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34話

「なんで断るかな。このバカは……」

「アル。馬鹿。超馬鹿。アルバカ」


 そんなアルパカみたいに言わないでよ……。


「なれるならAランクくらいでいいというか、なんというか……」


 魔王が冒険者やってるだけでも可笑しいんだけど、トップランクじゃないからまだマシなんじゃないかとか、思うわけでして……。私が言い訳をしているとギルとマリアから怒りの圧力を頂いた。本当に申し訳ないと思っております。

 私が反省して項垂れているとリョウが肩をポンポンと叩いて励ましてくれる。おお、我が天使よ。


「あ、そうだ。リョウの魔法訓練しようか」


 そうだそうしよう。ギルドが確認を終えるまで2週間はかかるのだから、その間に試してみるのも悪くない。


「さっそく、忘れてるの……」

「アルはこういう奴だ。諦めろ」


 ウキウキしているとギルとマリアに大きくため息をつかれた。



 次の日からリョウの訓練だ。魔力を発散させるのは良い事だ。広くて人がいないところで行う。結果から言うとリョウは土と風が使えた。両方中級以上扱えるので、土と風属性が必要な草や樹属性を扱うことも出来た。


「よく使わない属性の詠唱をそこまで正確に覚えてるな……」


 と、ギルに言われた。え、不自然ですか?でも上級の長ったらしい詠唱までは覚えてませんよ?そう考えたらあれを覚えてるギルの方が凄いと思うんだが。


「なんかすごい」


 リョウが嬉しそうにはしゃいでいる。魔法を詠唱出来るようになって嬉しいようだ。


「危ないから人に向けちゃダメだよ?」

「うん」


 リョウは嬉しそうに覚えたばかりの詠唱をする。というか……物覚え良いなリョウ。それ一回教えただけで全部覚えたのかい?

 サニスト・ヴェント・グラス、アノイ・サニスト・アンテルテン・サンド、ヴェローテン・ヴェント・イージ・ウィンドなど等……ホイホイ詠唱している。この子、もしかしなくて天才なんじゃないだろうか?この子将来Sランク魔術師になれちゃうんじゃないだろうか。

 この気持ちが親ばかという気持ちなのだろうか。ウチの子天才。


「すごい」


 マリアも感心した様に呟いている。うんうん、すごいよね。あれだけ魔法を放っておきながら魔力を半分も使ってないんだぜ……?なんてったってまだ半分以上は封印してるからね。やべ、やっぱ天才だよね?


「風魔法上級。使ってみる?」

「うん!」


 マリアが率先して風魔法上級を教えてあげる。


「結界はれよー危ないから」


 なんて言いながら平和にその光景を眺める。




 驚いた事に、リョウは上級魔法でさえ一度聞いただけで覚えてしまった。なんという天才。とんでもない子を拾ったようだった。リョウは扱えるようになった魔法に上機嫌だった。まだ扱い方が荒いが、慣れていけば問題もない。マリアとギルも驚きを禁じ得ない。


「なんと。ライバル。強敵」

「くそ、魔法すら抜かれるのか!?」


 二人とも戦々恐々としている。


「凄いパーティーになってきたな……」


 私は遠い目をして呟く。火魔法を上級まで扱える魔術師(貴族)。水魔法を上級まで扱えるヒーラー(聖女)。土魔法を中級まで扱える魔術師(黒の忌み子)。しかも風魔法に至っては全員上級扱えてしまっている。

 なんだこのパーティーは。上級扱える魔術師って結構貴重なんじゃなかったっけ?なんでこんな集まってんの?優秀な奴ばかりなの?馬鹿なの?天才なの?


 でも、リョウも元気になってきて良かった。固形の食べ物も少しずつだけど食べれるようになってきた。リョウはじゃがいもが苦手みたいだった。そうだよね、味は人参だもの。人参やピーマン苦手な子供って多いから……。自分の手で皿やスプーンを持つのも慣れてきたようだし、順調に肉もついてきてる。肉づきが良くなって天使具合が上がってきた。ついでにへにょってた耳も元気になってきて凄く……可愛いです。しかも夜とか上目使いで一緒に寝よう?って感じの目をしてきて可愛いったらありゃしない。全力でもふもふさせて頂いております。『獣人の街』に来て見ているだけで苦痛だったもふもふが今や我が手の内だ。

