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夢見る星の銀花の大地  作者: らいん
第1章
7/21

パーティー結成!

 やはりというか、パーティー勧誘合戦が始まってすぐにヒーラーの取り合いが白熱していた。

 今もレクスの見ている先でヒーラーと思われる気弱そうな女の子が2人の男に左右から腕を引っ張られながら勧誘されていた。


(いくら死亡者が出たら成績が下がるとはいえ、あれはさすがに可哀想な……)


 先に手を放したほうが勧誘に成功するのだろうかと見ていたら、第3の男(金髪のイケメン)が現れて腕を引っ張っていた2人の男を止めた。

 そしてそのまま金髪男がヒーラーの女の子を勧誘すると、その子は嬉しそうに金髪男のパーティーに加入した。

 その光景を見せられて女の子を引っ張り合っていた2人の男がその場に崩れ落ちる。多分、ヒーラーが欲しくて勧誘していたというより、女の子が可愛かったから下心で勧誘したのではないかと思った。しかも巨乳だし。


(もしあの金髪より先に俺が助けに入ってたら、パーティーに勧誘できたのかも……)


 ちょっと勿体無かったかもしれない。せっかく巨乳だったのに。

 と、そちらを見すぎていたのか金髪男と思いっきり目が合った。

 するとその金髪男は近くにいたパーティメンバーらしき仲間達と何か相談をした後で、こちらへと歩いてくる。


「キミ、1組のレクス・ディアス君だろ? ボクは5組のレオン・アードルノだ、よろしく」

「あ、うん。初めまして?」


 金髪男がレオンと名乗りながら右手を差し出してくる。拒否する理由もなかったので手を握り返して握手を交わす。


「突然ですまないけど、良かったらボクたちのパーティーに入ってくれないか?」


 何かと思えばパーティーのお誘いだった。レオンの後ろには森人族(エルフ)の男と、小柄で背中に透明な羽の生えた妖精族(フェアラ)の女の子、それに先程加入した巨乳ヒーラーがいる。どうやらこの4人がパーティーメンバーのようだ。

 レオンは握手をした感じでは前衛のようだが、残りの3人は後衛のようなので前衛が不足しているのだろう。


(パーティーに誘ってくれるのは嬉しいんだけど……)


 巨乳ヒーラーと目が合った。自分の胸を隠すように両手で抱いて隠された。

 その横では妖精族の少女が巨乳ヒーラーに引っ付いて、汚物を見るような目でレクスを睨んでいた。

 どうやらリーシアが流した噂を知っているらしい。それなのにパーティーに誘ってくるとか嫌がらせか罰ゲームなんじゃなかろうか。


「ごめん。誘ってくれるのは有り難いんだけど、まだ合流していないだけで1人はすでに確定していて、こっちは最低でも2人でさ。そっちはすでに4人いるみたいだからちょっと無理かな」


 さすがにメンバー2人から警戒された状況のパーティーに加入してもこちらも気が休まらないので素直に断った。

 それにリーシアとパーティーを組む約束はしていないが、放っておいて別のパーティーに参加するのは非常によろしくない。今後は他の人に先を越されまいと四六時中引っ付いてくるとかしそうだ。


