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第7章

やってきましたいなごさん。


「今夜一杯飲みにいかないか~い?」


いえ、貴方は呼んでません(キッパリ



「おぉい!数日のうちに蝗の大群が来るらしいんだ!」

「なんだって!?そんなもんに来られたら作物は全て食われちまうじゃないか!」

 その日の内に皇都には蝗害の情報が伝わり、翌日には国中に広がった。人々は皆怖れ戸惑ったが、宰相が下した命令があった為、迅速に対応することができた。彼らは己が食べる二三日分の食料を確保すると、他は全て古井戸や蔵の中に入れ、隙間という隙間を鉄板で塞いだ。国民は宰相らに感謝すると共に、しかし王家に不信を抱き始めた。

「しかし王家は大丈夫なのか?前皇が亡くなった後に即位された新皇はとんでもない愚か者だそうじゃないか?」

「そんなこと道の真ん中でいうもんじゃねえよ。でも、こんなときに政を放りだすなんてとんでもねぇ王様だな。」

「でも、父親を亡くしたのだもの、塞ぎこむ気持ちも分かるわ。」

「でも、そのすぐ後に婚約したばかりの王妃様と昼間から《お戯れ》になったそうだぜ?」

「はぁ!?」

 噂には尾びれがつくとよく言うものだが、当初ベールが流させた情報の他に、皇子が王を殺したとか、王宮のメイドを新皇が手辺りに襲っているとか、メアリ王妃が前皇を殺したといった根拠なき噂が国中に広まった。これも全て、ベールらの予定通りだった。噂が広まったのを確認すれば、後は火種が付くのを待つだけであった。


 王が死んでから四日後、皇都より南方にある村では、二人の男が話していた。

「なぁ、俺、さっき聞いたんだけどな。」

「どうしたんだよ、そんな顔して?」

「驚かないで聞いてくれよ?蝗の大群に王様の死去、この全ての黒幕がな…。」

「?」

「何でもモース王妃様だって話なんだ。」

「はぁ!?お前それはないだろ?だってとても綺麗でお優しいって話しじゃねえか?」

「いや、それがな、どうも王妃が怪しい魔法を使って新皇を誑かしたそうなんだ。王が亡くなったのも、蟲の大群もみんな彼女がこの国をひっくり返すためにやったことらしいんだ。」

「そんなこと。まだ新皇が殺したって方が信憑性あるじゃねえか?大体、そんな話どこで聞いたんだい?」

「さっき領主様の家に荷を運んだ時に、屋敷の人が話しているのが聞こえちまってな…。」

「う~ん。領主様が言っていたなら、そうなのかもしれねえな…お、おい。あれは何だ?」

「いきなり空を指してどうした?雲があるだけじゃないか?」

「いや、でもあれ、こっちへ向かって来てねぇか?色もなんか黒いしよ…。」

「…おい、あれってまさか…」

「「イナゴだぁ!!」」


「遂に来たか。」

「そのようですわね。こんなにも時期が丁度良いと噂も誠に聞こえてきますね?」

 王宮の執務室では、ベールが女と話していた。どうやら以前彼に進言した女のようだが、今日は後ろに控えるのではなく、彼の膝の上に抱かれている。

「そうだな。しかし、これは好都合だ。王宮の食料は全て仕舞い込んであるだろうな?」

「その点は抜かりなく。万事宰相様の仰せのとおりに。」

「ならばよい。影長?」

「はっ。」

 彼が呼ぶと男が現れた。数日前は黒い衣装に身を包んでいたが、今日は商人の服装をしていた。

「この様な服装で申し訳ありません。」

「よい。それより例の細工は成功したか?」

「はい。全て仕掛け終わりました。私と本人以外、誰も気づくものはいないでしょう。」

「そうか、よくやった。蝗を殺す手筈については?」

「仙洞省曰く成体は死ぬのを待つしかないが、卵、あるいは幼虫なら殺せるとのこと。」

「ならば任せておいても問題ないな。後は適当で構わぬ。どうせ民の怒りは消えぬのだからな。」

「御意。」

 そういうと影は下がっていった。

「山より転がした玉は海まで止まらない、ですか?」

「昔の諺か。実際、後は放っておいても問題ない。最後の締めに一芝居打てばいいだけだからな。」

「宰相様のお望みも叶う時がくるのですね?」

「あぁ。ようやくだ。」



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