第5章 – 「この場所?」
「まさか、こんなに早く若き殺人者を見つけるとは思わなかった。」
アルファエルは凍りついた。心拍が急上昇し、少年の声をかき消すほどだった。
「え、え…どうして分かるんだ?」
か弱い少年は鼻でため息をついた。
「噂は早く広まるんだ。人々は君のことあまり好いていないみたいだな――面白いことに、君はここに来たばかりなのに。」
アルファエルは口を開いたが、少年は続けた。
「落ち着け。俺はそこにいなかった。何が本当に起きたか知らない。だから、今のところは判断を控える。」
首の後ろをかき、半端な笑いを漏らす。
「ああ、そうだ――俺はフィオンだ。」
アルファエルは視線を地面に落とした。
「そ、そう…俺は…アルファエル。」
躊躇した後、付け加えた。
「ここに来た時、君を見かけなかった。…事件の時も。別のグループにいたのか?」
肩が重く感じられた。
フィオンはしかめ面をした。
「その顔やめてくれよ。済んだことは済んだことだ。俺の聞いた話じゃ、あいつは先に殺そうとしてきたからな。フェアプレイだ。」
彼はわずかに口角を上げる。
「質問の答えだが――いや、別のグループにはいなかった。俺はここで生まれた。」
アルファエルは頭を上げ、困惑の表情を浮かべる。
「え?じゃあ…君はアクシの一員?そいつらの?」
フィオンは歪んだ笑みを見せた。
「まあ、そう言えるかもな。でも実際のところ、俺は君と同じだ。汚れたヴァンゲンさ。」
アルファエルは一歩後ずさった。
「じゃあ――」
フィオンは腕を組み、笑みを消す。
「俺の両親もここに送られたんだ。ずっと昔にな。彼らが来た“家”なんて見たこともない。」
彼は頭を上げ、曇った空を見つめる。
「ここと比べてマシなのか?」
アルファエルの声は小さく。
「ずっとマシだ。何でもここよりマシ。生きたまま食べられそうになる怪物もいない。クソみたいなアクシもいない。」
フィオンの瞳が一瞬柔らかくなる。
「だから、平和に暮らしてるんだな?俺の父さんもいつもそう言ってた。」
アルファエルは躊躇する。
「…ああ。そう言えるかもな。」
キャンプの中央付近で、複数の長い列が騒ぎを起こしていた。フィオンはそちらを見て、アルファエルに合図する。
アルファエルは迷わず従った。
振り返りながら訊く。
「ここで何してるんだ?同じアクシの仲間といるんじゃないのか?」
フィオンの表情が曇る。
「さっきも言っただろ――俺も人間さ。アクシは俺たちヴァンゲンの繁殖を好まないんだ。だけど文句を言える立場か?彼らは兵士を増やせるだけだし、喜んで使うさ。」
「で、このヴァンゲンって何なんだ!?ずっと言ってるじゃん!」
フィオンは振り返り、テント沿いの長い通りを見下ろす。
「質問ばかりだな。あれは蔑称だ。褒め言葉に聞こえると思ったのか?経験を踏まえても聞くってことは、地球にはそんな言葉がないんだろうな?」
アルファエルは黙った。沈黙を破ったのは列の先で起きた騒ぎだった。
列の端では、古びた木の露店が数軒あり、店番をする者たちもくたびれていた。
露店では配給や奇妙な作物が並べられていた。アルファエルは見たことのない果物や野菜ばかりだ。
彼とフィオンは列に並び、数分後にようやく食事を手に入れられた。
露店には三人の捕虜が働いていた――女、男、子供。家族らしい。
男はアルファエルに気付き、何かを準備しながら駆け寄る。
「おい、子供。何にする?早くしてくれ。皆うるさくてすまん!」
アルファエルは身をすくめ、無意識にメニューを探した。
カウンターの後ろには数種類の品目と値段だけが書かれた看板があった。
アルファエルは考える。
「よし、見てみよう…パン1スコルネ。鶏肉2スコルネ。牛肉3スコルネ。スープ4スコルネ。アクシ野菜は無料?値段交渉可?なぜ無料で売る?スコルネって何だ?」
混乱の中、悟る。
「無料なら何を聞く必要があるんだ…俺、金ないのに。」
反応する間もなく、フィオンが2枚の茶色の金属コインをカウンターに置く。
「パン2つください。」
