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44話

「やった!やったわ!」


 私は新魔法の開発に成功した。部屋を暗くする魔法。手の平サイズで、一瞬だけしか成功しなかったが、確かにその魔法は成功した。新魔法の属性は黒いので、闇、だろうか。周りの光の粒子を壊して何も見えなくする魔法。まぁ、要は鳥目になるということだ。これで、彼に会える。

 私みたいな平民は、新魔法を開発する位しないと会えないのだ。最初あった時に直感した。あの人こそが私の運命の人なんだと。けれど私のような人間には会う事は叶わない。死ぬほど研究を重ねて、会えるほどの魔法を開発した。


「凄いですね……あなたのような方がいたなんて……」


 彼がそうやって褒めてくれて、クラクラする位嬉しかった。これで頑張った甲斐があった。伯爵の地位も手に入れ、土地だって手に入れて前なんて比べるまでもない位裕福になった。

 でも、お金なんかより、地位なんかより、彼に会えることの方が何よりも幸福だった。何度かデートにも行ったし、その度に柔らかい笑顔を向けてきてくれた。

 彼の髪は黄金。この世界にただ一人とされる黄金の髪をもった男だった。そのキラキラ輝く髪はとても綺麗で……自分が酷く醜くなったような気がした。

 私が扱う属性は闇。それが酷く惨めで、やるせない。でもその不安さえ彼はその眩しいほどの笑顔で払拭してくれた。私は賢者なのだ。闇属性がなんだ。彼に相応しいのは私しかいない。

 彼には、私しか。私はどんどん、どんどん彼に溺れて行った。


「君にはこの色が似合う」

「まぁ……」


 彼は桃色の髪をした女性に微笑んでいた。彼は彼女を熱っぽく見つめていた。女性もまた、彼の事を熱く見つめていた。あんな彼の姿は見たことなかった。衝撃を受けた。

 2人は見つめあい、微笑み、そっと体を寄せ合い……そして。


「あ……ああ……」


 私は逃げるように自室に潜り込んだ。勝手に涙が零れ落ちてきた。泣き、喚き、嘆き、叫び、悲嘆した。枯れるほど泣いた。何日も篭って泣き続けた。けれど私は死ななかった。

 死にたい、死にたい、死にたい。私はナイフを持って首に刺した。何度も、何度も、何度も。口から血が溢れ、声も出なくなった。でも、死ななかった。今度は腹を何度も刺した。何度も、何度も、何度も。身体からは色んなモノが出てきた。ぽろぽろと中身が零れ落ちる。でも、なんでか、死にはしなかった。

 部屋の中は人一人の血だとは思えないほど赤く、赤く、赤く……。血の湖にへたり込み、その光景を眺める。それは酷く綺麗で、自然に笑えた。


「うふ、うふふごぽ……ごぽぽ……うくふふふ……あは、あはははははは!」


 口から血が零れても、構わず笑った。とても爽快な気分だった。なんだか自分が新しく生まれ変わったような気分。


「綺麗、綺麗、綺麗……」


 騒ぎを聞きつけたメイドを殺した。中はとても綺麗。驚いて駆け付けた騎士を殺した。綺麗な赤だった。頭からは醜い桃色が覗く。それは見たくなくて、踏み潰して、綺麗にした。真っ青な顔をした両親を殺した。「どうして」「なんで」という姿が酷く滑稽に見えて笑った。

 すごい、すごい。楽しい、楽しい。


「そうだ、彼にもこの楽しさを分けてあげないと……」


 そう思ったら、何故か彼の城に一瞬で辿り着いた。唐突に目の前に現れた私を驚いて見上げる彼が見えた。裸で桃色の女性を組み敷いている所だった。私は首を傾げた。ああ、彼は『そういうの』がお好み?

