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夢見る星の銀花の大地  作者: らいん
第1章
12/21

缶詰タイム

「湖には着いたけど、チェックポイントってどうすれば良いんだろう?」


 レクス達の目の前に広大な湖が広がっていた。青く澄んだ水は湖底を映し出している。深さはそれほどでもないようだが、対岸は遥か彼方にかろうじて見えているぐらいだ。


「レクリエーションとかなら机の上に判子が置いてあったりしますよね」

「判子……じゃないけど、何かこの辺りに人工物が置いてあったりしないかな?」

「人工物なら、あれがそうではありませんか?」


 リーシアの指差す先に、湖の端に佇むように設置された白い像が見える。


「ああ、キノコを探すのに林道を外れちゃったけど、そのまま進んでたらあそこに続いてたのかな」

「かもしれないですね。行ってみますか?」


 他に手掛かりもないので白い像へ歩いて行くと、次第にその輪郭がハッキリとしてきた。

 端整とまでは言えないが整った目鼻立ちにきちんと整髪された頭。瞳は優しげだが真っ直ぐに前を見つめ、確かな意思を感じさせる。王家の紋章の入ったマントを身に纏い、二振りの剣を携え、石像とは思えぬ迫力で威風堂々と立っている。

 それは遥か昔、この世界を混沌に陥れた邪龍を討伐し『銀星の王』と語り継がれることとなった人物。のちの初代グラヴィアス王国国王、アレイクド・シュバル・ディア・グラヴィアスの石像だ。


「これは間違いなくチェックポイントだね」

「ですね」


 初代国王の銅像なら学園正門の前にも設置されてある。例えこの人物が誰だかわからない他国の生徒のみで構成されたパーティーであっても、目印としての役割はこなせそうだ。


「あ、台座の部分に説明書きがしてありますよ。えっと『この石像はチェックポイントです。誰か1人でも石像に触れればチェック完了となります。ベニズダケを納品する場合は、台座の上にキノコを5本置けば納品完了となります』だそうです」

「じゃあエリル、そのまま石像に触っちゃって」

「はい」


 台座は少し高めだがエリルでも十分に届く高さだ。エリルが石像の足の部分を触ると、石像が少しだけ発光する。すぐに光は収まり他は何も変化はなかった。


「まずは1つ目か。って、エリルどうかしたの?」


 なぜかエリルがレクスの顔をジーっと見つめている。


「んー? なんとなくですけど、レクスさんってこの王様とちょっと似てるなーって思いまして」


 思わず吹き出しそうになったのをギリギリで耐えた。


「ええっと……、そうかな? 俺ってそんなに格好良い?」

「あ、いえ。こっちの王様の方が断然カッコイイですけど」


 即答である。このロリ巨乳、一度ヒィヒィ言わせてやろうか。


「わたくしはレクスさんの方が素敵だと思いますよ。具体的にどこがと言われれば上手く言葉にはできませんけど」

「それ、フォローになってないからね?」


 せめてリーシアには良いところを一つくらいは言って欲しかった。


「私、この王様の物語を読んで英雄ヒーローに憧れるようになったんですよ。中でも一番のお気に入りは、王様はこの世界を救うために流れ星に乗ってやって来た女神様の御使いってお話です!」


 エリルがちょっと興奮気味に話す。

 初代国王の出自についてはハッキリとした話が残っていないため諸説あるのだが、エリルの言う流れ星に乗ってこの世界に降りてくる話は童話のようなストーリー展開で、子供に大人気の話でもある。


「俺はやっぱり、地上に落ちた流れ星から採れた鉱石で作られた剣を携えて、邪龍を討つ話が好きかな。実際に王家に残されている初代国王の使ってた聖剣には未知の素材が使われてるらしいし」


 他にも『流れ星に当たって無敵の体を手に入れた』や、『流れ星にした願い事が叶って、とてつもない力を手に入れた』など、いろいろと語り継がれてはいるが、どれも現実離れした話ばかりである。


