子どもが働く事は難しい……。
ラクアノールの王子ルシアとその影武者の女の子ビエネッタちゃん。
彼らを私の足の治療に尋ねた教会の表玄関にて謎の賊たちから救った、私こと、新米黒魔術師エクレアと、なんか凄くいい人、侍の聡神さんとで彼らの護衛をする事になる。
そのためにギルドへパーティーを組むべくやって来た。しかしそれは難しいようで、ピエネッタちゃんの提案で早速飲み物休憩をすることになった。
「わかりました。皆様にはそういう時間も必要でしょう。では、私は必要な事務の手続きの準備をしてまります。15分後に戻りますので、ご自由にお過ごしください。しかし不用意に触ると、危険なアイテム等ございます。ご注意ください」
そう言って事務員のヨークさんは、表の事務所の方へと帰っていた。彼は始終にこにこ笑顔だ、しかし彼の目の奥はどうかわからない。
彼が出て行ってすぐビエネッタちゃんが、「はぁー疲れた。彼は尖り過ぎだよ。全部言っている事はわかるけどー、僕たちは子どもだからもっと優しさが欲しいよー。幼さって武器に対してスパスパと、他の子どもって武器で切り込んで来るのは辞めて欲しいー」
そう言って、机に向かって倒れ込む、ピエネッタちゃん。そしてブラブラさせた足を見ながらルシアが、テストの点が悪くて少し落ちこむ子どものように。
「とにかくギルドマスターまで出てくると、大きな問題なってしまう恐れは十分にありますよね。それはうちの国の醜態を晒すこと、借りを作る事になってしまう。でも、そっちがそうでるなら相手の手札をうまく利用して、僕の継母に勝つための手札にすることが一番いい気がしてきました。僕はまだ幼いから子どもであるので、将来的にこの国への借りはそれを武器に帳消しにしようかな? ねっ? どう思います? 二人とも」
「俺は子どもは守られるものって、あの男の意見には賛成だ。ルシア、お前の意見も尊重するし、やらないで後悔するならやってみればいいさ。人道に反しない事ならばな」聡神さんは背筋を、まっすぐ伸ばしながらそう言った。
そして私はそんな人たちの、重みを受け流しながら「命は大切ですからね。一番死ななくて、そして後悔しなさそうなのをやればいいんですよ。まぁーうちの師匠だったら『全部利用して、後は知らない振りをしとけばいいのよ。約束さえ守ればそれで良し!』っていいそうですね」
「あははは、なに? その師匠可笑しい。でも、楽な考え方で嫌いじゃないかも?」と、ビエネッタちゃんは言った。
やはり師匠の褒められるとうれしくなる。ビエネッタちゃんは良い子!
厳しい世間の制約を『子どもなので助けて、ギルドとヨークお兄さん!』作戦を決行するルシアの決意も決まった。
では、ヨークさんとの次なる決戦に備え、彼の持って来た魔力回復飲料を私は飲み干す。
――何!? これ美味しい!! 手に持った小瓶を穴が開くほど見つめる。『美味しいさ大幅アップで、手軽に魔力少量アップ!』ってその小瓶のラベルには書いてある。
「これはいつもながら美味しいね、でも、新しいのは魔力回復が大きいのにあまり美味しくないよねー。魔力回復の為だけどーなんか腑に落ちないよね」
ノアは新しい方をくれたんだ。そういう所はいい意味をでノアぽい。
そこへもう15分たったのかヨークさんが戻って来た。
「お待たせしました~。では、始めてもよろしいですか?」
「「お願いします」」
「では、僕から搔い摘んで話すと、僕は賊に襲われそこで冒険者の聡神さんとエクレアさんを雇う事にしました。しかし僕らは賊に襲われた際、所持金を含む、すべての手荷物がほぼ焼けおちてしまいました。だから僕は、冒険者としてお金を稼ぎたいです!」
ルシア王子の『です!』に込められた、くどいほどの子どもアピールに、さすがのヨークさんに思わず苦笑いが出る。
「すみません王子様、小さなお子様が働く仕組みはこの国では、一応ない事にはなっています」
「「……一応」」
ほぼ異国の人々と、辺境の里に住んでいた私にこの国の現状を知る者は居ない。
「しかし働く道が全くないわけでありません。この国にも貧困はあります。貧困にあえいでいても、親と暮らしたい、年下の姉弟に親の代わりに何か食べさせてあげたい、手段を知らず簡単に悪の道に走ってしまうそんな子どもを見元の確かなものに修行という形で送りこみ賃金の得られる状態するように手助けをこちらでお手伝いをすることは出来ます。それでも不慮の事故で死んでしまったり、隠れた殺意の死もあるかもしれません。こちらで調査をしますが、隠蔽するギルドもあるかもしれません。しかし今の世の中そんなものです。そういう言うわけで形式上、こちらの聡神様の弟子って事になされればどうですか? ギルドカードの臨時って形で発行されます。どうでしょうか?」
「では、その手続きを頼む」聡神さんがそう返事をした。
「お願いします」「お願いしまーす」と二人が続いた。
「はい、受けたまりました」
「あのそんなところまで、僕らに話していいの? 僕ら他の国の人だよ?」
「そうですね。絶対に話してはだめですね」彼はとても愉快そうに笑い。「でも、この事は私が王子様に知って貰いたかったのです。え……っと、大人は時として、子ども相手に口が軽くなってしまう事あるという風に受け取っていただき、王子様には私の失態を寛大な心で見逃していただければと思います。そして1人でも不幸な子どもが救われる事を願っています」
そう言って彼は、今、話した事の詳細が載っているだろうプリントを事務的に手渡してくる。ヨークさんは掴みどころがなさ過ぎる。仕事をし過ぎて疲れているのかもしれない。
ふと、王子を見ると彼は、ヨークさんを静かに見ていた。
続く
見てくださりありがとうございますー。
またどこかで~。