 私は暗闇から男を何人か取り出して桃色の女を犯させてあげた。彼は大きな声を上げて喜んだ。涙が出るほど喜んだ。女も大きな声を上げて喜んだ。涙が出るほど喜んだ。獣も取り出して女を犯した。とても喜んで、喜び過ぎて、疲れたのか。その目には何も何も映さなくなった。人形のようになった醜い桃色の女の足をちぎった。そしたら、また、喜んで声をあげた。ああ、アレに飽きただけだったのね。


「やめろ!やめろよぉ!なんで、こんなことをぉっ!」


 彼が叫ぶ。私は首を傾げた。


「喜ぶと思って……」

「ふざ、けるな……じゃあ、どうして、君は泣いているんだ」


 私はさらに首を傾げた。彼は涙をこぼして真っ直ぐに私を見つめてきた。私が泣いている?私は、今、とっても楽しいのに。


 ……やめて。


 愉しいわ。赤く染まるのが綺麗で、私の黒色がとても映えるの。


 ……嫌よ、やめてよ、こんなの。


 愉しい、綺麗、綺麗、綺麗……。


「君だってこんなこと、したくないはずだろう!!」

「うるさいうるさいうるさい!!」


 やめてやめてやめて!私は自分の喉を刺した。ぐちゃぐちゃになるまで。それを信じられないモノを見るような目で見つめてきた。びしゃびしゃと床が赤く染まる。彼を見ると、綺麗な黄金に赤が飛んでしまっていた。

 それにゆっくりと手を伸ばす。赤い私の手がその頬に触れると、綺麗に赤く染まった。一瞬だった。プツンと彼の綺麗な瞳からは光が無くなった。首からドボドボと赤が溢れる。

 桃色の女も同様に動かなくなっていた。組み敷いていた男も獣も、皆みんな動かなくて……。動かなくなった彼を動かして、ただ、ダンスを踊った。楽しい、楽しい。

 訪れた人間は皆殺した。手をちぎって地面に埋めるととても素敵だった。周りの緑色の木々が黒く染まっていった。私と同じ黒い色。とても綺麗。訪れる人間を殺して赤く染め上げた。そしてまた彼と踊る。

 でも、彼の黄金は段々と醜くくすんで色がなくなってきた。身体も、零れていって操る事もままならなくなってきた。踊る相手がいなくなった。ああ、次は世界を赤くしよう、さぁ、皆で一緒に踊りましょう。


「あはははははははははは……っ!」


 逃げ狂う人間が酷く滑稽で、笑いが収まらない。殺して、殺して、笑った。沢山の人間が息絶え、世界が赤色に染まる。


「お前が魔王か」


 ピタリと笑いが止まった。声を掛けて来た者に釘づけになった。声をかけてきたのは黄金の髪を持った青年だった。光り輝く剣を携えて真っ直ぐにこちらを睨み付けていた。自然に笑みが零れ、涙が溢れた。嗚呼……彼が私を殺してくれるんだ。


 さぁ、最期のワルツを踊りましょう?



……



「はぁ……はぁ……!!」


 リアルな映像に椅子から崩れ落ちて荒い呼吸を繰り返す。

 サラサラと、砂になってしまった本を仇のように睨みつけ、息を整える。

 私が手にしていたのは王都グランドグランの図書の奥にあった本だった。零れ落ちた砂の色は血のような赤。私は震える手でその砂を握りしめる。

 魔王という存在が生まれた原因が綴ってあるもの。図書に入った途端に私と同じ『闇』を感じた本で、すぐに気が付いてその本を取ったのだ。

 開いた途端、目の前で光景が繰り広げられるようなリアルな感覚に襲われた。魔王は黄金の髪の者に恋をした。そして、失恋をした。それだけならどこにでも起こる悲恋。

 本当の悲劇はそこからだった。彼女の『闇属性』は『不死性』を持っていた。死のうと思った彼女は死ぬことが叶わなかった。何度も死のうとした。何度も、それこそ、狂ってしまうほど。

 彼女は人を殺す時、ずっと泣いていた。それなのに、とても愉しそうに嗤うのだ。如何なる人物にも彼女を殺すことは出来なかった。そこで、王は彼女を殺せる者を召喚した。

 それが勇者。異世界から召喚された、『不死性を殺す』という『光属性』を持った者。それがどういう因果か、彼女がもっとも愛する黄金の髪をした者だった。

 ああ……憎い目で睨み付けられて安心したのは、ここだ。ようやく殺されると思った勇者の瞳に似ているのだ、ミノリの目は。あの時の安堵は勇者だったのだ。

 心配そうに、悲しげに見つめられて殺したくなるのは、殺した彼の瞳に似ているから。あの時の殺人衝動は愛する彼。

 何故こんな所にこんな本が所蔵されていたのだろうか。

 他の人は、全く気付かなかった?……いや、この本は闇属性を持つ者にしか見えないのか?


