第1章 ドラン平原辺境にて1
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今回は、少し長めになっちゃったな。
「……」
ここはどこ?私は誰?
何者かも分からない自分は一面見渡す限り真っ白な世界の中にいた。
「やっと、お目覚めかね?」
「? あなたは誰?」
「ふぉっふぉっふぉ、儂は神様じゃよ。」
「そう、ですか。」
「なんじゃ、驚かないのかね?」
「そりゃ、もう何がなんだか分からない状況ですから、何が起こっても今なら全て受け入れる事が出来そうです。」
「ありゃ…意外に礼儀正しい子じゃったか」
「なんだか、失礼な言い回しですね…それよりも、ここはどこですか?ううん。それも後でいい、私は誰なの‼」
「そう焦らんでもよかろうに。そうじゃな、まずは自己紹介でもしておこうかな」
目の前の白い服を着ていて、禿げた頭の上に輪っこをのせている自称神様が私の何かを知っていそうだ。それにしてもどうしてこんなにやせ細っているんだろう?やっぱり断食とかしてるのかな?
「儂の名前はカミサマ=ナポリタンじゃ。仕事は死後直後の人の調整じゃ。だから、儂はここにいてお主と話しておるのじゃよ」
えっ?私死んだの?
「ナポリタンさん!私は一体誰なの?そして、どんな人なの?」
「少し待つのじゃ」
脳内検索を行っているように見えるのは私だけ?
「ぽくぽくぽくちーん!」
あっ、何かを分かったみたい。
「そなたの処遇は異世界転生じゃ」
「え?異世界転生?」
「ふむ。そなたは異世界にて新しい人生を送るのじゃ。その前にと…フゥヌ‼‼」
「きゃっ!」
私の頭の中に18年間の記憶が一気に流れ込む。全てインプットされたあと、目眩がして私は地に伏せた。
「どうして、記憶も伝承させるの?」
「ふぉっふぉっふぉ、気まぐれじゃよ。」
疑う余地もなく本当に気まぐれみたいだ…だって、記憶を伝承した人間なんて聞いた事ない。でも、そんなのでいいものなの?
「さて、そろそろとばすとしようかの」
「ちょっと待って!ナポリタンに聞きたい事がまだあるの!」
「せめて、さんはつけるべきじゃったの」
目の前が真っ暗になった。
「ん…」
目が覚めると、いかにも私の知っているような構造の屋根じゃない。
木で出来ているみたいで、言葉で解説は難しい構造かな。
とりあえず言うと、外からの攻撃を防ぐための構造というべきかな。
「ん?」
私は布団に寝かされているみたいだった。
横を見てみると、「世界の終わりだ…」って顔をしてる人がいた。
まるで、鳩が豆鉄砲をくらったような。
「あの、大丈夫ですか?」
その人は目をぱちくりさせて、おずおずと返してきた。
「あなた、話せるのね?」
???
何言ってるんだこの人?
あっ!そういえば、私異世界にとばされたんだった…
「あの、私って誰ですかね?」
わー、私知らない言語使ってるよー
「覚えてないの?覚えてるわけないわよね。」
その人はやっと冷静を取り戻したのか、少し落ち着いた様子ではなしかけてきた。
「あなたの名前は『田宮 咲也』私の娘なの。あなたがまだ1才の時不慮の事故にあって今の今までずっと植物人間状態だったのよ。」
なんか、異世界の名前って横文字のイメージがあったけど、私の名前は前の世界と同じじゃないの。
その後、私はいろいろな事を聞いた。
ここは、ドラン平原の辺境だということ。
私と父と母と弟の4人家族ということ。
トウモロコシ畑を営んでいる事。
私は17年間眠っていた事。(だから、18才っていう設定みたい。)
前の世界でいう漢字はここではドラン語ということ。
そして、1番大事な事で今この世界は大戦乱時代だという事。
色々お母さんと話した後、夕食の準備があると言って部屋を出て行った。
「ふぅ…」
大戦乱時代かぁ…
ここの文明はどのくらい発展してるのだろう?
銃かな?弓かな?
ここの家の構造を見る限り弓の可能性が高いと思うけど、ここの家が古いだけっていう可能性もあるし…
ただ一つ言える事はここの世界は穏やかじゃないって事だね。
あの、ナポリタンめっ!
どうしてこんな世界に送りこんだのよ!
ガチャッ
「ね、姉ちゃん!」
「ぐふっ」
突然ドアが空いたかと思ったら誰かが私に突っ込んできた。
「やっと目を覚ましたんだね!良かったよ~」
なっ何?姉ちゃんって言ってたからこれは私の弟?
「ずっと、祈ってたんだよ?僕が生まれた時からずっと動かない姉ちゃんがいつか動きますようにって!」
………
なんだか、いたたまれない気持ちになって来る。
だって、私は本当の姉ちゃんじゃないんだよ?
別世界から気まぐれ(私のじゃない)でやって来た異世界人だよ?
