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9話

主人公視点→ギルドの事務員視点→刺客視点→主人公視点と変わっていきます。ご注意下さい。視点変わりすぎでしょう、常識的に考えて。もうちょっと上手く書けないかなぁ。すみません。

また、残酷な表現があります。

 人が動き出す気配に目を覚ますと、ヘンリーが布団から起きていた。


「おはよ、アルくん……ちゃんと寝た?」


 優しいなー。ヘンリーは。私の事を心配してくれるなんてー。思わずニヤけてしまうのは、仕方ないと思う。


「ん、寝たよ。何時も通りの平常運転だよ」

「そか、良かった」


 へへへ、と口元を緩ませるその姿は実に癒されるものだ。なんだろうな、この生き物は。抱きしめちゃっていいですか?痴女ですか?私は?


「ねぇ、なんで前髪伸ばしてるの」


 笑ってる顔が見たくてつい口に出してしまった。あートラウマあるかもしれないのに何言ってんだろう。


「ん?視界が狭まっていい感じなんだよね。イレデデル達を直接見るなんて……怖いし」

「そうか、じゃあ私が見るのは平気?」

「え?う、うん別にいいけど……」


 やった!隠されてると余計エロさを感じるのは日本人の習性だよね?テンション上がってきた。何を言っているんだ私は。

 逸る気持ちを抑えつつ、ヘンリーの前髪を持つ。ちょっとごわついていたが、全く問題ない。ゆっくりと前髪を上げていく。なんだこの結婚式で新婦のヴェールを捲る感は。ちょっと照れてしまう。ゆっくりとそのまま上に上げて―――――。


「……ヘンリーって女の子?」

「え?普通にそうだよ?」

「あれ、僕とか言ってなかったっけ?」

「う、うん。お父さんが死ぬ前に絶対にそうしろって言ってて……」

「なるほどそれ正解!」

「??……うん」


 男の子だと思ってたよ……めちゃくちゃ可愛かった。アイツ等に知られたら絶対もっと酷い目に遭うに決まってる。男であると認識した私でさえしようとしていたのだ。こんな可愛い女の子放って置くわけない。僕って言ってるだけで皆騙されたのか……。いや、私も騙されたんだけど。

 でもあいつらってヘンリーの顔見た事あるんだよな?なんで気付かない?こんなに可愛いのに。でもまぁ気付かない馬鹿で良かった。ヘンリーが無事なんだから。


「僕の顔……変?」

「ふっ、とっても可愛いよ。可憐だ」


 そう言って頭を撫でる。と、ヘンリーは顔を真っ赤にさせてしまった。しまった。昔の悪癖が出てしまった。委員長にも怒られたっけ。「ああいうことすんな!」って。ああ、今世ではそんな事をしないと思っていたが……慣れって怖い。それ以前に男の格好しているのは問題あるけど。

 しかし、これだけ街の治安が悪いと男の格好は正解だけどな。そもそも動きやすいって面も大きいけど。


「ごごご、ご飯!作るね!まだ昨日のお肉残ってるし!」

「じゃあ手伝いを……」

「こ・こ・で・待・っ・て・て!」

「は、はい……」


 手伝うと言ったのだが、何故かすごい形相で睨まれてしまった。良く解らないが従ったほうが良さそうだ。



 二人で仲良く朝食を済ませ、ギルドに向かった。

 取り合えず何をするにも金はいる。メインは食堂でご飯買ったり、出店でお菓子買ったり、調味料買ったり、食材を買ったり、調理道具買ったり。こういう時空間に放り込めるのって便利だな。

 普通はそんなに持ち歩けない。ヘンリーいない時に買い込んで入れとこう。時間も止まるし食材の品質が落ちなくてすごくすごく便利だ。


 ギルドに入ると、何故かギルド内が騒然としていた。


「だからよう、俺たちの仲間知らねぇか?つってんだよ」


 カウンターには鎧を纏った大柄の男が受付の男に詰め寄っていた。


「すすす、すみません分かりません」

「なんだぁ?我ら『リーザック』に逆らうのか?」

「本当に知らないんですぅ!」


 最後はもうほとんど悲鳴に近い。受付の男はガクガク震え、ただ許しを請うことしか出来ない。早くもガリとデブの不在でも知れたか?ハゲがなんか言ったんだろう。しかし、私達の所に来ない所を見るとハゲもあの作戦を知らなかったようだし。

 ザッと周りを見渡すと……隅の方にバサル風の男発見ひゃっふーい!ゴキブリ発見だぜ!恐らくあいつで間違いないだろうが、人間違いだと非常に拙い。人気のないところで自白させて確認とるか。

 だからまだだ……まだ殺る時じゃねぇ……!