 リョウ可愛いよリョウ。抱きしめてたら恥ずかしそうに、それでいて嬉しそうにしてる顔がもう、もう……。リョウの可愛さを語るだけで時間が簡単に過ぎてしまいそうだった。



 街を探索していると、少し不穏な噂を聞いた。なんでも、近頃『獣人の街』の子供が何人か消えているそうだ。


「坊主達も気ぃつけろよ」


 と、露店のおじさんに注意をされた。ちょうどリョウと私だけだったので心配したのだろう。


「人さらいか……物騒だな」

「人……さらわれるの?」


 リョウが不安げに見上げてくる。私はすぐに安心させるようリョウの頭を撫でてやる。


「ふっ、大丈夫。守って上げるから」

「うん……」


 今のリョウならそこら辺の賊くらい簡単に返り討ちに出来そうだけどな。魔法を完璧に覚えてて詠唱も早い。筋力はまだ少ないが、逃げるだけなら大丈夫だろう。風魔法で速度も上げれるし。補助魔法でも速度は上げられる。

 リョウは大丈夫としても問題は他の子供だな。連れ去られた子供はどこに連れられたのだろう。心配なのでちょっと調べるか。


 リョウをギルやマリアに預けて街の裏手を捜索する。ギルとマリアに訝しげな眼を向けられたが全力でスルーさせてもらった。人通りは少なく、少し不穏な空気がある。子供がここを歩けば少し危険かもしれない。獣人の子供を攫ってナニをするのか。

 きっと奴隷とかペットにされるのだろう。獣人は耳やしっぽが可愛らしいから、性奴隷なんてザラだろう。胸糞悪い話だ。人をなんだと思っているのだろう。彼らにも意志はあり、自由が認められるべきである。

 私は剣を闇に投げ入れて探索する。丸腰の方が相手も油断するしな。


「ぎゃうっむー!むー!」

「くそっ大人しくしてろこの糞ガキ!」

「早くクスリ嗅がせろ!」


 大の大人3人が子供を麻袋に入れようとしている場面に遭遇した。凄くタイミングが良くて私嬉しいよ。

 魔王はそういうスキル持っているんだろうか?犯罪ホイホイとかそういうスキル。持っていると言っても過言ではないよなぁ……。

 大人の方は人間だ。獣人も立派に人なんだけどな……そこんところどう考えてらっしゃるのやら。子供はバタバタ暴れて叫ぼうと逃げ出そうとしている。しかし大人3人の前に為す術もない。何かのクスリを嗅がされてクッタリと動かなくなった。睡眠導入剤とかそういう系だろう。まさか売り物を今すぐ殺すことはないだろう。

 犯人の登場に私が機嫌良くニコニコしていると、3人が私に気づいたようだった。


「なんだ餓鬼かよ」

「見られたぞ、どうする?」

「獣人じゃねぇみてぇだが、見た目は上出来じゃねぇか?こりゃ高く売れるぜ」


 3人の男はニヤニヤと厭らしい笑みを浮かべて近づいてくる。私は怯えたように後ろに後ずさる。3人の男が一斉に私に飛び掛かり、私を取り押さえた。


「見た目通り弱い子供だな」

「運が悪かったなガキが、大人しくしてりゃ命はとらねぇよ」


 3人が手際よく私の口に布を巻かせ、手にも拘束する。わはは。なんのプレイだろ。まぁ陣地にこのまま連れてってくれるのは有難い。傀儡で操ってもいいのだが、如何せん顔色や冷や汗までは操れない。

 仲間の只ならない様子に不信感を抱かれても嫌だし。突入してもいいんだけど、奴隷として捕まって内側から殺して行った方が子供達も安全だろう。ちょっとの辛抱だ……。


「アルッ!?」


 その声にギョッとした。ぎ、ぎぎギルー!?なんで来て……あ、うん、私が不審な行動してたせいですね分かります。


「何してんだお前ら!!」

「おっと知り合いか?大人しくして貰おうか、こいつの命が惜しかったらな」


 男の1人が私の首筋にナイフを這わせる。その様子にギルが青ざめて唇を噛みしめる。人質っすね、分かります。とりあえず大丈夫だよーという感じでウインクでもしてよう。ギルにウインクしたら殺意を向けられた。何故。めっちゃ怒ってる。