なんだか、罪悪感が…
「咲也と遥、ご飯よ~」
お母さんの愉快な声が聞こえて来る
「はーい!今いきまーす!」
上機嫌な弟を見るとさらに罪悪感に苛まれるじゃないか。
そういえば、この私の弟は『遥』って名前みたいね。
家族だから田宮でいいんだよね。
「さっ、姉ちゃん行こう‼」
「ちょっと待って遥!」
「ん?どうしたの?」
どうしたのって…
17年間も寝込んでで急に動けるわけないでしょ。
まぁ、私は転生者だから動けるけど。
「ちょっと待って、今行くから。」
「うん!」
肩くらいかしてくれてもいいのに…でも、無邪気に笑う遥には悪意なんてないんだろうな。
テーブルを囲み私達は食事を始めた。
ん?お父さんは?
「そういえば、お父さんはいないの?まだ、畑で働いてるの?」
「えっ?それは…」
二人とも苦い顔をしている。もしかして、もう死んでるとか?いや、でもさっき4人家族だって言ってたし…
「お父さんはね。」
遥が切り出す。
「軍人なの。」
今にも泣きそうな顔をして遥は言う。
お母さんも俯いてる。
家族を置いて軍人って事は徴兵で連れていかれたのかな?それにしても、遥を泣かせるなんて許さないぞ!(おい
「そうなの…」
周りの空気に合わせて沈んだふうにしておく。だって、会った事ないんだから、本当に落ち込むなんて出来ないよ。
「あの人はね、私達を置いて出て行ったの。」
え?出て行った?
「一生幸せにするなんて言っておいてっ…」
ついに、お母さんは泣き出した。
やばい。地雷踏んじゃったよ。
ど、どどどうしよう!
えとえと、とりあえず慰めよう!
「大丈夫だって、いつかかえっt」
「いったーーーい‼‼」
舌噛んじゃったよ!
もう、私だめ…
「あははっ!姉ちゃん落ち着いてよ!」
「そうよ、落ち着きなさい。」
見ると二人とも笑ってる。
結果オーライですね!
その後、楽しく食事ができた。
遥の学校での話や、トウモロコシの話、この辺についての話まで聞かせてくれた。
「それで、この辺は平和なのよ。」
「へー、ここは平和なんだ。」
「でもね、いつ奇襲が来てもいいようにこの家は防備は固めているのよ。」
この構造で防備万全ということは、まず戦闘機の類いはないだろう、爆撃機も同様にないと思う。
じゃあ、銃は?
「あのさ、戦争の時って、鉄砲使ったりするの?」
「戦争?鉄砲?」
そうか、戦争って言葉は知らない、というよりないのか。呼び方は戦ってところかな。
鉄砲はないらしい。
ってことは、剣や槍、騎馬などが主戦力ってことね。
ここは、平和らしいけど、いつ戦になるか分からないから、鍛えておく必要があるわね。
「ううん。なんでもない。」
「そう?」
「うん。そうだ、私そろそろ寝るね!」
「あら、いつの間にかもうこんな時間ね。」
遥はとっくの間に寝ている。
「それじゃあ、また明日ね。」
「はい、おやすみなさい」
私は部屋に戻って行く。
ふぅ…疲れたな。
転生してから初めの一日だったけどめっちゃ疲れた。
布団に入った瞬間すぐに寝入ってしまった。
「お主、そろそろ起きたらどうじゃ?」
「ん?」
気がつくと又あの白い世界。そして、見知った顔。
「どうじゃ?楽しんでおるか?」
「あなたは確かナポリタンでしたっけ?おかげ様で楽死んでますよ。」
「だから、『さん』はつけろと言うとろうに。楽死んでるとはどういう状況じゃ?」
「そんなことはどうでもいいじゃないですか?それよりも、どうしてまた呼んだんです?」
「ふぉっふぉっふぉ、それは他でもないのじゃが、お主、他の異世界に言ってみたいとは思わんかね?」
「と、言いますと?」
「実はのぅ、他の世界の人口が足りないということになってな。」
「それで、私を別の異世界にとばそうと?」
「そうじゃ。どうじゃろうか?」
「お断りします。」
「随分と早い返事じゃの。」
せっかく異世界の事情について知ったのに、また別の世界の事情覚えるのなんてめんどくさいもの。
「とにかく、私は別の世界に行くつもりはありません。」
「仕方ないのぅ、また呼んで悪かったの。」
「いえいえ、 なんてことないんで、そろそろ返してもらえません?」
「ふぉっふぉっふぉ、相変わらずせっかちじゃの。戻す前に一つ言っておいておこうかの。明日の夜中にお主の家に奇襲がかかる。さすがのあの家も数に圧倒されてあっという間に占領されてしまう。親子共々捕虜になってお主の父親との干渉材料に使われるぞ。」
「えっ?それはほんt」
最後まで言う前に私は眠りから覚めていた。
いやー、自分でもよう分からんなw
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