「一番現実的な話が好きとか、レクスさんは夢がないですね」


 やれやれとエリルが肩を竦める。レクスとしては自分の始祖の話なので普通が一番嬉しいのだが。



「お話も結構ですが、これからどうするかをまずは決めませんか? わたくしは少し休憩してから次に向かった方が良いのではないかと思うのですが」


 話が一区切りしたところでリーシアがそう提案した。確かにここで話し込んでいる場合ではないだろう。


「あー、うん。そうだね。なんなら少し早いけど、お昼にしちゃっても良いかもしれないね」

「あのっ、それでしたらあそこにおトイレがあるみたいなんで、私ちょっと行ってきて良いですか?」

「え? トイレなんてあるの?」


 エリルの言う通り、林道沿いの少し離れた場所にトイレがあった。公園などにあるような普通の公衆トイレである。林道を通ってチェックポイントに向かって来ていれば、石像より先に見つけていただろう。

 エリルが無警戒でトイレへと歩いて行くので後ろから追いかけていくと、入口の横に張り紙がしてあった。


『このトイレ及び、チェックポイント周辺は安全地帯となっています。モンスターは入ってこれません。

 このトイレを使用することによるペナルティや成績の減算などは一切ありません。ポータブルトイレの使用が恥ずかしい人や、人目が気になる場合は遠慮せずに利用してください』


「この張り紙の右下にあるのって学園長のサインだし、この文面はそのまま受け止めてよさそうだね」

「そうですね、さすがに学園長のサインまで入っていて罠ということはないでしょう」

「テストの時間が長い場合はトイレが設置してあるのが普通ですよ。いくら保護魔法でプライバシーが守られていると言われても、先生たちが監視している中でその……、おトイレを済ませるのは嫌ですし」

「そりゃそうだよねぇ……」


 収納バッグの理論を応用したポータブルトイレがあり、実際にレクスも持ってきている。しかしテストの採点のために教師が監視している状況下でそれ使うのは非常に躊躇われる。

 そういった場面は自動的に保護魔法が発動して遮断されるらしいのだが、男のレクスでさえ恥ずかしくてできればやりたくない。それが年頃の女の子ともなれば尚更だろう。


 罠を警戒する必要もないみたいなので、エリル達と別れて1人で男子トイレに入る。中はごく普通の公衆トイレで、魔法で用意されているだけあって新品同様でとてもキレイだ。



「あれ? 水が出ない……」


 用を済ませ、手を洗おうとしたら洗面台から水が出てこなかった。2つ洗面台があるのだが両方である。

 魔力感知式なら魔力ゼロのレクスが手をかざしても反応しないのはわかるのだが、魔力感知式はそういった観点から公共の建物などには設置されない。

 レバーも見当たらないので試しに蛇口の上や周辺を触ったりもしてみたが、やはり水は出てこない。そもそも水が出ない仕様なのかと思ったが、ついさっき用を足した便器には水が流れていたのでそれも違うだろう。


