第1章
短いのは気にしないでください。
小高い丘の上に、一軒の小屋が見える。その小屋の前に、一人の老女が立っている。
「こんにちは。モースさんはいるかい?」
「…はい。あら、メアリおばさん。今日はどうされたんですか?」
彼女が扉を叩くと、中から若い女性が現れた。この辺りでは珍しい黒く艶やかな髪が特徴的であり、その容貌もまた美しかった。
「いや、娘が道で転んで怪我をしてしまってね。前にもらった塗り薬が切れちまっていたものだから買いに来たんだよ。」
「あら、ベスちゃんが?今薬を取ってきますから少し待ってくださいね。」
ここは中央大陸バイサス皇国北東のとある村。伝統の手芸品の交易によって成り立ってきた小さな農村だ。
「…はい。塗り薬でしたよね?」
「あぁ、ありがとうね。はい、お金。」
そんな村に暮らす一人の女性。彼女の名はモース・フライン。代々治療師としてこの村に住んでいる。
治療師とはその名の通り病気やけがを癒す人々のことだ。その方法は様々で占星術を用いる人もいれば薬草を用いる人もいる。モースもまた主に薬草を使用している。
「そうだ。そういえば城下町に珍しい品が出回っているそうだよ?なんでも東の大陸のものだそうだ。丁度あっちへ行く馬車があるんだけど,御者に伝えておくかい?」
「あら、東の?それじゃあお願い出来ますか?」
「わかったよ。十六の鐘が鳴る頃に家においで。じゃぁ、また後でね。」
「はい、後でまた。」