「あ……アルくん?」


 今完全に殺る気マンマンの目をしていた事だろう。そしてとっても邪悪な笑顔を貼り付けていたに違いない。ヘンリーが凄く脅えるくらいには。まぁ今は抑えておこうか。


「ごめんね、楽しくなると……つい……おっと誰か来たようだ」

「う……うん?」


 うん、つい楽しくなると笑顔になっちゃうよね。仕方ないよねー。ヘンリーは微妙に納得していないようだったが、取りあえずは頷いたらしい。

 ギルドに誰かが入ってきた。噂のハゲである。


「取り合えず隅で大人しくしとく?それとも出てく?」

「今はドアの所は目立つし……イレデデルが立ってるし……隅で大人しくしてる」

「了解」


 私達はただ彼らが暴れて過ぎ去るのを待つことにした。



 しばらくすると、彼らも出て行ったのでカウンターに受付に行くことにした。受付はさっき絡まれて泣いてた男だった。中年で気が弱そうなタイプだった。まだ目には涙が溜まっており、まだ震えている。裏で休んで置けばいいのに、なんとも健気な事だ。ただギルドの人員が足りないだけかもしれないが。


「薬草採取ですね。こちらです」


 声が震えていらっしゃる。


「どれ受けた方が効率いい?」


 私はどこに何が生えてるか分からんし、ヘンリーに聞いてみる。


「んっとね……ヨモギとイタドリこの二つはよく群生してるから一気に受けといたほうがいいよ」

「了解。じゃあそれで」

「かしこ……まか、かしこまりました」


 震えすぎて噛みまくっている。大丈夫ですか?あなたもマークしてあげるから夜道の安全を保証してあげましょう。口には出さないけどな。一応チェック入れとくか。さっき絡まれてたし、襲われたら大変だ。

 元はといえば私のせいみたいだし。


 ギルドで薬草採取の依頼を二つ受けて私達は外に出た。


「ここからだと東と西の入口どっちから出てもあんまり距離は変わんないんだよね……どっちから行く?」


 ヘンリーがそう尋ねてくる。


「ヘンリーに一任するよ。お願いします」

「じゃあ東から」


 へへへ、と口元を緩ませながらウキウキした足取りでヘンリーは前を歩き出した。ギルドは西側に位置していて、私が入って来たのは西側の門だった。よって街を突っ切って歩く形になる。商店街みたいにズラリと色んな店が並んでいて、楽しそうだ。おや、武器屋。防具屋もあるなぁ……異世界だわ。人々の中には、トカゲのような人もいたり、獣耳やしっぽが気持ちよさそうな人もいた。

 キョロキョロよそ見をしていたので人にぶつかってしまった。


「わっ……すみません」

「きゃっ……いえ」


 その女の人は全身水色で……水で出来ていそうな人?だった。というか完全に成分水だろこれ。私の服がビショ濡れになってしまいました……。まぁ乾かそうと思えば乾かせるんだが、あんまり目立ちたくないのでやりません。


「ああっお召し物が……!すいません!すいません!」

「いえ、私もよそ見してたんで自業自得です」

「うわぁすごい濡れちゃったね。どうする?僕んちで着替えてからにする?」


 着替え……そういえば持ってないな。どうしたもんか、ヘンリーの借りるのはちょっと申し訳ないし。いつ人切るか分かんない状況で人の服を血で汚すのはちょっと……ね。

 それにしても春とはいえ、まだちょっと肌寒い。防御膜に保温機能でも入れるかー。


「私が着替えを用意致しますわ!お詫びです」

「いやいやいや……私身体は丈夫なんでこのままでも大丈夫です」


 今、保温機能入りましたー。あったかいです。このまま順調にいけば結構早めに乾くと思いますよ。


「で、でも……」

「お詫びといっちゃ何ですが、お姉さんってなんの種族?私田舎者だからあんまり分かんないんだよね」

「え?……私はウンディーネって言いまして水の精霊と人の子との子孫と伝えられている種族なんですよ」

「へぇ……すごいね。教えてくれてありがとうお姉さん。それじゃ」

「あ……」


 お礼を言ってさっさと退場する。あのままじゃ服を買ってくれそうだったし、私がよそ見してたんだからそれは申し訳ない。とても優しそうなお姉さんは凄く気を使いそうだし……。着替えは買ったほうがいいけど、自分の金で買ったほうがいい。