「そうか。さすがにレクス君ぐらいの使い手になると引く手数多だろうしね、仕方ないか」


 一瞬嫌味かと思ったが、レオンはいたってマジメな顔をしている。もしかしたら噂のことを知らないのかもしれない。

 レオン達は軽く挨拶をして去って行った。女の子2人は最後までレクスを警戒していたが。

 それと巨乳ヒーラーの子は何か見覚えがあるなと思っていたら、昨日エリルに治癒魔法を掛けていた女の子だった。あの乳は間違いない。

 目の前でエリルを連れて行ったから、噂のことを余計に信じているのだろうか。



 そのまま観察を続けていると、行動の早い生徒達はパーティー登録を済ませて出て行った。

 登録受け付けをしている教師達のところにも人が集まっているので、意外と早く人が捌けそうだ。


「レクスさん、ようやく見つかりました。お待たせしてしまいましたか?」

「いや、別に急いでる訳じゃないし大丈夫だよ」


 しばらくしてリーシアがやってきた。やはり最初から組む気満々だったようだ。


「思いのほかパーティーに勧誘してくださる方が多くて、お断りするのに手間取ってしまいましたわ」

「ああ、リーシアの弓の腕を見たなら誘いたくなるだろうからね」


 リーシアは弓の名手である。子供の頃にリーシアから好みの女性のタイプを聞かれたレクスが「一緒に冒険ができる女の子って良いよね。僕は剣士だから魔法とか弓でサポートしてくれる子が欲しいな」と言ったところ、数ヵ月後には一人前の射手になっていた。それまでスプーンより重いものなど持ったことがないような箱入りのお姫様がである。

 本人曰く「愛の力です」らしいが、その愛が重すぎてドン引きした。


「レクスさんは他の方から誘われたりしなかったのですか?」

「昨日ラディに誘われたのと、さっき5組のレオン君って人に誘われたかな。両方とも俺で5人目みたいだったから断ったけど」

「そうですか、それは良かったです。もしレクスさんがわたくしのことを放っておいて他の方とパーティーを組んでいたらどうしようかと思い、気が気ではありませんでしたわ」

「やだなぁ、俺がリーシアのことを放っておく訳ないじゃないか。ちなみにもし俺がリーシアのことを放っておいて他の人とパーティーを組んでたらどうする気だったの?」

「えっ? そうですねぇ……。とりあえず今回は諦めたでしょうけど、今後は他の方に先を越されないように常に監視でもするようにしてたんじゃないかと。もちろん片時も離れずに」


 うん、知ってた。愛がとても重いです。


「それでレクスさん、パーティーはどうなさいますか?」

「ん? あー、そうだなぁ……」


 実力テストがどれだけの難易度かわからないので、リーシアと2人で大丈夫なのかという懸念はある。

 しかし下手に人数を増やすと、死亡者が出て成績が下がる可能性もあるので人選は慎重にするべきなのだが――。


「もう少し待ってみようかな」

「待つ……ですか。レクスさんがそう仰るのなら、わたくしは構いませんけど」


 それだけでリーシアも察したのだろう。レクスの横に並ぶと同じように人混みに目を向ける。


「もう別の方とパーティーを組まれていたりするのでは?」

「それならそれで全然構わないよ。約束があって待ってる訳じゃないしね」

「わたくしとしてはこのままレクスさんと2人きりというのも、デートみたいで魅力的なんですけどね。ふふふ」


 それもできれば回避したいから待ってるとは言わなかった。



 それほど時間は経っていないが、だいぶ人も減ってきた。半分くらいは申請を済ませて出ていったのではなかろうか。

 その中にラディバートの姿もあったが、彼のパーティーは1組の熊型獣人族(アニム)でヒーラーのベアードと、2組のエリルと時々一緒にいる猫耳がいた。更に狐型獣人族の女の子と犬型獣人族の女の子もいて、ラディバート以外は全員獣人族という顔ぶれだった。

