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パーティー新結成の手続き

 私たちは雨の中、ラクアノールの王子と彼の影武者の女の子ビエネッタちゃんを彼の故郷に送り届けると約束した。しかしルシア王子たちの荷物は荷馬車とともに焼けてしまい、無一文となってしまう。王子を教会へ、寝かせるわけにはいかない。


 私と聡神(そうかみ)さんは、それぞれ王子たちを泊める事となった。明日の行動次第ではこの宿屋を引き払い、新しく冒険者パーティー用の個室のある、共同生活ルームに移る事を考えなくてはならない。


 しかしその事を、同じ宿の2階に住むナナミちゃんにはまだ伝えられずにいた。やはり少し会いづらい。手紙を書こうとしたが、言いたい事があるのに、書き始めの言葉も思いうかばない。


 どうしよう! 胸の内で、黒く気持ちが渦き始める。


 そんな事にくよくよ悩んでいると、不思議と聡神さんが「友達ならわかってくれるだろう?」と、何故か察して励ましてくれた。


 でも、私がナナミちゃんなら好きなジョブを辞めなくていけない今、だからこそ誰かに居て欲しい、そう思う。きっと……。


 それにしても、ビエネッタちゃんはすやすや寝てるな。宿屋のシングルベッドで寝がえりもせずに寝ている。膝を抱えて彼女を見ていると、「君は誰?」いきなり少し低い声で聞かれた。


「エッ、エクレアです」

「……エッ、エクレア? あぁ~エクレアちゃんかー早くねなよー」だけ言うと彼女は再び寝始めた。こっちは驚きすぎて、目が覚めてしまった。


 ★★


 次の日、待ち合わせ場所のギルドへ行くと、聡神さんたちはもう来ていた。レストランで、ルシア王子と仲良く朝食を食べている。


「おい、こっちだ」そう言って二人は、私たちに手を振る。


 彼れらの座るテーブルに着くと、ウェートレスさんがメニューを持って来てくれる。


 ビエネッタはメニューを開けながら「奢ってくれる?」聡神さんにそう言い、「お金がないなら今回だけだが」といい終わらない内に彼女の喜びの声が聞こえた。


「やったー」


「ビエネッタちゃんと私はうちで、朝食に昨日買って帰ったパン食べんですよ。だから私はジュースだけ……私は苺ソーダーにします」


「僕は林檎ジュース!」


 そして注文が済むと、ルシアがメニューを2つを手に持ち片付けながら、話しを切り出す。


「では、今日の予定ですが、ギルドでパーティーを組みギルドクエストを受けようと思っています。申し訳ないですが、ギルドの分け前は通常通り、僕たちを送り届ける報酬はギルドを通して、だいたい護衛として通常通りの値段でかまいませんか? 後、ある程度の資金調達のために、指輪や腕輪を売ろうと思っています。換金をしやすいように金のアクセサリーを身に付けるようしてますが、換金場所お勧めのお店ってありますか?」


 私たちの雇い主の、王子がそう話を進めた。


「うーんギルドの冊子にはお勧めの店はありましたけど、ギルドでも手数料は少しかかりますが、買い取ってくれますよ。これから出歩くのであれば、お店を覗いて見る方がいいかな~。資金集めがメインですし、うん? どうしました? 何か付いてますか?」


 3人が私の顔を見つめている。その中で口を開いたのは、ビエネッタちゃんだった。「エクレアは、君がそんなにしっかりした事を言うなんて驚きだよ。僕はちょっと感動しちゃった」


「感動はいいすぎですよ。うちの師匠は金銭的におおらかな人だったので、結果的にそういう面はシビアになっただけです」


「苦労したんだねエクレアーよしよし」


 ビエネッタは私の頭をなでなでする。幼い彼女だけど、なでられるのはちょっと嬉しい。

「うふふふ」「あはは」


「聡神さん、その後、宿屋を探しに行き、出来れば少し店をまわって雑貨集めたいのでお付き合いください」


「あぁ、わかった」


「ふたりとも今後の話は、決まりました。少しゆっくりしたら、ギルドの方へ行きましょう」


「「はーい」」「わかった」


「後、僕は今後ただのルシアです。ギルドでは真実を話さないといけないだろうけど、秘密を隠すのは大切な事ですよね~」


「「はい」」


 ルシアは、王子様なだけに、しっかりとしているなぁ~。王子様の好きなお菓子はなんだろう? やっぱり大変な事ばかり考えると心が疲れちゃう。お菓子必要だよね!


