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俺が転生して勇者になるまで

作者: はには
掲載日:2013/08/30

連載の方の話を考えていたらパッと浮かんだので投稿。

「もう、失敗はできません。これより召喚の儀式を行います!」


ある国の白く大きなお城。ここはこの国の首都であり王の住まう城。


その城の光も届かぬ地下の一室で黒いフードをかぶった集団が幾何学的な紋様を映した地面を囲むように立っている。

辺りは少しの蝋燭に灯された火によりうっすらと見える程度。


その中を先程皆に気合いを入れた1人だけ真っ白なフードに身を包んだ女性は周りの顔をグルリと見た後で、なにやら呪文のようなものを唱えだす。


また、周りの黒いフード達もそれに合わせるように呪文を唱えだす。


それはさながら聖歌のよう。この暗い地下で神に捧げる様に、まるで歌う様に呪文を紡ぐ。


するとその呪文に応えるように幾何学的な紋様が淡い光を放ちながら輝き出す。


その光は瞬く間に辺りを照らしだし、その光量を強めていく。


誰もが目を開けて居られなくなったとき途端にその幾何学的な紋様は光を失う。


その光を失った紋様の上には1人の男性が立っていた。


「おお!姫様!!成功ですじゃ。勇者召喚の儀成功しましたじゃ!!」


白いフードに身を包んだ女性の近くにいた男性が白いフードの女性に向かって喜びの声を上げる。


姫と呼ばれた女性はニコリとその男性に微笑むとおもむろに召喚された男性の前に膝をつき喋り出した。


「お初にお目にかかります勇者様。まず、この様な場所に呼び出した無礼。誠に申し訳なく思います。…しかし、我らは今世界に突如現れた魔王と名乗るものにより危機に瀕しております。どうか…どうか我らをお救い下さい!」


そう必死の懇願を見せる姫に合わせるように周りの黒いフード達もそのフードを外して膝をつき頭をさげる。


その召喚された男性は辺りを見渡して一呼吸置いた後にこう言った。


「あったりまえですよ!バッチこいです。もう任せて下さい!……さっ、早く魔王について詳しい話を聞かせて下さい。」


召喚に対して様々な避難を覚悟していた姫にとってそれはありがたくも不思議な光景で、思わず口をポカッと開けて召喚された勇者を見てしまう。


が、流石は一国の姫。すぐに持ち直して勇者を部屋に案内し、豪華な食事を振る舞いこの世界や魔王について語りだした。










その日は俺にとっては特別な日になった。



何故ならその日は俺が勇者として異界に召喚された日。また、神との会合を果たした日だったからだ。


その日の話をしようと思う。



どんよりと太陽を覆い尽くす雲が今にも雨を降らせようと威嚇してくる中、俺はコンビニから自宅へと洗濯物を取り込む為に全力疾走していた。


「はぁはぁ、…クソっ。さっきまであんなに全力で日光を浴びせかけてやがった癖に!」


変わりやすい天気に言っても仕方のない文句をぶつける。

休みだからと部屋の掃除をして洗濯物を干し、ポテチでもと出かけた先のコンビニで長々と立ち読みしたのがいけなかった。


ポツ…ポツ…。


と、そろそろ雨も本格的に降り出してきそうだ。


「ちょっ、ダメ、お天気さんちょっと待って!……って、へっ?」


足ももつれそうな中、ダメ元で祈ろうと空を見上げた俺はビシャ!っと言う音と真っ白な光を浴びせられた。


「きゃーー!!」


近くを歩いていた女の人が叫び越えをあげる。走っていた車も急ブレーキを踏み摩擦音がキキッー!と大きな音を響かせる。


ゆっくりと流れるそれらの景色を見ながら俺は倒れるように意識を飛ばした。







「…ん?…何処だここ?なんで俺こんなところに?」


あぁ、そう言えば俺雷みたいなものに打たれたんだっけ?


じゃ、なんだ?ここは病院か?


次に目を覚ますとそこは真っ白な空間。

俺はその部屋で寝ているのか立っているのかもわからない状態で覚醒した。


ゆっくりと起こった出来事に着いて考えを巡らす。そして雷に打たれたことを思い出すと直ぐに身体の確認をした。


が、別に何処も火傷や損傷は見られない。

何時ものように弛んだ腹に無精髭。最近不摂生が祟ったのか出来たてのニキビまでバッチリだ。


うん。俺だ。


間違いなく俺だな。


そして、再び周りを見渡す。ただ真っ白な空間。どうしてこうなっている?


