8話
視点がコロコロ切り替わります。
ヘンリー→三人称→主人公と変わります。
また、残酷な表現があります、ご注意下さい。
……ヘンリー視点……
状況は最悪だった。両親はイレデデル達の仲間に殺された。辛うじて家は残っているが、これも何時壊される事か分かったもんじゃなかった。お金も無くて、お金を稼ぐために冒険者になったけど。いつもイレデデル達に邪魔されてしまって、あんまりご飯も食べられない。今日は珍しく邪魔は入らず、久しぶりにお金が手に入った。いつも家の周辺の野草ばかりなので、あの店のクレープを食べに行こう。そうしよう。
そう思ってウキウキしながらギルドを出ようとした。その時。
「おいおい坊ちゃんよぉ。まさかお前冒険者になる訳じゃねぇよなぁ?」
イレデデル達がとある少年に絡んでいた。冷水を浴びせられた気分になった。正直今お金を持っているし、関わらないのが得策。でも、少年が僕の髪色そっくりで、嫌な予感がした。
―――あの子、僕のせいで絡まれたんじゃ?
そう思うと居ても立っても居られなかった。なんてこった。少年は少し釣り目だが、どことなく優しそうで、身のこなしなんて貴族なんじゃないか?と思うくらい落ち着いている。あんな子絡まれたらひとたまりもない!助けないとヤバい。彼まであんな酷い目に遭ってしまう!
「やめろ」
言ったセリフは弱々しくて、全然声が出なかった。正直怖い。殺されるかもしれない。でもこの子に僕と同じ思いなんてさせる訳にはいかない。少年は線が細くてか弱い。剣を持っていたが、ちゃんと振れるかどうか怪しいものだった。僕の責任もあるかもしれないので、ここで出ていかない訳にもいかない。
へっぴりヘンリーと貶められ、反論してもすぐに横に薙ぎ倒された。腰を打ち、痛くて涙が溢れてくる。ああ、僕なんかじゃ助けられない。
最悪の状況だった。これから少年はイタぶられるのだろう。そうしたら、いじめられる仲間が出来るかもしれない。もしかしたら友達になれるかもしれない。
それは完全に傷の舐め合いなのだろう。でも、友達も家族も全くない今。逆に少年がイタぶられた後、優しく声をかけたら友達になれるかも――。そう思って前の状況を見ると。
息を飲んだ。
少年は全く脅えず、怯まず、動じていない。むしろ相手の動きを見つつ、剣に手を当てていた。――いつでも殺れる。かかってこい。
その目は完全にそう言っていた。少年のその姿にゾクリとしてしまった。彼は確かに僕より年下に見えるのに。なのに。
「―――かっこいい」
小さくそう呟く。警備兵の仲裁の邪魔だとさえ思ってしまう程に、彼の戦う姿を見たくなってしまった。彼は殺意を消して、警備兵にヘラリと笑っていた。さっきの姿が嘘みたいに穏やかだった。僕に助けてもらったと彼は言った。僕の方が怪我をしていると心配までしてくれた。僕なんて役にまるで立っていなかっただろうに、とても良い人だった。
「あなたたちは今きちんと己がなすべき仕事をしていました。そのおかげで私は怪我もしませんでした。警備兵が駆けつける時間も迅速でした。私が礼を言う事はあっても謝罪されるような事はしていません。助けて頂いてありがとうございます」
毅然とした態度に見惚れてしまう。僕より年下なのに、なんでそんな考えが出来るのだろう。凄く良い両親にしっかり育てられたんだろう。良いな。羨ましいな。
僕のせいで絡まれた事を謝ったら、逆に謝られてしまった。彼は本当に律儀な人だった。でも、彼はこの街を出る気がないみたい。出た方が安全に決まってる。彼らの目に止まらなければトリエステはとても良い街。でも、一旦目を付けられると目も当てられない。しかも留まる理由に頭を抱えてしまった。警備兵が馬鹿と言ってしまうのも無理はなかった。
