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28話

視点がコロコロ変わります。ご注意ください。

 ギルも無事……いや、若干可笑しいが……元気になったことだし、また食堂の方に顔を出す。ザワッと店内が騒いだ。やっぱり毒物騒ぎがあったからだろうか。食堂のメンツに関わるのではないのだろうかと心配しいていたが……どうやら違う話題のようらしい。


「あれだぜ……男同士でキスしてたのが」

「げっまじかよ……あれ?でも結構俺イケそうだわ」

「きゃあっあれよー情熱的な剣士×魔術師はっ」

「あれは18禁だったわよね……またやってくれないかしら。じゅるり」


 その会話に思わず逃げ出したくなったのは、仕方ないと思う。

 何故だ……何故そんな噂になってやがるっ……!!


 顔を引きつらせながらもなんとかオヤジの所に行く。


「すまん……毒なんて噂になったら困るから。その。そういう事に」


 私の顔には思わずビシッと青筋が立ったのは、仕方がないと思う。


「そういうことでしたか……で?私が公衆の面前で情欲を我慢が出来なくて押し倒してキスしたとでも?」


 ええ、ええ。分かりますとも。勿論私も毒物が噂になるのではと?と心配いたしましたよ。だからその点についてはその情報操作は賞賛に値します。

 オヤジさんはヒッと喉を引きつらせ、青ざめている。よく分からないけれど今とってもムカついているので、とっても怖い顔してると思うのぉ。


 えっ私変質者決定のレッテル貼られない?まだこの船で2週間過ごさないといけないんだけど?この不名誉を授かったまま2週間?


 きゃあっと黄色い悲鳴が後ろで上がる。ギギギと後ろを振り向いたらギルが来ていた。なんてこった。なんて腐った店に来やがった……!ギギギと前にいるオヤジに向き直る。

 もう噂は船中に広がっても可笑しくない。だってここの食堂結構な人が入るし、見てる人多かったよね。


「お姫様だっこ……」


 と小さく女性が呟いているのが聞こえた。嗚呼、そうとも。気を失ったギルを運びましたとも。ガシッとオヤジさんの肩を掴む。


「オヤジさん」

「お、おう……」


 ニッコリと心から丁寧に誠心誠意力を込めてこう言うしかない。


「殺してくれ」




 1週間ストレス溜まりに溜まりまくった。色んな男性に声を掛けられた。ガリ、デブ、マッチョ、渋いおっさん……。

 振ったら振ったで「銀髪の魔術師一筋なのねっ」って事になるらしい。勘弁してくれ。ギルの方も被害を受けているようで顔を真っ赤にして耐えている。居た堪れない。真面目で誠実な男だ。きっと私よりも参っていることだろう。

 マリアの方はニヨニヨしながらこっちを観察するくらいで助けてくれない。

 やっぱり神はいません。信じてなかったけど!信じてなかったけど!くそったれ!ええいイライラする!嫌な感じの笑顔を貼り付けた男どもに声をかけられてジットリと気持ち悪い目線を貰うのはストレスが溜まる。

 けどそれくらいで相手を斬れないし!くそっどうすんだよっ!この行き場のない気持ち……発散したい暴れたい。


「なあいいだろう?あんたくらい美人なら俺もオッケーだし」


 オッケーじゃねぇよブッ殺すぞくそジジィ。ギロッと睨んでも対して効果はない。なんせ相手は大人でこちらは10歳の子供なのだから。腕を掴まれたら振り払ったりすることも出来るのだが、声をかけるだけで一定の距離は保ってくれるのだ。なんだその微妙に紳士。くそったれめ。微妙にいい人だから殴りにくいんだ畜生。

 せめて暴漢位ならさっぱりぐっさり抹殺してあげるのに。


 イライラしているとグラッと船内が大きく揺れた。


「な、なんだ!」


 ナンパのおっさんが慌てふためく。船内の乗員が慌てている。ついでに警報らしき大きな音がけたたましく鳴っている。


「クラーケンだ!」


 乗員達のその言葉に物凄く良い笑顔が出たのは言うまでもない。私は甲板に出るために速攻で走り出した。






 甲板は惨事になっていた。本体だけでも船と同じくらいはあろうかという巨大なイカが海から顔を出して足をうねらせていた。べったりと血がついてある所があったり、胴体だけの死体があったり。


 久しぶりの対戦に胸踊り心躍った。ひゃっほーいストレス発散場だぜぇ!そう思って前に行こうと思ったら肩を掴まれた。


「馬鹿野郎!死ぬぞ!お前愛しているヤツがいるんじゃないのか」


 こいつ本気で殺してやろうか。スッと据わった私の目に慄いたのか手は離してくれた。直様走り出してイカの前に躍り出る。


 ヒュと太い足が振り下ろされる。普通の船舶ならこれだけで簡単に沈む事だろう。さて、船に巨大結界展開―――抜刀!