すぐに料理が渡され、フィオンは回収して自分たちのテントへ戻るよう合図。
歩きながら、フィオンは一つをアルファエルに手渡す。
彼は躊躇しつつ口に入れ、乾いたパンを飲み込むと目を見開き、呟いた。
「どうしてメニューが読めるんだ?こんな文字見たことない。」
食事の半分を食べ終えたフィオンは眉を上げる。
「メニューは読めるのに、言語は分からない?自分の声、聞こえるか?」
アルファエルは慌てる。
「マジだ!どの言語か分からないんだ!」
首を振るフィオン。
「まあ、ここに転送されたことと関係あるんじゃないか?どちらにせよ、君が読んだ文字はラテン語だ。」
「これがラテン語?!」アルファエルは息を飲む。
フィオンは極度に心配そうな顔で訊く。
「ラテン語を知ってるのか?」
答える前に、リュウェリンの鋭い声が響いた。
「起きろ、ヴァンゲン!訓練はすぐだ!」
驚いた動物のように、生存者たちはテントから飛び出し、列を作る。ささやきが広がるがすぐに消える。
「静粛!」リュウェリンの声は鉄のようだ。「一列に並べ。今すぐだ。」
アルファエルは小声で呟く。「クソ野郎。」
彼とフィオンは列に加わり、周囲を兵士が囲む。リュウェリンが鋭く手を振る。
「バンダナを配れ。」
動きの波が列に広がり、アクシ兵が黒と茶の二種類の布を配る。
兵士が彼らに渡すと、アルファエルは両方を手に押し込まれる。
黒は白い紋章――二本の刃に守られた見張り塔――が縫い付けられ、清潔で威厳を放つ。
茶は擦り切れ、汚れ、古い血まで染み込んでいた。匂いはスラムよりも酷い。
「常に着用しろ、ヴァンゲン!」兵士が叫び去る。
アルファエルは手の中のボロ布を見つめる。
フィオンの声がそっと聞こえる。
「見分けられるようにってことさ。」
「そりゃそうだろう。」アルファエルは黒を片腕、茶をもう片方に結ぶ。
「だからアクシは黒だけなのか?軍人として。」
フィオンは頷く。「馬鹿じゃないのは分かってた。茶は意味が想像つくだろ?」
最後のヴァンゲンが布を受け取ると、列は再び進み出す。基地脇を歩き、遠くの野原へ向かう。
だが到着前、前方で騒ぎが起きた。
男が列を押しのけ、怒りで人々を押し分けながら突進。顔は歪み、血管が浮き出る。
「待て…森で最初に殴られた奴だ。」アルファエルは囁く。
男は列を抜け、飛び上がり、頭上でギザギザの岩を振り下ろす。
「てめえ、ぶっ殺す!」
岩はリュウェリン司令官めがけて一直線に落下。
指揮官はゆっくり振り返り、片目で怒れる男を確認。
金属の衝撃音が響き、全員が身をすくめる。血ではなく、火花が散った。
アルファエルは耳を押さえる。「金属に当たった?」
リュウェリンはゆっくり顔を向ける。今や十字軍の兜そっくりの鋼鉄マスクで顔を覆い、マツラヴァの紋章が全体に描かれている。
襲撃者は後ずさり、恐怖で固まる。
リュウェリンの声はマスク越しにざらつく。
「当然だ。はっきりさせただろう?我々はアクシ――」
前に出て――男の腹を貫いた。
続く音は、骨が砕け、肉が潰れる恐ろしい混ざり合い。
「…そしてお前は」リュウェリンは血まみれの手を引き抜きながら言う。「ヴァンゲンだ。」
男の体は鈍い音を立てて地面に落ちる。
アルファエルは息をのむ。心は逃げろと叫ぶが、体は動かない。冷や汗が背を伝う。
「進め!」リュウェリンが叫ぶ。兵士がハンカチで手袋を拭きながら。
「訓練場に行くぞ。遅れてる。」
兵士たちは何事もなかったかのように行進を再開。ヴァンゲンたちは一瞬ためらうが、従い、死体を水たまりのように踏み越える。
アルファエルは後方でフィオンと共に残る。死体の近くを通り、肋骨は外側に潰れ、内臓は砕かれているのを目にした。
醜い光景。
フィオンの声は低く平坦。
「だから抵抗しないんだ。理由は他にもたくさんある。」
アルファエルは口を押さえ、吐き気を抑える。足取りを速め、目を地面に固定。
慎重にしなければ、同じ目に遭う。
「無理だ。無理だ。無理だ。無理だ。ここに…いられない!」