 その為にはまずは依頼だ。それにしても、精霊と人間のハーフか……じゃあサラマンダーとかシルフとかノームもいるのかな。全員見てみたいな……。あ、テンション上がってきた。


「あ、アルくん。着替えなくていいの?」


 後ろからヘンリーが小走りで追いかけてくる。


「ん?ああ……大丈夫だよ。今日暖かいし、すぐ乾くっしょ」

「え?今日ちょっと寒いよ……?」


 こまけぇこたぁいいんだよ!取り合えず依頼遂行しようぜ?な?


「実は服の替えがなくてさー。服買う為にも今は依頼こなしてお金稼がないと」

「あ、そうなんだ。僕の服貸してあげるよ?」

「ふっ、有り難いけどそれは遠慮しとくわ」

「そ、そか……」


 主に血染め的な意味で。人の返り血浴びた服なんて嫌でしょう?勿論自動洗浄するんだけどさ。



 ヨモギ・イタドリはなんというか普通の見た目だった。これは味のほうが変わってるに違いない。


「どうしたの?」


 ヘンリーが私の様子に首を傾げる。結構深刻な顔をしていた自覚はある。味の問題は重要だからな。


「いや、こっちの話」


 こっちの世界じゃ味が変わってるなんて通じないし。


「とりあえず薬草は取れたし、帰ろっか。お昼くらいだと思うしお腹空いたよ」

「うん、そうだね。ふふふ、アルくんご飯の話ばっかりだね」


 そうかな?でもご飯は重要だぞ?満たされないとまともに動くことも出来やしない。ヘンリーと平和な会話を楽しみつつ街に向かった。



 ギルドで依頼遂行し、ヨモギ・イタドリ両方に銅6枚ずつ手に入った。よって手持ち銅12枚。昼食は屋台で簡易に売られてあるケパプという食べ物を購入した。一つ銅3枚。報酬は一気に半分飛んだ。

 流石に薬草クエだと報酬少ないな。ゲームだと食事のお金なんて考慮しなかったし、依頼達成で特別報酬とかあったしな。その時は全然気にならんかったけど、現実は厳しいのう。


「美味しかったね」


 ヘンリーは嬉しそうにウキウキしている。なんという可愛い生き物。顔は見えないけど全身でその喜びを表現している。まるで子犬のようだ。実に癒されるな。


「昼からもう一回薬草依頼受けようと思ってるんだけどいい?」

「うん!勿論!」


 そう言ってまた違う採取依頼を二つ受けて遂行し、銅は18枚になった。9枚はヘンリーにあげた。断られたが、ヘンリーが手伝ってくれたから遂行出来たんだと念押しして無理矢理持たせる事に成功した。




……ギルドの事務員視点……


 その日の夜。

 とある中年の男は走った。今日は襲われると思っていたので早めに仕事を終わらせたのだが、それも無駄に終わってしまったようだった。現在三人の男達に追われていた。昼間イチャモンを付けてきた奴が指示したに違いない。彼はツイていなかった。何時もは裏方の仕事をしているので、普段は受付なんてしないのに……。

 その日は何人かの受付カウンターが風邪でダウンしたために、たまたま今日受付に駆り出されたのだ。よりにもよってそんな日に限って『リーザック』に目を付けられてしまった。なんて、ツイてないんだろう。そんな事を考えながら、男は走った。でも、全然速く走れなかった。子供の頃から運動は苦手で、仕事だって事務だ。それにもう三十四でいい年だし、すぐに息が上がって足がもつれてくる。

 追ってくる三人は、そんな獲物の様子を楽しみながら追いかける。相手はまるで本気で走っていない。これは彼らにとって遊びなのだ。


「ひい……ひい……!」


 ついに彼は足を絡ませ転がり、走ることもままならなくなる。もうこれで終わりだった。彼は絶望した。追いかけてきた男三人はニヤニヤしながら彼を追い詰めてた。


「ふっ、随分と楽しそうじゃないか……私も混ぜてよ……ねぇ?」


 凛とした透き通るような声だった。男か、女か分からない、幼い声だった。彼はその声の主に恐怖を覚える。そいつは『私も混ぜて』と言ったのだ。


「なんだ?お前は」


 彼を追いかけていた三人は振り返り、声の主に話しかける。彼からは三人の男で声の主の姿は見えない。が、次のセリフで希望が見えることになる。


「この三人は私が止めておく、だから早く逃げろ。さっさとおウチへ帰りな」


 彼はとんでもない幸運が来たと思った。弾かれるようにまた走った。後ろを振り返ることなくただただ走った。


……刺客視点……


「貴様……何者だ?」


 男三人は追いかけていた中年を逃がしてしまい、機嫌が悪くなった。だが、突然現れた少年からは絶対に目を反らせてはいけない気がした。それほどまでに少年からは殺気が溢れていた。