 キン!


 輪切りにされたイカの足が甲板にぼとぼとと落ちる。これって食料になるだろうか……?呑気なことを事を考えている隙に2撃目が横に薙ぎ払われるようにやってきた。


 キン!


 次も難なく今度は縦にスライス。なんか白くて美味しそうなイカである。何とも爽やかな笑顔で手摺に足を掛けて空中に飛び立つ。

 清々しい。やっぱり魔王はこうでないとっ!精神攻撃とかもういいから!もう肉弾戦でいいよ!


「ぐぃいいぉぉおおおおおおおおおお!!」


 怒り狂ったようにイカが鳴き、赤く染まった。今度はタコのようである。と考えていたら両側から挟むように足が2本ずつ迫ってくる。切って切って切り落とす!輪切りになったタコイカの足を足場にさらにタコイカ本体に接近する。


「ぎゅえええええう!!」


 さらに足が本体への接近を止めようと何十本もの足で襲いかかる。え、何本だって?イカとかタコじゃないの?ああークラーケンだったか。まぁどうでもいいさ。私のこの溜まりまくったストレスを発散してくれるなら!!とっても良心的なタコワサだよねっ!!


 壁のような足に自分が通れるだけの穴を斬り出し、そこを通り抜け―――イカの足を足場にして更に本体に踊りだす。

 もう本体は目の前だ。大きすぎて視界に収まりきらない。けれど。


「―――終わりだ」


 キンと金属の音が響き渡った。



…… とある乗務員目線……



 俺はパトリック号の船員セントールだ。この船に惚れ込んで船員になってもう5年はたつ。まぁ、それより以前に色んな船に乗った。その中でもこの船は天下一品だ。揺れは少ねぇし、なんてったって船員や雇われの気質がイイんだ。やたらとでけぇ癖に壊れることが少ねぇ。なんか有名な魔術師に結界を張ってもらったんだとか。

 なんだか知らねぇがとにかくすげぇ。客同士も諍いなんて殆ど見られねぇ。こんな船他を探したって見つからねぇ。だから今回乗った客は本当に運が良い。快適な船旅が約束されているのだから。


 そんな時ちょっとした噂が広まった。もうちょっとで船が次の島に着くって時だ。どうやら食堂で男同士がエロい事やらかしたみてぇだ。何サカってンだ。しかも男同士かよ。

 男のどこがいいンだよ。趣味悪ぃなぁ……あんな固くて可愛げの欠片もねぇ生き物で勃たねぇよ。そう思ってた。


「おいセント。あれが噂のゲイボーイだぜ」


 親友に指さされたその先にいたのは儚げな少年だった。サラサラとした茶色の髪を後ろで縛って、長い髪がユラユラ揺れている。人形のような綺麗な顔立ちには確かに知性が宿っている。まるで幻のような少年。まだ大きくなりきれていない未成熟な少年。正直、芸術作品のようで見惚れてしまった。

なんだあれは、あんな綺麗な人間見たことねぇぞ。


「あれで食堂で相手の男を押し倒したんだってよ。見た目と違って随分と情熱的な奴らしい。しかも相手さん気絶しちまったみたいでよ。どんだけ超絶テク持ってんだって噂だぜ」


 ゴクリと思わず生唾を飲み込んでしまった。あんな綺麗な生き物に押し倒されるって……そこら辺のブサイクな女より綺麗じゃねぇか畜生。本当に男なのかよ?あんな細っちい腕してさ……。