 ベアードは男なのでともかく、残り3人の女の子は絶対に尻尾で選んだなと思った。


「メティーナさん、ちょっと良いですか?」

「はい?」

「……ん?」


 リーシアと壁際で待機していると、見知らぬ男が近付いてきて声をかけてきた。

 メティーナって誰だと思ったが、そういえばリーシアが今は苗字をそう名乗っていたなと思い出す。


「先日、貴女の弓の腕を拝見させていただいたのですが実に素晴らしい腕前でした。そこでぜひとも僕のパーティーに入っていただけないかと思いまして」


 そう言って男がキザったらしく頭を下げる。どこかの貴族なのかもしれない。

 男の後ろにパーティーメンバーと思われるメガネをかけた男が1人と、制服を着崩して胸元を露出した女が1人いた。

 メガネの男は貴族っぽい男に合わせて頭を下げているが、女の方は値踏みするようにジロジロとこちらを見ている。


「知り合い?」

「いえ、初めてお会いする方ですが……」


 リーシアが困ったようにレクスを見る。どうやら初対面らしい。


「ああ、申し遅れました。僕はナルシス・ト・リバオール。以後お見知りおきを」


 こちらの会話が聞こえたのだろう、ナルシスは一度頭を上げて名乗るとまた恭しく頭を下げた。


「リバオールって、この国の……確か北の方に領地を持ってる伯爵家の?」

「おお! どうやらキミは博識のようだね、気に入ったよ! そうともその伯爵家の嫡男がこの僕、ナルシスさ!」


 なんだかよくわからないポーズを決めながら嬉しそうに宣言された。レクスは王子という立場上、自国の貴族の名前ぐらいは一通り知っているだけで、リバオール家については何も知らないのだが。


「ええと、それでその……、パーティーのお誘いですが申し訳ございません。わたくしはこちらのレクスさんのパーティーにすでに加入していまして」


 リーシアが頭を下げるとナルシスはアゴに手を当てて、思案顔をレクスの方に向ける。


「キミは確か剣士だったよね? 前に竜人族(ドラクル)と模擬戦をしていたのを見たことがあるが、僕と同じぐらい腕が立つはずだ。丁度良い。あと1人前衛が欲しかったところだし、そういうことならキミもついでにパーティーに入れてあげよう」


