝撃で魔石を失くしたのか?

 魔力炉が働かない以上、魔石でカバーしていたが、それを落とした?

「離せ、人間」

 キッとこちらを睨みつけるも、宙に縛り付けられている状態では効果的とはいえない。

「お断りだな、魔人」

「ならば殺せ」

 ランタンが身体から力を抜くのが分かった。

 諦観を示すかのような無抵抗。

「諦めが早いんだな」

「元より長く生きられるとは思っていない。どうせ私はハズレモノだ」

 そのとき、すぐにトドメを刺さなかった理由は分からない。

 興味が無かったといえば嘘になる。

 自嘲するような薄笑みが気になったのもある。

 だが、明確にこれというものを見つけられない。

「ハズレモノ?」

 気づけば声に出していた。

「もう話すことはない」

「いや、ある。お前達の組織の規模や目的、本拠地を何処に置いているかを知る必要がある」

「この戦闘の最中にか?」

『ヤクモ、助けなくていいの?』

 ――アカツキとかいう男は、この女を気にかけていた。

 捕まえておけばこちらに意識を割くかもしれないし、殺せば驚きなり怒りなりで心が乱れる。

 ならば、殺すタイミングこそがヤクモ達の助けになる。

「僕達の都市で同じことをされたら堪らない」

 一体の魔人と一組の戦士。

 戦力に対して人的被害が大き過ぎる。

 彼らのような者たちがある目的を持って集まっているというのに、人類側には何の情報もない。

 ランタンはしばらく考え込むような顔をしたが、やがて馬鹿にするように笑った。

「私についてならば、話してやろう。どうせ後は死ぬだけだ」

 いかなる思考があったのか、彼女は応じることにしたようだ。

「ハズレモノっていうのはなんだ」

「無能のことだ。魔人だというのに、肉体的魔法的強さを持たない。平均どころか下限にも届かない。人間であれば、太陽稼働に貢献出来ない者となるか」

 …………。

「目的を聞いたな。簡単だ。アカツキや私のようなハズレモノは通常、野垂れ死ぬ。そう決まっておる。そうならない居場所の確保こそが、我々の目的だ」

 それは、まるで。

 ラブラドライトの目指すものと。



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