「なんでも気絶した一回りデカイ相手の男を抱きかかえるくらいは力もしっかりあるらしい」


 何だって?じゃあやっぱり男なんだな……見た目って本当アテになんねぇな。

 少年は丁度別の男に言い寄られている最中だった。不快な顔を隠そうともしていない。それがまた可愛らしい顔だった。ムッと怒って睨んでいるのに全く効果がない。


「あーあいつも無駄なことすんなぁ」

「無駄?」

「あーなんでも押し倒した銀髪の男一筋らしいからな。誘いは全部片っ端から断っているらしい」


 その銀髪……なんて羨ましいやつなんだ!くそっそっちの気がない俺でもあんな子なら大歓迎しちまうってのに。そう考えていると男が痺れを切らして少年の腕を乱暴に掴んだ。


「おい待てよ」


 俺は男の腕を掴んで制止する。男は俺の親友にも目を向けて分が悪いと思ったのか「チッ」と、舌打ちして立ち去った。


「大丈夫か」

「ええ、ええ。実に助かりましたよ……」


 言葉とは裏腹に眉間に皺を思いっきり寄せている。笑ってはいるのだが口の端がヒクヒクと引き攣っている。怖がっているというより相当イラ付いている様子だ。それにしてもまだ声が変わっていないのか、澄んでいて綺麗な声だ。

 近づいてみて分かったが、遠目でみるより近くで見たほうが綺麗さが際立つ。気持ちよさそうな白い肌。薄ピンク色の唇。長い睫毛。少し釣り目だがそれがまた猫のようで可愛らしい。

 神は生まれる器を間違えたらしい。なんでコレが男なんだ?しかも選りにも選って肉欲の相手が男だって?どうせ男に生まれたんなら相手は女にしろよ。

 将来有望そうな奴じゃねぇか。でもどうせなら死んでもいいからキスだけでもしてみてぇもんだな。







「クラーケンだ!!逃げろ!!」

「うわあああああああああああああああああああ―――」


 逃げるために客を先導するもの。足で押しつぶされるもの。海の遥か彼方に飛んでいくもの。甲板は大惨事だった。俺は強い揺れでその場で棒に掴まって震えることしか出来やしねぇ。

 未曾有の大災害だ。あんなでけぇクラーケン見たことねぇ。意味が分かんねぇ選りにも選ってなんで俺たちの船なんだ。

 小規模のクラーケンでも多数の死者が出る。こんなデカ物じゃあ確実に全員死ぬ。運が悪い。そう割り切るしかない。俺はただ震えて死ぬのを待った。

 船体が締め付けられてギシギシ言ってやがる。結界をしてるらしいが、そろそろ限界なんだろう。いよいよ致命的だ。


 そんな時ふらりとあの少年が現れた。甲板の状態をチラチラと眺める。クラーケンを前にする絶世の美少年―――これはなんて美しいのだろう。クラーケンの醜悪さと相まって少年がまるで天使のようじゃないか。少年はこの惨劇を見ても悲痛そうな顔を微塵も見せない。それどころか非常にイイ笑顔で笑った。

 見たこともない綺麗な笑顔に思わず陶酔する所だったが、少年が死地に足を踏み出そうとするので慌てて止める。


「馬鹿野郎!死ぬぞ!お前愛しているヤツがいるんじゃないのか」


 見たことねぇが銀髪の男が好きなんだろう?どうせ死ぬなら一緒のところがイイだろう。選りにも選ってこんな汚ねぇ所で死ぬことなんてねぇ!そう思ったのだが。

 少年のご機嫌な顔がスッと氷点下まで下がった。言葉に出さなくても分かった。


『離さないと―――殺す』


 慌てて手を離した。冷や汗が出た。クラーケンを前にして死ぬ覚悟をした時よりも怖いと感じるなどとは思わなかった。整った顔立ちをした奴が本気で怒ったらあんなに怖ぇんだな……。

 離された瞬間消えるようなスピードでクラーケンに走って行く。


 そこからはまるで幻のような光景だった。


 でっけぇ足が来る度にキンという軽やかな金属音が鳴っては細切れになっていく。

 ボタボタと落ちて行くでけぇ輪切りの肉が落ちる。それは、実際はべっとりしたものであると思う。だが少年の美しさが、舞うような動きが、白い花びら、または雪のように綺麗にハラハラと舞い落ちているように魅せる。


 夢―――なのだろうか。こんな綺麗な光景見たことねぇ。

 もしかしたら死んでるのかも知れねぇ。だとしたらここは天国か。なら、あの美しい光景も理由がつく。

 どれくらいの時間見惚れていたんだろうか。


「ぎょおおおおおおおおおおおおおおおおおお――ぉおん……」


 絶叫を受けてハッと我にかえる。クラーケンはいつの間にか頭半分を切り取られ、絶命する瞬間だった。スローモーションでゆっくりと海に還って行くクラーケン。


 完全に姿が消えても誰も歓声を上げない。皆思っている事だろう。まるで夢のようだ、と。

 あの少年は?あの天使はどうなってしまったんだろうか?クラーケンを殺すことと引き換えに神の元へと帰ってしまったんだろうか?