「何者かぁ……それは私が聞きたいな」


 そう言って少年はくつくつと喉を鳴らして笑う。月夜に照らされる顔は人形のように整っており、笑っている姿は子供のように無邪気で幼い。だが、それが不気味さを一層際立たせる。少年が何を考えているのかなんて彼らには分からない。ただただ不気味だった。


 いつでも戦えるように男たちは戦闘態勢に入る。


《質問に答えろ》


 その声に体に不思議な感覚が走る。味わったことのない嫌悪感に苛まれる。「質問に答えろ」ただそれだけのセリフなのに、体が蝕まれ、何かが全身を這いずり回るような感覚。それは体に大量の虫が這いずり回るような感覚に似ているのかもしれない。彼ら三人全員が思った。「殺らなければ殺られる」と。冷や汗を流しつつも、今までの経験を生かして攻撃を仕掛ける。三人が三人ともいともあっさり少年の懐に入り込み、ナイフを体に差し入れる事に成功した。


 だが。人を切るようないつもの感覚ではなかった。まるで鉄でも切っているような感覚に手がジンと痺れた。


 三人は可笑しいと感じてバッと離れる。「どういうことだ」と話そうと思ったが、何故か声がでないことに気づいた。三人と気づいたようで、困惑が走った。まさかこの少年はサイレントでも使ったのだろうか、と。しかし彼らは魔術師ではない。サイレントなんてされても動ければ問題ない。


「ね、君たちって『リーザック』?」

「「「はい……っ!!」」」


 なんだ?何故こうもすんなり言葉が出る?答える気なんてないのに、答えが出る。それは魔術による陣に入る事で行使される自白術を連想されるに容易いものだった。しかし、陣なんてどこにも存在しない上に自分たちは動ける。まさか身内に裏切り者がいて、自分たちの懐にでも陣を入れたのだろうか、と考えた。


「そっかー。君たちって人……殺したことある?」

「「「はい…………っ」」」

「ふっ、全員かよ。ね、人を切る感覚って楽しい?」

「「「はい……」」」


 質問の意図が分からず三人は困惑する。だが、この少年からは逃げたほうが得策だと三人とも思った。伊達に戦い慣れていない。目の前の少年は戦うには『意味が分からなすぎる』。敵を倒すには、敵の情報を知るのがとてもいい手段だ。全員が逃げようとしたが――――。


 既に足がなかった。




……主人公視点……


「もー逃げようとするなんて悪い子だねー」


 ニヤニヤしながら三人を眺める。地面に這いつくばって、あがいている。芋虫みたいだった。


「これが蝶々になるなら殺さないのにな」


 全くその言葉に意味はない。でも相手の目からは恐怖の色が見えてきた。なんだよその目、むかつくな。あんたら、人を楽しんで切るタイプなんだから、切られるのもきっと楽しいんじゃない?恐怖で顔を歪めるなんて善人しか許されない行為だと私は思うんだけど?


 それにしても『リーザック』は行動が早いな。なんでこれで証拠が出ない?昼間あの中年に絡んですぐの出来事なのに。……これって警備兵に問題あり?……それとも。


「ねぇ……君たち『リーザック』に警備兵はいるのかな?」

「「「はい……!!!!!!!!!」」」


 おや、あたりか。そりゃそうだよな、当然だ。でなきゃここまで暴れらんない。証拠もその裏切り者が消しているんだろう。


「『リーザック』側の警備兵って何人?」

「「「28人」」」


 うーん多いな。そんだけ多けりゃ何かと揉み消せそうだな。この街はクズしかおらんのか?