 私は何やらさっきの子供が嗅がされたものを口に当てられた。わ、目瞑っとけばいいかな。よし、寝たふりだ。私は目を瞑ってぐったりと力なくその場に倒れるフリをした。


「くっ……!」

「おっと、騒ぐなよ?」

「こいつどうする?殺すか?」

「まぁ待て。こいつもなかなか上等じゃねぇか。貴族に売れるぞ。男だが、モノ好きなやつもいるからな」

「ゲスが……!!」


 ギルが悔しそうにしている。可哀想に。まぁ安心してよって言っても無理か……。薄目を開けて様子を窺う。私の近くの男は変わらず私の首にナイフを当ててニヤニヤしている。

 ギルは少し抵抗したようだが薬で眠らされたようだ。男が二人ほど加入して足早に私達を運ぶ。しばらく人通りのない道を縫うように走り、着いたのは港だった。


(船か……なるほど人間に売りつけるには大陸に戻らないといけないもんな)


 男達は2、3言葉を交わして別の男達に私達を受け渡した。船に乗り込み、その奥の方である部屋にギルの武器が投げ入れられた。

 その隣の部屋に私達は入れられる。ガチャガチャと金属の音がして手枷を縄から鉄製のものに変えられたようだった。部屋は大部屋。なるほど、沢山の子供達が不安そうにしている。私達を拘束している男が動く度にビクビクとしている。

 男は用事をすませるとさっさと部屋から出て行った。その際外側から鍵を掛ける音が聞こえた。子供がむやみに出ない様にする為だろう。


 誘拐犯が部屋から出ていき、緊張していた部屋の空気が少しだけ緩む。だが、子供達の表情はどれも晴れない。男が出て行ったので私は早々に狸寝入りをやめて起き上がる。近くにいた子供が目を丸めていた。

 その子はうさぎの獣人のようだった。頬に痛々しい青痣が出来ており、犯人に殺意を抱く。うさぎの獣人が心配そうに話しかけてくる。


「だ……大丈夫?」


 大丈夫、と答えようと思ったが口に布を巻かれていて上手く声が出なかった。面倒になったので、手錠を壊し、布を外した。


「大丈夫、大丈夫」

「え、あれ……今……手枷は……?」

「ああ、上手く付けれてなかったみたい」

「そ、そうなんだ」


 うさ耳さんは納得したように頷いている。私は早々にこの部屋に結界を施した。これで奴らも入って来れない。全滅させてからゆっくり逃がそうか。うさ耳さんの怪我をヒールで治してやるとビックリされた。


「ま、魔法使いなの!?」

「え、ああ……」


 今は魔術師ではなく剣士で通ってるから微妙だな。

 曖昧に頷いてうさ耳さんの手枷を闇から取り出したナイフで壊す。その様子に他の子供達がざわざわと騒ぎ出した。


「静かに」


 そういうと大人しくみんな黙った。うん、良い子達だ。まぁ騒いでも外には聞こえないよう結界を張ってあるが、会話が出来なくなるほど騒がれても困るからな。子供達は全員で25人。さっき運ばれた子も含まれている。

 ギルと私は入れなくても良いよね?ギルの方は相変わらず眠ってしまっている。私は困惑している子供達の手枷を順に外し、怪我している子供にはヒールを施した。


「……助けてくれるの?」


 子供の一人が不安そうに遠慮がちに聞いてくる。


「はい。助けます。だから言う事聞いて大人しくしてね?」


 その言葉に子供達が嬉しそうに互いの顔を見合わせた。獣人なので犬耳の子のしっぽがぱたぱた動いて可愛らしい。私もその様子に頬が緩む。そうこうしているとギルが身じろぎした。


「う……ん?」

「おはよ、ギル」


 ギルの手枷を壊し、口の布を取り払う。


「ぎ……」

「このバカ!何やってんだ!こんな危ない事しやがって!」


 口の布を取り払った途端にお叱りを受けた。


「ど、どうどう……」

「俺は馬か!?アルの頭は鳥だ!いつもいつも突っ込みやがって!」


 私は苦笑いをするしかない。胸倉を掴まれて怒鳴り散らしているので、子供達が怯えてしまっていた。このパターン見たよ。リョウもこんな感じになったよね。


「まぁまぁ……話はここから出てからにしようか?」

「それやったらまたはぐらかすんだろ?」

「ふっ、良く分かってる」


 そう言って笑うとギルは大きくため息をついた。私は嬉しいよ、とても理解してもらえて。


「さて、ギルの武器を拾いに行くか」


 ギルの武器は隣だ。杖と剣が投げ入れられていた。私は隣の部屋に繋がっている壁をナイフで切り取る。サクサクと隣の壁がケーキの如く簡単に切れていく。補助魔法でナイフの切れ味を上げているのだ。