その後、アルくんのそばを離れようとは思わなかった。なんというか、アルくんなら守ってくれそうだった。正直そんな考えヌルイのだろうと思うけど、でも。格好いい彼の傍ならきっと僕も変われるような気がしたのだ。ちょうど良い事に、アルくんは薬草の知識はないらしい。僕は良く野草を食べているので、よく知っている。
アルくんは快く引き受けてくれと言ってくれた。……それにしても基本の薬草も知らないなんて。ずっと篭って勉強でもしていたのかな。
アルくんは宿も決めてなかったらしい。家に誘うと、来ると言ってくれた。滅茶苦茶嬉しかった。僕の家はイレデデル達以外来た事が無いのだ。嬉しい。お客さんだ。
でも、彼が狙われたのは僕のせいだった……。そう言って落ち込むと、アルくんは急にご飯の話をし出した。そういえばトリエステ滞在の理由もご飯だった。あんまりにも緊張感のない彼の言動に思わず笑ってしまった。笑うのなんて何年ぶりだろう。いつも負の感情ばかりだった。いつも下を向いて、髪を切ることさえなくなって、髪でより視界が狭くなった。なんだがアルくんといると世界が広がっていくみたいで、世界が明るくなっていくような気さえした。現実は変わらないんだけど、笑い合えるってこんな気分なんだ。凄い。本当凄い。
ご飯を作ってあげると言うと、飛びつく勢いで「食べる!」と言ってきたので、また笑ってしまう。
でも、家に上げて話をしている内、アルくんは僕と似たような境遇だったと知った。母さんは誰かに殺されて。父さんと兄さんも今捜索中。アルくんはとても軽く言っていたが、それってとっても大変なことじゃないの?なんで……なんでそんな明るくいられるの?
少年がイタぶられた後、優しく声をかけたら友達になれるかも――。
そんな考えを持っていた事がとても恥ずかしくなった。僕はとても弱い人間だった。とても彼とは比べ物にならなかった。彼は自分の負の部分にさえ全く脅えず、怯まず、動じない。あの時イレデデル達と対峙する様を思い出す。とても凛々しくて、苦境に立ち向かうその姿勢に見惚れるほど。実際、アルくんの顔はとっても綺麗で人形みたいだった。
多分、これもイレデデル達に目を付けられた一つだと僕は思ってる。それでも彼は屈する事をしないらしい。母親が殺されて平気なはずないだろう。彼は律儀で優しい。それでも彼は屈する事をしないらしい。
僕は気まずくなって謝るけれど、また彼にも謝られてしまった。
違うよ。僕の方がよっぽどアルくんの事を貶めていたんだよ。だから僕の方が悪いんだよ。イタぶられればいい、なんて思ってたんだよ。最低だ。僕は。
「……うん。僕も頑張らなくちゃなぁ……」
と自分を励ます。
料理をしていると、アルくんが顔をひょっこり出してきて、窺ってくる。それはうさぎさんみたいでとても可愛らしかった。微笑ましくてニヤけてしまう。
「材料いる?」
「えっ」
そういってアルくんはどこから出したのか知らないが肉の塊を出してきていた。正直肉なんて一ヶ月前に食べたきりだ。ずっと野草ばかりだったから、くれるなら欲しい。今の食事もご飯と言っても野草ばかりで緑まみれの食卓になるだろう。思わず生唾を飲んでしまった。
「しっかり『味付け』してね?」
アルくんはニヤリと笑って僕にそう念押ししてきた。うん、調味料はあるから、味付けは出来る。……なんだろう。『味付け』に執念が篭っていた気がする。やっぱりアルくんにとって重要なのはご飯らしい。変な味付けにしたら怒られそうだな……と自分のレシピを総動員する。
―――誰かの為に作るご飯って楽しいんだなぁ……。
なんて思いながら料理中ずっとニヤけていた。
「おお!ご飯!有難うヘンリー!」
出来たご飯にアルくんは滅茶苦茶嬉しそうにはしゃいでいた。なんかすっごく良いなぁ……コレ。
「食べてみて。気にいるかどうか、分かんないけど」
「うん、いただきまーす」
もぐもぐと美味しそうに頬ばっている様はまるでリスみたいでとっても可愛らしい。ん、前はうさぎみたいだったのに。男の子に可愛いなんて使ったら失礼だろうか。でもアルくんは笑って許してくれそうだ。