「警備兵って何人?」

「100人位……・っ」

「200人超えてるって聞いたけど……」

「俺は300人って聞いたぞ」


 三人とも意見はバラバラ。警備兵の知識に関しては期待できないな。でも裏切り者は28人なのは確実だ。『リーザック』メンバーは123名内二名消去で28人は警備兵。なるほどなるほど。

 ギルドで問題は多いから、ギルド周辺の警備兵は怪しむべきだな。そう、今日ギルドに勤めてた警備兵なんて特に怪しいな。絡まれてたなら今日はあの中年さんを見張っておくべきだったのに、それをしなかったんだから。

 流石に勤務表なんて見せて貰えないだろうし、難しいな。考えてる間に男三人は匍匐前進で逃げようとしていたので、進行方向に結界の壁を作っておいた。

 見えない壁を叩いたり、ナイフで傷つけたりする様は実に惨めで滑稽だ。防音の結界でも張ってちょっと遊ぶか。


「ようし、好きに喋っていいぞー」

「なんなんだお前は!」

「くそっくそっ」

「っひいいいいいいいいいい化け物ぉぉぉおお」


 おやおや、うるさいな。だが娯楽としては面白いな。


「何時もは狩る側なのに今日は狩られる側だよ。嬉しいでしょ。楽しいでしょ。愉快でしょ。痛快でしょ」


 私は両手を大きく広げて高らかに笑う。


「何言ってんだお前ぇえ!」


 キンッと男の一人がナイフを投げてくる。まぁ防御膜があるので大丈夫です。


「ふっ、はしゃいでるなぁ~」


 くつくつと喉を鳴らして笑う。いやぁ、ちょっとテンション上がり過ぎでしょ。どんだけこのアトラクション好きなんだよ。これはもっともっと楽しませないと!そう考えて一人に男の肩に剣を突き刺す。


「ぎゃあああああああああああ!」

「くっ貴様ァ!」

「ひいいいいいいい!!」


「くくく……あははははははっ……!可笑しい!」


 一人は好戦的でナイフを手にし、一人は恐怖でダンゴムシみたいになっている。でもナイフがいちいち飛んでくるポルターガイストなんていらないので、ナイフを持った手を切っておく。


「ぐぅっ……!」


 もう片方の手もナイフを握りだしたので切っておく。


「……っ!!」


 おお、この人は結構イイ感じだなぁ。殺られる覚悟ってもんが多少はあるようだ。悪の中でも見所がありそうだ。まだ戦意も喪失していないようだ。いいね、ぞくぞくするねぇ。

 取り合えずダンゴムシ状態の男を浮遊魔法で持ち上げて首の骨を折ってみる。ボキリという音がして、丸まっていた体からは力が抜ける。脊髄でも傷つけたかな?でもずっと硬直してたら体にも悪いしちょうどイイよね。ダンゴムシから泥人形にシフトチェンジした男を肩を切った男の方に放り投げる。

 「ぐえっ」っという蛙のような声を出して呻いている。泥人形も生きているようで、目だけは忙しなく動いてるようだ。


「さてさて、マジックショーしようかなー」


 ルールは簡単、肩を切られた男の上には泥人形。泥人形の上から剣を差して、抜いてあら不思議!避けないと死にます。

 ザクリと一刺し。


「ぎゃあああああああああああああうああああああああああ」

「くっ……おのれ……!」


 差してー抜いてー差してー抜いてー。おや?動かなくなりました。脱出失敗。マジックも失敗です。ざぁんねん。


「なんなんだ……貴様……何者なんだ!」


 未だ戦意衰えぬはナイフ男。この男には冥土の土産に教えてあげてもいいかもね?ナイフ男の目の前にしゃがみ込み、しっかり顔を見合わせニッコリ微笑んであげる。ナイフ男は一瞬怯んだが、すぐに睨み返して来た。良い顔です。


「いいよ、教えてあげる。私はアルリリア……魔王なんて呼ばれてた事もあるよ」

「ま、おう……?」


 鳩が豆鉄砲食らったような顔はとても可愛らしいものだった。思わず笑ってしまう。


「ふっ、そうなんだよー知らないでしょ?ちゃんと襲名する前に逃げちゃったんだよね。今でも魔王が有効かは分かんないけど……それなりに強いでしょ?」

「魔王なら……勝てないのも仕方ないな……はは……」


 ナイフ男は急に戦意を消失したみたいでただ乾いた笑いを漏らしている。おそらくは信じてはいるまい。でも、勝てないことは理解したらしい。随分と潔い。


「さっさと殺せよ。覚悟は出来てる」

「そ?じゃあまたね?地獄で会いましょう」


 そのセリフの後ブチリと彼の何かが終わりを告げた。

主人公、着実に魔王になっている気がします。

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