「おま、それ……」

「ん?」

「いや、アルの異常さを身に染みて体感してる所だよ……」

「え、え?」


 異常?何かしましたっけ……。オロオロしているとギルが大きくため息をつく。


「いや、いいよ。続けて」

「お、おう……」


 残りの壁を切り取って、隣の部屋に侵入する。部屋の中は色々なものが乱雑に置かれている。盗んだものを入れている倉庫的な何かなのか……。ギルの装飾が施されている剣はすぐに見つかった。

 その近くに杖も転がっていたので、両方拾ってギルに渡す。


「はい。どーぞ」

「うん……ありがとう」


 感謝を述べているがその目はちょっと怖かった。何故睨まれているのだろうか……?


「アルの剣は?」

「あ」


 そういや忘れてたわ。でもちゃんと闇に投げ入れてある。


「大丈夫、ちょっとしたとこに置いてきたから……ここにはないよ」

「そうか?」


 ギルが胡散臭げな顔で見てくる。流石は長年旅をしているだけあって疑っているようだ。でもなんだかんだいって全面的に信用してくれているのだ。なんて素敵な仲間なのだろう。

 疑っているのは心配してくれているからだ。ニヤニヤする顔をなんとか戻して、大部屋に戻る。少し不安そうな顔をした子供達に声をかける。


「では、今から外を安全にしてきますので、皆さん大人しく待っていてくださいね?」


 子供達は一斉にコクコクと頷く。その様子に満足した私は早速行動する。ナイフで鍵の鍵の掛かったドアを壊して出る。ギルもついてくるみたいだ。まぁ分かってたけどね。だから真っ先にギルの武器を入手したんだよ。索敵では船に30人、陸に10人いるようだ。

 早速曲がり角に人発見。


「なっ!?お前ら―――うぉっ!?」


 すぐさま私は手持ちのナイフを相手に投げる。相手はなんとかすんでの所でナイフを止めた。その間に私は相手の距離を詰めて勢いよくラリアットをかます。その勢いで壁に着地。その壁を蹴って相手に戻る。首を苦しそうに押さえている相手の後ろから足を払って盛大にこけさせる。後頭部から思い切りひっくり返ってガツッという音がした。

 いたそー……。


「スリープ」


 呻く相手にギルがすかさず睡眠を掛けた。呻くのをやめて相手は眠った。大ダメージを負わせたので効き目は大きいだろう。

 これは半日眠りこけるな。しかも術者がギルだからしばらくは揺られても殴られても刺されても絶対に目覚めないだろう。しかしギルも手際がいいな……。私は起き上がり、次の獲物を探した。


 ウロウロしている奴を後ろからキュッとしたり、その間ギルが横の奴を眠らせる。何人か戦闘になったりしたが特に問題もなく進む。


(……敵の動きが可笑しい)


 現在は船内の敵20人を眠らせた所だった。キュッと首を絞めた男を転がしつつ、敵察知「オーブルサーチ」を見る。陸の辺りが慌ただしい。しかも一人だけ異常に速く動いている。魔力的にも相当の手練れが紛れ込んでいた。


(まさか、もうバレたのか?いや、だが見つかった奴は全員眠らせたはずだ……)


「アル?どうした?」

「ああ、いや……次に行くぞ」


 ちょっと気にはなったが、まぁ特に問題もあるまい。いざとなれば傀儡で思いのままだ。次の船員も戦闘しつつ眠らせる。その間に素早い動きをみせる者が船内に乗り込んできたのが分かった。

 このまま行けばすぐにでも鉢合わせになる。


「ギル、気を付けろ。強いのが来る」

「分かった」


 ギルは杖を持ち直し、頷く。船内の敵が強い魔力を持った者に接触すると、次々動かなくなる。


(船員を倒しているのか?)


 異常に強い敵がもうすぐそばまで来ていた。


「来る――――!」


 現れたのはコバルトブルーの髪をした青年―――。その目には強い光を灯し、こちらを見据えていた。

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