攫われた?死んだ?ひょっとしてこれは意識だけで現実では植物状態?


普段ならこう考えたであろうが混乱の中ではそのような考えも浮かばない。


考えようにも手がかりすらない。


いや、よそう。


手がかりならある。あまりにもあれ過ぎて触れなかったがそろそろ現状を受け止めようじゃないか。


目の前にはいかにも手作りですと言わんばかりの横断幕。

そこにはwelcome to other worldと何故か英国で書かれている。

その横断幕の下にはデカイ液晶TVが。これは50インチぐらいはありそうだ。


なんだこれ?


まさか異世界転生なんてテンプレじゃねぇだろうな。


と、何とも言えない感想を紡ぎ出すとTVが起動して映画が始まる前のような映像が流れだす。

タイトルは「これで貴方も勇者になれる。選ばれる。」とある。


ん?

神様プレゼンツ?


陽気な音楽と共に始まったそれに付いて行けず戸惑っていると前置きは終わったのか本編が流れ出したようだ。


「は〜い。どうもこんにちは。皆のアイドルわ・た・し。で〜す!早速ですが、貴方は勇者候補として選ばれましたー!わー、おめでとう。パチパチ。」


そこには扇情的な衣装に身を包んだ超絶美人が陽気な声を上げて此方に語りかけるように登場してきた。


「はい。と言うことでね!今これを見ている貴方は勇者候補としてここ天界に連れてこられた訳なんだけど。これであれだよ?勇者になったんだ。って思ったらダメだよ!あくまで候補だからね。これから最終試練があるから気を抜かないでね。」


此方の困惑など知ったこっちゃないと。その美人は語りを続ける。


この美人が言うにはどうやら俺はここに勇者候補として連れてこられたようだが、それだけでは勇者にはなれないらしい。


と、言うより俺は死んだのか?あの連れられかたなら死んだようにも思えるのだが果たして選ばれなかったら帰れるのだろうか?


「ちなみに、貴方より先に試練を受けた勇者候補達はなんと!全員落ちました。残念!それくらい難しいからね。覚悟しといてね。」


らしい。


じゃ、俺は無理だろ。手違いだろ。

何人がその試練を受けたのか知らないが、相当に厳しいのだろう。

自慢では無いが俺のステータスは高く見積もっても軒並み中の中といった所だ。悔しいが事実だ。前に試練を受けた人の中には俺よりもステータスの高い人が多くいた筈だ。何しろ勇者になる為に選ばれた人達なのだから。


「っと、言っても別に能力云々の話では無いのよ。そこは安心してね。試練の内容はズバリ、面接!!ちょっと私達とお話して貰うだけ。……でも、これが難しいようで中々合格者が出ないの。だから、今回の貴方には予習として前回までの人達の面接の内容を見て貰うわ。では、始まり始まりー。」



パフパフ!