「まいったな、故障かな……」


 なにせパーティーの数だけ用意されたトイレである。中に一つくらいは不具合があるのかもしれない。

 手ぐらい湖で洗えばいいかとトイレから出ると正面――林道を挟んだ反対側の辺りにテーブルとイスが見えた。


「こんなのさっきまであったっけ?」


 木で出来た大きめの丸テーブルに肘掛けの付いたゆったりとしたイスが3脚。テーブルの上には水差しとコップが置いてある。


「レクスさん、そのテーブルはどうされたんですか?」


 テーブルと睨めっこをしているとリーシアとエリルが戻ってきていた。


「ああいや、俺がトイレから出てきたらここに置いてあったんだけど、さっきまでこんなの無かったよね?」

「はい、私もこんな所にテーブルは無かった気がしますけど……。学園長先生が用意してくれた休憩ポイントってことですかね」

「わざわざお水まで用意してくれていますし、休憩するのに丁度良さそうですね」


 確かに安全地帯なら問題ないだろう。休憩していこうかと言いかけて手を洗っていないことを思い出した。


「そうだ、エリル。ちょっと先にウォーターバレットを使って欲しいんだけど」

「ウォーターバレットですか? それは別に構いませんけど、どこに撃つんですか?」

「いや、トイレの水道が壊れてるみたいで手が洗えなくてさ。威力を調整して水を出してくれないかなって」

「えっ? でも私の魔……。あ、いえ、わかりました。じゃあウォーターバレットを撃つので手を出してください」


 レクスは両手の平を合わせるようにしてエリルに向ける。エリルは差し出されたレクスの手に向けて指輪を構えると、無言で水弾をぶっ放した。


「あぶなああああああああああああぁっ!?」


 レクスが体を捻ってギリギリで水弾を躱す。射出された水弾はそのままレクスの後ろにあった木の幹に当たり、轟音を響かせる。


「ちぃっ、避けられました」

「舌打ち!? いやいやいや、さすがに――」


 抗議の声を上げようとしたレクスの言葉を遮って、木の上から水飛沫に混じってテーブルの上に何かが落ちてくる。

 それは猿モンスターのクローエイプだった。下級モンスターで体長は60センチもないが、鋭い爪による攻撃と群れる習性があるので厄介だ。どうやら木の上に1匹だけ潜んでいたのが音に驚いて落ちてきたと推測できる。


「ウギャギャーッ!」

「クローエイプ!? 2人とも戦闘準備を!」

「そんな! 安全地帯だったのでは!?」


 慌てて後ろに下がりながら陣形を整えるが、こちらが武器を構える前にクローエイプが駆け出す。そして――。


「ウギャンッ!」


 一番近くに居たレクスに勢いよく飛び掛かり、そこにあったらしい透明な障壁に顔面からぶつかって気を失った。


「…………ああ、なるほど。つまりこの林道からこちら側までが安全地帯だったんだ」

「トイレ周辺は安全地帯と書かれてましたが、具体的な距離までは書かれていませんでしたね。迂闊でした……」

「えっとつまり、テーブルが置いてある場所は安全地帯の外で、モンスターが襲ってくる罠だったってことですか?」

「そういうことだね。座ってるところに上からモンスターに強襲されたらさすがにヤバかっただろうし」


 もしかしたらあの水差しも休憩を促す以外に、毒とまではいかないでも軽い睡眠薬や下剤などが混入されていた可能性が考えられる。すっかり騙されてしまった。


「エリルさんのお手柄ですね」

「そうですか? えへへ、照れちゃいますね」


 リーシアの賛辞にエリルが照れくさそうにはにかむ。


「いや、待って。すっかり忘れてたけど、さっきのあれは当たってたらさすがにヤバかったんだけど?」

「でもレクスさんが使えって言いましたよね? 私のウォーターバレットは威力調整ができないのを知っているのに」


 エリルがフフンと鼻で笑う。どうやら先程の落とし穴の件での仕返しらしい。エリルのウォーターバレットは魔法具で行使しているので威力調整ができないのをすっかり忘れていた。

 しかも結果的にエリルのおかげで罠を回避できて、ケガの一つも無かったのだから何も言えない。ぐぬぬ……!


「それよりレクスさん。手を洗うだけでしたら女性用のお手洗いを使えば良いのでは? どうせこの場にはわたくし達しかいませんし」


 言われてみればそうだった。女子トイレに手を洗いに行こうかと思ったら、エリルが何かに気付いたような顔をする。


「あの、もしかして手をかざしたら水が自動で出てくるタイプだと思ってませんか?」

「えっ、違うの? レバーも無かったし蛇口周辺を触っても水が出なかったんだけど」

「違います。さっきリーシアさんも同じ勘違いをしていましたけど、あれは蛇口の横に付いてる丸いツマミを捻って回すんです。ドアノブと一緒です」

「なん……だと!?」


 まさかそのようにして水を出す蛇口があるとは。王宮はほとんどが自動で水が出てくるタイプであり、学園内も蛇口周辺を触わるタイプかレバーを上げ下げするタイプが主流で、ツマミを回すタイプは知らなかったのだ。