 私は次の本を読む。

 次代の魔王の本。彼は、魔族だった。幼い頃に闇属性がある事が分かり、人間を嫌う魔族達は喜んだ。

 彼は生まれて間もないのにも関わらず、沢山の人間を殺す力を持っていた。彼が可笑しくなったのは6歳の頃。付き従えた乳母を殺した。それを皮切りに味方である魔族を殺し尽くした。目の前にある命を見境なく殺すようになった。彼は、狂う前に頻繁に言っていた。


「夢を見るんだ」


 と。自分じゃないのに。まるで自分が殺しているかのような感覚。夢と現実の区別が付かないくらいのリアルな夢に、彼はつい、乳母を殺してしまった。ほんの出来心だった。生き返らないと分かって、ようやくこれが現実なのだと気付いた。

 絶望した。何故、自分が彼女を、親のように慕っていた、彼女を、殺したんだ?そして彼は、自分を放棄した。何もかも夢なのだと。信じてやまなくなった。親友が泣きわめいても、笑って殺した。両親も殺した。近寄る者は全て殺した。

 やがて「彼」は、手を地面に植えるという行動に出た。愉しそうに嗤いながら。そして死体と踊る。その行動は前魔王の行動と一致するものだった。

 そこで、『闇属性』の『毒』が発覚した。闇属性には『不死性』と『毒』がある。その毒は夢からじわじわと精神を蝕み、自我を失っていく。

 気が付いた時には、身近な人間を殺しているのだ。そこで、完全に『壊れる』のだ。そこからは、初代魔王であったアスタロトの独壇場。その者を操り、好きに破壊していくのだ。

 初代魔王は闇属性の生みの親であり、闇属性の精霊王として、その狂った意志を継いでいた。

 彼女は、死してなお、死ねなかったのだ。


 次の本もサラサラと赤い砂になって消えて行った。


「精霊王……アスタロト」


 私はガンガンと痛む頭に手を当ててそっと呟く。様々な者の絶望が脳裏を過る。地獄の底からの叫びのようなソレに背筋が凍る。私が戦っていた「悪夢」は「闇属性」だった。

 私はナイフを取り出して、指を切る。しかし回復しない。

 次に、首に当てて深く切り裂いた。血が周りの本に飛び散らない様に結界を張っておく。びちゃびちゃと嫌な音を立てて血が飛び散る。傷つけた首が焼けたようにズキズキと痛んだ。私はそっと目を閉じて傷に触れた。ぬるっとしたが、傷は今の一瞬で治っていた。ヒールを自分の意思で施した訳でもないのに……恐らく致命傷により強制的に回復するのだろう。そういえばギルの暗殺者が来た時にも、死ぬであろう傷を受けても死ななかったな。深く気にしなかったが、そう言う事だったのか。

 目を開けて血塗れた手を眺める。そうやって何度も彼女は死のうとしたのだ。


「ふ……そりゃあ……狂うよ」


 思わず笑ってしまった。明らかに常軌を逸している。狂ってしまうのも無理はなかった。死ぬほど辛い事があったのに、死ねないだなんて。


「私は……あなたを、出させはしない」


 私は虚空を睨み付ける。私が転生し、強い意志があった為に今まで生きてきた。それにはきっと何か意味があるのではないだろうか?私がこの連鎖を止めて見せる。

 歴代魔王は、10歳にも満たない間にその精神が壊れた。無理もない、普通あんな夢をみて正気でいることの方が可笑しい。ある意味、私はすでに狂っているのかもしれない。

 魔王が復活する。その意味は、正しく私が狂うという事なのだろう。


 アスタロトが愛したのは黄金の髪の男性。

 奇しくも、私が愛したのも、金の髪を持つ幼馴染。これに何か意味があるのだろうか?