と、ラッパのオモチャを吹いて本場が始まっていく。

なんか、やっすい作りだなおい。




----Aさんの場合----


「ん?ん?……なんだここは?確か俺は…。雷に打たれて。」


「目覚めたか。落ち着くがよい。ここは天界である。そちは勇者として異界へと旅立つべく此処に召喚されたのだ。」


そこには呼び出された18歳ぐらいの青年に、いかにもな美形男性神様がこれまたいかにもな口調で語りかけていた。


「はっ?あんた何言ってんだ?巫山戯てねぇで答えろよ。此処は何処なんだよ!」


「ワシは礼儀を弁えぬ奴は好かぬ。」


「へっ?」


混乱して神様に怒鳴りつけた青年は、神様が振り切った腕によりバシュ!!というような音と共に煙のように立ち消えた。


「あー、この子は神の説明を聞いた上でそれを疑い尚且つ神に対して無礼千万な口を聞いたので失格となっちゃったのね。」


同時に場面が切り替わり先程の美人が説明を付け足す。画面にはブブーという音と共にバッテンのマークが浮かび上がる。


「では、次の人のケース行ってみよー!」


そう言って美人は物語の進行を続ける。




----Bさんの場合----


「……っと、此処は?」


「目覚めたか?此処は天界である。そちは勇者として異界へと旅立つべく此処に召喚されたのだ。」


今度は30歳ぐらいサラリーマンだった。


「っと、しかし、私は雷に打たれたような…?」

「うむ。それはじゃな。此方に呼ぶには一度そちらの世界での肉体を破壊する必要があったのでな。そちの肉体の生命活動を停めたのじゃ。」

「……ってことは、私は死んだということでよろしいのでしょうか?そして、それは貴方がやったことだと?」

「うむ。そうだと言っておろう。しつこいの。そして、そちは異界を救う為に旅立つのじゃ。」

「どうして私が選ばれたのでしょう?特別強い訳でもありませんが?もっと相応しい人がいるのでは?」

「ぬ?それはじゃな、そちら人の力は我ら神からすると弱過ぎてな。そちも働き蟻同士並べられてどちらが強者か?と問われれば答えられぬであろう?それと同じでな。どうせ我が能力を与えるのだ。ならば適当でよいと思うてな。」

「つまり、誰でも良かったと?」

「うむ。さて、そろそろ良かろう。行ってくれるな。」

「嫌ですよ。何してくれてるんですか。私は妻も産まれたばかりの子供もいるんですよ!勇者云々は知りませんが早く帰してください!」

「無理じゃ。そちはもう死んでおる。地球にそのまま生き返らすことはできぬ。」

「ちょっ、貴方神なんでしょ!かってに連れてきてもう帰れないだなんて!どうしてくれるんですか!!」

「やかましいっ。」


神様が腕を振り切り、バシュっという音と共に男性は煙のように立ち消えた。


「あちゃー、この人は喋り方は大丈夫だったんだけどねー。地球でいう人権?みたいな人同士だけで通じる権利を振り回して神に食ってかかったので失格となりましたー。」


再び美人が先程と同じような画面の構成で出てきては解説をいれる。


「因みに此処では人権なんてありませーん。貴方たち人も蟻に対して権利なんて与えてないでしょ?私達はそれ以上の開きがある神と人でーす。正直なところ間違いで殺してしまっても、あっ、間違えて踏んじゃった。最悪ー!ぐらいにしか思わないので注意して下さいねー。では、次行ってみましょう。」




----Cさんの場合----



「…っと、ここは?」

「ここは天界じゃ。…と、この喋り方もうめんどくせぇ。お前は異世界に勇者として転生する為にここに呼ばれたんだよ。あと、もう地球には戻れねぇから。あと、ちゃんと敬語で喋れよ?」


今度は逞しい身体つきをした20代半ばといった男性だった。

神様はあの口調に疲れた様で今度は砕けた喋り方になっているが有無を言わさぬ怖いオーラを放ちながら男性に語りかける。


「ってことは、これは異世界チート転生っていうやつか?…ですか?」


この男性は空気を読まないのだろう。普通に喋ったが、神様の刺すような威圧にビビり敬語のようなものを付けたした。


「そうだ。チートもやるからさっさと異界に転生して魔王とか調子のってるやつを叩き潰せよ。じゃないとこれ以上他の神の奴らと点数が広がるとゲームとして面白くねぇんだよ。」


ん?ゲーム?


砕けた喋り方の神様からの発言に少しどころか大きな引っかかりを覚えるが、映像は進んでいく。


「やっほーぃ、って事はあれでしょ?美人の姫とか騎士とか魔法使いとかをパーティーにしてハーレム築いたりして、チート使って魔王や調子乗ったやつらボコボコにして、そのあとで姫と結婚して王になって後宮でウハウハしたりできちゃうんでしょ?やりー、勝ち組じゃん。」


この空気を読まない男は神様の話をまともに聞かずに頭お花畑みたいな状態になっている。


ちょっと神様も発言に引いたのか無礼な振る舞いはみてみぬ振りにしたのか、黙って聞いている。


「なら、はよ!あと、チートはがっつりチートにしてね?個人的に修行パートとか怠いと思ってっからさ。そうそう、寿命も伸ばしといて…あとねぇ…。」


そう暴走する男に神様が気を持ち直したのか話かける。


「無理だ。能力は授けてやるが異界の遺伝子をあまり此方に振り撒くのはよくないからな。ハーレムを作ることは許さん。と言っても鬼ではないのでな1人に絞ることは許そう。あと、寿命も却下だ。」

