この子の七つのお祝いに
ボクが七歳になった時、父がボクに一本のナイフをプレゼントしてくれた。
父はそのナイフをボクに手渡すと、こう言った。
「そのナイフでお父さんを刺してみなさい」
意味のわからないまま、ボクは父の胸にナイフを突き刺した。
それで、終わり。
父は命を引き取った。
「パパはお星さまになったのよ」
父の葬式の日、母がボクを優しく抱きしめながらそう言った。
それで、ボクは理解した。
父はもう戻ってこない。もう話せない。もう抱きしめてくれる事はない。ボクは、人が『死ぬ』という事を知ったんだ。
ボクは母の胸の中で泣いた。
哀しくて、悲しくて、かなしくて。
そして、同時に怖かった。
人はあんな簡単な事で死んでしまう。簡単に壊れてしまう。失ってしまう。
それから、ボクは人に優しく接するようになった。
人は脆いもの。
そう、父が教えてくれたのだから。
「パパ、どうしたの?」
抱きかかえている我が子が、ボクを不思議そうに見ていた。
「ううん、なんでもない。ちょっと昔の事を思い出してただけ」
そう答えると、ボクは優しく微笑んだ。
この子は、ボクの可愛い息子だ。
明日、この子は七歳になる。
だから、ボクはこの子に父からもらったナイフをプレゼントしようと思っている。
この子の七つのお祝いに。