 私は狂う前に死ねて良かった。死してなお、幸福だったなんて……彼女を知らなければ知ることが出来なかっただろう。だからこそ、私は抗わなければならない。

 『闇属性』は『不死性』と『毒』以外はそれぞれ能力が微妙に違う。

 他の人間に姿を変えたり、毒の雨を降らせたり。中でも私の全属性無詠唱、オリジナル魔法はチートと言っても過言ではない。

 私が狂えば、今回の勇者は苦戦が強いられる。私は筆をとって私の能力の全てと、注意すべき点を書き連ねる。

 仲間とともに来るならやっぱり注意点は言霊による「傀儡術」だよね。あれは闇属性チートだから、光属性の加護か何かそれぞれに持たせて置いた方が無難だな。

 まぁ、色々考えておくか……。


 汚れてしまった床をさっと洗い落とす。無詠唱、便利だね。

 ふと、人の気配に目を向けると、マリアが立っていた。その顔は酷いモノだった。涙や鼻水でぐちゃぐちゃで、顔も赤くなってしまっている。

 やっぱり、マリアは気付いていたんだねぇ……触ってこなくなったのは、魔王を恐れてか、それとも……私が傷付くのを、恐れてか。


「―――マリア」


 ビクッと肩を震わせたマリアの瞳がこちらに向く。


「マリア―――ごめん、ごめんなさい」


 貴方を、聖女だと知ったうえで助けて、ごめんなさい。言わなくて、ごめんなさい。苦しいでしょう、悲しいでしょう、マリアは、優しいから。

 その涙を拭うと、マリアは飛び退いた。ボロボロと大粒の涙が零れ落ちていく。その涙はとても綺麗だった。私の為に泣いてくれている、それがどんなに嬉しいか。

 ハッとしたマリアは、震える手を口元にやり、何かを堪えている。吐きそうなのか?大丈夫か?

 ああ、殺したくてウズウズする。


「ア、ル―――ギル、は」


 そのセリフだけで察した。他の人は知っているか、否か。私は緩く首を振って否定する。


「知っているのは、ラインハルト位だろうな」


 ギルもリョウも兄も知らない。嘘が明らかになる度に精神が喰われる。魔王なんて、馬鹿らしいにもほどがある。特に兄には言わないでほしい。

 やっぱり、やっぱり兄に妹だなんて言わなきゃよかった。こうなると分かっていたなら、関わる事さえしなかっただろうに。今さら後悔してももう遅い。身内が魔王となった時、彼はどうするのだろう?


「私をはやく殺したくなかったら、黙っていてほしい」


 そうマリアにお願いすると、何故か絶望した顔を浮かべた。その綺麗な桃色の髪は私の心を乱す。あまりマリアの顔は見ていたくない。……だって彼の恋人だったんだから。……うん、違うな。落ち着け私よ。


「やだ……死なないで……」


 マリアが泣きじゃくって私に懇願する。ああ、くそ。殺したい。落ち着け、落ち着け―――。

 マリアは、心配してくれるのか。ずっと黙っていた事を、許してくれるのか。私がマリアを苦しめる存在だと知っていて近寄ったのに、許してくれるのか。それは、なんて優しさなのだろう。

 伸ばす手を、それ以上私に近づけない。私が傷付くから、私が心配だから。

 私はマリアのその手を引き、抱きしめた。その光属性が私の体を焼く。前よりも痛みが酷くなっている。離れようともがくマリアを腕から離さない。ポンポンと背中を叩き、泣くのを抑えようとした。