「あの……、ツマミタイプの蛇口を知らないって、もしかして本当はレクスさんも貴族さんなんですか?」

「いや、俺は本当に貴族じゃないよ。ねぇ、リーシア」

「はい。レクスさんは貴族ではありませんね」


 王族なので貴族ではない。嘘はついていない。

 どこか納得いかないような顔をしたエリルに蛇口の使い方を教えてもらい、ようやく手を洗うことができた。



 時間もいい頃合いになってきたのでこのまま昼食を摂ることにした。林道でご飯を食べることになって、またクローエイプに襲われると大変だからである。

 しかしいくら臭いなどしないとはいえ、さすがにトイレの横で昼食というのもどうなんだということで、チェックポイントである石像の横で食べることになった。

 こちらの安全地帯の範囲はわからないが、さすがに真横でなら平気であろう。

 3人で座れるレジャーシートを敷き、車座になって座るといよいよ缶詰のお披露目会である。


「エリルに聞きたかったんだけど、このタブの付いてない缶詰ってどうやって開ければいいの?」

「タブが無い缶詰は、この缶切りを使って開けるんですよ。まずは私が一つ開けてみますね」


 エリルが缶切りと呼んだ道具を使いキコキコと缶を開封していく。ちょっと楽しそうである。

 やがて缶切りを一周させたエリルは缶詰めを掲げてそれを紹介した。


「じゃじゃーん! まずは定番中のド定番、サバの味噌煮缶です。さぁ、食べてみてください」


 レクスとリーシアはパチパチと軽く拍手をした後で、エリルに差し出されたサバの味噌煮を食べる。


「あ、これイケるね。骨や皮も柔らかいから全然気にならないし」

「そうですね。ちょっと味付けが濃いので、ご飯が進みそうです」

「そう言うと思ってご飯の缶詰も用意しておきました。これは冷めてても十分に美味しいやつなのでオススメです!」


 エリルが次々と缶詰を開けていく。さんまの蒲焼にコーンビーフにミックスビーンズ、カレーにマグロやカニなどバラエティーにも富んでいて、さすが缶詰マイスターである。



「では、わたくしが買ってきた物も出しますね」


 エリルの買ってきた缶詰をつつきつつ、リーシアが自身のバッグから缶詰を取り出す。


「まずはプリンの缶詰です」

「プリン?」

「はい、プリンですけど?」


 プリンである。確かに缶詰にプリンと書かれている。


「あ、うん。でもプリンはデザートだから後から食べた方が良くない?」

「それもそうですね。でもそうなると、わたくしの買ってきた物は後から出した方が良さそうですね」

「もしかして全部デザート系なの?」

「そうですね、美味しそうなモノをとのことでしたので。他には羊羹、ゼリー、杏仁豆腐、チーズケーキ。それと練乳ですね」


 見事に甘い物ばかりである。あと最後のはデザートですらない。


「練乳はさすがにおかしくない?」

「レクスさんは練乳がお嫌いですか?」

「嫌いじゃないけど、それはイチゴとかカキ氷にかけるモノだよね? 単品でどうするの?」

「えっ? 私、練乳をそのまま舐めるの好きですけど」

「甘くて美味しいですよね。コップでそのまま飲みたいぐらいです」


 女性陣が胸焼けがしそうな話で意気投合していて、凄く疎外感を感じた。


「ああ、一つだけデザートでないのもありました。ティーメル産黒毛牛のサーロインステーキの缶詰らしいです」

「あーっ! ステーキ缶じゃないですか!? あのお店で一番お高いヤツです!」


 エリルが驚愕の眼差しでリーシアの手の中にある缶詰を凝視していた。


「こんなに小さいのに3200バルシもするんですよ!? サバ缶なんて4個セットで800バルシなのに! こんな高級な缶詰なんて、本当の缶詰じゃありません! 邪道です!」