 凄い上から目線だった。逆に関心するくらいだ。


「お断る」

「なぜに!?」


 即答したら心底意外そうな顔をされた。面倒なのに目を付けられたようだ。


「リバオール家の跡取りであるこの僕がパーティーに誘ってるのに断ると!? この僕のパーティーに入れるのがどれほど幸運なことなのかわからないとでも言うのかい!」


 知らんがな。と思ったが、真っ向から否定すると余計に絡まれて面倒なことになるかもしれないのでここは丁寧に断った方が良いだろう。


「ごめん。わからないからさっさと諦めてどっか行きやがれください」

「レクスさん、本音がだだ漏れです。先程から言葉も取り繕えていませんよ」

「しまった、つい」

「ぐっ! こ、この僕をコケにするとは……!」


 レクスの言葉にナルシスが今にも噛み付いてきそうなほど怒りを露にする。

 失敗したなとレクスが謝罪する前にそれまで後ろに控えていたナルシスのパーティーメンバーが仲裁に入る。


「ナ、ナルシス様。ほらこの2人も嫌がってますし、無理に誘うのはよくないですよ」

「しかしだな、アントン!」

「アントンの言う通りよ。パーティーなんだから協調する気がないのを入れても逆に邪魔になるだけよ」

「そうですよ! それにほら、ナルシス様とヴェーラさんが居ればモンスターなんて余裕じゃないですか」

「う……む、まぁ確かに。そうだな、僕がいればモンスターなどいくらかかってきても蹴散らせるしな」


 とりあえず怒りは収まったようだが、ナルシスはレクスを睨むように見る。


「キミの顔は覚えたからな。せいぜい試験が終わったあとで僕のパーティーに入らなかったことを後悔するがいい。行くぞ、アントン、ヴェーラ。3人でパーティー申請だ!」


 そう言ってナルシスがパーティー受け付けをしている教師達の方に足を向ける。

 レクスはアントンとヴェーラに向かって、両手を顔の前で合わせて頭を下げる。2人は苦笑いを浮かべてからナルシスの後を追って行った。


「レクスさんの貴族嫌いも筋金入りですね」

「いや、ああいう風に家名をひけらかす相手だけにだよ?」


 レクスは罰の悪そうに頭をかく。弁明しようかと思っていたら、リーシアが何かに気付いたような顔をした。


「あら? レクスさんあちらを」

「ん? ああ、居たね」


 リーシアの目線の先を追うと、そこには最近ではすっかりお馴染みとなったエリルが知らない女生徒に頭を下げていた。

 エリルは頭を上げるとキョロキョロと辺りを見渡し、また別の女生徒の前まで行くと頭を下げた。


「あのっ! もしパーティーに空きがありましたら私を入れてもらえませんか!?」


 突然頭を下げられた女生徒がキョトンとした顔をしつつもエリルに質問する。


「えっ? えーっと、アナタの職業は?」

「け、剣士で前衛志望なんですけど……」

「へぇー、そんなにちっさいのに前衛なんだ」


 女生徒が感心したような声を出すと、パーティーメンバーと思われる別の生徒に何事か耳打ちされ、困ったような表情になる。おそらく『留年姫』だと教えられたのだろう。


「ええと……、ごめんなさい。ウチのパーティーって前衛ばかりだから今は後衛を探してて」

「あぅ、そうですか……。わかりました……」


 エリルは女生徒から離れるとまたキョロキョロと辺りを見渡し、今度は近くにいたレオンの前まで行くと頭を下げた。


「あのっ! もしパーティーに空きがありましたら私を入れてもらえませんか!」

「えっ!? あ、あーいや、その……、すまない。実はもう今回は4人パーティーで良いかと話が纏まったとこなんだ」


 レオンは一瞬迷うような素振りを見せたが、仲間に目配せをしてからエリルの願いを断った。

 爽やかイケメンのレオンなら受け入れるのではと思ったが、意外と俗物的な思考の持ち主だったようだ。


「はぅ、わかりました……」


 エリルが頭を上げるとレオン達はそそくさとパーティー受け付けをしている教師達の方へと行ってしまった。

 エリルはまたキョロキョロと辺りを見渡し、ようやくレクス達が見ていることに気付いた。


「あっ!」


 エリルは嬉しそうな顔をしたと思ったら、すぐに迷うような表情をして俯いてしまう。しかし少しだけ顔を上げるとチラチラとこちらを窺いながら、モジモジと手足を擦り合わせる。


「どうしたんだろう。トイレにでも行きたくなったのかな?」

「レクスさん、デリカシーがありませんよ。あれは多分、パーティーに入れてくれそうなレクスさんを見つけて嬉しい反面、レクスさんにまで断られたらどうしよう、と悩んでいるのではないかと」

「ああ、なるほど」


 小声で呟くと、リーシアがそう推察を説明してくれた。

 しばらく百面相をしていたエリルだったが、意を決したような表情をすると小走りにこちらへ駆けて来て勢いよく頭を下げた。


「あああ、あのっ! も、もしパーティーに空きがありましたら、私を入れてもらえないでしょうか!」

「良いよ」

「えっ」

「えっ」


 何故か意外そうな顔をされた。


「ええと……、私をレクスさんのパーティーに入れて欲しいって意味なんですけど?」

「うん、わかってるよ?」

「自分で言うのもなんですけど、私を加入させるのって縛りプレイをするようなものですよ? それともレクスさんってそういうのが好きなドMさんなんですか?」


 なんなのこの子。人のことをおちょくりに来たのだろうか。縛って揉んでドSだと証明するぞ、このアマ。


「いや、別に問題ないから良いよって言ってるんだけど。リーシアも良いよね?」

「はい、わたくしも構いませんわ」


 レクスがリーシアの方を見ると、笑顔で首肯する。

 するとようやくエリルも実感がわいたのだろう、みるみる笑顔になっていく。


「ほ、ほんとに良いんですか……? あ……、ありがとうございます!」

「ああうん、よろ――」

「キサマアアアアアァ! どういうつもりだあああああああっ!」


 よろしくと挨拶を交わそうとしたら突然大きな声で遮られた。体育館内に居た全員の目が大声の発生源を見る。

 レクスも何かあったのかと思ってそちらを向くと、ナルシスが鬼のような形相でこちらを睨みながら大股で詰め寄って来ていた。

 もしかして自分の後ろにいる誰かに怒っているのかと淡い期待をしながら振り返ってみたが、壁しかなかった。


「何を惚けた顔をしている! 僕はキサマに怒っているんだ!」


 目の前まで歩いてきたナルシスがレクスをビシッと指差す。また面倒なことになったなと心の中でタメ息を吐いた。


「ごめん、キミが何を怒っているのか本気でわからないんだけど……?」

「よくもぬけぬけと! 僕からのパーティーの誘いを断っておきながら、その女を自分のパーティーに加えるとはどういうつもりだ!」


 ナルシスがレクスに向けていた指をエリルに向けると、レクスとリーシアが揃ってエリルの方を見る。エリルは突然大声を出しながら乱入してきた男に驚いていたが、2人に見つめられキョトンとした顔で首を傾げた。