 そう思っているとヒョッコリと何食わぬ顔で甲板の手摺に飛び乗ってきた。その顔はどこかスッキリとした顔で皆が見惚れた。


「――――アル」


 シンと静まり返った甲板で唯一天使に話しかける存在がいた。スッ出てきた後ろ姿―――銀髪の少年。

 すぐに分かった。これが例の想い人なのだと。


 爽やかな笑顔をした少年がヒクッと口を引き攣らせて冷や汗を流していた。あの少年にあんな顔させられるのは世界であの少年だけだろう。

 ガシッと乱暴に胸ぐらを掴む。


「無茶すんなって……言ったよな?」

「すすすすみません!いやちょっとイライラしてたもんで」

「言い訳は聞かん。説教だ」


 そう言ってズルズルと天使を引きずっていく。振り向いたその顔は凛々しくも整った顔立ちの―――少年。

 ああ……負けたな、と思った。あの場で声を掛ける気力、説教しても殺気を返されない信頼、そして何より彼らの深き愛。


「――――閃光の幻」


 とポツリと口から溢れた。




 俺、詩人に転職しようかな。




……主人公視点……




 無事『獣人の街』に着いた!長かったー!

 途中クラーケン討伐でギルの雷が落ちたけど。なんだか知らんがそれから男のお誘いがパッタリなくなった。実に清々しいもんである。でもちょっと待ってくれ……何だその二つ名。

 何故か良く分からんうちに『閃光』アルって名前で通っていやがるんですが。よお閃光の!って感じで話しかけられること多数。嫌な目線のない友好的な声かけなんだけど……なんだけど!


 えっ誰が呼びだしたの?シメるよ?


 何その黒歴史。厨二病も大概にしなさい。


 くぅ!ホモ疑惑が収まったと思ったら今度は厨二設定ですか!くそ!誰だよマジで!そもそもホモでもねぇよっ!むしろ男と女だから正統派だよ!っていうか恋人じゃねぇえええええ!!

 誰かって、ギルが最も被害浴びてるよ!毒飲んだ挙句ホモって可哀想過ぎるだろ。



 げんなりしつつも心を変える。船に同乗させてあった馬車を出して早速行動だ。もうやけくそだよ畜生!いいよもう……別に船だけの話だろうし、大丈夫だ、問題ない。


 馬がストレスマッハなので広いところを探すことにする。


「取り合えず馬を走らせようか」

「そうだな『閃光』の」

「そうするの。『閃光』」


 私が土下座するのも仕方ないと思う。


「いやホントやめてください。お願いします。後生ですから」

「いやだって無茶するし『閃光』のアルという人は」

「『閃光』のアル。超格好良い」


 マリアは気に入ったのか、ホウとうっとりとした顔をしている。ギルは私が嫌がっているのを知っていて敢えてニヤニヤしながら使っている。むしろ本気で格好良いと思っているマリアの呼びかけの方がダメージがでかい。もうやめてぇ。

 私のライフはもうゼロなのぉ……!


 しかし、結局マリアは犯人を見つけ出すことが出来なかったようだ。まぁ私も悪意検索出来なかったから見つけることは出来なかったし……。しかし手練と考えると今も付いてきてそうな気はするのになぁ……。

 キョロキョロと辺りを見回す。流石は『獣人の街』。獣耳のオンパレードだった。触りたくてむずむずしてしまう。はうっその可愛い三角耳っきゅんってしちゃいますぅ!お、落ち着くんだ私!

 そうだ冷静になれ。冷静になって素敵なもふもふ様に土下座して触らせて貰うのだ。いや、なんだその考え!落ち着けって!