「え~っと……、ではエリルさんはコレはお食べにならないのですか?」

「いただきます!」


 エリルが嬉々としてフォークを構える。そういう自分に正直なところ、凄く好感が持てます。



「じゃあ最後に、俺の買ってきたのを出そうか」


 リーシアのステーキ缶に全部持っていかれた感はあるのだが、出さない訳にはいくまい。


「レクスさんはやはりパンの缶詰ですか?」

「ううん。たこ焼きの缶詰とか」

「タコヤキ!?」

「他には、お好み焼きに焼きそばに焼き鳥」

「縁日ですか!」

「あとはおもちゃの缶詰」

「せめて食べ物にしてください! ああっ、でも中身が気になります!」


 エリルの盛大なツッコミが入る。正直、ホッとした。


「ついでに1缶だけ置いてあった、おでんの缶詰っていうのもあるよ」

「お、おでん缶! おでん缶ですか!? おでん缶なんですか!? おでん缶じゃないですか! おでん缶ですよね!? おでん缶です! おでん缶ですし!」


 エリルが今までで一番食いついて来た。何回おでん缶と言う気だ。


「これは元々はごく一部の限られた街でしか売られていなかった知る人ぞ知る缶詰なんです! あの店にもごく稀に入荷しているとの話を聞いていましたが、実際にお目にかかれるとは!」

「そ、そうなんだ。えっと……、良かったらエリルが全部食べていいよ?」

「良いんですか!? ならこれは帰って湯銭して温めて食べることにします! おでんはやっぱり熱々が美味しいですから!」


 嬉しそうにエリルがおでん缶をポシェットに仕舞う。喜んでくれるのは嬉しいが、テンションの高さにドン引きである。


「あれ?」

「ん? どうかしたの?」

「ああいえ、まだ一缶だけポシェットに残ってたみたいです」


 エリルがおでん缶と入れ替えるようにして1つの缶詰を取り出す。


「何の缶詰ですか?」

「ベニズダケの缶詰です。さっきよく食べてるって言ったのもコレなんですよ。食べてみますか? 味は普通ですけど」

「なるほど。缶詰でしたら季節や特産に関係なくいつでも食べられますものね」


 そういうことかといろいろ納得する。しかしせっかくのエリルの髪の生命線かもしれないベニズダケを食べてしまうのも申し訳ない。


「いやー、そのベニズダケはエリルが食べて……。うん? ベニズダケ?」

「はい、ベニズダケです。低カロリーなのに良質なタンパク質と亜鉛を多く含んでいて、髪にとっても良い食ベ物なんです」

「うん、それはさっきも聞いたけど。そうじゃなくて、それベニズダケの見た目が缶にプリントされてない?」

「「 あっ! 」」


 エリルとリーシアもレクスが言いたいことに気付いたようだ。3人で缶の表面を確認する。


「赤色です! やっぱり赤色で合ってました!」

「ということは白はベニズダケ改かベニズダケ改二なんですね。帰ったら復習しておかないと……」

「さっきも気になったんだけど、ベニズダケとベニズダケ改って別物なの?」

「レクスさん、授業はちゃんと聞かないとダメですよ。先生も言ってたじゃないですか、ベニズダケとベニズダケ改はヒラメとカレイぐらい違いがあるって」

「あ、うん。そうなんだ……」


 ヒラメとカレイも顔の向きぐらいしか違いがわからないのだが。


「ベニズダケについては確信も持てたし、早速納品しておこうか」


 予め集めておいたキノコの中から、傘の裏が赤いキノコを5本纏めて台座の上に置く。キノコは光の粒子となり消えた。


「いま思えばこの裏がピンク色のやつって、赤と間違えやすいように魔法で着色された別物ものなんだろうね」

「さっきのテーブルの罠といい、これを考えた人はイジワルです。レクスさんみたいです」


 エリルの感想になんとなくこれを考えたのは学園長だなと思った。なにせレクスの叔母だけあって意外と底意地が悪いのだ。


「まぁ無事に納品も終わったし、ご飯食べちゃおうか」

「そうですね」


 3人でこれが美味しい、これはイマイチだと言いながら缶詰を平らげていく。

 よく考えると王子と王女が地面に座って、お喋りしながら缶詰を突いているのである。マナーもへったくれもないこの光景を見て、学園長が頭を抱えている気がした。

ネコ缶を買ってくるというネタもありましたが、あまりにもシュールだったのでボツとなりました

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