「もしかしてエリルって面倒な奴を引き寄せるフェロモンみたいなモノでも垂れ流してるのかな?」

「まるで誘蛾灯ですね」

「えええええっ、これ私のせいなんですか!? どう見てもレクスさんに対して怒ってるじゃないですか!」

「そうだ! 僕はキサマに怒っているんだ、レクス!」


 ヤバイ、名前を覚えられてしまった。それよりこの男はどうしてエリルが加入したところをバッチリ見ていたのだろう。パーティー申請をしていたのではなかったのか。手で握り潰している書類も申請用紙のようなのだが。


「……ああっ! もしかして、パーティー申請をする振りをすれば俺が後から追いかけて行って『やっぱりパーティーに入れてください』って言ってくると思って、待ってたんだ!」

「ちっちちちち違うぞ! 書類は全部記載してあとは提出するだけなのに、早く追いかけてこないかなってこっそり様子を窺ったりなんてしてなかったぞ!」


 男にそんな駆け引きをされてもキモイだけだった。いい加減面倒になってきたのでもうキッパリと断わることにした。


「悪いけど、キミと組むつもりはないから」

「なぜだ! なぜこの僕からの誘いを断っておきながら、そんな2年も留年するようなヤツと組むというのだ!」


 2年留年という言葉にエリルが縮こまったので、レクスは励ますようにその頭をワシャワシャと撫でる。


「キミはその傲慢な性格は組んでも面倒だと思ったから断った。エリルはひたむきな性格が好ましかったから組んだ。ただそれだけだ」

「ぐっ! ぼ、僕が傲慢だと……」

「レクスさん……」


 レスクの冷たい眼差しにナルシスが怯む。

 エリルは感激したような表情を浮かべ――ているかと思いきや、ジト目でレクスの手を両手で掴んで止める。


「髪が傷むので止めてください」

「あっはい、すみませんでした……」


 ちょっと恐かった。


「くそっ! いいだろう、そこまで言うのなら僕と勝負をしろ、レクス!」

「えぇー、勝負ぅ……?」


 お決まりの展開にちょっと辟易する。どうせなら怒りのあまり突然裸で踊り出すみたいな新しいことをやって欲しい。顔面にグーパンするけど。


「そうだ! そこまで言うのなら僕とキサマのどちらが優れているのかハッキリさせようじゃないか」

「勝負方法は?」

「明後日の実力テストで成績が上だった方の勝ちだ!」


 やはり予想通りの展開になった。そしてこういうフラグは何と呼ぶのかとてもわかりやすい。


「かませ犬か」

「かませ犬ですわね」

「私、かませ犬って初めて見ました!」

「ナルシス様、それはかませ犬がよく言うセリフですよぉ……」

「これはウチらがかませ犬になって負けるのが確定したわねー」


 リーシアとエリルに加え、後ろで成り行きを見守ってたアントンとヴェーラまでかませ犬呼ばわりしていた。ついでにこちらの騒ぎを見ていた生徒達の間でもかませ犬という単語が飛び出している。


「ぼ、僕を犬呼ばわりとは……! 良いか、絶対に吠え面をかかせてやるからな、逃げるんじゃないぞ!」


 それだけ言ってナルシスは来たときと同じように大股で歩き去った。アントンが慌ててその後を追い、ヴェーラも肩を竦めながら着いて行く。


「勝負、受けるんですか?」

「どのみちテストは受けないといけないし、勝手に勝負にされるんじゃない?」

「負けたらどうなるんですかね?」

「さぁ? 勝ったらどうこうとは何も言ってないし、まぁ放っておいて問題ないんじゃない? とりあえずパーティー申請しようか」

「そうですね。だいぶ人も少なくなってきてますし、3人で参りましょうか」

「はい! 遅くなりましたけど、よろしくお願いします!」


 ナルシスとかち合わないように一番奥の教師のところへ行くことにして、3人で並んで歩き出した。

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