「んー!美味しい!最高だよ!ヘンリー!」
「大げさだなぁ普通だよ。味付けは」
お世辞でも嬉しい。今まで他人に食べさせる機会がなかったし。随分と嬉しそうだった。
「ヘンリーも食べなよ、冷める前にさ」
「う、うん……」
お肉……久しぶりだった。いいのだろうか?貰っても……。ゴクリ。思い切って口に運ぶ。ジュワリと口に肉汁が広がり、肉を噛み切る感触。震えるほど美味しかった。
「美味しい!」
「な!ヘンリーいい腕してるよっ」
いやいや、これってかなり良い肉なんじゃないの?え?めっちゃ柔らかいんだけど。脂が乗ってて……味付け以前に良い肉だから美味しいって感じがする。
「これ……高いお肉なんじゃ……?」
不安になってアルくんに聞くと意味が分からないのか、首を傾げていた。
「ん……?分かんないな。山に居るのを捕まえたんだ。値段は知らん」
えっ。山に居る動物って警戒心強くて一流の冒険者とかそこの村でずっと過ごしてるベテランが狩るものじゃ?罠もあんまり引っ掛かってくれないのに。アルくんの様子じゃ、剣で捕らえていそうだった。
アルくん野生児?なんか、見た目に似合わないな。なんか、顔だけ見れば貴族のお屋敷で執事を仕えさせて、優雅に紅茶啜ってそうなのに。……まぁ冒険者になるっていう位だし。それくらいするの……かなぁ?アルくんは構わず食べているし、僕も食べてしまおう。アルくんは僕が食べてても全く気にしない様子だった。アルくんは肉なんてすぐに捕まえて食べられるんだろう。僕の分を用意するのも全く躊躇がなかったし。
それならそれで、甘えてしまおう。……ああ、なんて僕は狡い人間なんだろう。強くなれる日は来るのだろうか……?
……三人称……
人々は寝静まり、夜は更けて虫たちの静かな音が鳴り響く。トーデムはケローカスに目くばせをする。ケローカスはその太った腹をぼよんと弾ませながらニヤリと笑う。
「へへ、ヘンリーのやつ驚くだろうよ。泊めた奴が忽然といなくなるんだぜ」
「ギャハハ!そんで殺したって言えば真っ青になるぜぇ?」
昼間の冒険者ギルドでの出来事を思い描いて2人は楽しそうに笑う。普段から2人はへっぴりヘンリーに目を付けていた。殴って蹴っても反撃らしい反撃もしてこなかったので、今日は少し驚いたが、とても弱かったのでまるで意味がなかった。
「あのヘンリーが楯突くくらいの客人だぁ、どうやっていたぶろうか?」
「ギャハハ!トーデム、お前だけは敵に回したくないぜ」
「男なのがちょっと残念だが、あの顔なら売れるだろ」
「確かに!」
昼間見た見た事もないほど美しい少年に舌なめずりをする。あれ程上質な子供、どこに出しても売れるだろう。売られた後のあの子供の事など、欠片も心配はしていない。
どれだけの値段を付けられるか、それが問題である。
「随分と楽しそうな事を話しているみたいじゃないか……私も混ぜてよ……ねぇ?」
2人で夜の道を歩いて話をしていると、後ろから、凛とした子供の声が聞こえてきた。2人は喋る事をやめて振り返る。そこにいたのは、先程話をしていた子供である。
月の光に照らされ、その子供は神秘的にも見える位の美しさがあった。その芸術品のような微笑みに一瞬息をのんだが、2人共ホッと息をついた。その子供は華奢で、大きな剣は飾り物だと断ずるに容易い。その大人が持つようなでかい剣は、目の前の子供が振るう事は出来ないだろう。それは、素人が見てもそうだった。昼間も一言も喋らず、怯えて反撃らしい反撃も出来なかった子供である。
2人は嗜虐的な笑みを浮かべてその子供と対峙する。
「なんだ、昼間の軟弱なガキじゃねぇか」
「ギャハハ!自ら出頭しますってかぁ?殊勝な心がけだなァ?」
少年は2人の言葉を聞くと、面白そうに口元を緩めている。どう考えても、大人2人を前にした子供の反応ではない。だが、獲物を前にした2人は気付かない。