 あまりの夢の空間にドキドキと胸を高まらせる。そんな様子を冷ややかな目でギルが眺めている。うっ……別にまだ何もしてないじゃないかっ。ちょっともふもふしたものを想像しただけ……。


 馬を広いところに預け、次は宿屋と冒険者ギルドを探す。


 狐、猫、たぬき、犬、鳥、熊……多種多様な獣耳がいるなぁ。前の街にウサ耳多い所もあったけど、やっぱ犬とか猫もいいなぁ。


「あ、冒険者ギルドがあるぞ」


 私がもふもふに釣られている間にギルが見つけてくれたようだ。


「ベッド。久しぶり」


 マリアがわくわくしている。出会ってから荷馬車のソファー、雑魚寝だったので結構ストレスも溜まったのだろう。


「マリアがいるとなると……やっぱり2部屋いるよね。ついでに3部屋にするか?」


 ギルもプライベートが必要だしなぁ……あまりにもずっと一緒だったけど、不満とか溜まっているんじゃないだろうか。


「別にアルと同じ部屋でも問題ない」

「そうか?別にギルが良いなら構わないんだが……ああ、いや……やっぱり3部屋取ろう。船での噂話みたいなものが流れてても困るし」


 うん、やっぱり3部屋にしようそうしよう。ギルにそんな不名誉を与える必要性はない。


「振られてる……」


 そう言ったマリアの頭頂部にギルのチョップが綺麗に入った。





 次の日は取り合えず『獣人の街』探索。たまに普通の人間も見かけるが、大体が獣人だった。街はそれなりに活気づいており、微妙に慌ただしい。


「忙しそうだなぁ」

「知らないのかい?もうすぐ祭りがあるんだよ」


 私の呟きに横を通り過ぎようとした獣耳のおばちゃんが親切にも教えてくれる。そしてじっとりと私達を見てきた。


「ああ、人間か、通りで……あ、いや済まないね。まぁこの街名物みたいなもんだから楽しんでいきな」

「わざわざ、有難うございます」


 おばちゃんはまた忙しそうに作業に戻る。


「祭りかぁ……」

「見ていくか」

「見る。楽しみ」


 二人は俄然乗り気だ。まぁ、勿論私もなんだけど。祭りなんて、何年ぶりだろう。私は思わず頬が緩む。


「そうだな。見ていくか」

「……」

「アル。あんまり笑うと、目の毒」

「えっ!?」


 ギルが完全に固まり、マリアが注意を促す。ちょ、目の毒って笑うととんでもない顔になってるのか!?いやでもそんな事言われてもしょうがないじゃないか……。私は言われて自分の顔をペタペタ触る。いや、触っても分かんないんだけど、なんとなく。そうしているとギルにポンと頭に手を乗せてくる。


「気にするな。格好良いから」


 慰め有難う……。でもその慰めもどうなのだろう?いや、まぁギルが気にするなっていうなら気にしないよ……。

 取り合えず気を取り直して街を探索する。すると、屋台の枠組みのようなものを立てている区域があった。


「屋台……」


 木枠で簡易に作るものみたいだ。大きさも日本の屋台とどう程度でズラッと並んでいる。警備の者が多数おり、周りに鋭く目を走らせている。この厳重さは流石に日本ではないだろうが……が、なかなかに楽しめそうだ。

 暖簾には様々な絵があしらわれている。焼きそば、お好み焼き……たこ焼き!?おお、凄いな……そんなのあるのか。

 うわ、これ相当楽しめるんじゃないか?あまりそこらをウロウロしてはいけないのか、警備の人が物凄く睨んできている。


「アル、もう行こうぜ」

「そうだな~」


 ギルに袖を引っ張られて私はそこを離れる。


「アル、凄く楽しそう」

「え?そう?そう見える?」

「凄く」


 マリアに言われる位顔に出ていたか……。


「うん、まぁすっごく楽しみかな?」




 祭りは今日から3日後に開催3日間行われるらしい。豊穣と子孫繁栄を祈り、神の祝福を得るのだそうだ。祭りには年頃の娘が数人代表で呼ばれ、祭りの間、夜以外は交代で踊り続ける。

 それ大変そうだなぁ……まぁでもそれで神への祈りが成功すればその娘の将来も安泰、健康な子供も産めるというもので。名誉ある役目なんだそうだ。巫女みたいなものかな?踊りは神社で行われる。神社て……完全に日本人の仕業ですよねそれ!!

 屋台も……なるほど納得だ。神社をチラッと見てみたが、巫女服着てたよ。狐耳の女の子が巫女服着て石段掃除してて萌えた。あれは兵器だろ。しかし、神社の鳥居から先には進めなかった。なるほど、魔除けはしっかりされているようだ。

 くそ、なんて事だ。猫耳巫女やウサ耳巫女が見られたかもしれないってのに……!


 ただ宛もなくプラプラ街を歩く。通常の店もキチンと営業されている。消費した材料を買い込む。まぁ祭りになれば買うものも絶対あるだろうし、あんまり量は買っていない。

次回、お祭り。

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