 けど、逆効果だったみたいだった。先程よりももっと泣いてしまった。ああ、どうか、それ以上傷つかないで。私が全て悪いんだ。だから、泣かないで。

 貴方は笑っている方が、私も嬉しいよ。




 王城で個室が用意されているので、気軽に夜出掛ける事が出来る。警備とかガン無視だ。流石魔王。夜も、悪夢を見るだけで良い事がないので、探索は良い。

 私に時間がないと仮定して、ギルの問題も片づけた方が良いだろう。最近ずっと行けてなかったからな。忘れてたとも言うけど。

 ……私がそっちの事情を片づけて何になるんだって話だけど。私の自己満足だ。勇者が私を殺せないなんて最悪のパターンは考えたくない。


 トンとブラックフォードの土地に降り立つ。本当に闇属性ってのは便利だな。まぁその代わり精神が死ぬけどな、はっはっは……笑えない。


 私は路地をブラブラする。メインの道路はいつも綺麗にされているが、ちょっと逸れるとかなり劣悪だ。ねずみの死体や、生ごみ、たまに人の死体がある事もある。

 でも、治安が悪いという事でもない。この世界ではこれが普通だ。路地から逸れなければ、まともな道を歩もうと努力すれば底に落ちる事もない。まぁ、努力だけではどうしようもない事もあるけれど。


「お嬢さん、こんな夜更けにどうされました?」


 綺麗で良く通る男性の声が響き渡る。背後からの声にピタリと止まる。後ろを振り返ると、全身ローブに包まれた人が立っていた。この展開はなかったな。新パターンだ。慎重に行こう。ローブの(恐らく男の)人は、身のこなしや身に着けたその靴からして上級の人間である事が分かる。

 僅かな金属音で武器も所有している。まぁ、夜の街は物騒だから当然と言えば当然だろう。


 怪訝に思って眉を顰めていると、ローブの人は肩を竦めた。


「このあたりは危険です。しかもこんな夜に……あまり感心しませんね」

「……」


 なんか説教食らってる?……何故だ。何故こんな所に来て説教受けているんだ。


「帰りなさい。私が安全な所まで案内しますから」


 ローブの人が私に近寄ってくる。悪意は検出されない。まぁ、悪意がないからって本当にその情報が正しいか甚だ疑問だけれど。ミノリのあからさまな殺意も検出されなかったからなぁ。でも案内なら助かるな。ずっと迷子のターンだったから。

 見た所上流の人間のようだし、ラミル家くらい知っているだろう。


「案内ですか。助かります……ラミル家はご存じで?」

「……!」


 ローブの人が詰めた距離の分だけ、また距離を離した。手に武器を持ったようだ。ローブ内の事なので種類は分からないが……。いきなり警戒を強めるローブの人に首を傾げる。


「……復讐ですか」

「え……まぁ」


 取りあえず曖昧に頷いておく。正確には私自身の復讐ではないけれど。しかし、ラミルの名を出しただけで復讐という言葉に直結させられるとは……ラミル家は相当だな。


「やめておきなさい。奴らは二枚も三枚も上手な存在です。貴方のような子供が行った所で、良いように遊ばれるだけでしょう」

「いやぁ……ご忠告は有難いんだけど……」

「止めなさい!」


 激しく怒鳴りつけた拍子にフードが少しずれた。その拍子に見えたのがオレンジの髪とブルーの瞳だった。凄くイケメンさんだったな。まぁギルには劣るけど。青年はずれそうになったローブを慌てて直す。