「ガキィ殺されたくなきゃぁ大人しくくるんだなぁ?」
「ギャハハ!ケツの穴は広がっちまうけどなぁ?」
殺すつもりはない。高く売れそうなその子供を殺すなんてもったいないからだ。売れた後は、殺されようと関係のない話になるけれど。2人共、ヘンリーの家に泊まっていたであろう子供を連れ出す手間が省けて機嫌がいい。
ケローカスは、おもむろにその子供に手を出す。
キィン―――
奇妙な音だった。二人は警戒するように周りを見渡す。
「なんだぁ……?」
「さぁ……?」
ちょっと不安そうに首を傾げる。ケローカスは顎に手をやろうとしたが、出来なかった。その「何もない」感覚に首を傾げてそっと自分の手を見ようとしたが、その手は地面に転がっていた。
「え……あ、あれ……ぎゃあああああああああああああ」
「ど、どうした!え、て、手が!?」
ケローカスの叫びに、トーテムが慌てて仲間の方を窺うと、その手が切り落とされていた。
「ふ、ふふ……ふ、ふ」
トーテムは泣き叫ぶ仲間の心配をしながら、この場で静かに笑っている少年へと目を向ける。人の手が切り落とされている状況なのに、目の前の少年は実に楽しそうに口元を歪めている。どう考えても正常な神経を持っている子供に見えない。そこでようやくトーテムの背に嫌な汗が流れた。周りを見ても誰もいない。仲間の手を切り落としたのが自分でないのなら、目の前の幼い少年しかいない。
「お、お前今何を―――」
《うるさいから黙れよ》
「……っ!?」
「……っ!……っ!!」
奇妙な旋律を奏でたその言葉に凍りつく。声が全くでなくなる。まるでサイレントでも掛けられた様に。けれど、サイレントの呪文を聞いたわけでも
ない。喉を締め上げられたような感覚に、ひゅ、とした息しか出せない。痛さで叫びたいケローカスは、まだ残っている手で喉を押さえて、涙を流す。
《お前、質問に答えろ》
「はい……っ!?」
少年がゆっくりとトーデムを指さして、「命令」する。全身が支配されるその感覚に虫唾が走った。
「『リーザック』って全部で何人?」
「123人です……!?っ!?」
質問には答えられるが、それ以外に声を出す事は叶わない。そもそも答える気がないのだから、答えた時点でもどう考えても可笑しいのだが。答える気がないのに答えを出す。2人の脳裏には「自白術」が思い浮かぶ。が、そんな魔術陣なんて踏んでいない。どう考えても可笑しかった。
魔法だとしても詠唱なしなんてほとんど不可能。魔術を使ったととしか思えないのに、そんな道具はどこにも無い。
「ヘンリーの両親を殺したのは誰?母は犯した?」
「殺したのは両方バサル。犯したのは俺とケローカスとバサルとシートイタとブーンサバクトとワーヴォグと……」
「ストップ……もういいや」
少年は嫌悪をその顔に浮かべて2人の手を全て切り落とした。
「……!!」
あまりの激痛に、叫びだしたい。なのに、声が全くでないどころか、身動ぎ一つ出来ない。
「ちなみにバサルってどんなやつ?」
「赤茶色で肩まで髪を伸ばしてる。目には隈がいつも出来てて、死体みたいに青白い顔だ。暗殺ばっかやってて殺すのは大の得意。自慢げにナイフの話をする。殺す事は趣味だと言っている。背は俺と同じ位で、痩せてて俺とよく似た体型をしている。服はいつも髪と同じ赤茶色を着ている」
「ふぅん……そっか……そいつもちゃぁんと地獄に入れるから。安心して堕ちていいよ?」
そう言って今度は足首を切り落とす。急に地を踏む足を切り落とされた2人は、地面へと叩きつけられる。それでも彼らは動けない。2人の顔には絶望が浮かぶ。ドクドクと体からは血液が零れており、命が着実に減っていく感覚に背筋が凍っていく。
「おや、このままじゃ死んじゃうなぁ……ヒール」