 ☆


「おはようございます、皆様。パーティーの結成ですか?」


 今日の担当はヨークさんだった。パーティーの結成を受け付けた場合、彼の抱えているパーティーが手一杯な場合を除いて、大体最初に受け付けた事務員が受付の担当となる。


「はい、よろしくお願いします。しかしその前にこれを、見ていただいていいですか?」


「失礼します。……はい、拝見しました。そうですねー、ここでは少し話難い話なので、ギルドの客室へと移りましょうか」


 ルシアの見せた物は彼の身分証明の様に見えた、話しの流れから間違いないはず。しかしヨークさんはそれに対し特に驚いたわけでも、緊張したわけでもなさそうだ。


「僕としても願ってもないことです。難しいお話でしょうが、出来たら内々の話で済ませたい、そう思っているので是非お願いします」


 そして私たちはヨークさんの後へ、続き彼の案内する応接室へ通される。


「すみません、今、ギルドマスター、副ギルドマスターとも、今出払っているので直ぐ呼び戻します。これそれまで良かったらどうぞ」と言ってノアがいつもくれた小瓶を箱一杯置いてくれる。


 彼はとっても、気前良すぎだと思う。


「いえ、お気遣いは嬉しいのですが……、今回ギルドで冒険者の手続きをしに来ただけですので。この場へと移ったのは、おおぴらに身分を明かす事は出来ない。それだけの理由です。そして……」


 ここでルシアは言葉を探すように言いよどむ。


「はい、微力ながら私、ヨークがルシア様と、このギルドをつなぐ受付となります。何なりとおっしゃってください」


 ヨークさんは、こんな状態でもにこにこ笑顔を崩さない。さすがプロ。


「僕はある事情で命を狙われています。いえ、かもしれないと言った方が正確です。ただ、昨日命を狙われました……」


「それなら余計にギルドマスターを呼び戻さなければなりません。貴方の命が狙われいるのなら、貴方の身の回りに位置する、我々の生活も無事ではすまない。そうですよね?」


「それはおっしゃる通りです。僕も僕のせいで身の回りを危険にさらすのは、望みません。それはとても辛い事です」


「なら、ここは大人に任せてみればいかがでしょうか? 子どもは守られるべき、私も自ら子どもを持って初めて実感できた部分もありますが、そう願うのに理由や条件づけはいりませんよね。そしてそこに貧富や身分の差もまたない。そう思いませんか?」


「そうですね……真実はどうであれ僕は第一王位継承権を持つものとして、そこは同意しなければなりません。おかげで1つ勉強になりました。お手数ですが、ギルドマスター面会をお願いしできないでしょうか?」


「はい、承知しました」

 ヨークさんとルシアは今の会話中、二人とも始終笑顔で会話していた。


 結局の所、ヨークさんの言いたい事は王子様かもしれないが、うちの街の子どもの命も大切なのでさっさとギルドマスター呼んで話をつけさせてください。って意見に、ルシアが折れた形になった。


 それは正しい意見なのだが、ルシアの王子と言う立場を考えると、のちのちの事考える外交問題、そこまでいかずともヨークさんの立場が悪くなるのでは? と、見ている私が心配してしまう。師匠から伝え聞いた話と言い、彼の身の上話のような注意といい、以前の彼は何者なの? って勘ぐってしまう。


 王子様の護衛として命のやり取りだけが、難しい事だと考えていたが思わぬ展開になり、国の偉い人とも交渉する。そんな別の難しさをはらむ事になって、これは新米魔女の立ち入っていい領分なのか考える。


 この流れからすると、私たちはここでさよならをして、もっとちゃんとした人が、王子を護衛につければすべて解決じゃない? ここで、私の護衛の旅は終わり。静かな平穏な日々は来ないけど、一般的な冒険者の生活にもどる。


 やったー。ビエネッタちゃんと文通の約束しよーっと。


「お待たせしましたー。伝書鳩と、職員に言付けを頼んだので、早い方で伝わると思います。この後、すべて話が無に帰す恐れがございますが、ルシア様のお望みを(うけたまわ)りたく申し上げます。なんなりとお話ください」


 凄いマイペースで、ヨークさんがどんどん話を進めてくる。ありがたいにはありがたいが……。これは……怒る人が出てもちょっと、しょうがないかもしれない。


 世の中には、自分が対応出来る範囲を超えると、怒る人はいるし。


「ちょっと待って、僕はちょっとお腹いっぱいだから、ちょっとここでお茶と言うか休憩していーい?」ビエネッタちゃんはそこで、そんな声をあげた。




 続く



見ていただきありがとうございます。


また、どこかで!

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