 見られたくないのだろうか?白の忌み子でも、黒の忌み子でもないのに?そう考えて首を傾げる。青年もまた首を傾げる。しばらく2人で首を傾げ合う。


「……今の私の姿、見ましたよね?」

「え?はい、チラッとですが」


 綺麗な青年だなーとは思いましたよ。実は変身出来るんですと言われたら驚くよ。


「……貴方はラミル家に恨みがあるのでは?」

「えーと……か、間接的恨みならあります」

「直接はないと、そう言いたいのですか?」

「はぁ……まぁそうですね」


 ギルが狙われているので恨みがあるっちゃあるんですよ。実際マリアの方の刺客だったかもしれないが、毒も盛られたし。あの時は冷や汗が出たよ。

 私が答えると、青年は大きく溜息をついた。なんかその溜息はギルが良くやってるような溜息で。何故そんな風に呆れられるのか良く分からない。


「人の為にそんな危険を冒す必要はないです。諦めなさい」

「……まぁ、実際被害にあった人物にも止められましたけど。別に情報集める位いいでしょう?」

「貴方は……」


「見つけたぞ」


 青年が何か言おうとした時に、別の男の声が掛けられた。野太くて、しゃがれたような声は聞いているだけで不快。ついでに言うと、そいつからは悪意がダダ漏れだ。


「かかれ!このガキだ!」

「ふっ」


 数人の男たちが私に群がる。前に気絶させた男もいた。逆恨みですか。全くなんて厄介な……青年の方は大丈夫だろうか?そう思って顔を向けると、抜刀して敵を見据えていた。中々様になったその構えは恰好良い。フードを脱いだらもっと様になっている事だろう。でもねぇ……。


「どこのどなたか知りませんが、巻き込まれる前に逃げた方が良いですよ」

「何言っているんですか貴方は!こんな大勢を前に……私が引きつけている内に逃げなさい」


 わぁ、良い人だ。この青年良い人だ。いやだなぁ、そんな良い人置いて逃げるわけないじゃないのさ。


「ははは、ご心配には及びません。生憎ですが―――ここの連中なんて息をするほど簡単に殺せるんで」

「―――っ!」


 ニッコリ微笑むと、何故か怯えられた。失礼じゃないですか?まぁ許しますけど。

 そうこうしている内に、敵さんが斬りかかってきた。なので、取りあえず身近な奴を蹴り飛ばす。


「ぐあっ!?」


 敵の一人が大きな音を立てて気絶した。ぶつかった建物は石であるにも関わらず、ヒビが入っている。吹き飛ばされた男の様子に敵が動きを止めて息を飲む。足を下ろして動きの止まった敵を見回す。


「さぁ、死にたい奴からかかってこい」


 私の言葉で全員がビクリと震えた。っていうか青年もビクッとしてるんですけど。大丈夫です、貴方は攻撃しませんから。


「き、聞いてねぇぞ!こんなに強いなんて―――」

「俺は降りる!くそっ!」

「おいっ待て!?」


 何人かが戦意を喪失させて逃げ出す。リーダー的なやつが止めているが、誰かが逃げ出したが最後、全員クモの子を散らすように逃げていく。


「チッ!!覚えてろ!!」

「覚えるわけないじゃないか。さっさと散れよ」


 負け犬の遠吠えを聞きながら手を振る。誰もいなくなり、後は気絶してるやつと、青年だけだ。取りあえず気絶してる奴に近づいて水をぶっかける。


「……っ!?」

「お仲間さん逃げ出したよ?君も逃げないとこのまま人生終了だよ」


 気が付いた男は青ざめて逃げ出す。蹴られたダメージがでかいのか、よろけながら。まぁ歩けるくらい元気なら大丈夫大丈夫。ゴロツキを見送って、ふうと一息つく。


「君は、何者だ?Sランク冒険者……?いやまさか」

「私はアルと言いますよ。貴方のお名前をお聞きしても?」

「……君に、助けてほしい」


 え?なんすか?急に。名前は言ってくれないんですね。若干拗ねていると、青年は少し躊躇してから口を開いた。


「いや、済まない……私はラファウ。ラファウ・クラ・ラミル。ラミル家の長男だ」

「はっ!?」


 私が出会った青年はラミル家長男でした―――なんだこの展開。


「君への依頼はラミル家の暗殺だ。むろん、私も含めて殺して貰って構わない」

「ちょちょちょ……!?」


 急展開だな、おい。動揺していると、空が明るくなって来ていた。あらまずい。帰らないとメイドさんが不審がる。


「すみません、私夜しか動けないもので……何時になるか分かりませんが、その話はまた今度でいいですか?」

「ああ……」


 ダッシュして人目の付かない所に行く。そして闇を伝って王城へ帰った。

精霊王はそれぞれ、元人間です。

最初に発明した賢者が死んだ後に精霊王として蘇ります。


ミトラスを殺した時から、少しずつ悪夢を見るようになっていきました。

「人殺し」という精神的苦痛でアルの精神が蝕まれた事が要因です。

不安や動揺による精神的なモノでアルの精神が前魔王に乗っ取られて行きます。

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