そう言って、少年は2人の傷口を塞ぐ。希望に見えたその行為だったが、少年の次の行動にまたしても絶望が浮かぶ。今度は肘と膝の辺りを切り落としたのだ。
「……っ!!っ!!」
「…………!?????!!!!!!」
「おや、痛いですか?楽しいんですか?どっちですか?」
しゃがみこんで少年は2人に問う。その言葉の意味が分からない。
肘や膝を切られて、楽しいはずがないのに。
……主人公視点……
「ずんぶん楽しそうだね。でも君らってヘンリーの両親を殺そうと企て、行動をしたんでしょう?」
「はい……っ」
「おや、血が……ヒール」
そう言って傷を塞いでまた別の所を切った。その瞳が絶望の光を宿しているのを楽しむ。彼らは人を犯し、殺した。これは当然の報いである。何故、彼らが悲しそうに涙を流すのか、訳が分からない。
おや?そういえばヘンリーは良く『イレデデル達』と言っているのに対して彼らの悪事にイレデデルは出てこないな。そう思って首を傾げた。
「イレデデルって誰?」
「ギルドで俺たちがあんたに話しかけた時に一緒にいたやつだ」
ああ……あのハゲか。特に悪人面しているあいつがいないな。
「今回の計画や、ヘンリーの親殺害に関わってる?」
「いいえ、アイツは暴力こそするが見た目と違って中身はチキンだ。止めると分かってるんで、俺たちで実行した」
……へぇ。あのハゲは人を殺すタイプじゃないんだ……。なんか見た目とギャップありすぎ。どう見ても小悪党なのにさ。ギャップがあってもギャップ萌えはしないなぁ……あの見た目だし。ふむ、ハゲは殺害除外だな。
大体聞く事聞いたので、ヒールと切る行為を繰り返しまくる。最後の方は精神をまともに保てていたかどうか怪しい。でもちゃんと彼らを救ってあげましたよー。罪ばかりを繰り返す彼らにとって死は救い。
これ以上大きな罪を背負わないように魂を地獄に送ってあげたのだ。閻魔様頑張って仕事してくださいませ。これからどんどん送ってあげます。てか、こっちの世界だと閻魔様っているのだろうか?
……んー?名前が違ってもそういう役割の方は居そうだけれど……。今度調べておこうかな。キチンと地獄に入って罪を流して貰わないと。彷徨われたら迷惑だ。
二人の細切れ肉を焼却、証拠隠滅した。
「ふっ……私の心は壊れているらしい」
胸に手を当てそう自嘲気味に笑った。人を殺したって何も感じなかった。ゴキブリ殺したような嫌悪感が少しあるだけ。ちょっと胸糞悪い気分。でも、虫がいなくなってちょっと安心、みたいな。
本当に、虫を駆除した時のような感覚に似ていた。『私』という『魔王』はとっくに完成されているのかもしれない。魔王城は出るべきではなかったかもしれない。私はとっくの昔から壊れていたのかもしれない。
『魔王』なんて役割は私にピッタリなのかもしれない。
「嗚呼、早く殺しに来てくれないかな、勇者様……」
そう呟き天を仰いだ。
狂ってる。私の精神は狂ってる。人を殺したのに。ちょっと晴れやかな気分なんて――――――。天を仰ぎ見るが、私が天へ還る事はない。きっと地獄の底に直行だ。きっと天国に逝った前世の両親。それに今世での母にも二度と会うことなど叶わない。
「会いたかったな――――」
なんとなく眩しく感じて、下を向く。ソコにあるのはタダの地面。地獄に堕ちて罪を流し続けれるかな?そうしたら会えるかな?なんで、前世で死んだ時に素直に逝かせてくれなかったのかな?それとも両親を殺した私にはまた人を殺すのがお似合いですか?嫌だよ、こんな気分になるのは。人だってもう殺したくはない。でも彼らは止めないといけない。
―――――助けて欲しい。
心でそう強く願ったが、魔王を殺せるのはただ一人。勇者のみ。
勇者召喚を祈り、ただ地面を睨んだ。
殺したくはないけれど、彼らを殺さないと別の人間が死ぬ。
彼らを罰する正義はこの街では握りつぶされる。
そんな感じで主人公も苦悩しているのだと思います。