「えー、いいじゃん。どうせ一夫多妻でしょ?しかも俺魔王倒すんだよ?それ位勘弁してよ。…ダメっていうなら俺やんないよ?いいの?勇者なんでしょ俺?」


神様の言葉を聞いた男はあからさまに文句を言い出した。

20半ばの男が口を尖らせても不快なだけなんだが。


神様も同じなのか無言で手を振り男を掻き消した。

やっぱり不快だったのかその後煙のようになった男に蹴りまで食らわしていた。


「あー、今度のは……ねぇ?分かるでしょ。あれが何でか分からないならどうせ見込みはないから、説明はしないわね。」


再び画面に出てきた美人が呆れた口調で話かけてくる。


「んじゃ、次ね。次からはちゃんと説明も入ってくるから。じゃ、いってみよー!」


どうでもいいがこの美人はいかりや長さんのファンなのだろうか?





こうして、俺は随分と長いことこの映像を見させられた。


結果としてわかったことは。


1.数ある世界は神様達が暇つぶしに誰が1番繁栄させられるかを競うゲームであること。その際の繁栄の基準は一杯あるらしいからここでは省く。


2.今回の行く世界はさっきから面接をしている神様が管理する世界で今のところビリを独走しているらしい。その上魔王なんて出てきたもんで更に拍車がかからないための特別処置らしい。


3.さっきから神様が人を消してるように見えるのは魂の消却ではなく輪廻の輪に帰しているだけらしい。まぁ、記憶も無くなるから俺たちには死んだも同然だ。


4.あの美人や、中盤らへんに出てきた他の人達も神様らしい。因みにあの美人は今ゲームでトップを走っているとか。


5.神様は短気。超短気!


6.神様は怖い。めっちゃ怖いから逆らうべからず。


7. 5年以内に魔王を倒すこと、じゃないと神様に殺される。


8.魔王を倒した後は王とかには成らずに一般人として暮らすことチートはその時に剥奪されます。


まぁ、他にも色々わかったが大事なのはこんなところだ。


この時にはもう、俺の覚悟は決まっていた。



「じゃ、これで全部ね。それでは次は貴方の番だからねぇー。今までのを踏まえて頑張ってね。皆のアイドル、わ・た・し、でした。」


そう締めくくって画面からは光が失われた。



次の瞬間、目の前に魔王…美形男性神様が現れた。いや、俺が神様の前に移動させられたのか。


その神様の脇には美人とビデオの途中に出てきた爺さんみたいな神様がいる。


「よし、映像はみたな?んで、もう面倒だから直接聞くけど異世界行く?死ぬ?」


イケメンがそうぶっきら棒に聞いていた。


くっそ、コイツを殺してやりたい。が、そんなこと口にだそうものなら即殺される。


「はい、魔王は許せません。私に行かせて下さい。」


そう当たり障りないように応えると美人が声を上げる。


「ねぇー、私の言った通り簡単だったでしょ?やっぱり企画力の差よねー。」


それにイケメンが応える。


「マジかよ。くっそ、これでお前にまた50ポイント追加かよ。あぁー!」


隣にいた爺さんもそれに合わせる。


「ぬぅ、また差が開いてしまうわい。なんとか挽回せねば。少しワシの世界でも波乱を起こしてみるかの。」


美人が再び口を開く。


「へっへー、このまま逃げ切ってやるもんねー。…っと、そろそろその人間の話に戻りましょ。」


それを聞いたイケメンも糞っと言いながらも此方に振り返る。


怖い怖い怖い。

身体から出てるオーラだけでも人なんて殺せそうだ。


「お前5年以内に……。」

「任せて下さい。必ず5年以内に魔王を仕留めます。」

「ハーレムは…。」

「純愛最高!ハーレム反対!」

「過度な異世界への干渉は…。」

「しない、させない、やらせない。魔王倒したら俺パンピー。」

「絶対調子のんじゃねぇーぞ。」

「勿論です!日本人の魂みせるっす。」

「よし、なら行け!」

「ありあとざーす。」


こうして俺は旅だった。



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